しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




2021年01月

当ブログでは皆様からの寄稿を募集しております。卓球について意味のある主張を発表したい方はshirono.tatsumi◯gmail.comまで原稿をお寄せください。

コメントについて:
コメント欄は他の読者が読んで意味のある情報交換の場としてご利用ください。当ブログの方針(察してください)に沿ったご意見は公開します。返信しにくい場合は公開のみとさせていただきます。指導者ではないので、技術的な質問には答えられません。中傷等は論外です。なお、メールアドレスは公開されません。

レシーブ修行――ストップの位置づけ

Sさんは大学までガッツリ卓球をしてきた、とても上手な人である。ものすごくフットワークがよくて、フォアドライブが強烈である。

そんな人と先日ゲーム練習をした時のことである。Sさんのサーブを私がレシーブすると、ものすごい3球目強打が返ってくる。私がなんとかブロックすると、Sさんはさらにドライブを連打してくる。しかもコースが厳しい。うまくブロックできた時は、2回、3回とブロックするが、結局打ち抜かれてしまう。私はSさんに強打されないようにレシーブのコースを散らし、サイドを切ったりするのだが、Sさんはフットワークがいいので、どんなコースに返しても最終的にドライブ強打を打たれてしまう。

2ゲーム目の途中で気づいた。

今まで私のほうから攻撃したことってあったっけ?サーブを持っても、レシーブでも、とりあえすSさんが先に攻撃して、それを私がブロックするという展開ばかり。私が得点できるのはSさんが凡ミスしたときや、打ちミスをした時だけだといっても過言ではない。こんなに攻撃されてばかりでは勝てるはずがない(まぁ、ふつうにやったら勝てないのだが)。いつかきっと反撃のチャンスがめぐってくる。そのときになんとしても私の方から攻撃しなくては!

そんなことを考えていたのだが、結局0-3であっけなく負けてしまった。私からの攻撃は?
なんと、ほぼ一度も私の方から攻撃できなかったのだ!

「いやぁ、強いですね。私もいつか攻撃できるチャンスをうかがっていたんですが、全く攻撃できませんでしたよ。」
「しろのさんのレシーブって、基本、ツッツキか、フリックじゃないですか。台から出たら、だいたい(ドライブを)かけれるので、ストップとかも使って、前後にゆさぶった方がいいですよ。」

そうだったのか!自分では全く気づかなかったが、私はストップをほとんど使っていなかったらしい。レシーブが苦手だというのは頭では分かっていたが(前記事「上手いレシーブとは」)、これはあまりにもひどすぎる…。そりゃそうだ、あんなに縦横無尽に動き回るSさんなら、台から出るボールはどんなボールでもチャンスボールになってしまうにちがいない。

台上技術って基本がツッツキで、それにフリックやストップというアクセントをつけるものだと思っていたのだが、Sさんの言葉から察するに、台上技術の基本はストップで、それに深いツッツキやフリックでアクセントをつけるのがいいんじゃなかろうか。

今までの私の認識:台上ではツッツキが基本。たまにストップやフリック。
Sさんの認識?:台上ではストップが基本。たまにツッツキやフリック。

最近見た、2006年の全日本決勝、水谷隼選手 対 吉田海偉選手の試合を思い出した。
水谷選手は当時高校2年生。対する吉田選手は全日本2連覇(2年間、全日本で無敗。17勝0敗)という当時の日本最強の選手。解説の宮崎義仁氏によると、吉田選手のフォアドライブのスピードは「世界でも5本の指に入る」というもの。

吉田選手が考えていることはおそらくこうだろう。「先にフォアドライブさえ打てれば勝てる!」。いくら守備力の高い水谷選手でも、吉田選手にフォアドライブを振らせてしまったら、勝てる見込みは薄い。そこで水谷選手のサーブは基本的に台から出ないショートサーブ。レシーブは基本的にストップを徹底していた。これではさすがの吉田選手も得意のフォアドライブを封じられてしまう。試合を通して両者が台上でしのぎをけずっているのがよくわかる。

