しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




2018年09月

先日、とある卓球場(教室)で2時間台を借りて友人と練習をした時のこと。

初老の男性が個人レッスンを受けに来た。
若いころに部活などで打った経験が少しだけあるといった感じの人だった。

卓球場には大学生のアルバイトと思しき若い男の子が一人だけいた。黙々とケータイをいじっていたのだが、時間になったので、無表情で立ち上がり、初老の男性に対応していた。

「何か練習したいことはありますか?」

初老の男性はドライブの打ち方をリクエストしたようだ。
ドライブを打って、バイトの大学生が無言でブロックする。ときどき思い出したようにアドバイス。

「順回転のボールを打つ場合、ボールの後ろをとってドライブをかけると、飛びすぎてしまうんで、ボールの上のほうとか、斜め上とかを触ってこすったほうがいいですよ。」

初老の男性も無口な人のようで、しばらく沈黙のままボールを打つ音だけが聞こえてきた。

練習はいつのまにかレシーブに移っていたらしく、大学生は横回転や下回転など、いくつかのサーブを出して、それを男性がレシーブしていた。

「打点が遅すぎるので、ボールがバウンドする瞬間に当てるような気持ちで、早めに打った方がいいです。」

またしばらくボールを打つ音だけが響き渡る。

途中で数分の休憩が入る。

大学生はレジのカウンターの前に座ってケータイをいじり始める。男性は汗を拭いたり、素振りをしたりしている。

その後練習は再開され、何かの練習をしていたのだが、私も自分の練習に夢中になっていて、どんな練習をしていたのか分からない。

1時間の個人レッスンが終わって、男性は静かに料金を払い、去っていった。
大学生は相変わらず無表情で一言「ありがとうございました」と述べて、またカウンターに座り、ケータイをいじりはじめる。

*******************

個人レッスンというのは、私はあまり受けたことがないが、こういう指導もよくあるのだろうか。

私が受けた個人レッスンは指導者がハキハキしていて、ふだんどんな練習をしているかやどういう卓球を目指しているかなど、笑顔でいろいろ話しかけてくれた。指導中も常に声掛けがあり、

「手で打たないで!胴体を回して!はい、そう!今のはよかった!」

などと励ましてくれたりした。水分補給のための休憩には世間話や共通の知り合いがいないかどうかなどを聞いてくれたりして、1時間を楽しく過ごすことができた。

sidou
イメージです

上の卓球教室の指導役の学生には熱意が感じられず、淡々と指導していたように感じた。必要最低限の交流しか持ちたくないといった感じで、対応時間以外はずっとケータイをいじってバリアーを張っている。彼はもしかしたら実力的には非常にレベルが高い人かもしれない。関西学生リーグの1部校のレギュラーかもしれない。また、指導も的確なのかもしれない。しかし、バイトとはいえ、こんな対応をされたら、二度と個人レッスンなど受けたくないと、私なら思うだろう。

東京に行ったときにいつか卓球の個人レッスンを受けてみたいと思うのだが、いくら安くても、また有名な教室でも、ちゃんとコーチを選ばなければダメだなと思った一日だった。



「東洋経済」の記事で「卓球「Tリーグ開幕」に漂う大ブームの予感 日本の卓球人口「1000万人」も夢物語ではない」という2017年12/25の記事があって、笹川スポーツ財団のデータやJリーグとの比較で「2030年には卓球人口が663万人の約1.4倍、958万人に増える」可能性があると述べている。

ただし、この「卓球人口」というのは年に1回以上卓球を楽しんだことのある人の数なので、卓球に興味がない人が、温泉でたまたま卓球を楽しんだという人も含まれる。

この記事は卓球に対して非常に好意的に書いてあるので、文句を言いたくはないのだが、663万人という数字は実質的な卓球人口ではない。

結論を前もって述べると、私の推定した日本国内の卓球人口は以下の通りである(追記:中学生の扱いを変更し、数字を大幅に変更した)

A:卓球人口最大41万人
B:熱心な卓球愛好者11万人
C:卓球依存症3000人

Aは実際に定期的に卓球をやっている人の数。Bは卓球が本当に好きな人の数。Cは卓球に取り憑かれている人の数。

私は数字が嫌いである。自慢ではないが、高校時代に数学で赤点を取ったこともある。年をとるにつれて数字に対する不信感は深まるばかりである。

特に「客観的」な統計データというのは、パラメータを調査者が作為的に変えることによって、全く正反対の結果が出ることも少なくない。コーヒーを飲むと癌にかかりやすいとか、かかりにくいとか、あの手の医学的?な調査はスポンサーの意向によってどうにでも変えられるように思われてならない。数字も科学も扱う人によって薬にもなれば毒にもなる。

