いくら好きなことでも、朝から晩まで毎日やっていたら飽きてしまうだろう(前記事「もしかして卓球に飽きちゃった?」)。

かえって本業の合間に「趣味」として取り組んだもののほうが純粋に楽しめ、成果が上がったりするものだ。

森鴎外は作家として活躍する一方で軍医という「仕事」があった。本業は軍医のほうかと思われるが、むしろ作家という「趣味」のほうで大きな功績を残している。
医者にはこういう人が多い。
本居宣長も医者という「仕事」のかたわら、国学研究をして歴史に名をとどめているし、斎藤茂吉もそうだ(手塚治虫のように反対の例も確かにあるが)。

いくら好きなこととはいえ、「仕事」として卓球をするのは非常に大変だろう。「仕事」は別に持っており、卓球は「趣味」として取り組んだほうが楽しめるのではないだろうか。

先日、ぐっちぃ氏のブログで卓球関係の仕事に就きたい人へのアドバイスというのが紹介されていた。
しかし、卓球を「仕事」にしてしまったら、茨の道を歩むことになるかもしれない。

ぐっちぃ氏に対してはいろいろなオファーがあると思う。コーチとして、メーカーの社員として、もしかしたら、松下浩二氏のようにメーカーの社長というオファーもあるかもしれない。たとえば、ぐっちぃ氏をコクタクやアームストロングの社長にいただけば、会社の業績が劇的に向上するかもしれない。あるいは卓球関係の新会社(卓球場の全国チェーン店とか)を設立し、ぐっちぃ氏を社長に迎えたいというオファーもあるかもしれない。ぐっちぃ氏の仕事に対する真摯さから考えれば、ぐっちぃ氏に任せたビジネスが失敗する可能性は極めて低い。ぐっちぃ氏に投資しようという人はいくらでもいるだろう。
そのようなオファーが来るのはぐっちぃ氏がそれなりのことをしているからだ。自分よりも人を優先し、ゲスな人間にも笑顔で接し、毎日卓球のために滅私奉公しているからこそオファーがくるのであって、そのストレスは相当なものだと想像される。WRMで次々とスタッフが辞めていくのは、卓球関係の仕事が精神的にかなりつらい仕事だということを物語っている。
自分が得られるものは少なく、与えるばかりの毎日。もし卓球関係の仕事に就きたいなら、実力があるのはもちろん、それを朝から晩まで人のためにつかって倦まないような忍耐力のある人でなければ務まらないだろう。

スイカやスイーツに塩をかけると、甘みが引き立つように、好きだから卓球ばかりするのではなく、卓球をより楽しむためにはあまり楽しくない「仕事」を持っていたほうが卓球の楽しさが倍増するのかな…などとつらつらと考えてみた。


【追記】2013/6/16

なんだか卓球関係の仕事に就きたいという夢を持っている若い人たちに冷水を浴びせるような嫌味なことを書いてしまったと反省している。そういう夢に向かって邁進することはとてもいいことだと思う。ただ、こういう仕事は楽で楽しそうに見えるけれど、たぶん現実は非常に苦労が多いんじゃないかなと言いたかっただけなのだ。夢をあきらめずに真奥貞夫ぐらいガムシャラにお客様のことだけを考え、誠意を持って働く覚悟があれば、きっと夢は叶うはずだ。