水谷ストップ
フォア前をストップする水谷選手

https://www.youtube.com/watch?v=nE1MzWDBoNg

私がSさんにやっていたことは――レベルは全然違うが――吉田選手に対して台から出るツッツキレシーブを送ってしまうようなものだったのだ。どんなに速いツッツキでも、コースが厳しくても、台から出してしまったら、Sさんのとんでもないドライブが飛んでくる。
私も水谷選手のようにサーブは基本、フォア前に台から出ないショートサーブ。そしてときどきアクセントとしてバックに速いロングサーブ。レシーブは基本、ストップ。そしてときどきアクセントとして深いツッツキ。こういう戦術にしなければ、こちらから攻撃するチャンスは永遠にめぐってこないのである。

一発強打を持っている相手に対してチャンスを作るためには、台上技術がカギになる。この敗戦がきっかけで私はようやくそのことに気づき、遅ればせながら、レシーブを研究しようとし始めたのだった。

レシーブ巧者への道のりは長く険しい。

Tリーグの未だ知られざるを憂う

去年2020年は本当に驚くべき年だった。半世紀ほど生きてきて、こんな大きな変化は今まで経験したことがなかった。絶対安泰だった銀行、病院、寺といった職場でさえ経済的に余裕がなくなってきている。大手企業が外国資本に買収されたり、経営危機に陥ったりしている。こんな大きな変動の中で卓球業界だけが無事でいられるはずがない。

今、日本全体が断捨離をやっていて、「これがなくなるのは、ちょっと惜しいな」程度では生き残れない。「どうしても必要だ」というものでないと、生き残れないのではないか。

この国は今一度
この国の「洗濯」というのは、これほどまでに過酷なものだったのか…

今後、卓球ショップや卓球メーカーの半数が廃業してもおかしくない。そしてTリーグも存続できるか微妙である。

そもそもTリーグに関心がある人、あるいは試合をチェックしている人がどれだけいるのだろうか。私の周り(社会人)でTリーグの話題を聞いたことがない。卓球が好きで、熱心に練習している人でさえTリーグに関心を持っている人は多くはないのかもしれない。今後Tリーグは「どうしても必要」なものとして生き残れるだろうか。

二度目の緊急事態宣言が発令された影響で、Tリーグが無観客試合になり、ネット中継されるとTリーグのメルマガで知った(今は有観客になっている?)。アマゾン・プライムで放映されているらしい。私はプライム会員である。ということは、Tリーグが見られるではないか! Tリーグのダイジェストはちょっと見たことがあるが、一日の試合を通してみたことは一度もない。週末の時間があるときにちょっと見てみよう。

プライムビデオのページに行くと…なんだ、有料じゃないか。

7日間の無料体験により、今すぐAmazonでTリーグ TVのコンテンツを視聴いただけます。無料体験期間が終わると有料期間に自動的に移行し、設定されているお支払い方法に月額198円 (税込み)が請求されます。

月額198円か…。卓球ユーチューバーの「メンバーシップ」が月額300円とか500円である。198円というのはかなり安いんじゃないか?昨日なんとなく買ったキットカットの大袋が198円+税だったことを考えると、毎月198円というのは、私の財布にほとんど影響しない額だと言える。

ちょっとTリーグチャンネルを登録してみるか。

登録すると、現在対戦中の試合があれば、そのライブが、また今シーズンの過去の試合と、そのダイジェストが見られるようになる。今シーズンは2月下旬まであるようだ。

12/23日の琉球アスティーダ 対 TTさいたまの試合をダウンロード。ダウンロードできるので、ネットがつながらない場所でも見られる。全2時間36分。試合自体は2時間強だが、その後、選手・監督へのインタビューとハイライトなどが30分ほど続く。

ハイライト動画
https://www.youtube.com/watch?v=rBb-EwYFX2o

Tリーグは以下の試合構成となっている。おそらくご存じない方も多いことだろう。
1番:ダブル(2ゲーム先取)
2番:シングル(3ゲーム先取)
3番:シングル(3ゲーム先取)
4番:シングル(3ゲーム先取)
5番:シングル(ヴィクトリーマッチ 1ゲーム先取)

