「沈むドライブ」というのは、ドライブを打って、バウンドしたときに通常よりも低くバウンドするドライブのことである。
こういうドライブは意識的に打てるのだろうか?
できるとしたら、どんなコツがあるのだろうか。

この間、上手な人の相手をさせてもらったとき、相手が打ったドライブが沈んだ。
びっくりして

「さっきのドライブ沈みましたよ!」

と報告したところ、

「あぁ、ドライブを打つときに力を抜いて打ったから沈んだんでしょう」

とサラリ。え~!沈むドライブって意識的に打てるものなの!?

気になってネットで調べてみた。ヤフー知恵袋には次のように書いてあった。

A
・低い弾道のループドライブ
・回転量が多い

他の人の意見では
B
・ボールの上部を薄くこする

ということだった。
原田隆雅氏の「WRM卓球塾」でも沈むドライブについての質問に答えている。

原田氏によると、
C
・台の性質(表面が引っかかる)
・台の浅い位置でバウンドするから、沈んでいるように見える
・回転量が多い

ということだった。しかし、原田氏は実際にはそんなボールがあるわけではなく、沈むドライブというのは目の錯覚だと言いたげな口ぶりだった。つまり台のかなり浅い位置に入るので、普通のドライブよりもバウンドが低いように見えるということなのである。

AとBは矛盾する。もしAだとしたら、ボールの上部をこすった場合(B)、ループドライブにはならないのだから。

Aの説は理にかなっている気がする。しかし、弧線を低く描くループドライブというだけでは何かが足りない気がする。そのようなドライブは誰でもよく打っているからだ。しかし沈むドライブというのはめったにお目にかからない。

Bだとすると、そうとう直線的でスピードのあるドライブということになる。これも可能性がある。私が以前、他の上手な人と試合をした時にそんなタイプのドライブを受けたことがある。前陣から放たれ、スピードがあり、低く走るようなドライブだった。しかし私がこの間受けたドライブは中陣から放たれ、それほど直線的ではなかった気がする。ある程度弧線を描いてきて、それを受けようと出したラケットの下をすり抜けていったのだ。

原田氏の錯覚説(C)についてだが、私にはあれが錯覚だとは思えない。ボールのバウンド後、私がびっくりしたのだから。ドライブの軌道が私の意識の中にある通常の弧線とは違っていたのだ。ただ、確かに深いボールではなかった。
それにしても原田氏ほどの上級者が沈むドライブについてあまり積極的に発言しないのが気になる。それはつまり上級者で沈むドライブを意図的に打って得点源にしている人がいないということではないだろうか。

これは何を意味するのか。

X 沈むドライブはいろいろな条件が重なって偶然打てるものなので、この「技術」を磨こうという人はいない
Y 沈むドライブはあまりメリットがない

Xをさらに敷衍すると、

X 沈むドライブは実際は単なる低いドライブであって、打者が通常のドライブと沈むドライブを打ち分けられるわけではない。つまり打者の個性にすぎない。あるいは単なる目の錯覚である。

Yを同じように敷衍すると、
Y 決まれば効果を発揮するが、打つのに何らかのネックがある(たとえば、安定性が下がるとか、当てさえすれば、簡単に返されるとか)

う~ん、謎は深まるばかりである。

しかし、当の本人の一言「力を抜いて打ったから」をどう考えればいいのか。これはつまり打者が意識的に打てるということではないか。そうだとすると熟練すれば通常のドライブと沈むドライブを打ち分けられるということではないか。「沈むドライブ」というのは…そうか!

…つづく