以前、結構上手なグループの中で練習させてもらったことがあった。
その中に私と同じぐらい下手な人(Sさん)がいて、その人が安定度ゼロのイチかバチか卓球を大開催中だったときのことだ。まわりの上級者はちょっと一息入れているところで、呆れ顔にSさんのプレーをボーっと観ていた。 

「あの人、いつもあんな感じだよな。ミスばっかで、『あれ?おっかしーな』とかいつも言ってるけど、ぜんぜん『おっかし』くないよな。あんな打ち方したら、入らないに決まってるっつーの。相手させられてる人、かわいそう。」
「でもSさんって用具にだけは詳しいんだよな。」
「…」 


この「…」に解説が必要だが、 敷衍すれば次のようになる。

「実力の方はお粗末なのに、いろんな用具をとっかえひっかえ試してるなんてカッコワル。上手なら、いろいろな用具を試してこだわるのも納得できるが、あんなヘタクソが『用具マニア』とか噴飯物だ。というか、下手なヤツに限って『用具マニア』だったりするよな。あんたのような人間はジャピエルにマークVぐらいで十分過ぎるほどだよ。その組み合わせである程度までやってみな。用具の知識よりも、実力をつける方が先だろうが。環境保護のためにも、もうその用具とっかえひっかえはやめろ!」

のような意味の沈黙だった。私は傍で聞いていてちょっと身につまされる思いだった。私は「用具マニア」というほど知識が豊富なわけでも、用具をたくさん持っているわけでもないが、実力をつけるよりも、いろいろな用具を試してみたいという気持ちが強く、結果として安い用具をたくさん持っている。

しかし、最近ついに悟ったのだ。いろいろな用具を買っても、結局十分にそれらを試す機会は一生訪れないのだということを。
「TSPやコクタクの安いラケットの中にきっとバタフライやスティガの高級ラケット以上に私に合うラケットがあるに違いない。それを探し当てたい。」
という希望を持っていたのだが、もう自宅に置き場所もないし、定価1万円以上の高級ラケットというのを決定版としてこれから10年ぐらい使っていこうと決心した。

それに、最近知人からこんな話もきいた。
ラケットの値段は何によって決まるのか。あるラケットは定価5000円ぐらいなのに、あるラケットは定価がその数倍する。何が違うのだろうか。材質が違うのだろうか。研究開発費だろうか。そうではなくて品質だというのだ。
つまり、安ラケットは品質のチェックを十分行っていないため、アタリハズレがあって、ときどきとんでもないハズレをつかまされることもあるのだという。それにたいして高級ラケットは一定の品質が保証されており、ハズレがほとんどないのだという。卓球部などで同じラケットに同じラバーを貼っているのに、かなり打球感が違うということが安ラケットにはあるのだという。とすると、雑誌のレビューとか、一流選手の用具に対する感想などはあまり当てにならないかもしれない。なぜならそういう人に使ってもらう用具はメーカーが厳選した「アタリ」の用具しかないはずなのだから。雑誌で「この値段でこんなすばらしい性能なら絶対買いだ!」などと褒めちぎってあるからといって、私たち一般人が購入するラケットが同じ品質である保証はないということになる。

もちろんこの話の信憑性は必ずしも高くはない。その知人が各社のラケット工場を見学したという話も聞いたことはないし、多分に憶測が含まれていると思う。それに私はこれまでその知人以外からこの手の話を聞いたこともない。だが、まったくのデタラメだとも思えない。安ラケットには人件費がそれほどかけられないのだから、ある程度、そういうハズレの可能性というのはついてまわるのだろう。ハズレをつかまされたらどうするだろうか。オークションなどで売っぱらう人が多いのではないか。とすると、中古でラケットをしょっちゅう購入している私の用具の多くはハズレの可能性が高いということになる。
以前、「上級者向けラケットと中級者向けラケットの違い」で安定性や中後陣からのボールの威力などが違うのではないかと書いたが、もちろん高級ラケットと安ラケットにはそういう性能的な違いもあると思う。が、それとともに、この品質の違いというのも十分考えられる。

われわれ消費者が用具の経済性ばかりを追求するなら、メーカーも慈善事業でない以上、経費削減を余儀なくされ、品質の低い製品を世に出すことになるのは必然である(「鯵のゼイゴ」)。初心者ならともかく、生涯の趣味として卓球を選んだ私はもうこれ以上用具に安さを求めるのはやめて、品質の良い、高級な製品を長く愛用するというのが正しい態度なのだということに改めて気づかされた。もちろん安くて自分にピッタリ合う、アタリのラケットに出会えた人は、わざわざ高級ラケットを買う必要はなく、それを使い続ければいいのだ。

【追記】140107
バタフライのラケット製造工程を紹介したビデオがあった。初心者用ラケットexstarの製造工程が紹介されている。



これを観ると、卓球ラケットの値段は木の材質と選別が大きく影響するような気がする。高級ラケットはさらに多くの工程を経ていることが予想されるので、他の要因(例えば実際に1本ずつ球撞きをしてみるとか)も値段に影響するのかもしれない。