デュースは基本行わない。最終ゲーム(ヴィクトリーマッチも)のみデュースあり。シングルの5ゲーム目は6-6からスタート。3-0で勝敗が決しても、4番までの試合は行われる。2-2で同点の場合、5番のヴィクトリーマッチが行われる。

1番のダブルは、平野友樹選手・有延大夢選手 対 英田理志選手・ジオニス選手の対戦。
男子でカットマンのペアというのは珍しい。それも今、波に乗っている英田選手と、いつまでも強いジオニス選手のプレーというのは興味が惹かれる。が、英田・ジオニス組はいまいち息が合わず、ストレート負け。残念。

2番のシングルは、宇田幸矢選手 対 松平健太選手の対戦。
当時の全日本チャンピオンに対して、健太選手は厳しいのではないかと思いきや、3-2で健太選手の勝利!宇田選手は勢いはあるが、自分の展開にならないときは勝てない。今年の全日本の結果と同じである。
あれ?意外と楽しめるではないか。しかし、1時間も試合を見ると疲れるなぁ。ネットだと、残りの試合を翌日に見ることもできるので助かる。

翌日、試合の続きを見た。
3番のシングルは、戸上隼輔選手 対 篠塚大登(ひろと)選手の対戦。
篠塚選手というのは、将来有望な選手だとよく聞くが、実際に試合を見るのは初めてである。
篠塚
なるほど、台湾の林昀儒選手を思わせる、しなやかな卓球をするなぁ。しかし、勝利への強い意志のようなものが感じられない。一方、戸上選手は格下相手にも容赦ない。ガツガツ攻める。

ロビングから反撃
ロビングから反撃する戸上選手

結局、戸上選手のストレート勝ち。強い!

4番のシングルは、吉村真晴選手 対 曽根翔選手の対戦。
曽根選手は、確か水谷選手が今後伸びる選手の筆頭に挙げていた選手ではなかったか。
曽根
身長177センチの体格に恵まれた曽根選手。

吉村選手のサーブが効いて、1ゲーム目は吉村選手が圧倒。しかし、その後、曽根選手が対応し始め、逆転勝利。琉球が圧勝するかと思いきや、さいたまもヴィクトリーマッチまで食い下がる。

5番のヴィクトリーマッチはシングルの1ゲームマッチ。オーダーは試合直前に決まる。1ゲームきりなので、番狂わせも起こりやすい。格上の琉球はエースを起用し、挑戦者のさいたまは、番狂わせを狙い、あまり慣れられていない選手を起用するのがいいだろう。

琉球は戸上選手。さいたまは曽根選手を選んだ。曽根選手はガッツあふれるプレーで序盤、戸上選手を引き離す。が、ジリジリと追いつかれ、逆転。
togami
チキータというのは、このぐらい低い姿勢がいいのだ。

しかし、曽根選手もまた追いつき、デュースの末、戸上選手が勝利!
戸上ツッツキ
戸上選手のツッツキが速い!そして左足の残し方が尋常ではない。

この試合は、戸上選手が大活躍だった。それが一か月後の全日本であんな結末になるなんて…。

忙しい社会人はそんなにたくさん試合を見ることはできないが、週に1試合みるだけでも月額198円(プライム会員なら)の値打ちはあると思われる。解説とリプレイもついているので、卓球の勉強にもなる。これでTリーグに関心を持つ人が増えれば、Tリーグが存続する可能性も高まるというものだ。

「上手いレシーブ」とは?

今はもう聞けなくなってしまったが、ナウ・ボイスというサービスで水谷選手が卓球全日本選手権2021について予想のコメントしていた。早田ひな選手について

「レシーブがあまり上手じゃないので、そこがちょっと。他の技術がいいだけに、なんだかモヤモヤする」

というようなことを言っていた。

ふ~ん。トップ選手から見ると、早田選手のレシーブはあまりレベルが高くないのか。そもそもレシーブが上手ってどういうことだろう?サービスが上手というのはよく話題になるが、レシーブが上手というのはあまり考えたことがなかった。チキータとかで2球目を強打できるとか、低く深く返せるとか、ストップの精度が高いとか、そういうことだろうか。

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先日、ゲーム練習をしてコテンパンにやられてしまった。そのとき、レシーブが下手ということがどういうことなのか、身をもって知った。なんと私はレシーブが下手だったのだ!