たとえ悪意がなかったとしても、非卓球人が機械的に出した卓球人口の推計よりも、卓球を肌身で感じている私が推定した卓球人口のほうが実際の人数に近いはずである。卓球人の推定した卓球人口というのは意味のある数字だと思われる。

なんでこんなことを考えたかというと、Tリーグにどのぐらいの人が入るか気になったからである。

Tリーグを観に行く人は、8割がたは卓球人だと思う。9割かもしれない。

非卓球人が会場にわざわざ足を運んでルールもよく知らない卓球を観戦するとしたら、職場関係でチケットをタダでもらったとか、友人・恋人に連れられて観戦に来たような人じゃないかと思う。

現時点でTリーグを観に行く人は相当な卓球好き(つまりBとC)か、つきあいで見にいくような人だろう。

バドミントンの桃田賢斗選手が世界ランク1位の選手を破ってジャパンオープン優勝を成し遂げたのだという。賭博事件のスキャンダルから立ち直り、素晴らしい戦績を残した桃田選手は世界でも有数の実力らしいが、桃田選手と世界トップレベルの選手を集めたバドミントンのプロリーグが仮にできたとして、果たしてどれほどの人が観戦に行くだろうか。私は卓球以外のスポーツでも、卓球の参考になるなら観たいと思うが、電車賃と入場料を払ってまで観に行くかというと、たぶん行かないと思う。タダでチケットをもらって、京都で開催される試合なら、時間の都合がつけば行ってみたいと思うが、それでも行くかどうか微妙である(気が向いたら行くかもしれない)

そう考えると、Tリーグにどれぐらいの客が入るかの推計は実質的な卓球人口からなされなければならない。

以下に上記の数字の根拠を記す。

卓球人口を測る指標として日本卓球協会の加盟人数(H29)がある。これを見ると、348,195人ということである。これは中学の部活で自動的に加入している部員の数字も含まれるので、それほど卓球に熱心でない人も含まれる計算である。35万弱。その一方で協会に登録はしていないので公式戦には出ないが、地方で卓球を楽しんでいる社会人の数も少なくないと思われる。

ちなみに加盟人数の内訳は以下の通りである。中学生が圧倒的に多く、50%近くを占めている。

小学生: 14,630
中学生: 171,893
高体連: 73,694
日学連: 7,712
日本リーグ:190
教職員: 534
一般: 62,553
役員・教職員: 8,116
役員・役員: 8,873

中学生のうちなんとなく部活に入っている人で、卓球なんかほとんどしない人もいるかもしれないが、そういう人も数のうちにいれておく。

一方、社会人で地域のクラブとかで練習しているけれど、協会に加盟していない人はどのぐらいだろうか。
私が地域のクラブに行って、協会に登録していない社会人の割合を考えると…半数は登録していない気がする。高齢者は特にその傾向が強い。都市部には協会主催の社会人リーグがあって協会加盟者も多いが、地方では社会人の協会加盟者の割合はもっと少ないかもしれない。上の内訳のうち、「一般」は62553人ということだが、この倍以上の社会人卓球愛好家がいると思われる。仮に「一般」非加盟者の割合を5割、加盟者の割合を5割としておくと、合計は125106人となる。

協会加盟者に非加盟者の「一般」62553人を追加して410748人。この潜在的な「一般」をどのぐらい取るかで数字が変わってくる。

実質的な卓球人口最大約41万人

といっても、41万人のうち、部活に入っているだけでやる気のない中学生や、やるのは好きだが、観るのには興味がないという人もたくさんいるだろう。このうちTリーグを観戦に行く可能性のある卓球の大ファンと言える人はどのぐらいだろうか。

本当の卓球好きの多くは、youtubeのWRMーTVのチャンネルを登録しているだろう(もちろん登録していない人もいるだろうが)。WRMーTVの登録者は約10万人。ただし、家族で卓球をやっている人なら1世帯で1つのアカウントの登録かもしれない(小学生1.5万人はアカウントを持っていないだろう)。その一方で、一人が複数のアカウントで登録しているかもしれない。さらにWRMのチャンネルは海外の登録者も多いだろうから、それらを考慮すると…国内でWRMの動画を見ている卓球大好きな人は8万人ぐらいだろうか。

