タイトルは私が好きな言葉。訓読すれば、「これを毫釐(ごうり)に失すれば、差(たが)うに千里を以てす」となる。訓み習わしとはいえ、この訓読は分かりにくい。簡単に「毫釐を失すれば、千里を差う」と訓めば分かりやすいのにと思う。

中国古典名言.com というサイトによれば、

毫釐とは、ほんのわずかなこと。最初は小さな違いであっても、最後には大きな差になる。大きな誤りもわずかなことが原因で起きるという意味。

とある。

小さな間違いや癖が後に大きな欠陥につながるというのはあらゆる営みに通じる普遍性があるように思う。「帰宅したら、まず宿題を済ませる」という習慣を身につけなかったばっかりに大人になってから大いに苦労するというのはその典型だろう。

卓球でも同様である。「小さな違い」にはさしてプレーに影響しないものと、致命的なものの二つがあるように思う。以下に私が長い間、間違っていたことで、致命的だったと思われることを紹介したいと思う。

一つはフットワークである。フットワークが素早い人というのは、どうやら上半身の中心軸を使った回転運動と下半身のステップを連動させているらしいのだ。
私の以前のイメージは、まず足を素早く移動させてから、上半身をひねり打球し、素早く戻してから、また足を一歩踏み出すという動き方だったのだが、それだと、「足を踏み出す」と「スイングする」が別々の運動になってしまい、時間と力のロスが大きい。そうではなく、上半身をグルっと回したついでに―フォアハンドを振ったなら、右足を、バックハンドを振ったなら左足を踏み出して移動すると、素早く楽に移動できるのだ。

たとえば、
フォア→フォアへの移動:左足を軸にして、フォアを振り終わった時には、すでに右足を踏み出している
バック→バックへの移動:右足を軸にして、バックを振り終わった時には、すでに左足を踏み出している(回りこみに有効)

こういう身体の使い方が自然に身についている人はそれほど多くないと思う。きちんとした指導者に就いて矯正してもらわないと、なかなか身につかない。 卓球歴が数十年あってもこういう身体の使い方は独学ではいつまで経っても身につかないのではないだろうか。そしてこのような上半身と連動させた下半身の動きができていないと、フットワークが大きく遅れ、身体の軸がブレる。

もう一つは打球における、押さない打ち方である。表ソフトの場合は別だと思うが、裏ソフトの一般的な攻撃型プレーヤーの場合は、ボールをラケットに「当てないで」打ったほうが安定して鋭いボールが打てる。ラケットがボールに当たるとき、ブレードを伏せぎみにして、スイングの頂点付近でこするように打つとボールを押す力が抑えられ、摩擦でボールを飛ばすことができるのだという。

スイング時の身体の上下運動や中心軸の傾き、腰の使い方等、致命的な「小さな違い」は他にもいくつもあるが、とりあえず、最近気をつけて矯正しているのは上の2点である。このような基本が身につけば、速いボールを打つとか、回転のかかったボールを打つといったことは容易にできるようになるのではないだろうか。最も気づきにくく、修正しにくい欠陥というのを集中して改善するというのが、遠回りに見えて、一番効率よく上達する秘訣なのではあるまいか。

基本の大切さに小中学生のころに気づいていたら、おそらく上級者になれたのだろう。残念ながら私はこの年にしてようやくそれに気づいたが、それに気づかずに卓球人生を終えるのに比べれば、はるかにマシだったと思う。中学の部活のころのように好きなだけ思う存分練習できる環境にはないが、それでも今の私の卓球ライフは基本の習得というゴール(あるいはスタート)に向かって充実している。