それまで私は、自分がレシーブが下手という自覚がなかった。というより、どちらかというとうまいほうなんじゃないかとさえ思っていた。あまりレシーブミスをしないし、サーブを浮かせないで返せる率も高いし、チキータやフリックだってやろうと思えばできる。しかし、「レシーブが上手」というのはそういうことではなかったのである。

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全日本卓球2021の決勝はちゃんと見たのだが、準決勝は忙しくて見る余裕がなかったので、あとでスポーツブルというサイトのアーカイブで確認してみた。石川佳純選手対木原みゆ選手の試合である。

試合前は石川選手が木原選手に滅多打ちにされるのではないかと思っていたが、ふたを開ければ石川選手が無難なスコアで勝っていた。何が起こったのか、攻撃力の高い木原選手の猛攻をどうやって封じることができたのか、そういうことに興味を持って観戦してみた。

木原選手はバック表である。バック表は相手がとりにくいバック強打が打てる一方で、低い下回転ボールには弱いという欠点がある。そこを石川選手はみごとに突いてきた。

木原選手のバックに深いロングサーブを送る。木原選手はバックハンド強打で応じるが、入ったり、入らなかったり、安定しない。1、2ゲームは石川選手が危なげなく連取した。

石川選手のサービスの組み立てがよかったですね。1ゲーム目、長いサービスを多く出したことによって、木原選手のレシーブが非常に甘かったかなと思うんですね。木原選手のサービスも、石川選手がうまくレシーブできてるので、自分から先に攻めるというパターンがあまりなかったんですよね。そしてバックハンドの自分の打つ位置も今、まだ少し定まらない状態でプレーしていますので、ラリーの中でも非常に苦しいラリーが多かったかなって思うんですね。
やはり、今のところは石川選手の戦術というところが非常に上手いかなと思うんですよね。(森本文江氏の2ゲーム終了後の解説)

石川選手は「うまくレシーブできてる」? 特に鋭いレシーブをしていたという印象はないが、ここまでの石川選手のレシーブというのが「上手い」レシーブ?

3ゲーム冒頭。木原選手のサーブを石川選手は、相手のミドルあたりへつっつく。鋭いボールではない。ほわーっとした深いツッツキである。
kihara reveive
木原選手はバックハンドでこすり上げようとするが、勢い余ってオーバーミス。どうやらあまり切れていなかったようだ。バック側(ミドルだったが)への深い下回転が木原選手の弱点だということを見抜いたレシーブである。

そうやってバック側を意識させておいて、次のロングサービスを石川選手は浅く相手のフォア側にストップ。台からギリギリ出る微妙なレシーブとなり、木原選手はフォアドライブを空振り。
kihara karaburi

なるほど、レシーブが上手いというのはこういうことだったのか。

全日本卓球2021 | スポーツブル (スポブル) (sportsbull.jp)


たとえば、ツッツキにしても、低くて速いツッツキを送れるに越したことはないが、そればかりやっていたら、当然相手に対応されてしまう。切れた速いツッツキの後にゆっくりした切れていないツッツキを送ったり、バック奥の後にフォア前に送ったりと、相手に的を絞らせず、相手の待ちをうまく外すことができるのが「レシーブが上手い」ということになるのだろう。そのためにはボールの高さや深さ、コースといったコントロールの技術の高さも必要だが、それよりも読みや予測といった心理面が重要になってくる。よく上級者のユーチューバーとかが「私はレシーブが苦手で…」などと話しているが、あれは低いツッツキができないとか、フリックをミスしがちだとか、そういう技術的な意味ではないだろう。そうではなく、戦術的に「相手の待ちをうまく外せない」という意味なのではないか。

私は試合にめったに出ないで、基本練習ばかりしているので、相手の待ちを外すとか、次のボールを読むといった試合の駆け引き等はめっぽう苦手である。ゲーム練習で負けたら、レシーブ時に「バックドライブの威力が足りなかった」とか「フリックの精度が低かった」などと考えて、またそのような技術を高める練習にばかり励んでしまうのだが、そういうことをして、技術面の課題を克服できたところで、よほど実力差がある相手でないと勝てないだろう。同じぐらいの実力の相手に勝つには頭を使って相手に打たせない、「上手いレシーブ」を送らなければならない。別に厳しいボールでなくてもかまわない。ゆっくりしたツッツキやストップでも相手の待ちを外したり、強く打たせなければ、レシーブとしては合格点である。