ネット利用する卓球愛好家8万人

年配の人でyoutubeなどは見ないけれど、卓球が好きでたまらないという人がたくさんいる。そういう人がTリーグを観戦に来るかもしれない。定年退職して時間に余裕のある人ならなおさらである。こういう人はどのぐらいいるだろうか。

youtubeで卓球動画をほとんど見ないけれど、卓球が大好きな人…これは難しい。地方によってずいぶん雰囲気が違うかもしれない。ネットを利用する愛好家が7万だとすると、思い切り主観になってしまうが、社会人の練習場に10人いたら、3~4人は卓球動画をチェックしていない人がいそうな気がする。8万人の30~40%で、ざっと2~3万人ぐらいいるとすると、実質的な卓球人口の合計は8万+3万で11万人ぐらいだろうか。それを47都道府県で割ると、1県あたり110000÷47=2340人ほど。

熱心な卓球愛好家数約11万人

こういう人は日時や場所などの条件さえ都合が付けば、観戦に行くかもしれない。ただ、電車で片道2時間かけて、3000円近いチケットを購入するとなると、きっかけがないことにはなかなか足が向かないのではないだろうか。

さらに多少遠くても観戦に行く、卓球を愛してやまない、卓球こそが人生、卓球がアイデンティティーになっている最もコアなファンはどのぐらいだろうか。

xia氏のブログのアクセスカウンターを見ると、特別なイベントがない、平常時は1500人ほどが閲覧しているようである。古いデータだが、伊藤条太氏は自身の2009年横浜大会の速報を読んでいた人について「おそらく多くて500人程度だろう」と述べている。

ここから想像するにいつも卓球のことばかり考えている、ピンキチと言えるほどの熱心な卓球人(卓球の実力は関係ない)の人数は全国で3000人程度ではないかと推定するが、あまり自信がない。

卓球依存症3000人

明けても暮れても卓球のことばかり考えている卓球バカ(上級者は案外卓球に対して冷めている人もいるかもしれない)が1県あたり、平均64人ほど生息している計算になる。もちろん人口の多い県なら100人を軽く超えるだろう。人口ランキングではちょうど中間の23位が熊本県176万人、24位が鹿児島県162万人である。これらの県で64人ほど卓球依存症の人がいれば、私の推計が大きく間違っていないことになる。

以上、私が卓球人口をはじき出した道筋を示した。

1県あたり110000÷47=2340人ほどと述べたが、東京や愛知、兵庫のように卓球人口の多い県ではこの倍の4700人ほどの潜在動員数があると思われる。さらに近隣の県の潜在動員数を同数の4700人ほどと試算すると、大都市圏の潜在動員数は9400人ほどとなる。このうちの何割が会場に来るだろうか。

観戦しやすい日時、会場までのアクセス、チケット代などの条件を最高にしたとして、実際に会場に足を運ぶのは2割の1880人としてみよう。一人で行く人は少ないだろうから、非卓球人の友人などを連れてきてくれるかもしれない。小学生は親を連れてくるだろうし、それプラス、スポンサー企業などの社員で半強制的に応援にいかなければならない人もいると考えると、2500人ぐらいはコンスタントに集められるだろうか。3000人収容の体育館というのは少ないから、これだけ入れば大成功だろう。これが沖縄や東北といった地方都市になると、これほどの人数は集まらないかもしれない。ピザ屋のように「2人目は入場料半額!」とすれば、非卓球人の入場が増えるかもしれない。いや、2人目は無料のほうが誘いやすいかもしれない。観客の大半は中高年なので、若い人を惹きつける工夫も必要である。

ちなみに、ウィキペディアなので数字の信憑性は高くはないが、全日本卓球の観客動員数の平均は「2015年度は25300人(7日間、一日平均3614人)」ということである。伊藤氏のスポーツ新聞の記事で今年の全日本は「史上最高の2万8450人」とあったので、今年の平均は4064人ということになる。最終日やその前日は東京体育館のキャパ1万人近く入ったかもしれない。

zennnihon
昨年度?の全日本決勝。張本選手対水谷選手

卓球の熱心な愛好家の2割に訴えることができれば、Tリーグは成功するに違いない(見込みが甘すぎるか?)

