もう、60代の老人が30代の若い選手をストレートで下した。
老人は中高では全国レベルの強さを誇ったが、最近はほとんど練習らしい練習をしていない。一方、若者は社会人全国大会に出場するような、今が旬の強い選手。どうしてこんな番狂わせが起きたのか。
Nさんは裏ソフトのペンホルダー。しかしドライブマンではない。補助的にドライブを使いはするが、本領はスマッシュである。スマッシュ主戦型になった経緯は以下のとおりである。
「私が若かった頃の裏ソフトは、今みたいな驚異的な性能はなかった。ちょっとかぶせてドライブを打てば、全部落ちて、ネットに直撃だった。 それで下回転は慎重にループドライブで引っ掛けて持ち上げたものだ。今のラバーは面をほとんど水平にしてもボールが落ちない。ドライブが楽に入る。」
つまり当時の用具的な制約から、ドライブマンよりも、スマッシュマンのほうが勝ちやすかったということらしい。
次にNさんに若い選手の攻略法について尋ねてみた。
「最近の若い選手は、みんなドライブを打とうと待っている。なんでもかんでもドライブだ。こっちがツッツキで返球すれば、たいてい速いドライブで返球してくる。 しかし、それを1球しのいだら、なんとかなる。相手がドライブを打ってきたら、厳しいコースに返球したり、横回転ショートで返したりすれば、そうそう連続して速いドライブは打てない。苦しくなって相手は打点を落として、下から持ち上げてくる。そのボールを待ってパシーンとスマッシュを打てば、たいてい返ってこない。返ってきたとしても棒球だ。その次で決められる。」
しかし、若い選手のドライブはとんでもなくスピードがあり、スピンもすごい。
「いや、完全な姿勢から打たれたら、なかなか止められないが、コースを突いたり、速いツッツキを送ればそんなに厳しいボールは来ない。ちょっとラケットを上気味に構えてブロックすれば、大丈夫だ。当てるだけで速いボールが返っていく。まして下から持ち上げるドライブなら、ちっとも怖くない。」
不完全な姿勢とはいえ、上級者がドライブを打ってきたら、私の実力では止めるのはなかなか難しい。しかし、上級者同士なら、不完全な姿勢からのドライブはそれほど怖いものではないらしい。
「私はちょっと甘いボールが来た時は、たいてい軽くスマッシュする。これが最近の若者には取りにくいらしい。みんながみんな、ドライブで打ち合っているから、対ドライブにはめっぽう強いが、スマッシュに対する免疫がない。軽いスマッシュでもほとんど返ってこない。しかも私の攻撃はループドライブ、スピードドライブ、スマッシュとバリエーションがあるから、相手がスマッシュに慣れてきたら、今度はループドライブでタイミングをずらしてから、スマッシュだ。」
ここでいうスマッシュというのは、台から50~100センチも上がったボールを打つ決定打としてのスマッシュではない。ネットから10センチほどの高さの、ちょっと甘いボールに対するスマッシュである(こういうのをミート打ちというのかもしれない)。スマッシュ、スマッシュと簡単に言うが、スマッシュは非常にデリケートな角度や打点が要求されるので、そうそう入るものではないのではないだろうか。
「まぁ、それは経験と技術だな。最近の若い人にはスマッシュは難しいかもしれないが、私は若い頃からずっとスマッシュを打ってきたので、かなり安定している。それと、私のラバーは使い古して引っ掛かりが落ちているから、それほど相手の回転の影響を受けない。」
もっと具体的な戦術的なことも聞けたのだが、詳細は忘れてしまった。「最近の若い選手はドライブしか打たない」というところだけが強く印象に残っている。
「私の卓球は古い卓球です。でも、相手は私が次にどう打ってくるか読めない。若い選手はたいていドライブしか攻撃手段がないから、読まれやすく、対応しやすい。」
そういえば、最新号の卓球王国(14年9月号)の「試合で勝つための22の法則」の中で水谷選手がこんなことを言っていた。
自分が心がけているのは、卓球の幅を広げることだ。自分の苦手な選手とか、自分の嫌な球質を持っている選手とたくさんやることが重要だと思っている。…練習でもなるべくやったことのない人と練習をして、体験したことのないボールを経験することで、それに対応しながら自分の幅を広げていくことが大切だ。
