中国人選手と台湾人選手の違いは表情やしぐさで分かる。

台湾人選手は日本人とメンタリティーが近いので、それが表情に出る。ミスしたら「テヘヘ」と微笑むし、女子選手なら、もじもじした 恥ずかしそうなしぐさをしたりする。全体的にうっすらと微笑みを浮かべていることもある。
一方中国人選手はというと、ミスしたら憮然とした表情になるし、全体的に無表情で、時には眉間にシワを寄せていたりする。喜びを素直に表現することが少ない。口から出る言葉は「親孝行」とか「恩返し」「愛国心」「国の代表としての責任」「両国の友好のため」といったよそ行きの言葉が多い。
自然体の台湾人と深刻な中国人というのが従来のイメージだった。しかしここ数年で中国人の意識に大きな変化がうかがえる。

「八零后」という言葉がある。1980年代生まれという意味だ(「后」は「後」という意味)。従来の伝統的な中国人の価値観にとらわれない若者を指す言葉で、日本で言う「新人類」(ずいぶん例が古くて恐縮だが)という語感に近いのかもしれない。「九零后」は「八零后」がさらに「ひどく」なった90年代生まれの若者世代という意味だろう。

ジャパン・オープン2013の顧玉婷GU YuTing 選手と周昕彤 Zhou XinTong 選手を見て、その中国人らしくなさに驚いた。まるで日本人選手と変わらない感じなのだ。ミスをすれば、「うぅん!もう!」とばかりに顔をしかめ、はにかむし、うっすらと笑みを浮べていることが多い。特に周選手はなんというか「かわいい」。ペン粒の凄みのあるブロックで日本期待の若手選手を次々と恐怖のどん底に突き落とした(ちょっと大げさか)プレースタイルとは裏腹に、もじもじしたおとなしい女の子といった風情なのだ。

ぐっちぃ氏のブログでも周選手の独特の用具(F面粒、B面表)と「らしくなさ」についての言及があった(「女子で気になる選手がいました」)。

これからの若い中国選手(特に女子選手)は、日本人の共感を得やすい選手が増えていくだろう。強さではなく、キャラクターで日本人の卓球愛好者の心をつかむことになるかもしれない。

【追記】2013/06/23
塩野真人選手と福原愛選手が決勝進出!おめでとう!特に塩野選手はこれまであまり注目を集めてこなかっただけに嬉しいニュースだ。ただ、今日の観客のマナーはひどい。ITTVで観ていても、日本人選手以外にはほとんど拍手を送らない。おそらく実際の会場ではさらに寒々しい雰囲気の中でのプレーだろう。キム・ミンソク選手と徐晨皓選手の準決勝での選手紹介のときの拍手の少なさは異常だった。わざわざ日本に来てくれたお客様に対してこの扱いはひどすぎるだろう。去年の神戸でのジャパン・オープンのほうがまだマシだった。私は個人的にキム・ミンソク選手が好きなので、この試合では特にそう感じた。同じ日本人として申し訳ない。

【追記】2013/06/25
中国の方に 「九零后」について聞いてみたのだが、「どんどんひどくなっていますね」「八零后から見ても九零后はひどいです」ということだった。何が「ひどい」のかというと、「昔は苦労を積み重ねて成功するものだった。全く見通しの立たない苦しみを長期間経験した末にやっと光明が見えてくるというのが普通だった。しかし今の若い人たちは苦労しないで成功しようとしている」らしい。身につまされて反省させられた。