私は腰の使い方というのがよく分からない。
腰を使って打つのはいいことだとされており、指導者はよく「腰を使って打て」と指導する。この「腰を使う」というのは卓球だけでなくあらゆる球技に普通の技術だと思われる。にもかかわらず、それほど大切な技術に対する解説があまりにも少なすぎると感じる。

腰を使うとはどういうことなのだろうか?その動きがイメージできない。背筋をまっすぐ上にしてヘリコプターのように回転させる―上半身を水平にくるりと回すのか、あるいは斜め前方向への移動―鼠径部を折り目にして体を傾けてから、それをバネにして戻す力を利用するのか。おそらく後者だと思うが、前者と後者は連続している。つまり水平からどのぐらいの角度で傾けるのかがはっきりわからない。かなり水平寄りでも間違いとはいえないのではないか。
腰を動かす範囲も分からない。5センチほどでいいのか、20センチぐらい回すのか。どこに力を入れて腰を使ったらいいのか、腰と腕は同時に動かすのか、あるいは時間差をつけて、まず腰を先に動かしてから、それに連動するように腕を振るのか(前記事「手打じゃダメ」)。

そのようなことを上級者に聞いても「ボールによって角度や可動範囲は違うので、答えられない」という答えが返ってくるだろう。しかし、おおよその目安のようなものを知りたい。正解はただ一つではないだろう。その上、人によって「正しい」角度や範囲が異なるということも考えられる。そうだとすると、正解というのは示しにくいが、間違いというのは、上級者の共通認識としてあるのだろう。

以前、『卓球レポート』の岩崎清信氏が腰の回転について「でんでんだいこのイメージだ」と説明していた。そう考えると、腰をまず回して、それについていくように上半身が回る―タイムラグがあるということなのかもしれない。

私が以前通っていた教室の先生は、私の全力のドライブを見て、「腰が初めに回り、上半身が後からついていくが、腕のスイングが上半身の回転を追い抜いていくのがいい」といったコメントをしてくれた。しかしそういう、腕を伸ばしきった豪快なドライブは安定性が低いので、小さな安定したドライブを正しく打ちたい。プロの選手の動画を見ても、私には一流の指導者のように「透視の利く目」(前記事「眼光紙背に徹する」)がないので、腰が回っているかどうかよく分からない。

指導者が分かりやすく腰の回転に言及している動画はないだろうか。
下のWRMのやっすん氏のビデオで具体的な映像が紹介されていた。1:45あたりでやっすん氏が腰の回転を実演している。グイグイ回っている。これは威力が出そうだ。そして注目すべき発言があった。腰を回すのと上半身をねじるのは違うのだという。なるほど、グルグル派手に回っているように見えても、腰は回っておらず、上半身だけがねじれていることもあるのか。しかし、5:00ぐらいからの腰を使ったドライブの実演をみると、1:45あたりの回し方とは違い、腰の回転がほとんど見えない。グイグイ回っていない。黒い服を着ているからだろうか、あまり腰が回っているようには見えない。1:45の腰の回転はとても分かりやすく、説得力がある。しかし5:00の腰の回転は、はっきりと確認できない。上半身が回るのは傍目にもはっきり分かるが、腰の回転はそれほどわかりやすいものではないのかもしれない。




また、やっすん氏は重心について、フォアハンドでは右から左に移動させると説明されているが、私が習ったのはむしろフォアハンドでは左から右に重心移動するのがいいという。

フォアハンド(重心:右→左)

だと、勢いがつきすぎて上半身がすっとんでいってしまい、体がブレる。その結果、戻りが遅くなる。例の「ブレーキ」の原理(「『まったく新しいボクシングの教科書』を読んで」)と同じである。またボールを前に押してしまうので不安定になりやすいのだという。そこで常識とは逆の

フォアハンド(重心:左→右)

がいいのだという。
う~ん、どちらが正しいのか悩ましい。

同じくWRMのxia氏の以下の動画でも腰の使い方についての言及がある。



xia氏は上半身の使い方と腰の回し方の二つについて言及している。
上半身については、胸の筋肉(というか裏側の肩甲骨?)を使って、上半身を開き、上半身を閉じる力を利用してドライブをかけるといいとある。xia氏の説明によると、右から左に上半身が流れてしまうと、威力のでないので、

フォアハンド(上半身:右→左)

ではなくて、胸(裏返せば肩甲骨)の開閉運動を利用して

フォアハンド(上半身:開→閉)

がいいのだという。
そして腰の回し方については、後ろから前に「右腰を押し出す」ように回すのがいいのだという。
なるほど、この運動なら、重心も流れず、力もよく伝わりそうだ。
ただ、後ろから前に「押し出す」ように打つと、ボールを前に押してしまうので不安定にならないだろうか。
後半で実演されている間違った打ち方と正しい打ち方の比較動画は、同じ条件(同じ力加減)で打っているようには見えないので、あまり参考にならない。正しい打ち方のほうはすごいスピードのボールだが、かなり力を入れて打っている。一方間違った打ち方の場合はちょっと力を抜いて打っているように見える。また、腰を後ろから前に押し出すように打つというのも、素人目にはあまりよく分からない。

【まとめ】
腰の使い方についていくつかのケースを材料に考えてみた。
腰を回すことの重要性は誰もが口をそろえて言っているので、大切なことなのだろう。しかし、具体的な回し方は正解がいくつもあるようだ。しかも、素人目には分からないほど微妙な動きらしいので、動画を見ても、みるからに回っているという感じではない。
いろいろ考えてみたが、結局、腑に落ちなかった。
特に以下の点がはっきり分からない。

・腰の回転は普通の回転でいいのか、もっとZ軸を意識して後ろから前なのか。
・腰と上半身は常に連動していなければならないのか、腰が先行してもいいのか。
・フォアの重心移動は右から左なのか、左から右なのか。
・腰の可動範囲は傍目にははっきり意識できないが、一体何センチぐらいなのか。

また、腰を使うことによるデメリットはないのだろうか。特にバックハンドでは腰を使わないほうが速くて効率的なスイングができるような気がするのだが、「バックハンドでは腰を使ってはダメ」といった意見も聞いたことはない。どんな場合でも腰を使わなければならないのだろうか。その点も気になる。

【追記】2013/7/22
「腰を回して打つ」と「手打ち」というのを全くの別物だと考えていたが、そうではなく、連続したものだと考えたほうが合理的かもしれない。つまり「腰の回転ゼロ」が手打ちのプロトタイプで、「腰の回転1~10」ぐらいの打ち方はほとんどの人に「手打ち」と判断される。一方、「腰の回転80~90」ぐらいなら誰もが「腰が回っている」と認めてくれる。「腰の回転70」ぐらいでも大丈夫だ。しかし「腰の回転40~50」は微妙で、人によっては「腰が回っていない」と判断するのではないだろうか。
「私は手打ちだ、どうしよう」「私の打ち方は根本的に間違っている」と考えると、伸び伸びと卓球ができなくなる。そうではなくて、「腰が回っていない」と言われたら「ちょっと足りないか。もう少し回さなきゃ」と自分のスイングを否定するのではなく、相対的に考えたほうがいいのかもしれない。

【追記】2013/8/31
 WRMの過去の動画により詳しく腰を使って打つ動画があったので、記しておく。

 
【卓球知恵袋】全身でドライブを打つための2つのポイント