なお、BリーグやVリーグの1試合の観客動員数の平均は公称3000人前後らしい。

数字のことばかり考えたので頭が痛くなった。計算ミスがないことを祈る。

【追記】190106
競技人口を割り出すのは難しい。
世界的に競技人口が多いスポーツについて考察している記事があったので紹介したい。
恐ろしく正確な世界のスポーツ競技人口
この記事でも正確な競技人口のデータがないことから、具体的な競技人口ではなく、2020年の東京オリンピックに参加する国(地域)の数でランキングを出している。結果は

バレーボール、卓球、バスケットボール、陸上、サッカー、水泳、柔道、ハンドボール、テニス…

の順になっている。卓球が2位で、1位のバレーボールとの差も小さいということが分かった。海外ではハンドボールが意外に人気があるのかもしれない。





前記事「Tリーグ・プレミアと庶民感情」でツイッターでのTリーグへの危機感について触れたが、Tリーグ開幕をひと月後に控えた現在、Tリーグに対する関心が急激に強くなってきたように感じる。

琉球アスティーダの早川氏とT.T彩たまの坂本氏を中心にTリーグを盛り上げようという熱意が伝わってくる(逆に言うと、それ以外のチームの監督は、顔が見えてこない…)

先日は「24時間テレビ」ならぬ「24時間卓球」というイベントが開かれたのは、卓球人なら知っている人も多いだろう。今までこういう場がありそうでなかった気がする。

このイベントの果たした役割は大きい。というのは、24時間都合がつかない人というのは少ないから、都心の交通の便利なところで行われるイベントなら30分とか60分だけなら参加できる人はけっこう多いと思う。それであのイベントには卓球関係者が多数参加することができたのだと思う。こういう場を定期的に設けることができれば卓球関係者の交流が密になり、卓球界が大きく発展することになるだろう。ちょうど今回はナショナルチームの合宿とかぶってしまったが、日にちを調整すれば、Tリーガーも参加してくれたかもしれない。

私も録画された動画をyoutubeで見てみたのだが、卓球有名人が多数出演し、おもしろかった。
主催者のかたがた、お疲れ様でした。このようなイベントが毎年の恒例行事となることを期待しています。

ただ、少しだけ要望を言わせていただくと、
年をとると耳が遠くなるので、音量を上げなければ声が聞こえにくかった。しかし、大音量にすると、カメラの近くで大拍手や歓声がしばしば起こり、耳に悪かった。
来年はこの点の改善をおねがいします。

さて、だんだん盛り上がってきたTリーグだが、世間の注目度はどうだろうか?

調査方法の詳細はわからないのだが、グーグル・トレンドで過去30日の検索数の統計を見てみると次のようになる。

Tleague
おお! T.T彩たま坂本氏のツイートが8/17、Lili村田氏のツイートが8/26。8/24あたりから徐々に検索される件数が増えてきたように思う。

だが、残念な結果についても触れなければなるまい。例の大坂なおみ選手との比較である。


大坂なおみ


卓球界ではTリーグは盛り上がってきているが、世間的に見ると、注目度は大坂なおみ選手の1%未満なのである。

数字は数字に過ぎないといえば、それまでだが、世間でTリーグに注目が集まるのはまだ先のことになるだろう。それまで卓球人の地道な努力でTリーグを成功に導きたいと思う(私も職場でさりげなくTリーグを宣伝している)




「Aである」と「Aでない」を分けることが Aが分かるということなのだと

世間で言われるけれど

私は「打てる」ボールと「打てない」ボールが分からない

相手のストップがネットよりもボール2個分浮いた

台から出るロングサーブが来た

どちらも打てるように思える

ストップは下回転がかかっているけれど こういうのを厳しく打つのを見たことがある

ロングサーブはあっという間に私のミドルをえぐるけれど 大丈夫、間に合うはず

思い切り打ってみると なぜかボールはネットにかかったり、オーバーしたり

現実はいつも私に教えてくれる

「それはあなたには打てないボールなんだよ」と

でも私は現実を信じない

何か小さな行き違いがあっただけで ホントは打てるはずなんだ

「根本的に間違っているんだよ」というささやきは 私の耳には届かない

何度も何度も同じミスを繰り返す 私はあきらめず試みる

だって練習の時は入るのだから

「あんなボール打てるわけないだろ」 上手な人に言われて

私はやっと気づく 現実が教えていたことは掛け値なしの本当だったのだと

でも浮いたストップをツッツキで返すのは地味だ

「台から出るサーブは打て」と聞いたことがある

やはり打てるんじゃないか?