となると、「レシーブが上手い」ということは、つまり3球目を相手に厳しく攻撃させないということに近づいてくる。

早田ひな選手と伊藤美誠選手の準決勝をみると、伊藤選手が3球目で厳しく攻撃している場面が多かった。これは早田選手が有効なレシーブができなかったということになるだろうか。
hina receive
伊藤選手の和柄てんこもりのユニフォームがかっこよかった。

全日本卓球2021 | スポーツブル (スポブル) (sportsbull.jp)

そういう視点で考えると、「サーブが上手い」というのも、3球目の攻撃につなげられるかどうかということになる。一般的には「サーブが上手い人」というと、回転が分かりにくく、サービスエースを連発するような人をイメージするが、そうではなく、相手の待ちを外して、自分の3球目攻撃につなげられる人は、たとえ凡庸なサーブしか出せなくても「サーブが上手い人」になるのではないだろうか。

こういう視点で上級者の試合を見ると、戦術とか、試合の組み立てということが意識されるようになってくる。派手な打ち合いではなく、サーブ・レシーブでどのような工夫をしているかに注目すると、試合観戦がより楽しくなってくる。

私が先日のゲーム練習で負けたとき、私はどんなレシーブをしていただろうか。
たぶん、低く速いボールを送ることに汲々として、相手が3球目で待っているところにばかり送ってしまったのだと思う。自分では悪いレシーブではないと思っていたのだが、結果は3球目強打を浴びまくった。相手の狙い通りのレシーブを送ってしまっていたのである。

これまで卓球で頭を使うのが苦手で、ずっと避けてきたのだが、今回の全日本の女子準決勝の試合を見て、私も少しは頭を使わないとダメだと反省させられた。


セットフレーズと卓球の定石

全日本2021が開催されている。
インターネットやテレビでベスト8、ベスト4決定戦を見たが、さまざまなドラマがあった。
解説を聞きながら見ていると、選手たちが相手の待ちを外すために様々な工夫を凝らしているのが分かる。日本代表が高校生や大学生に負けているのを見て、全日本ランカーともなると、実力的には大差なく、駆け引きやメンタルの強さが勝敗に大きく影響するということが分かった。そう考えると10年以上決勝に進出しつづけた水谷選手のすごさがよく分かる。

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以前、出張でドイツに行ったことがあった(前記事「ES WAR TRAUMHAFT」)が、出張中、英語が話せる自信が全くない(ドイツでは農村でもない限り英語が通じる)。行く前に少しでも英会話の勉強をしておこうと思って、こんな本を買った。

英会話

今では絶版のようだが、要するにセットフレーズが160集めてあるだけの本である。長い期間、地道に勉強するのがイヤで、とにかく即効性を求める人におすすめである。

英語でしっかりと自分の要求や疑問を説明するためには、英文法に基づいて正攻法で文を作らなければならないが、こうすると文ができるまでに時間がかかるし、頭を使うので、疲れる。

一方、簡単な日常会話なら、セットフレーズを適当にちりばめておけば、サッと表現できて省エネである。

たとえば「May I ask you a favor?:お願いがあるんですが」とか、「You can count on me.:任せてください」とか。

こんなフレーズをたくさん覚えておいて、会話中にドンピシャのシチュエーションがめぐってきて「おっ、ここだ!」と思ったときに使うと、なんだか英語がうまくなったような気になってくる。おかげで出張中、必要以上にお願いや安請け合いをしてしまった気がする。

こういうことは卓球でも有効だろう。

プレー中によくあるラリーのパターンをいくつか練習しておいて「おっ、ここだ!」というときに適当にそれを使えばまるで上級者のように流れるプレーができるにちがいない。いわゆる「システム練習」というヤツである。

