今年の連休は間に平日が何日も入り、あまり連休らしくない連休だ。

私は人混みが苦手なのだが、河原町四条に行く用事があったので、ついでに最近?できたOPAのブックオフに寄ってみた。難しい本は読む気がしないので、卓球マンガを探してみたところ、以下の2タイトルが1冊100円で売っていたので買ってみた。今回はこれらを読んだ感想などを綴ってみたい。

島本和彦『卓球社長』(ビッグコミックス)
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本田真吾『卓球Dash』(少年チャンピオン・コミックス)1~3巻
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『卓球社長』は会社内の揉め事や人間関係の軋轢などが卓球をめぐって展開し、仕事とは、人生とは何かということを問いかけつつ、しみじみとしたペーソスとユーモアが漂う作品となっている。従来の島本和彦氏の作品とは違い、アツい展開は控えめである。5つのエピソードが収録されていたが、それほどおもしろいエピソードがなく、盛り上がらないまま最終エビソードに。しかし、この最終エピソードがなかなかの佳作だったので、うまくまとまって終わっている。ただ、卓球の記述に納得できない部分がいくつかあり(ダブルスにおいて打球した自分のパートナーの体の正面を狙って相手が返球するという常套手段が「卑怯」だとされている等)、作者が卓球に詳しくないことを窺わせる。
卓球のスコア風に評価すれば、2-4で敗北だが、2ゲームはとれたといった感じである。
5-11
6-11
12-10
11-5(最後のエピソード)
8-11
9-11

『卓球Dash』は(ピンポン・ダッシュと読むらしい)は茨城県牛久市のヤンキー高校生(昭和の遺物のような典型的なヤンキー)が卓球に取り組むというスポーツギャグマンガ。主人公が卓球部の少女に惚れて卓球部入部を決意し、卓球を始めるまでのいきさつがかなり強引で、少年マンガらしい、「まず設定ありき」のストーリーだという印象を受けたものの、意外におもしろかった。絵柄もキレイで

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ユニークなキャラクターが多く、妙に専門的である(欄外にニッタクや明治大学卓球部への謝辞が記されていた)。主人公の必殺技は裏拳で鍛えた強烈なバックハンドドライブ「爆速魔駆須駄屁(ばくそくまっくすだっぺ)」で初心者ながらも全国レベルの強豪から数本エースをとるといった活躍を見せる。ヤンキーマンガと敬遠しないで、ちょっと手にとって見てもいいかもしれない。ノリ的には『エリートヤンキー三郎』に近いか。
3巻までしか読んでいないが、おそらくこれからもユニークな敵キャラが現れ、茨城の自嘲ネタと恋愛ネタとがあいまって、優等生的な少年マンガストーリーを展開していくことだろう。少年マンガとしてはレベルが高い。
卓球のスコア風に評価すれば、4-1で勝利といったところである(私は4巻以降は読むつもりにはならないが)

8-11
11-9
11-7
11-8
11-7

卓球を題材にしたマンガは、なかなか描きにくいのか、私は傑作といえるような正統派の卓球マンガにはまだ出会えていない。正統派の卓球マンガというと、主人公が強烈なスピード・スピンの必殺技のようなものを編み出して、県大会、全国大会、世界大会とどんどん強い相手を倒していくというストーリー展開になりがちだが、卓球人としては、そういう強烈なスピードやスピンで相手を圧倒するのではなく、相手との心理戦、裏のかきあい、を軸にした対戦を期待したいところである。

今日の世界卓球2014予選、中国対ロシアの第二試合、樊振東選手 対 リヴェンツォフ選手の試合を興味深く観た。普通に考えれば、リヴェンツォフ選手は樊振東選手の前に手も足も出ず敗退だろう。結果は確かに0-3のストレート負けだった。しかしリヴェンツォフ選手は意外に善戦していたように見えた。

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リヴェンツォフ選手はボールの威力はあまりないのだが、コース取りがうまく、樊振東選手に思い切り攻撃させないような老獪さがあった。こういう地味な上手さをマンガにしてもらえたら――相当卓球に熟知していないと無理だが――味わい深い作品になるのではないだろうか。

なお、私は『P2!― let's Play Pingpong!―』というマンガも読んだことがあるが、ストーリーが行き詰まって?打ち切りになっていたし、『行け!稲中卓球部』はおもしろいらしいが、1巻を読んで、その表現のどぎつさに挫折してしまった。今、アニメ放映中の『ピンポン』は、マンガは読んだことがないが、ストーリーもおもしろく、演出もすばらしい。期待大である。


【付記】
卓球とは関係ないが、いっしょに買った『特殊清掃』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をおもしろく読んだ。

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筆者の内省的で抑制の効いた文章と、細かいところまで行き届いた配慮がここちよかった。
筆者は遺体にまつわるさまざまな「特殊」な清掃を生業とする方である。遺体の後片付け等、生々しく、衝撃的な内容を期待していたのだが、そういうグロテスクな描写は少なく、それよりも筆者の生死や人生についての思考が中心である。死を目の当たりにするという、通常ではありえない極限の状況で生まれる思考は、短文ながらも深く考えさせられるものばかりである。日常生活を題材とした文学作品では、さまざまな道具立てと多くの字数を費やさなければ表現できない主題が、毎回極限状況のこの作品ではわずか2~3ページで生き生きと表現されている。

人は死ねば腐っていく。しかし、生きながら腐っている人もいる。私などはそんな「生き腐れ」の一人に違いない。

死に向かって、確実に過ぎていくいまを、腐って生きるのか新鮮に生きるのか…。
普通に考えれば、腐って生きるなんて、そんなもったいないことはできるはずもない。
…しかし、実際は腐って生きてしまう。
腐りそうになったら、「今日一日で自分の人生は終わり」と仮定してみるといいかもしれない。
”今日一日”が短すぎるなら、一週間、一ヶ月、一年だっていい。


人生が今日で終わりと考えれば、今日一日を無駄にしたくないと、ポジティブに生きられるのではないだろうか。

黒沢0902-horz

4月最後の今日、みなさんは今日一日、あるいは今月一ヶ月を振り返って「生き生きと充実した時間を過ごした」と思えるだろうか。私は思えない…。