現実はいつも私に教えてくれる

「それはあなたには打てないボールなんだよ」と

私は打てるボールと打てないボールが分からない

どうすれば打てるのだろう?

でもこのボールはきっと打てるはず

前記事「しっとりした打球」で山中教子氏の主唱するARP理論の動画をとりあげたが、ARP理論というのはどういうものなのだろうか。あまり販促に興味がないのか、情報が少なく、たとえば高島規郎氏や平岡義博氏のような著名な卓球指導者と比べて卓球界であまり話題にのぼらない(私が知らないだけ?)が、私にはゆかしく感じられる。

adjust

力を抜いてリラックスした自然体での卓球を推奨するのは、体力の衰えた中高年に合っているように思われる。中高年が体力のある若い人と同じような豪快な卓球を目標としていたら、身体を壊してしまう。中高年初中級者の卓球というのは、全国大会を目指している限られた人たちの卓球と同じであるはずがない。勝つための卓球理論や練習法というのがあってもいいとは思うが、それは厳しい練習を必要とし、週に最低5日は練習しなければならないだろう。そういう全国を目指す卓球ではなく、週に1~2回しか練習できない中高年の、楽しむための卓球理論というのも必要だと思う。アープ理論はそういう楽しむための卓球に適しているのではないか(と私は勝手に思っている)

とはいっても、私はアープのDVDを持っていないので、サンプルビデオを見てこの理論の要点を想像してみようと思うのである。それにDVDなりを購入していきなり「正解」を知ってしまったらおもしろくないではないか。ビデオ中の断片的な映像や言葉から、アープ理論がどのようなものか想像するのがおもしろい。

というわけで、ここで私が考えたことはあくまでも私の思い込みであって、「正解」ではないことをお断りしておく。また、引用も私なりの補足・要約があり、正確ではない。

ビデオ(1)

フォアドライブ連打。十分引き付けてから打球し、腕の力も抜けており、ボールとラケットが「ケンカ」していないのが分かる。
山中氏は連打中に動きが止まっていない点がポイントだと言っているようだ。

ビデオ(2)


「頭がボールを追うのではなく、骨盤と床が水平移動するように重心を移動させる」
身体の中心軸が傾いて、頭から先に動き出すような移動の仕方を戒めているようだ。そういえば私はフォア側の遠いボールを打とうとしてとっさに頭を先に出してしまうことが多いが、そうではなく骨盤から先に動かすのがいいということである。上半身から動かして、下半身はあとからついてくるという理論もあるかとは思うが、身体の中心である骨盤を先に動かそうという意識は納得できるものである。

「無意識に中心軸に乗って失敗している人がいるかもしれない」
骨盤をまず移動させる意識でということなので、中心軸をつねに意識して移動するのかと思ったが、軸がずっと中心ではなく、重心を左右に移動させるのがいいということだろうか?


ビデオ(3)

「軸を立てて全身を使っていけばボールが見えて腕の力が抜ける」

右利きがフォアハンドを打つ場合、右足に軸を作り、次に左足に重心を移動させる。すると、右腕の力が抜けるので、そこでフォアハンドを打つということだろうか?軸の移動を先にすれば、小さな力でフォアハンドが早く振れ、次の動きにも連繋しやすいかもしれない。

「腕のスイングが先になっていると、上手にはならない」
「手で時間を合わせる、手で打とうとする、手で加減しようとする、そうすると上手になっても悩んでばかり。(そうではなく)全身を上手に使っていこう」

本当にそうだと思う。腕でタイミングを合わせたり、力加減を変えたりしようとすると、ミスにつながる。腕の力をずっと抜いていたい!しかし現実はつい腕に力が入ってしまう。

ビデオ(4)


「(フォア前フリックは右の)かかとから入って指が効く、(右の)かかとに(重心を)移して(かかとが上がる)、(右足を後ろに引いて、左の)かかとが上がって、左へ体幹を回しながらスイング」
「右の軸に乗って、左足のかかとから左軸に移動していく」
「これがフォアフリックからフォアドライブへの連動」
「かかとという目安(基準)があれば身体を持っていくことができる」
「基準があいまいなままだと、いくらやってもうまくならない」

