先日、あるクラブの練習におじゃまして、試合をさせてもらった。
メンバーの方々は、ぱっと見た感じ、平均年齢60歳以上だった。
その方たちの卓球の特徴を挙げると、以下のようになる。

・前陣であまり動かない
・ミート主体で、薄くこするドライブはほとんど打たない
・日ペン
・攻撃的
・チキータ等のいまどきの技術は使わない

私が相手をさせていただいた方は、クラブ内でも半分より下のレベルの方々だったのだが、かなりクセのあるフォームの方もいらっしゃり、我流の卓球を続けてきたことをうかがわせる。 
ツッツキ
 写真はイメージです

私は初級者や若い人と打つことが多いのだが、そういう人たちのお上品な卓球とは全く違う卓球の世界があることを思い知らされた。

ふだんの相手なら、こちらがサービスを打つと、レシーブは低いツッツキやストップで返ってきたり、あるいはループ気味の回転のかかったドライブで返ってきたりするのだが、ここで相手をしていただいた方たちはガツンと回転をかけた高い(浮いた)ツッツキで返してきたり、スマッシュのようなドライブのような、かなり当ての強いボールで返球してきたりする。

こういうボールに私は慣れていない。完全にリズムが狂ってしまう(前記事「卓球のリズム」)。

高いツッツキならチャンスボールのはずなのになかなか入らない。ふだん私が受けているツッツキと回転量(キツイ)もスピード(遅い)も違うのだ。 強打を打たれてもなかなか止められない。ほとんどこすっていないので、非常に直線的なボールが飛んでくる。
ふだんの相手なら、ミドル等の厳しいコースにボールを送った場合、ちょっと打点を落としてこすりあげてくるのだが、今回のお相手は、そんな打ちにくいボールも無理な姿勢から、手打ちでバチンと強打してくるのだ。それがかなりの確率で入ってしまう…
あまりドライブをかけず、あんなにバチバチ叩いていたら、ミスを連発するはずなのに、しっかり入れてくる。おそらく非常に繊細な力加減とブレのないスイングが身についてらっしゃるのだろう。その結果、ぱっと見、それほど強くなさそうな方々にも負けてしまった。

私の卓球はできるだけボールをミートせず、 柔らかくこすって安定性優先という方向性なのだが、それとは正反対の方向性――非常にシビアなタイミングで厳しいボールをガンガン打ってくる実戦卓球がここでのデフォルトだったのだ。

私は毎日卓球の動画を見て、卓球雑誌での勉強を欠かさないが、おそらくこのクラブのメンバーの方々は、そういったことにはほとんど無頓着で新しい技術なんてまったくご存じないだろう(偏見かも知れないが)し、ラケットは10年以上替えず、ラバーもスレイバーとかマークVを1年以上替えずに使い続けているのだろう。ラバークリーナーなんて必要ない。「ハァー、ゴシゴシ」で十分だ。それなのに私は勝てなかった(さすがに全敗ではなかったが)。なぜか。

卓球は知識や用具ではないのである。私はスイングの軌道がどうの、足の動かし方がどうの、といったいろいろな効率的な技術の知識を集めることに汲々とするあまり、結局どれも消化しきれず中途半端な状態なのに対して、このクラブの方々は自然に身につけた自分自身の打ち方にひたすら磨きをかけ、自分の用具の特性を知悉し、自分なりの卓球のパフォーマンスを最大限に発揮している。おそらく20年以上、ご自身の卓球に目に見えるような大幅な変化はなかったのではないか。

一方、私は、世間で○○打法が効率がいいとか、そんなことを聞けば、無理に自分のスイングを改造し、トップ選手のマネをして、上達した気になっているが、そのように人の真似をする前に自分の卓球をひたすら磨き上げ、打球の精度を極限まで高めれば、市民大会程度のレベルなら敵なしなのではないだろうか。たとえば、世間では手打ちがダメだと言われるが、たとえ手打ちでも、それを極め、非常に微妙なボールタッチまで身につけられれば、相当強くなれるのではないだろうか(といっても全国レベルでは通用しないと思うが。おっと、戦術のことをすっかり忘れていた!)

クセのある打ち方でも、足があまり動かなくてもいい。そういう自分の特性を知り尽くし、どんなボールに対しても打球の精度を極限まで高める努力を怠らなければ、下手にいろいろな技術にチャレンジするよりも、強くなれるのかもしれない。そしてそのような精度を高めるにはいろいろな人と打って、いろいろなボールに慣れなければ――試合を通して適応力を鍛えなければならないだろう。

【おまけ】
ウラタロス