たとえば

相手が自分のフォア前にショートサーブ
→相手のバック前にストップ
→相手が自分のバック深くにツッツキ
→自分がバックドライブ

私はこういう練習があまり好きではなかった。

「そんなうまい具合に相手がこちらが待っているところに返球してくれるはずがない。こんな練習をするよりも、どんなコースに返球されても対応できるように地道に練習をすべきだ」

そうやってコースを限定しない練習ばかりした結果、返球がどこに来るか予測しないでプレーする習慣が身についてしまった。まったく「待ち」ができず、反射神経に頼ってばかりのプレースタイルなのである。これはまるで学校文法でなんとか英文をひねりだそうとする、非効率的なスタイルと同じとは言えまいか。

上級者ともなると、定石的なラリーを避けて、意外性のあるコースにボールを送ってくるのかもしれないが、初中級者相手なら、そこまで定石から外れるコースには打たれないのではなかろうか。ずっと定石どおりには返球してくれないと思うが、ときどき定石どおりにドンピシャの返球をしてくれた時は、「おっ、ここだ!」とこちらから決めに行ける。

また、戦術を考えるときも、定石という基礎があって、それとの比較で「相手はこちらからバッククロスにドライブを打つと、ストレートに返球してくる傾向がある」のように相手の特徴が見えてくるのではないだろうか。定石が身についていないと、比較の材料がないので、相手のコース取りが頭に入ってこない。

というわけで、最近は定石どおりの練習を飽きるほどやってみたいと思っている。

卓球の物理――引っ張る力と押す力

この世の自然現象の基礎的な法則を記述した物理学という学問がある。
私もはるか昔にちょっと勉強したような記憶があるのだが、何一つ覚えていない。
この世の法則を数字の言葉で記述したのが物理学だと思うのだが、よく分からない。
いったいこの学問は卓球に役立つのだろうか。
一流の指導者や選手は物理学を学んで卓球に応用したりしているのだろうか。
そういう話を聞いたことがない。
おそらく物理学が卓球の役に立つこともあるのだと思うが、物理学を勉強しなくても卓球の指導はできるし、卓球は上手になるのだと思う。
とすると、卓球の上達のために、あまり楽しくなさそうな物理学を無理に勉強する必要はないと思われる。

私は卓球における自然現象を数字の言葉ではなく、私の通俗的な言葉で記述してみようと思う。
数字を使わず、おおざっぱな記述になってしまうが、分かりやすいならそれでいいのではないだろうか。学問のような高度なものではなく、現在の私の卓球における物理現象に対する感覚的な理解だと考えていただきたい。したがって、正しい記述だという保証はない

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卓球でドライブを打つときのことを考えてみよう。
このとき、大切な要素が二つある。
一つは押す力、もう一つは引っ張る力である。

下回転の低いボールが来た。これをドライブで返球するなら、ラバーに食い込ませて引っかける、一般的な言い方を使えば、「こする」必要がある(引っ張る力)。だが、こするだけでは勢いがつかないので、押す力もある程度加えてやる必要がある。

前記事「カットマンの嫌がること」で卓球丼氏の力がなくてもできるカット打ちというのを紹介した。バウンドして、ボールが上に跳ね上がる力を最大限に利用して、バウンド直後に真上方向にちょっとだけラケットを振り上げ、こすり上げるというカット打ちである。これはいわば、こすり(引っ張る力)が9で、押しが1のドライブである。この打ち方は安定性は高いが、押す力が極端に小さいので、威力のあるボールは打てない。

したがって、下回転のボールをある程度威力のあるドライブで返球しようとすると、押す力をもっと強くしなければならない。

私はバックドライブの時によくボールをネットにかけてしまうのだが、不思議に思うことがある。ドライブではスイングスピードが大切だから、スイングスピードをできるだけ速くしようとがんばって振ったのに、持ち上がらなくてネットに引っかけてしまったり、そうかと思うと遅いスイングスピードでやさしくゆっくりこすり上げた、ふわっとしたドライブが悠々とネット越えていったりする。これはいったいどういうことなのだろう?全力で振ったバックドライブがネットにかかり、ゆっくり振ったバックドライブが危なげなく入ってしまう。

