カタールオープン2013の 森園政崇選手 対 李虎選手 の試合をITTVで見た。
森園選手は絵に描いたような熱血漢の高校生で、世界ランキング248位。日本国内では有名だが、世界では無名の選手だ。一方李虎選手は中国から帰化した経験豊富なシンガポールの選手で48位。世界ジュニアでも優勝経験がある。格的には李選手のほうがはるかに上だ。

試合は前半、森園くんの素晴らしい連続ドライブがいいコースに決まるも、李選手のほうが一枚上手で、ことごとく返されてしまう。攻めあぐねて甘い球を打つと、すさまじい速さのドライブが返ってくる。どうにも勝ち目がない。3ゲーム目、森園選手のプレーが冴えており、あと一歩のところまで李選手を追い詰めた。「せめて1ゲームだけでも」という祈りも虚しく、3ゲーム目もギリギリで落としてしまう。「次こそは一矢報いてほしい」と思って4ゲーム目を見ていたが、森園選手はあきらめずに果敢に攻め、なんとかこのゲームをとった!そこからがすごい。森園選手は小さな体にあふれる闘志で、あれよあれよという間になんと7ゲーム目までもつれ込む。 5・6ゲーム目は森園選手のほうが押していた。熱い!熱すぎる!もしかしたら、もしかするかもしれない。1ポイント1ポイント、手に汗を握るポイントの連続だ。これは期待してしまう。が、最終ゲームは惜しくも及ばず、敗れてしまった。

この試合を見て、卓球の見せ方というものを考えさせられた。
私たちはレベルの高い選手同士の試合を見すぎて、感覚が麻痺してしまっている。どういうことかというと、世界ランキング一桁の選手同士の試合をみても、大して興奮しなくなっている。中国選手同士のハイレベルなラリーを見ても、「ふ~ん。うまいね。」ってなもんだ。
それと比べて、森園選手と李虎選手の戦いはどうだ?久しぶりにドキドキワクワクさせられた。世界ランキング1位と2位の試合を見ても、無感動なのに、世界ランキング2桁と3桁の試合にどうしてこれほど感動できるのか。

そこにはチャレンジがあるからだと思う。誰が勝ってもおかしくないような実力の伯仲した選手同士の試合というのもいいが、それだけではおもしろくない。若くて勢いに乗っている無名の選手がある程度の実績のある選手を倒すというのは、見ていておもしろい。

また、卓球の試合のおもしろさというのは、幸せの感じ方と同じようなもので相対的なものだと思う。私たちはどんな些細なことにも幸せを見出すことができる。雑誌で喉頭がんの患者の記録を読んだことがある。詳しいことは忘れたが、喉の手術をした結果、自分で食べ物が飲み込めなくなってしまい、喉にチューブをさして、流動食で栄養をとっているという。それどころか唾液も飲み込めないから、口から垂れてくる。それを想像すると、本当に気の毒だ。食べ物が飲み込める、息ができる、三食たべられて、寒い季節でも温かい布団で寝られる。こんなすばらしい幸せに私は感謝しなければならない。
卓球の試合は国際大会のレベルでなければ楽しめない、などということはない。市民大会のレベルでも、十分楽しめる。そこに全国大会に出場した経験のある選手などが登場すれば、会場はいやがおうにも盛り上がる。逆にジャパン・オープンのような国際大会に世界ランキング100位ぐらいの選手が登場しても、たいして注目を集めないだろう。今なら、吉村真晴選手が99位、町飛鳥選手が110位だ。こんな選手が市民大会に出場したら、それこそ会場は大騒ぎだ。
問題はコントラストなのだ。県大会レベルの選手がしのぎを削っている中に、日本ランキングに入るような選手が数名いれば、それで大いに楽しめるのだ。

『卓球王国』によると、松下浩二氏が日本で卓球のプロリーグを準備しているという。私はそれを非常に楽しみにしているのだが、一方で日本のトップ選手を勢揃いさせるだけでは、飽きられてしまうのではないかと懸念している。上にあげたようなチャレンジとコントラストをうまく取り入れることはできないだろうか。エキシビジョンのような試合を設け、地元の中高生の生きのいい選手と交流試合のようなことをするとか、女子選手と男子選手の試合をするとか。女子のトップ選手と、男子高校生の試合というのも観てみたい。また、トップ選手が普段どういう練習をしているかというのも見てみたい。

トップ選手同士が試合をすると、選手の技術の高さがわかりにくい。トップ選手同士が何気なく返しているサービスやドライブは、高校生レベルからすると、とんでもなくレベルの高いボールのはずである。しかし、われわれはレベルの高い試合を見すぎているため、当たり前のことが当たり前でないと気づかない。初級者・中級者にとっては、高校生の全国大会も、実業団の試合も、国際大会も、どれも同じように見える。レベルの違いをうまく見せるためには、格の違う選手と対戦させるのが効果的だと思う。日本でプロリーグが行われるとしたら、観客を啓蒙するような要素を盛り込んでほしいものである。そうしないと、私たちは下手の横好きはいつまでたっても試合を見る目が養われないのだから。


【追記】
みんなトップ選手ばかりの大会というのは何かに似ていると思ったら、少女マンガだった。
少女マンガは美男美女ばかり登場するので、おもしろみに欠ける。