やりやすい相手と練習すると、自分の実力以上のラリーが続いたりして楽しい。それでついつい苦手な人との練習を敬遠しがちになる。日本代表レベルの選手にしても、そういう人はいるらしい。しかし、ふだん自分のやりやすい相手とばかり練習していると、ちょっとクセのあるボールを打つ格下の選手にコロッと負けてしまったりする。未知のボールに対する対応力が弱いのだ。
こういう話を聞いて、スマッシュという習得の難しい技術にも挑戦しなくては、と思うとともに、自分の対応力、卓球の幅を広げるために打ちにくいボールを打つ人とこそ積極的に練習しよう、と考えるようになった。
ただ、変なボールを打つ人は、ムチャクチャに強打してミスばかりする人が多い。そういう人との練習は時間の無駄だと思う。
老人は中高では全国レベルの強さを誇ったが、最近はほとんど練習らしい練習をしていない。一方、若者は社会人全国大会に出場するような、今が旬の強い選手。どうしてこんな番狂わせが起きたのか。
Nさんは裏ソフトのペンホルダー。しかしドライブマンではない。補助的にドライブを使いはするが、本領はスマッシュである。スマッシュ主戦型になった経緯は以下のとおりである。
「私が若かった頃の裏ソフトは、今みたいな驚異的な性能はなかった。ちょっとかぶせてドライブを打てば、全部落ちて、ネットに直撃だった。 それで下回転は慎重にループドライブで引っ掛けて持ち上げたものだ。今のラバーは面をほとんど水平にしてもボールが落ちない。ドライブが楽に入る。」
つまり当時の用具的な制約から、ドライブマンよりも、スマッシュマンのほうが勝ちやすかったということらしい。
次にNさんに若い選手の攻略法について尋ねてみた。
「最近の若い選手は、みんなドライブを打とうと待っている。なんでもかんでもドライブだ。こっちがツッツキで返球すれば、たいてい速いドライブで返球してくる。 しかし、それを1球しのいだら、なんとかなる。相手がドライブを打ってきたら、厳しいコースに返球したり、横回転ショートで返したりすれば、そうそう連続して速いドライブは打てない。苦しくなって相手は打点を落として、下から持ち上げてくる。そのボールを待ってパシーンとスマッシュを打てば、たいてい返ってこない。返ってきたとしても棒球だ。その次で決められる。」
しかし、若い選手のドライブはとんでもなくスピードがあり、スピンもすごい。
「いや、完全な姿勢から打たれたら、なかなか止められないが、コースを突いたり、速いツッツキを送ればそんなに厳しいボールは来ない。ちょっとラケットを上気味に構えてブロックすれば、大丈夫だ。当てるだけで速いボールが返っていく。まして下から持ち上げるドライブなら、ちっとも怖くない。」
不完全な姿勢とはいえ、上級者がドライブを打ってきたら、私の実力では止めるのはなかなか難しい。しかし、上級者同士なら、不完全な姿勢からのドライブはそれほど怖いものではないらしい。
「私はちょっと甘いボールが来た時は、たいてい軽くスマッシュする。これが最近の若者には取りにくいらしい。みんながみんな、ドライブで打ち合っているから、対ドライブにはめっぽう強いが、スマッシュに対する免疫がない。軽いスマッシュでもほとんど返ってこない。しかも私の攻撃はループドライブ、スピードドライブ、スマッシュとバリエーションがあるから、相手がスマッシュに慣れてきたら、今度はループドライブでタイミングをずらしてから、スマッシュだ。」
ここでいうスマッシュというのは、台から50~100センチも上がったボールを打つ決定打としてのスマッシュではない。ネットから10センチほどの高さの、ちょっと甘いボールに対するスマッシュである(こういうのをミート打ちというのかもしれない)。スマッシュ、スマッシュと簡単に言うが、スマッシュは非常にデリケートな角度や打点が要求されるので、そうそう入るものではないのではないだろうか。
「まぁ、それは経験と技術だな。最近の若い人にはスマッシュは難しいかもしれないが、私は若い頃からずっとスマッシュを打ってきたので、かなり安定している。それと、私のラバーは使い古して引っ掛かりが落ちているから、それほど相手の回転の影響を受けない。」