ドライブの安定性は、スイングスピードではない、別の要素が関与していると判断せざるを得ない。

この場合、おそらく押す力が強すぎて、引っ張る力が弱すぎたのだと考えられる。つまりボールがラバーに引っかかって、これから引っ張ろうとするときに、押す力がボールをはじき出してしまい、ボールを十分引っ張れなかったというわけである。

安定したドライブをかけるためには押す力を控えめにして、引っ張る力のほうを強くしなければならない。押す力2、引っ張る力8だと、まだ威力が弱いから、押す力を3~4、引っ張る力を7~6にしたら、ちょうどいいあんばいのドライブが行くのではないかと思っている。

押す力が弱まると、ボールの威力も弱まるとは一概に言えないと思う。スイング方向が前方向で引っ張る力が強烈なら、押す力が弱くても、引っ張る力だけで威力のあるボールが行くはずである。そして安定性と威力を両立させるには、引っ張る力を優先的に活用しなければならない。

引っ張る力を強めるには、スイングスピードが必要である。ラバーにボールがひっかかった状態のまま強い力で引っ張ってボールを相手コートに、いわば「投げ入れる」わけである。押す力はボールの引っかかっている時間を短くしてしまう。速いスイングスピードで、引っ張る力を最大限にしつつ、押す力を弱めるのが理想である。

押す力を弱める方法はいくつかある。

たとえばボールがラケットに接触するまで力を入れないという方法――つまりボールを「引き付ける」である。逆に言うと、ボールが当たってから力を入れるということである。これはたとえばバルサミコ氏が3hit理論という考え方で提唱しているものに近いものかと思う。ボールとラケットが数十センチも離れた状態からスイングスピードを上げて、ボールとラケットが接触すると、押す力が強すぎて、ボールがラバーに引っかからず(ボールを持てず)、ネットに引っかけたり、逆に直線的に飛んで行ってオーバーしてしまう。氏がスイングスピードを加速させるのはボールとラケットが接触する寸前にするというのは、押す力をできるだけ抑え、引っ張る力を確保するための工夫だと思われる。

そしてもう一つの工夫はボールを当てる角度、あるいはボールを触る場所である。

こすり方
上の図はバックハンドドライブを上から見たものと考えていただきたい。三次元のものを二次元でむりやり表現しているので、いいかげんな図である。

左の青いラケットのほうは、ボールの内側をさわってバックドライブをかけている。こうすると、ボールとラケットが衝突する力が左に逃げ、押す力が弱まる。一方右の赤いラケットのほうはボールの外側をさわってドライブをかけるので、ボールとラケットの衝突する力が逃げる場所がない。すべての押す力がボールに加わってしまい、押す力が強くなりすぎて、引っ張る力が弱まってしまう。
クロスにドライブを打つとき、シュートドライブ、つまりボールの内側を捉えれば、思いきりボールを打っても、押す力が逃げてくれるので、押す力が弱く、ボールがしっかりひっかかる。逆にカーブドライブ、つまりボールの外側を捉えると、ボールとラケットが真正面からぶつかりやすく、タッチでうまく調整しないとボールが吹っ飛んで行ってしまうおそれがある。

前記事「スイングの弧線」でデッパリ弧線とヘッコミ弧線というのを考えてみたが、この記事のデッパリ弧線というのも、上の法則に当てはまると思う。デッパリ弧線でドライブを打つと、ボールの押す力を弱めつつ、安定した威力のあるドライブが打てると思うのである。コメント欄でベルゼブブ優一氏がご教示くださった動画を見ると、よく分かる。

フランツ選手の4:07のバックドライブはデッパリ弧線のバックドライブである。

https://youtu.be/ylSIkIwKUH8?t=246


他にも打点やラバーの柔らかさも、押す力や引っ張る力に影響するだろう。またボールをラバーに押し付ける力というのも考慮しなければならないが、集中力が切れてきたので、今回はこのへんでおしまいである。

【追記】
球突きをして、バウンドさせずにボールをキャッチするという技がある。あれはボールの押す力を最小限にする練習だったのではないか?

