なんとなく、することもない日曜だったので、いろいろ卓球の動画を見ふけってしまった。

 
「関口宏の風に吹かれて」48・49
 「スポーツに吹く最新科学の風」(石川佳純選手)

kasming

番組の構成は以下のとおり
・卓球におけるサービスと石川選手の練習について
・卓球マシーン「チキータくん」の紹介と実演

シーンA
関口宏氏らを迎える石川選手。テレビ撮影向けに化粧をしているのか、ふだんよりも美人に見える。
はにかみながらの笑顔でサービスの説明をする石川選手、ときどき失敗なんかしててへぺろ。まったく偉そうなところがない。誰もが好感を持てるような応対だ。
得意の投げ上げフォアサービスを練習しているのだが、関口氏がサービスに興味を示し、「ちょっと打たせて」。
手元で急激に曲がり、コーナーの白線上にバウンドするロングサービス、おみごと!関口氏は案の定ラケットに触れることさえできなかった。タイミングを確認して再挑戦も、エース!もう一人のゲスト、水泳の田中雅美氏も挑戦したのだが同様の結果。すごいすごいとほめそやされても、寡黙に恐縮するだけの石川選手。

シーンB
関口氏:”最近、日本の卓球が少し強くなってきた要因は?”
石川選手:「そ~ですねぇ…やっぱりナショナルトレーニングセンターって、ここがすごくいい施設で…」

以下、NTCの紹介が始まる。

シーンC
ナレーション「メダル獲得に向け、最新技術を使った秘密兵器が…」
関口氏「バッティングマシーンがあるとか…」
石川選手「?…あ~!あるのはあるんです(笑)…」
田中氏「(向こうを指さして)あれ?」
石川選手「たぶん、チキータくんっていう名前で(背後でスタッフの笑い声)、なんかいろんな選手の回転が出せる、みたいな…」

シーンD
チキータの由来を簡単に説明する石川選手、一同、チキータくんの方へ向かう。
チキータくんを管理している担当者からのチキータくんのより詳しい説明に移る。
チキータくんは、世界トップ選手のボールのデータ分析から、それと同等のボールが出せるらしい。早速チキータくんがボールを出して、石川選手に打ってもらうことになった。まずはじめに「リー・シャオシャ」選手のボールを出すとの説明。石川選手はすぐに「シャオシャ」と小声でさりげなく訂正

第1球目。突然放たれたすごいスピードのボールに対して、実際に対戦したことがあるにもかかわらず石川選手は

石川選手「うわぉ(驚)!こんなボール来ないぃ(笑)!
周り「うそ(笑い)?」

とボールを見送る。それでも2球目からはきっちりブロックする石川選手。

関口氏「次は?」
担当者「次は男子のオリンピック・チャンピオンのチャン・ジケ選手。」
石川選手「受けたことないぃ~(笑)。」

ゼッタイ!ムリ~”みたいなことを言いながら自信なさげに後退りする石川選手。そしてボールが怖いから関口氏に代わってもらおうとすると、周囲に笑いの輪が起こる。

張継科相当のボール1球目。李暁霞相当のボールよりもさらにすごみのあるボールがへっぴり腰で怖がる石川選手の身体に直撃し、

痛!」「これ、ムリです(笑)

といいつつも、数球受けた後はしっかりブロックで返球する石川選手。次は「ジェン・ソンマン」の下回転。石川選手は「あれ?」「すっごいかかってる!」と言いつつ1球も返せない。カット打ちの難しさを説明し、最後にカットの回転が「全部違うので、それを判断して調整するのが難しいです。」

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石川選手のテレビ出演はまったく危なげない。万人に好かれるキャラで卓球に対するイメージの向上に大いに貢献していると思う。

シーンA
一般人にサービスを受けさせるシーンで石川選手は愚直に同じフォアサービスをクロスに出していたが、私が石川選手の立場なら、最後の1球は同じモーションでストレートに出して「こんなサービスが実戦では来るんですよ」などと得意気に語ってしまうかもしれない。「すごい!」などと褒められようものなら、「実は台上で2バウンドしないサービスというのはリスクを背負うことになるんです」などと聞かれてもいないのに講釈を始めてしまうかもしれない。こういう私のようなお調子者は絶対にテレビに出ない方がいいだろう(もちろんオファーもないが)。その点、石川選手の発言は抑制がきいている。相手が求めていないような説明は決して切り出さない。

シーンB
「日本が少し強くなってきた」という関口氏の言葉は厳密には間違いである。「少し」ではない。中国の強さは圧倒的だが、それを除外すれば今や総合力なら世界トップレベルの強さである。もちろん、男子も女子も個人なら日本人選手を超える選手がいるかもしれないが、チームとしての総合力なら韓国やドイツ、シンガポール、台湾等に勝るとも劣らない…などという卓球人らしい説明は一切省き、ナショナルトレーニングセンターへの讃辞と感謝のみを口にする石川選手。余計なことは言わない。おそらくこれは台本通りなのだろう。しかし、一般向けに無意味と思われることや、論点をずらすようなことは一切言わないのがすばらしい。

シーンC
関口氏の「バッティングマシーンがあるとか…」に対し、「それを言うならピッチングマシーンでしょ!」のようなツッコミも入れず、自信なさそうに「たぶん…」「なんか…みたいな…」のように訥々と説明し始めるのが、上手い!視聴者はおくゆかしく思い、石川選手のことをもっと知りたい、テレビに映るなら観てみたいという気分にさせられることだろう。

シーンD
担当者の記憶違い(リ・シャオシャオ)にいちいち反応せず、小声で最低限の訂正をするだけだなんて、心憎い!
さらに李暁霞・張継科相当のボールに対して戦意喪失。「なんて親しみやすい、かわいらしい女の子だろう!」そういうキャラ作りが完璧にできている。もちろん最後の回転についてのコメントも抑制がきいており、必要最低限のことだけだった。


石川選手は最後まで非の打ち所もなく、卓球の広告塔としての役割を演じきった。
これが本当に弱冠二十歳の女性の言動だろうか。私には信じられない。自分が二十歳の時のことを思い返してみると、石川選手に比べて自分がいかに精神的に未熟だったかを思い知らされる。わずか18歳で全日本を制し、ロンドンオリンピック4位という実績があるのだから、もう少し得意になって、ハメを外すようなこともありそうだが、石川選手にはそんなところが感じられない。気のおけない人たちの間では、また別の一面があるのかもしれない。いや、なければおかしいだろう、20歳の女の子なのだから。しかし、テレビ出演といった晴の場・公の場では、理想的なキャラを演じきっている。彼女のような人材が卓球界にいてくれれば、日本における卓球の普及、イメージ向上にも大いに貢献するはずだ(前記事「プロデューサーのお仕事」)。

石川選手は正にプロである。卓球の実力だけでなく、日本卓球の顔の一人にふさわしいキャラと頭の良さも兼ね備えた、得がたい逸材だと再確認させられた。彼女なら、芸能界や政界でもうまくやっていけるのではないだろうか。普通の人はこの中のどれか一つにでも恵まれればこの上ない幸せなのに、彼女ときたらいくつもの才能を兼ね備えているようだ。彼女の多彩な才能の一つだけでも欲しいものである。