コースの決まった練習では安定して打てるのに、試合形式の練習ではミスばかり。私のようなヘボ同士で試合をすると、ミスばかりでちっとも楽しくない。特にある一定のタイプの人と対戦する時、ちっともラリーにならない。たいてい3球目までで終わってしまい、4球目以上の、ラリーらしいラリーには発展しない。一方、上手な人同士の試合では気持ちよく強打を応酬し、卓球の醍醐味であるラリーが続き、見ごたえがある。これはなぜなのか。

おそらくこれは意識の問題である。

対戦となると、私は相手に強打されないよう、できるだけ低く、厳しいレシーブを心がける。相手のサービスを低く厳しいツッツキで返球したり、短くてとても強打できないようなストップで返球しようとする。これがミスが多い原因だと思われる。相手のサービスに対して、低く厳しいコースにレシーブしようとすれば、どうしても不安定になり、ミスする確率が高くなる。多少甘いレシーブになってしまっても、とにかく台に入れることを優先すべきなのに、私は対戦では、つい厳しいレシーブを心がけてしまう。低いツッツキをしようとしてネットに引っ掛けてしまったり、フリックしてオーバーミスをしてしまったり、早い打点のストップをしようとしてネットが越えられなかったり。うまい具合に低くて速いレシーブが成功する場合もあるのだが、どうしてもミスが多くなる。

最近、気づいたのだが、どうやら私と同じことを考えてプレーしている人がいるのだ。こういう人と対戦した場合、お互いにミスが多く、消極的な対戦になってしまう。どちらも「相手に強打させまい」と過剰に警戒し、厳しいレシーブを心がけているから、容易に強打できない。その結果、お互いに強打が打ちにくく、4球目以上のラリーに展開することが少なくなり、不完全燃焼のまま対戦が終わってしまう。なんとつまらない対戦だろうか。こういう対戦は柔道の「教育的指導」を思い起こさせる。

教育的指導
柔道では極端な防御姿勢を6秒以上とると、指導の対象になるという。

ただ、卓球の場合、柔道と違って完全に消極的に試合を続けることはできない。たとえば、相手がロングサービスを出してきたときは、こちらも攻撃に転じなければならない。しかし、ここでも相手に攻撃させないよう、低くドライブしたり、厳しいコースを狙ったりする。ロングサービスをとっさに速いバックハンドドライブで迎撃しようとすると、やはりミスが多くなり、ラリーにならない。

防御を完璧にしようとして、ミスを連発し、はたまた2球目から相手がとれないような強打をしようとしてミスを連発する。なんとも寒々しく、すさまじい対戦である。どうして私はこんなに相手の先制攻撃を恐れるのか。たしかに相手に絶好球を送るのは恐ろしいが、ある程度返球するコースを工夫して、絶好球にならないようにすれば、多少甘いレシーブでもいいではないか。相手に先制攻撃させてもいいではないか。そうすれば、相手も気持ちよく強打を打てるし、それを止め、チャンスを作って、こちらからも強打を打つことができる。3球目攻撃の練習相手を務めているつもりで、相手に長いツッツキを送ってやり、それを打たせてやったほうが、こちらも楽しく、いい練習になるのは間違いない。


ベラルーシオープン女子U21決勝。お互いに3球目は「どうぞ打ってください」的なボールを送り、そこから激しい打ち合い。これぞ卓球!ただ、森選手の行き過ぎた叫び声を問題視する声が多いようだ。試合中のマナーはすばらしいのだが。

「強打させない合戦」ではなく、「強打合戦」こそが卓球の醍醐味である。「相手に絶対に強打させないこと」ではなく、むしろ「相手の強打を絶対に返球できるようにすること」にこそ意を用いるべきである。とすると、私のレベルでは高度な台上技術よりも、堅いブロックを身に付けるほうが優先されるべきだろう。

古人は言った。

「馬には乗ってみよ 技にはかかってみよ」

対戦では、相手に先制攻撃をさせてやるぐらいの度量がないと、対戦が楽しくならない。

【追記】 141027
元々の題名は「ものすごい対戦」だったが、「すさまじい対戦」のほうがピッタリだと思い、題名を変更した。
「気持ちがすさんでいる」などの「すさむ」の語感のほうがよりふさわしいと思ったからである。