前回のおはなし
---------------------------
先日、筆者が上手な人と打ったとき、相手が「沈むドライブ」を打った。
「沈むドライブ」というのは バウンド後、通常の弾道よりも低い軌道を描く、とりにくいドライブのことである。
そのドライブについては諸説があり、ある人(A)は弾道が低く、回転量の多いループドライブだという。またある人(B)はボールの上部を薄くこすったスピードドライブだという。また
ある人(C)は錯覚にすぎないという。
しかしそのドライブを打った当人は「力を抜いて打つと沈むドライブが打てる」と言う。果たして沈むドライブというのはどうすれば打てるのか。以下、筆者の考察にうつる。
--------------------------

ドライブには厚く当てる打ち方と、薄く当てる打ち方がある。
この使い分けはとても重要だと思う。
たとえばフリックの打ち方を説明した以下の動画を見てほしい。


【卓球知恵袋】超簡単!安定感のあるバックフリック


やっすん氏は「8時から11時にラケットを振る」という点をポイントとして強調しているが、大切なのはむしろ厚く当てないようにする(押さないようにする)点のほうではないだろうか。たとえ9時から12時にラケットを振っても、この薄い当て方なら安定して入るような気がする。5:10あたりからのやっすん氏の実演をみると、ラケットはほとんど前方には行かない。打球時に「パコン」という音がしているので、完全にラバーとの摩擦だけで打っているわけではないが、自分から押していかないようにすればいいようだ。
当てにいかないで打つことが安定につながることがよくわかる。私たちがフリックをすぐにネットにかけてしまうのは、上にこすると同時にZ軸にもラケットを振ってしまうからなのだ。

打った当人が言っていたコツ「力を抜いて打つ」は、あいまいな表現ではっきりは分からないが、ラバーのスポンジに深くめり込ませないで打つ(ボールの威力が木まで到達しないようにする)ということかもしれない。仮にそうだとすると、どうなるか。回転量が多く、それほどスピードが出ない。
先の記事のヤフー知恵袋の意見のAで、回転量が多く、低い弾道のループドライブを打つと、沈むという意見があった。ループドライブというのは弧線が高いドライブのことである。弧線が高いと、落差が大きいため、バウンドも大きくなる。したがって沈むドライブにはなりにくい。しかしループドライブとはいえ、弧線を高く描かず、なだらかで回転量の多いドライブなら、沈むということだろうか。その際、中陣という位置も重要だったのではないかという気がする。前陣でそんな強烈な回転の弧線の低いドライブを打ったら、台から出てしまうからだ。

私が先日受けた沈むドライブは、このようなメカニズムだったと思われる。しかし私は他の人の沈むドライブを受けたことがある。これは前陣からの、とんでもなくスピードのあるドライブだった。先の記事のBのボールの上部を捉えるスピードドライブというのがこれだったかと思う。おそらく相当回転もかかっていたのだろう。AとBが矛盾するような説明になっていたことも、沈むドライブの打ち方には少なくとも2種類はあると考えると説明がつく。やや弧線を描く沈むドライブは中陣から放たれ、直線的な沈むドライブは前陣から放たれた。

とにかく、沈むドライブを打つ原理は

・弾道の高低差が小さい(直線的)
・薄く当てる
・回転量が多い
・浅く入る

というものだと思われる。

以上、いろいろ沈むドライブについて考察してみたが、あくまでも仮説の域を出ない。これから機会があれば検証していきたい。

しかし、私は沈むドライブが打てるようになりたいとは特に思わない。そのような高度な技術は身分不相応だからだ。それよりもむしろ、私はこの考察を通じて大きな収穫があった。それは薄く当てることが安定性につながるという発見である。特に、当てにいく力をほぼゼロにして、上方に擦り上げるとミスが減るということである。今までは相手のツッツキが切れている場合は、とにかく回転に負けないようにラバーにボールを食い込ませながら、全力でドライブしていたのだが、そうすると、安定性が下がってしまう。こすると同時にかなり厚く前方へ押していたからだ。いいタイミングで打てれば、相手の回転を利用して非常に速くて威力のあるドライブが打てるのだが、ミスも多い。戻りも遅い。
しかし、どうやらそんなに力まなくても、返すだけなら安定して返せることが分かってきた。つまり、切れたツッツキを返すにはラケットを当てにいかないようにして(上方にラケットを振り)、回転の軸を外して、薄くこすれば、スピードは出ないものの、わりと楽に返球できるのだ。そして「力を抜く」というのも当てすぎないようにするために必要なことかもしれない。

「確実に入れるには面を当てにいかないようにする」

これが安定性に課題のある中級者にとって大切な知恵だ。中級者は決まったコースで打つ分には、かなりいいボールが打てるが、ちょっと想定外のボールが来ると、すぐに詰まってしまい、ラリーに持ち込めないことが多い。結果、相手によっては自分の能力の半分も出しきれず、調子の波が大きい。厳しいコースやキツイボールをとりあえず確実に入れて、安定してラリーに持ち込むことが上級者への第一歩だと信じる。

一応、このようにまとめてみたが、Cの原田氏が沈むドライブについてあまり意義を認めていなかったのが気になる。あれはどういうことだったのだろう。もしかすると、原田氏のレベルだと、沈むドライブは特別な技術ではなく、デフォルトなのかもしれない。

【謝辞】
やっすん、いつもためになる動画をありがとうございます。上の動画は最近観た中で出色の出来でした。