【追記2】
週末になったので、平日は観ないようにしてきたyoutube卓球動画を観てみることにした。
そこでOKP氏とフェニックスクラブのコラボ動画で上の記述と同じようなことを言っていた。
https://www.youtube.com/watch?v=fRGRCTt6myQ
したがって、「押す力を弱める」という部分は、おそらく正しい考え方だろうと思われる。

張りと脱力――ランニングと卓球

年末年始というのは、なんだかんだで忙しいようで、案外時間を持て余してしまったりする。ふだんからテレビを見ないので、紅白だの、箱根駅伝だのを見ることもない。だからこうやってブログを更新している。卓球をしたいけれど、卓球ができる場所は限られているし、卓球仲間も忙しくてなかなかつかまらない。

で、しかたがないのでランニングをすることにした。

なぜかというと、フットワークを鍛えたいなら、やはりランニングがいいと聞いたからなのだ。私は自分の卓球の中でフットワークを最優先したいと思っているので、フットワークにプラスになりそうなことは積極的に取り入れたいのである。

前記事「日ごろは何とも覚えぬラケットが…」でランニングの有用性を説いたが、今回も試してみたいことがあった。ランニングを日常的にしている人にはあたり前のことだろうが、私にとっては「発見」だった。

空気の抜けたタイヤでバイクや車を運転すると、燃費が悪くなるのだという。おそらくエンジンが生み出したエネルギーをダイレクトに路面に伝えられず、フニャフニャのタイヤが緩衝材になってしまい、エネルギーをある程度吸収してしまうためだろう。

身体の使い方にも同じことが言えないか。

走るとき、身体がたわんでいたり、ダラっとしていたりすると、体幹で生み出されたエネルギーがダイレクトに身体の末端に伝わらず、エネルギーをロスするイメージがある。そこで胸を張って背筋をピーンと伸ばし、上半身を中心から左右にねじって走ってみる(※背筋を反らせて走ると腰に悪いらしい。コメント欄参照)。前記事「日ごろは何とも覚えぬラケットが…」で実践したように脇を締めて腕はまっすぐ前方に振るようにする。

おお!エネルギーのロスが少ない気がする。背骨を中心にして身体の中心だけに力を入れて左右の肩を前後に揺らすと、非常に楽に走れる。さらに発見があった。なんと脚を使わずに走ることができたのだ。前記事「常住卓球」で「足歩きはいけない」と述べたが、今回も脚には力を入れず(完全に脚から力を抜くと立っていられないから、最低限立てる程度の力しか入れない)、上半身と腰のねじりだけで推進力を生み出し、足首のバネだけで走ることができたのだ。意識としては上半身のひねりと足首だけで走っている感じである。

この調子で京都駅まで走ってしまおうか。

信号が赤になるたびに休憩を入れ、なんとか京都駅に到着。脚を使わずに走ったことから、体力の消耗が少なかった。周辺のカフェでホットコーヒーを飲み、しばらく休憩し、帰途に就く。行きはわずかに下り坂なので楽だったが、帰りはわずかに上り坂なので走って帰るのはしんどい。歩いてのんびり帰ってきた。

帰り道でランニングの経験が卓球に応用できないか考えてみた。

卓球でも体幹、あるいは足でエネルギーを生み出して、それを腕、手、ラケットへと伝えていくのだから、その過程でダラっとしている部分があると、エネルギーのロスにつながるのではないだろうか。ということは身体全体を硬直させておけばいいのだろうか?
硬化
硬直のイメージ

いやいや、腕をガチガチに硬直させてしまっては手首まで動かなくなってしまう。張りと硬直は違う。身体に張りを持たせつつも、腕の力はできるだけ抜いておいたほうが良さそうだ。力を抜くということはエネルギーをロスしてしまうゆるみとも違う。力を抜いていながらも、筋が一本通っているようなイメージで、ラケットを振る。ランニングでは上半身の中心軸でエネルギーを生み、足が地面に接したときに補助的に足首を使って走ってみた。卓球でも上半身の胸あるいは背中のあたりでエネルギーを生み、腕はできるだけ使わないようにして、打球の際、手首だけを補助的に使って打つのがいいのかなと思う(前記事「バイバイの動き」)。

初打ちの時にこんなイメージで打球してみようと思う。


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