ここでは足の具体的な使い方が説明されている。踵という基準で身体の動きを決めるというのは分かりやすくてすぐにでも自分の卓球に取り入れられそうだ。なんとなく身体を使って打つのではなく、動きはじめの基準を作るのはいいアイディアだと思う。

ビデオ(5)


「身体の左右が連動して軸移動すること」
「右足に軸を作って、左足に軸を移動させる。当たり前だが、これができていない人が多い。」

台上では右足のかかとから着地し、つま先でふんばった瞬間、左足に重心を移動させるという基本動作がいいとされる。

「(ラリー中)必ず足は動いている。一球ごとにかかとから着地(アジャストステップ)し、つま先を利かせて打球、重心は左足へ。」
「左右を連動させると、身体の芯で打つことができる」
「どこにも力が入っていない、身体の使い方が自然体だから」

「身体の芯」という表現が興味深い。腕の力でスイングスピードを上げるのではなく、身体全体の動きでスイングスピードを上げることを意味しているのだと思う。

ビデオ(6)


「タッチが分かるとスピンが分かり、スピンが分かると軸の移動が分かる。これが本格的卓球の道筋」

タッチの優先順位が高い。これは前記事「しっとりした打球」(あるいは3hit理論)で考察したボールが当たる瞬間に力を入れるタッチを指すのだと思う。私もこのタッチが安定した卓球の基本だと思っている。ただ、上級者の中にはこれに当てはまらない打ち方をする人も多い。


ビデオ(7)


「フォームではなく、タッチこそが基本」
「フォームに合わせて身体を動かそうとするから無理が出る」
「今、『点』が見えたよね?」「はい、見えました」

フォームに合わせようとするのではなく、「点」に合わせようとするのがいいのだという。この「点」が何を指すのかはっきり分からない。

ビデオ(8)


「ラリー中心の基本練習と実戦的な練習は全く違う。時間やタイミング、作戦の要素が入ってくる」
「レシーブしたら、すぐ戻らなければいけないというのが常識。しかし、それは実戦ではできない。間に合わないから」
「(こちらが)打ったら、返球されたボールに合わせて「タッチ」する。その時にボディーワークで身体がついていく。特に足の運動をつけていってあげると、タッチで打てる」

ここで言う「足の運動」というのは、上に挙げた、かかとから着地し、つま先でふんばっておいて、左足に軸を移動させることを指すのだろうか?


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以上、断片的な情報からアープ理論の主張について考えてみたが、要点を私なりにまとめれば以下のようになるかと思う。

・タッチが最も重要、次にスピン(これがあいまい)、次に軸移動(下半身)
・ボールを弾き飛ばさない軽いタッチを重視
・軸移動によって身体全体を使う
・移動時は腰骨を中心に、頭はずっとまっすぐ立っている
・身体のどこにも力を入れない(特に腕)
・特定の部分に力を入れないから、体勢が崩れない

世間で注目される、勝つための卓球理論とは必ずしも同じではないかもしれないが、こういう年齢を問わず実践できる卓球理論は高齢化が進む日本では大きな意味のあることなのではないかと思う。

【付記】
北海道の停電が9日現在、ほぼ復旧したようだ。
まだ不便な生活を送っている人も多いが、ちょっと明るいニュースだった。
北海道の一刻も早い復興を願っている。


今朝、北海道で震度6強の大地震があったと聞いて飛び起きた。

おとといは京都でも暴風で被害が出たが、停電は一部にとどまり、現在は復旧している。

しかし、北海道では電力の復旧の見通しが立たないのだという。一部ではない。全道でである。

今の日本でこんな広い地域が停電でいつ復旧するか分からないなんて信じられない。これが関東や関西だったら、長くてもせいぜい1週間もすれば停電は完全に解消されるところだろう。

北海道には行ったこともないし、知人もいないが、マンガ『銀の匙』で、田舎の方はずいぶん貧しいイメージがある。

silver spoon


私も貧しさにかけては人後に落ちないが、天候に収入が大きく左右される農家の方がたの生活は大丈夫だろうか。去年は台風で農業に大きな被害が出たが、今度は家も壊れるし、電気も使えない(ということはトイレや水道も使えない?)となると、仕事にも影響が出るし、生活が立ち行かなくなる。私の貧しさなどとは比べ物にならないだろう。

私もできることはないかと、ネットで寄付を探してみたら、ヤフーで

【寄付が2倍】平成30年9月北海道地震緊急災害支援募金(Yahoo!基金)

