日本卓球協会編2012『卓球コーチング教本』(大修館)に目を通してみた。

卓球コーチング教本 DVD付

「読んだ」とは言えないので、きちんと評価できないのだが、簡単に紹介してみたい。

DVDが付いているので、まず見てみた。
あまり興味深い内容とは言えなかった。

・フォアハンド、バックハンド、ドライブ、カットといった基本打法

・ちょっと高度なチキータ、フリック、ワイパーショット(松平健太選手がよくやる、バックハンドでボールの右側をこすって、相手のフォア側に落とす打法)といった応用打法

・基本的な多球練習

シェークハンドの基本打法のモデルが大矢英俊選手なのだが、大矢選手のクセのあるフォームはこの手のDVDのモデルには適さないのではないかと思う。上田仁選手も登場するのだが、上田選手をメインにしたほうがよかったのではないだろうか。

本のほうも、技術的な説明は通り一遍の説明に感じた。教科書的な説明ばかりでおもしろみに欠ける。間違ったことは書いてないのだろうが、一般的な記述からあまり踏み込んでいない。

この本の特徴は、「コーチング教本」と銘打っているだけあって、技術やコツを教える点にはない。「コーチング」「筋力トレーニング」「ストレッチ」といった指導者に役立つ記述と、「卓球の歴史」「公式ルール」「歴代世界・日本チャンピオン」といった百科事典的な記述、さらに「大会運営の方法」といった協会役員向けの記述などがあることだ。ちゃんと読んでいないのだが、こちらもあまりつっこんだ記述はなさそうで、教科書的な一般的な記述に終始しているように感じた。しかし、大会運営の方法なんて、一般的な記述さえ見たことがないので、非常に価値のある章だと思う。

ページをパラパラと繰りながら、驚いたのが「ツッツキ主戦型」という記述である。大関行江選手という70年代に活躍した選手がツッツキ主戦型だというのである。どんな戦型なのだろう?ツッツキ主戦型なのだから、ツッツキばかりするというのは分かる。しかしそれだけではないだろう。まさか初めから終わりまでツッツキで得点するわけではなかろう。本書には次のように書いてある。

大関選手はツッツキを主戦技術にして,全日本選手権で5回優勝し,世界選手権で団体優勝に貢献した。フォアとバックに深く入る,よく切れたツッツキに対する相手のドライブ攻撃へのカウンタースマッシュは,大関選手の技術と戦術の良さを感じさせた。

なるほど、よく切れた深いツッツキを打たれたら、ドライブで持ち上げるしかないなぁ。フォアの厳しい角度に深くて速いツッツキを送られたら、ドライブも満足にできず、フワ~っと浮いたボールしか返球できないかもしれない。それを待って確実にスマッシュ(あるいはカウンター)でしとめる…カッコイイ!かも。もちろん現代の卓球なら、フリックやらチキータやらで、ツッツキを返球するので、スマッシュのチャンスを待っているだけでは通用しないかもしれないが、それでも速いツッツキはかっこいい。

今の卓球はできるだけツッツキの打ち合いをせずにラリーに持って行こうとする傾向があるので、速くて切れたツッツキに対して免疫ができていないから、けっこう通用するかもしれない。ツッツキというのはいわば、台上のカットだ。カットの練習は難しい。カット打ちの上手い練習相手がいないと、いいカットマンは育たないだろう。しかし、ツッツキの練習なら手軽にできる。ツッツキマンになるのなら、そんなに難しくないかもしれない。

ちょっとツッツキ主戦型を目指してみようかな。