『卓球王国』最新号(2月号)の「奇天烈 逆も~ション」98にこんな話が載っていた。

もうひとつ面白かったのが、石川佳純と対戦したチェコのシュトルビコバの話だ。仲村さんによると、女子であのボールタッチは天才的で、中国にもあんな逸材はいないという。いっしょに見ていた松下浩二さんも同じことを言っていたそうだ。しかし彼女は勝つことよりも楽しさを優先し、必ずプレーに遊びを入れるので、結局は勝てないのだという。

中国にもいないほどの才能!シュトルビコバ?聞いたことがない。シュトルビコバに対する評価は星野美香氏も同じだという。

「あんな天才みたことない」

星野氏にここまで言わせるなんて一体どんな選手なのだろうか。
調べてみたら、こんな選手だった。

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シュトルビコバSTRBIKOVA Renata

あぁ~そういえば、2013世界卓球パリ大会で石川佳純選手との対戦を見たことがある。石川選手がかなり追い詰められていてハラハラした試合だ。神経質そうな女性で、ミスをすると唸ったり叫んだりしてちょっと怖かった。そのときのテレビの解説によると、卓球だけでなく、何か別のスポーツにも取り組んでいるらしく、多彩な人という印象を受けた。

試合中に「遊びを入れる」というのはどういうことなのだろうか。
「遊び」と言えば、岸川選手を思い出す。


1:28ぐらいから始まる水谷選手との「オール」練習はすごい。岸川選手はフットワークをつかって必死で動くタイプではないので、こういう遊びっぽい、トリッキーなプレーが多い気がする。先日行われた世界卓球2014代表選考会、男子第8試合Aリーグでの松平賢二選手との試合も、遊びっぽいプレーが随所に現れていた。別に遊んでいるわけではないのだろうが、岸川選手があまり動きまわらないために、そして賢二選手が全力で向かってくるタイプなため、自ずと岸川選手が軽くあしらっているように見える。それにしても岸川選手、百花繚乱の男子選手の中で派手さはないが、底知れぬ実力の持ち主である。
話が逸れたが、早速シュトルビコバ選手のプレーを観てみた。



2:08 ミスをしてフロアにゴロン。
2:48 1.5Lのコカ・コーラをラッパ飲み。
3:36 「うぁぁぁぁぁぁ~」
3:50 ジャンプしながらカット打ち

かなり豪放磊落な性格と見た。



こちらのビデオでは中陣からのみごとなバックドライブが2本入っている(1:13、1:58)。

これが世界最高のボールタッチか…。残念ながら私にはどのへんが世界最高なのかよく分からない。
第一印象はどのプレーも力が抜けているということである。長い手足を活かし、力が抜けていても、男子選手のようなのびのびとした、威力のあるボールを打つ。そして前後のフットワークがすごい。ボールに応じてこんなに前後に動ける女子選手は珍しい。
打球時に力が抜けているということは、ボールに間に合っているということである。ボールをギリギリ打っている場合は打球点を落とさないように、ピッチを間に合わせようとして力が入ってしまうだろうからである。判断が早いのか、戻りが早いのか、とにかく余裕を持って打球に臨んでいけるというのはすばらしい。

「遊び」が入るというのは好奇心の裏返しなのかもしれない。あるボールに対していくつかの返球が考えられる場合、普通の選手は、決定率の高さを基準として返球の選択肢を選ぶが、シュトルビコバ選手の場合は、「こんな返球もできるかな?」という知的興味から返球を行う場合があるように見える。必死さがない。
新井卓将氏がyoutubeのビデオの中で“卓球はつまるところ、遊びである” “一つのボールに対して10通りの返球方法を考えてみるといい” と言っていたのを思い出す(前記事「一以貫之」)。彼女はあるボールに対して、そこで決めに行けば、ほぼ決まる場面であってもムリに一発で決めに行かず、いろいろな返球を試しつつ、ちょっとラリーを楽しんでしまう傾向があるのかもしれない。仲村氏や星野氏は、彼女のそういう得点よりもラリーの楽しさを優先してしまうところを指して「遊び」と言っているのかもしれない。

ボールタッチのほうはよく分からなかったが、こういう力の抜けたのびのびしたプレーが世界レベルの目から認められるプレーだということが分かっただけでもよしとしよう。

【追記】131227
力を抜くことと、体重移動には関係があるらしい。
強くなる卓球の練習方法
 体重移動が適切にできれば、「手元でグッと伸びるドライブ」が打てるようになるという。ボールタッチには関係ないが。

【追記】 140912
チェコオープン2014で彼女のボールタッチの才能が遺憾なく発揮されていたので挙げておく。