というのを見つけた。本当にささやかながら寄付をさせていただいた。

卓球関係ではWRMのはじめ氏が被災したらしい。第一報ははじめ氏のツイートからだった。ぐっちぃ氏もブログやツイッターですばやく反応している。

まだ情報が部分的でどんな状況か分からないが、北海道の被災者のみなさんにお見舞い申し上げる。

卓球大好きな読者の皆さんはすでに「むらじの部屋」(松平賢二選手との対談)全4回をご覧になったかと思う。

 
https://www.youtube.com/watch?v=RDecMXT2w00

これですよ! これこそ私が求めていたトップ選手による情報発信である。
前記事「送り手と受け手のギャップ」でトップ選手ならではの卓球観を発信してほしいと主張したが、賢二選手の動画にはそのような情報が溢れている。どういう練習をしてきたか、転機となったのはどんなできごとか、ライバル選手の強さの秘密、卓球の難しさ等など。

kenji

単に情報の価値が高いというだけでなく、賢二選手は話がうまい。頭もいい。それは聞き手の村田氏にも言えることだが、この二人の対談を多くの卓球人が待ち望んでいたのは動画のコメント欄からもうかがえる。なんならTリーグに村田氏をゲストで呼んで、「むらじの部屋」をTリーグ会場でやってもらえれば、試合に花を添えることになるのではないだろうか。こんなおもしろい対談をyoutubeで無料で配信するのは、ありがたいが、ちょっともったいない気がする。

それはさておき、内容についてであるが、私の心に突き刺さるようなすばらしい言葉がたくさんあった。そのうちのいくつかを紹介したい。

「フットワークはいつの時代も必要な練習」
「大切なのはサーブとフットワーク練習」

やっぱりフットワーク練習は大切なんだなぁ。「フットワーク練習は自己満足に過ぎない」などという意見も聞いたことがあるが、そう言う人はおそらくフットワーク練習をやり尽くして、もう練習の必要のないぐらい極めてしまった人なのだろう。賢二選手がやりこんだ練習はフットワークとサーブだという。いくらフットワークがよくても、最初のサーブがまずくて相手に主導権を握られてしまうなら、フットワークを生かすこともままならないということなのだろう。そういえば先月号の『卓球王国』で水谷選手も基本的なフットワーク練習を勧めていたっけ。

また、賢二選手はロングボールから始めてフットワーク練習をするのではなく、レシーブや3球目から始めてフットワークにつなげる練習がより効果的だと述べている。私もいつか「吐くぐらい」フットワーク練習をしてみたいものだ。

「ブロックできたらレシーブもうまくなる」
「そんな厳しいレシーブしなくてもいいという安心感が生まれると、変なミスが減る」

レシーブが下手な人はブロックに自信がない人が多く、3球目を相手に打たれるのを過度に恐れているためレシーブを厳しく返そうとしてミスしてしまうのだという。逆にブロックが上手なら、相手のサーブをとりあえず入れておけば、次でブロックできると思えるので、プレッシャーのない、力の抜けたいいレシーブができるのだという。
これはツッツキにも言えることだろう。ツッツキというのもブロックとセットなのだと最近よく思う。ツッツキはどうしても打たれてしまうので怖いと以前は考えていて、台上ではツッツキを避けてストップやフリックばかり使っていたのだが、ブロックがきちんとできればツッツキを送るのはそれほど怖くないということが分かってきた。ツッツキが深く、速ければ、あるいはコースがよければ、そんなに厳しく打たれることはまずないからである(私のレベルでは)。そう考えると肩の力が抜けて、リラックスしてツッツキができる。そうするとツッツキの質も高くなり、相手に厳しいドライブを打たれることも減る。相乗効果である。


「今の時代ストップ・ツッツキが大事」

ふつうの人のストップは入れるだけなのであまり切れていないが、馬龍選手のストップは非常に切れているので、それをネットにかけまいとこちらがちょっと余裕を持って面を開け気味にして返すと、回転のかかり具合によっては、ほんのちょっと浮かせてしまう時がある。それを一発で持って行かれるのだという。先手を取るというのはこういうことなのだと気づかされた。相手の台上が上手く、なかなか先手を取らせてもらえないとき、相手のちょっと浮いたボールを台上でドライブできるというのは私のレベルでも練習する必要があるかもしれない。
馬龍選手はチキータやフリックをあまりせず、ストップやツッツキでオーソドックスな卓球をするので隙がないのだという。まず相手に軽く打たせて、それを待ち構えて強打でしとめるらしい。こんな卓球を私もやってみたいが、そのためにはストップとツッツキの質を高めなければならない。

