youtubeで昔の卓球(1987年の江加良 対 ワルドナーの試合)を観た。



当時は江加良が強いと言われていた。卓球レポートなどで写真は見たことがあったが、動画を見たことはなく、前陣速攻というスタイルがとにかく強いという認識しかなかった。今、当時の動画を観てみると、今の卓球となんと違うことか。
江加良の卓球は独特だ。上の動画を見ると、相手のワルドナーにほとんど攻めさせず、一方的に主導権を握っているように見える。点数的にはデュースまで行っているので、互角の試合だが、内容は江加良が一方的に攻撃する、あるいはミスをするポイントが印象的だ。
戦術は非常に単純に見える。江加良がバックに回りこんで、相手のバックにゆるいループドライブ、それをワルドナーがつないだら(どうして打って出ない?)、江加良がスマッシュの連打。あるいは、江加良がバックに深くツッツき、バック対バックの打ち合いから、突如江加良がフォアの厳しいコースにプッシュ、それをワルドナーがなんとか拾ったボールを江加良待っていてスマッシュの連打。ワルドナーはいいとこなしだ。
江加良のショットは、ねこぱんちのようだ。バックスイングがほとんどなく、体の前面で最小限のスイングで打球する。バックはプッシュばかり。しかしワルドナーは江加良のゆるいボールに対しても攻撃してこない。その結果、江加良の一方的な攻撃にさらされてしまう。どういうことなんだろう?なぜワルドナーは攻撃に転じないのだろうか。

まず考えられるのは用具の違いだ。38ミリのボールはスピードが速く、先に攻撃されたら、とっさに反応するのがやっとなのかもしれない。ただ、現在の40ミリのボールはたしかにスピードが遅くなったが、その代わりラバーやラケットの性能が劇的に進化しているのだから、そのスピード差は相殺されるのではないだろうか。もう一つの要因として考えられるのは、江加良はドライブではなく、スマッシュを使っていることだ。当時の表ソフトはスポンジの薄いのが好まれたと記憶している。とすると、直線的な速いスマッシュ+ナックルというとんでもないボールが来たのではないだろうか?

スマッシュとドライブを比べたら、スピードはあまり変わらないかもしれない。しかしスマッシュは取りにくい。その直線的な軌道と、わずかなスピード差が決定的なのかもしれない。現在、早い卓球というのが流行している。打球点を早くして、ガンガン攻めていく卓球だ。しかしその攻め方は安定性のあるドライブが中心になっている。江加良の試合を観ていると、現代の卓球よりもずっとミスが多く、不安定に見える。このミスの多さがネックだが、もしミスを最小限に抑え、ギリギリまで精度を高めれば、江加良の卓球は現代でも通用するのだろうか。早い打球点で、ドライブではなく、スマッシュで攻めていったら?

現代のすさまじくスピンのかかったドライブを江加良が受けたらどうなるのだろうか?受けきれずにオーバーミスをしてしまうかもしれない。しかし、昔の弾まないラケットと、引っかからないラバーの組み合わせなら、案外受けきれるかもしれない。たとえば、現在なら守備型選手用の弾まないラケットに安い表ソフトを貼ったら、江加良のような卓球ができないだろうか。

ドライブに慣れた現在のプレイヤーがこんなプレースタイルに対した時にどんな戦いをするのだろうか。田勢邦史選手のようなプレイヤーがもっと出てきてくれたらおもしろいのに。