天才と呼ばれる若い選手はたくさんいる。
そういう選手は若いうちから脚光を浴びる。しかしその影に隠れて、実力はありながら、なかなか脚光を浴びない選手もいる。森薗選手はそんな選手ではないだろうか。
一つ上の学年に丹羽孝希選手、町飛鳥選手、吉田雅己選手という天才たちがひしめいていて、一つ下の学年には村松雄斗選手がいて、その間に挟まれて、森薗選手はあまり注目を集めてこなかった。

しかし、今年に入ってようやく森薗選手に対する注目が集まりつつある。
(参照「卓球の見せ方」)


クウェートオープン 森薗政崇 VS 黄鎮廷

なんといっても森薗選手には強烈な個性がある。シェーク裏裏の攻撃型選手というのは世界中どこにでもいるが、森薗選手は遠目に見てもすぐ分かる。初めから終わりまで、常に全力で、前のめりである。1球1球動き回り、全身で打球している。声がでかい。熱い。こういうキャラクターは80年代に絶滅してしまったのではなかったか。80年代半ばからは日本も豊かになり、熱血漢はかっこ悪いという風潮が広まり、無気力でやる気のなさそうなほうがかっこいいという時代になった。そしてスポ根と言われるスタイルは下火になっていった。

しかしそれは大きな勘違いなのではないだろうか。涼しい顔をして勝ったり負けたりするのは、本当にかっこいいのだろうか。涼しい顔をして勝つのなら、まだ見られるが、涼しい顔をして負けるのはかっこ悪すぎる。勝つときも負けるときも全力で、泥臭く、無我夢中の人のほうがかっこいいじゃないか。応援したくなるじゃないか。そういうことを森薗選手を見て考えさせられる。



上のワルドナーの動画を見ると、ワルドナーのドヤ顔が鼻につく。なんでこうも自信満々余裕綽々でプレーできるのだろう。いくらかつて世界最高のプレイヤーと讃えられた選手であっても、この態度はひどい。「お前のごときザコ、眼中にないわ」と言わんばかりだ。相手の選手はおそらく相当嫌な気分だっただろう。そしてワルドナーは最後まで大物気取りでプレーして負けている。カッコ悪い。

…この記事では森薗選手のスタイルがいかにかっこいいかを述べるつもりだったが、突然、主題を変えたくなった。上のワルドナーの省エネぶりがすばらしかったからだ。なお、私は「省エネ」とか「エコ」とか「半額」とか「お得」といった言葉に非常に弱い。

体力が下り坂のわれわれ中高年にとって上のワルドナーのプレースタイルはちょっと憧れる。森薗選手的な猪突猛進スタイルは、最高にかっこいいと思うが、われわれがマネをするのは難しい。そこで次善のスタイルとしてワルドナースタイルをマネしたいと思うのだ。

・体を入れつつも、前腕で軽くフォアフリック
・ブロックに下回転や横回転をまぜて意表をつく
・バッククロスの厳しいコースへ返球し、相手にフォアドライブを打たせてから、ストレートにブロックおよびカウンター
・サイドを切るカウンタードライブ

これらがワルドナーの見せたテクニックだが、コントロールとブロックの巧みさが際立っている。
こんなプレーができるようになるにはどうすればいいのだろうか。まずブロックを磨かなければならない。相手に攻めさせて、それを受ける練習を繰り返さなければならないだろう。そしてそれが板について、ある程度ブロックで返せるようになったら、今度は際どいコースを狙うようにしたり、変化を交えたりしたらいいのではないだろうか。そうすると、B面にゴクウスを貼ったほうがいいかもしれない。

自分から攻めにいくのはしんどいものだ。相手のレシーブをドライブしようとすると、「次はどこに来るのか」と、いろいろ神経を使わなければならないし、ドライブミスなんかしてしまったら、ショック倍増である。気が滅入る。
しかし相手に攻めさせようと思ったら、気が楽である。ツッツキでコースを攻めることから始めるので、心穏やかな気分で待てるし、うまくブロックできなかったとしても「あんな速いドライブだったし、まぁしょうがないか」で済む。

このスタイルはいろいろ神経を使うのに飽いた中高年に合っているのではないだろうか。