もっと具体的な戦術的なことも聞けたのだが、詳細は忘れてしまった。「最近の若い選手はドライブしか打たない」というところだけが強く印象に残っている。
「私の卓球は古い卓球です。でも、相手は私が次にどう打ってくるか読めない。若い選手はたいていドライブしか攻撃手段がないから、読まれやすく、対応しやすい。」
そういえば、最新号の卓球王国(14年9月号)の「試合で勝つための22の法則」の中で水谷選手がこんなことを言っていた。
自分が心がけているのは、卓球の幅を広げることだ。自分の苦手な選手とか、自分の嫌な球質を持っている選手とたくさんやることが重要だと思っている。…練習でもなるべくやったことのない人と練習をして、体験したことのないボールを経験することで、それに対応しながら自分の幅を広げていくことが大切だ。
やりやすい相手と練習すると、自分の実力以上のラリーが続いたりして楽しい。それでついつい苦手な人との練習を敬遠しがちになる。日本代表レベルの選手にしても、そういう人はいるらしい。しかし、ふだん自分のやりやすい相手とばかり練習していると、ちょっとクセのあるボールを打つ格下の選手にコロッと負けてしまったりする。未知のボールに対する対応力が弱いのだ。
こういう話を聞いて、スマッシュという習得の難しい技術にも挑戦しなくては、と思うとともに、自分の対応力、卓球の幅を広げるために打ちにくいボールを打つ人とこそ積極的に練習しよう、と考えるようになった。
ただ、変なボールを打つ人は、ムチャクチャに強打してミスばかりする人が多い。そういう人との練習は時間の無駄だと思う。
コメント
コメント一覧 (6)
ただ個人的に感じていることは実践で様々な軌道、スピード、回転で飛んでくるボールに対してスマッシュを打つのは非常にリスキーだなと。
これだけ世界でドライブが流行しているのは汎用性と安定性と得点力が兼備されているからで、大会で安定して勝つためにはドライブの中で変化をつけるのが近道かと思います。
スピードドライブも擦るのと弾き気味に打つのとでは相手のラケットの角度は大きく変わってきます。球の軌道に差はほぼないので使いわけることが出来れば安定した武器になり得るかと。
スマッシュを安定して打つには一定の打点と予測、かなりの練習量が必要で時間の少ない社会人には現実的ではない方法だと思います。
一般の選手であれば自分の安定した得点源のバリエーションと精度を磨いた方が勝利に近づけるのではないかなぁと拝見していて感じました。
おすすめはツッツキの回転量、回転軸の変化ですかね。
全国レベルの選手には通用しないかも知れませんが非常に多く使用する技術ですしスマッシュより安定して練習を続けられるので上達も早いと思います。
コメントありがとうございます。
スマッシュ(というかミート打ち?)は難しいですよね。
複雑な回転のかかった、少し浮いたボールを叩くのは怖いので、ついドライブを掛けてしまいますが、単純な下回転のツッツキで、ちょっと浮いたボールなら、練習次第でかなり安定するのでは?とひそかに習得を目論んでいます。
ツッツキの打ち分け等、有意義な情報ありがとうございます。
面白いはなしがあって楽しませてもらってます!
自分は20才ですが体育館で練習してて時々年配のかたと試合させてもらいます
そうすると年配のかたは独特な打ち方で来るんですけど
しっかり入ってくるんですよね
独特過ぎるからその人たちと毎日練習をしたいかっていわれたら違いますが
時々試合してもらうと
すごいいい練習になりますよね
コメントありがとうございます。
未知のボールやクセのあるボールを、私は今まで敬遠していましたが、最近考え方を改めて、そういうボールがおもしろいと思うようになりました。ただ、おっしゃるようにそのような「ゲテモノ」がふだん受けるボールになってしまうと、かえって毒になるかもしれませんね。
これからもどうぞご贔屓に。
スマッシュと一口にいってもフラットに打てば、擦りながら弾いたり、カウンタースマッシュなどバリエーションがあります。
実戦的にはツツキやループドライブでチャンスメイクして次球をスマッシュするシステムを練習すれば、マスターできますよ。
コメントありがとうございます。
スマッシュもいろいろあるんですね。私も安定して自分に合ったスマッシュを模索したいと思います。