小笠原清基『疲れない身体の作り方』を読んで、卓球にも応用できることがあるのではないかと感じた。
小笠原流礼法の基本的な振る舞い――立つ、座る、歩く、持つ等を説明した本なのだが、卓球に関連する部分として以下の2点を紹介したい。

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小笠原流は礼法だけでなく、弓術・馬術を含めた総合的な教えなのだという。

一つは内側の筋肉を使うという原則である。

身体の外側を使うと、 重心が不安定になって、しっかり立っていられません。軽いとしても、物を持つわけですから、何も持たないとき以上に、重心は中心に定まっていなければ、安全が保てません。
・肩ではなく、二の腕(腕の付け根)
・手ではなく、前腕(内側)
で持つイメージで、持つといいでしょう。
 
「物を持つ、無駄のない動きをする」
 
上のポイントの「肩ではなく、二の腕」というのが分かりにくい。文脈から判断すると、肩の外側に力を入れるのではなく、肩の内側に力を入れるということだと思われる。この本では腸腰筋(肚から太ももにつながるインナーマッスル)を鍛えることを重視しているので、このポイントも肩の外側の筋肉ではなく、肩の内側(脇の下のあたり)の筋肉を使うことを指しているのだと思われる。腰肚の一点を中心にして筋肉を使う、というより、身体の中心軸の線に近い筋肉を使うということかと思われるが、はっきり分からない。

ご高齢になると膝がゆるみ、傷める方が多いものですが、礼法の歩みを続けていらっしゃる方は、内腿の筋肉が発達しているため、膝にかける負担がすくなく、健脚を保っておられます。
「歩く」
 
このように小笠原流礼法では、腕も脚も内側の筋肉を使うことによって体幹を保つことができるとするらしい。前腕や上腕というのは意識したことがあるが、腕や脚の内側と外側の筋肉を区別するという視点が新鮮だった。

また、次のことは戒められている。

・遠くのものを、動かずに、腕だけ伸ばして持つ(取る)
・下に置いてあるものを、しゃがまず、かがんで持つ
「物を持つ、無駄のない動きをする」

この部分などはまさに卓球に通じる部分である。バック側に来たボールや短いストップを、下半身を動かさず、腕だけを伸ばして打ってしまったりする「横着」は身体の体幹を歪ませ、無理な姿勢で不適当な部位の筋肉を使用することになる。そのため素早く力強いボールが打てなくなってしまう。

もう一つは呼吸である。

 70余年、礼法の稽古を続けてこられた門人のある女性は、80歳を超えて、過日も和歌山の紀三井寺の階段を一気に上り、周囲の人々を驚かせたようです。【中略】
「平地と違いません。呼吸には平地も階段も別はないのです」【中略】
彼女は、足で上り下りしているのではなく、呼吸と合わせ、全身で上り下りしているので、疲れ知らずなのでしょう。

「歩く」

 小笠原流礼法では呼吸と身体の動きをシンクロさせることを重視しているらしい。卓球でそんなことが可能だろうか。早いピッチの前陣のラリーでは難しいかと思われるが、ツッツキや、ちょっと台から離れたラリーなら呼吸と動きをシンクロさせることも可能かと思われる。その効果のほどは未知数だが、上手に呼吸と動きを合わせられれば、反応スピードと威力が増すのではないか。

【まとめ】
普段の生活の中でどのように身体を使うかが示されており、前記事「大人の保健体育」で取り上げた本と同様、なかなか興味深かった。身体のどこに力を入れるべきか、あるいは抜くべきか、呼吸を動きにシンクロさせるという点は示唆されるところ大である。これらが実際、どのぐらい卓球に応用できるか分からないが、頭の片隅にでもとどめておきたい知識である。ただ、一般向けの軽い読み物なので、詳細な説明は期待しない方がいい。それと前口上が冗長なのと、小笠原流礼法の宣伝が多いのが気になった。