手打ちはいけない、腰を使って打て!と誰もが口をそろえて言うが、腰を使って打つというのが自分ではまだよく分からない。腰を使って打つということをめぐっていろいろ考えてきた(「腰の使い方をめぐって」「手打ちじゃダメ―腰而下の鍛錬」)が、いまさらながら、最近、また少し手打ちと腰打ちの違いが分かってきた。

「いいかげん、理解したら?」「どうして分からないの?」

という向きもあるだろうが、私は「分かっているつもり」というのが一番キライなのである。場合によっては「分からないことは分からない」という態度を貫きたいので、腰の使い方について納得するまでトコトン考えてみたい。

以下の動画で松下浩二氏が手打ちの例を実演している(0:25)が、たしかにこういう打ち方をする人がいる。



上の動画の1:07ぐらいから始まる模範プレーをみてみると、腰を使った模範的な打ち方というのは、思ったほど腰が回っているようには見えない。「腰の回転を利用する」というぐらいだから、腰がグルングルン回転するというのをイメージしていたのだが、そういうわけではないようだ。腕の動きの速さ(と戻りの早さ)が際立ち、腰の方はほとんど回っていないように見える。たしかにかすかに腰が動いているのは分かるのだが、スイングにおいて腰は大活躍しているというほどではない。いわば縁の下の力持ち的な位置づけなのかもしれない。むしろ腰はほとんど回さない方が正解なのかもしれない。

腰というのはいわば、空母のカタパルト、あるいは多段式のロケットの1段目のようなものなのだろう。
Apollo_11_first_stage_separation

腰はスイングのあるところまでは上半身に随行し、そこからは肩あるいは腕にスイングを託す。そうすることにより、スイングの失速を防げるのではないか。

野球のピッチングには「ロケット理論」というものがあるらしい。このサイトに「ロケット理論」について分かりやすく書いてある。ふんだんに画像やGIFアニメを利用しているだけでなく、物理学まで援用し、これでもかというぐらい丁寧に説明されており、その努力には頭がさがる。

軸足(右足)で強く体全体を前に急発進させ、次に左脚を伸ばして下半身に急ブレーキをかける。

なるほど、これは「まったく新しいボクシングの教科書を読んで」で考察したことに似ている。「ボクシング」のほうでは、上半身にブレーキをかけるのがよいとされていたが、ピッチングでは下半身にブレーキをかけるのがいいようだ。ピッチングでは1発の威力が重視されており、連続攻撃が必要な卓球とは重点が異なるので、卓球にそのまま応用できるかどうか分からないが、卓球で考えれば、打球時に左足でブレーキをかけるということだろうか。上半身にブレーキをかけるよりも下半身にブレーキをかけたほうが腰の回転をより利用できそうな気がする。

さらに腰を効率よく回転させるために振りかぶる(卓球でいえばバックスイング)時に内股になり、投球(卓球の打球)時にはガニ股にするのがいいとある。また振りかぶる際に背中を打者の方に向ける等、腰の回転を最大限に利用するためのあらゆる工夫が紹介されている。

「ロケット理論」については以下のように簡潔にまとめてある。

腕だけで投げないで、体全体で投げるのが投球の基本ですが、この際気をつけなくてはいけないのが、体の各部分(1)脚、(2)腰、(3)肩、(4)腕、(5)手、を同時に動かしてはいけないのです。5段ロケットのように(1)から(5)へと順に動かしていかないといけない(ロケット理論)
中略
 ロケットは効率的に推進力を得るために多段式になっており、下から順番に仕事をして行き、用が済んだら切り離されて行きますが、投球も効率よくするためには5段ロケットのように順番に仕事をしなければいけないのです。

つまり、下から上に順番に力が伝わらなければならず、順番を無視して手足と腰を同時に動かしたり、あまつさえ、手足のほうを先に動かし、腰がそれに引きずられていったりするのは厳禁だということである。そのためには腰の回転が肩や腕の回転よりも速くなければならない。腰の回転が遅かったら、肩や腕がなかなかスタートできず、ストレスがたまり、「交通渋滞」が発生することになるのだから。

 前足を地面に着く前に腕が振り出されたり、腰と肩を同時に回したりとかはよく見られます。腰の回転は前足が地面に着く直前にもう回転し始めますが、腕は振り出されてはいけません。

なるほど、卓球に置き換えてみれば、左足が踏ん張る前にスイングをスタートさせてはいけないということになる。左足のふんばりと腰のスタートは同時でもいいが、踏ん張る前に腕を振ってはいけないわけである。よく卓球で「もっと引きつけて打て」などと言われるのは、腰の回転を差し置いて、肩や腕が先にしゃしゃり出てくる下克上を戒めたものかと思われる。
逆に腰の回転がいつまでも続き、肩や腕にスイングをなかなか引き継がないとしたら、肩や腕の出番が遅れてしまう。したがって腰がグルングルン回転しすぎるのも効率的なスイングとはいえず、上の動画のように地味に少しだけ動かし、すばやく肩、腕にスイングを手渡すのが正解のようである。

【まとめ】
卓球と野球のピッチングは要求されるものがちがうので、野球の考え方をそのまま卓球に適用できるとは限らない。しかし、適用できることもあると思われる。下半身にブレーキを掛けて腰の回転を促すことや、腰の回転がまず先に始まり、肩、腕と順番通りに始動させる「ロケット理論」は、卓球の打法にも応用できそうな気がする。
手打ちとはつまり、下半身の始動をまたず、肩・腕が先走ってしまう状態のことを指すのではないだろうか。