他にも岸川選手の天才的なボールタッチや中国選手の用具の「仕上がり」、「ボールを食ってる感覚」など、興味深い話題がいくつもある。まだ見ていない人にはぜひ視聴をおすすめしたい。

台風の接近で仕事が休みになり、うちで徒然なる時間を過ごしていると、ブログでも書いてみようかという気分になってくる。

なんだか最近、更新が多いなぁ。週に2回ぐらいのペースだ。なかなか練習ができないフラストレーションがそうさせるんだろうなぁ。

卓球がうちで一人でできたらなぁ…。

しかし、ビデオゲームのようにうちで一人で好きなだけ卓球ができるなら、私は絶対引きこもりになってしまうだろう(前記事「魚、水中にありて水を知らず」)。

一人では練習できない卓球に、そして二人いれば練習できる卓球に感謝!

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なんか風がすごいことになっている。
雨は大したことないのだが、今まで経験したことのないほどの暴風が京都を襲っている。
家の前の街路樹の枝が何本も折れているし、ガラス窓が風圧で歪んだりしている。
風による地響きが聞こえる。
これでは住宅への被害はかなり出ているはずである。
ネットのニュースを見ると、大阪の関空のあたりでも被害が出ているらしい。

これから北陸、東海地方へと台風の中心が移るということだが、みなさん十分に用心してください。
台風一過

16時過ぎ、ようやく台風が通り過ぎ平穏が戻った。

アジア大会2018が終わった。
日本勢は残念ながらメダルなし。男子団体ではインドチームに敗退するという番狂わせもあった。
アジアは卓球のレベルが高いので、一軍の選手を欠いたメンバーならこの結果もやむを得ないところだろう。そうでなくても大きな大会というのは何が起こるか分からないものだ。

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私は上田仁選手が大好きである。

京都府出身というのもあるが、性格的にも浮ついたところがなく、実力的にもきちんと結果を残してくれるので、日本代表の精神的な支柱といっても過言ではない。

その上田選手のツイートにこんなものがあった。

bikkuri

「インドツイート」というのは下のツイートを指すのだろう。

indo

「思いのほか反響があって」というのはどういうことなんだろう。
私は全く「思いのほか」ではないと思う。
格下のインドチームに敗退するのは何かわけがあるはずだ。しかし、一般人はどうして日本チームが負けたのか分からない。その、いわば種明かしをしているのが「インドツイート」ということになる。

”インド人は子供の頃にまずブロックを学び、ミスせず台に入れることを重んじるため、ブロックの質が高い。ブロックがインド卓球のおいては基本であり、攻撃はそれができた上で身につける技術である。”

敷衍すればこうなるだろうか。

こんな意味のあるツイートが反響を呼ばないわけがない。呼ぶべくして呼んだ反響なのである。

このツイートを見た一般卓球愛好家は、「攻撃よりも、まずミスせず入れることが大切なんだ。その意識で練習を積めば、格上の日本代表にさえ勝ててしまうんだ」ということを学んだだろう。あるいは自分の卓球にもこの意識で臨もうと決心した人もいるかもしれない。こんな有意義なツイートはなかなかお目にかかれるもんじゃない。さすが上田選手である。

しかし、上田選手はなぜ「思いのほか」だと思ったのか。私は想像をたくましくしてこんなことを考えてしまう。

トップ選手は、自身のどんな情報発信が歓迎されるか知らないのではないかと。

前記事「もしかして卓球に飽きちゃった?」でトップ選手のブログのトピックにイライラするという記事を書いたが、こう思うのは私だけだろうか?みんな卓球選手のおススメの店とか、卓球選手の週末の過ごし方に興味があるのだろうか?私なら、「きのう××ちゃんと飲みに行った」「最近のマイブーム」といったツイートには全く興味がない。読もうとも思わない。郵便受けに毎日入っている不動産広告のようなものである。そうではなく、私は上田選手のツイートのように卓球の奥深さを教えてくれるようなツイートを切望している。

なんなら、終わった試合を振り返って感想戦をやってもらえるなら、これにすぎた喜びはない(前記事「本人による解説」)。

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