しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




2018年02月

当ブログでは皆様からの寄稿を募集しております。卓球について意味のある主張を発表したい方はshirono.tatsumi◯gmail.comまで原稿をお寄せください。

コメントについて:
コメント欄は他の読者が読んで意味のある情報交換の場としてご利用ください。当ブログの方針(察してください)に沿ったご意見は公開します。返信しにくい場合は公開のみとさせていただきます。指導者ではないので、技術的な質問には答えられません。中傷等は論外です。なお、メールアドレスは公開されません。

卓球指導の実存的アプローチ

いろいろな人に話を聞いたシリーズ第3回は大学の先生から聞いた話である。

寿司職人の世界では「飯炊き3年握り8年」と言われるらしい。

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うなぎ屋でも「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」という言葉があるという。卓球で言えばどうなるだろう。
フォア打ち3年、ハーフボレー3年、ブロック3年、ツッツキ3年、フォアドライブ3年、バックドライブ3年、サーブ…この調子で行くと、試合に出られるようになるのに20年以上かかってしまう。
職人の世界では、毎日やって「飯炊き3年」で、その間は他の仕事はさせてもらえない(たぶん)わけだから、その密度たるやすさまじいものがある。卓球でもフォア打ちだけを3年間毎日5~6時間も続けたら、さぞいろいろな発見があることだろう。

徒弟制度の指導のアプローチというのは、先輩が模範を見せて、その一つの技術が完璧にコピーできるようになってはじめて次の段階に進めるということなのかなと思う。こういうやり方が性に合っている人もいるかもしれないが、私には無理だ。

一方、全く正反対のアプローチの教育を受けて成功した人も私は知っている。
中国人のQ先生は、流暢に日本語を操り、日本語で研究論文も発表しているが、Q先生が受けた教育はこんな教育だったという。

日常会話に毛の生えた程度の日本語しか話せない状態で日本の大学院に留学したところ、親切丁寧な指導などは全くなく、いきなり専門的な論文を読まされ、あまつさえ同程度の研究発表を要求されたのだという。卓球で言えば、公立の中学校の卓球部員が日本リーグ加盟の実業団の卓球部に入部して試合をさせられるようなものである。まず論文が読めない。中国人のアドバンテージで漢字からなんとなく意味を類推できるが、それでもほとんど理解できない。にもかかわらず1ヶ月後に怖~い先生の前で日本語で意味のある発表をしなければならない。怖い先生は自分の研究で忙しく、何も教えてくれない。どうすればいいのか。例えば私が今、ハーバード大学だの、スタンフォード大学だのに留学し、1ヶ月後に英語で専門的な発表をしろと言われたら…無理に決まっている!

Q先生は先輩や友人からいろいろアドバイスをもらい、自分のできることを定め、その一点に集中して調査をし、なんとかゼミ発表までこぎつけたが、当然のごとく大失敗で、怖い先生からはその発表内容に対してネチネチと罵詈雑言を浴びせられた。しかし、そのような大失敗を何度もくり返すうちに数年後にはなんとか専門的な研究論文を読めるようなり、発表もできるようになったのだという。

専門的な日本語が全く分からない状態なのに数年後には専門的な研究発表ができるようになったQ先生。こういう例はQ先生が中国人で、漢字がよく分かるというアドバンテージを活かした稀なケースといえるかもしれないが、他にもこういう例を思い出すことができる。

ドナルド・キーン氏は日本文学研究の泰斗と言われるすごい人だが、氏はもともとアメリカ人(近年日本に帰化)で母語は英語である。にもかかわらず日本人でさえ読めないような古代の日本語から近現代の文学作品まで読みこなす日本語読解力は日本人以上と言える(ただ、講演会で実際の話を聞いた時、発音はそれほど流暢ではないという印象を受けた)

古事記を翻訳したチェンバレンや源氏物語を翻訳したアーサー・ウェイリーなども同様である。おそらく彼らは先生の指導を受けながら一つ一つの段階を順番にクリアして最終的に古事記なり源氏物語なりを翻訳したわけではなく、日本語がそれほど上手でない状態でいきなり古代日本語と向き合い、どうすればいいかを模索しながら手探りで翻訳していったのだと思われる。

職人のアプローチが先生の技術をコピーして一つ一つを完璧にした上で次の段階へ移るというやり方なのに対して、Q先生のアプローチは能力的には不十分でも難しい課題を設定し、それを達成するためにどうすればいいかを自分で考えるというアプローチだったと言えるのではないだろうか。

これを卓球で考えるとどうなるか。
私が明治大学や専修大学の卓球部に入部して…というのは、そもそも大学の卓球部に入部できないから無理である。そんな高いレベルでなくとも、身近にいる強い人と試合をさせてもらうというので十分だ。おそらく1ゲームあたりせいぜい3~4点しかとれないだろう。サーブが返せない、返せても3球目で強打されて終わり。こちらのサーブは2球目で強打。あるいは厳しくレシーブされて、4球目で強打されて終わり。どうすればいいのか。まず相手のサーブを厳しく返球できるレシーブ力を身につけなければならないし、容易に強打されないようなサーブ力を身につけなければならない。

これまでなら、強い人と試合して負けても、「勝てるわけない」などと思ってしまい、自分に欠けている技術や相手の攻撃を防ぐ戦術などあまり反省することもなかったが、強い人に絶対に勝つという目標が定まればおのずと自分がすべきことも見えてくる。サーブを磨き、レシーブを厳しくするというのがまず第一の課題である。そしてその課題をなんとかクリアしたとしても、やはり強い人には先手を取られて強打されてしまうだろう。となると、どんなボールでも確実にブロックできるブロック力が重要になってくる。ここまでがきちんとできないと、強い人と試合をしてラリーにまで持ち込めない。

まず、サーブとレシーブの向上が第一段階で、次の段階がブロック力の強化である。

あれ?なんだか職人の段階的なアプローチに近づいてきたぞ。となると、職人的なアプローチも、Q先生のアプローチも大差ないということになるのだろうか。いや、違う。私は今、難しい課題に対して自分で解決法を考え、それを高いモチベーションで実践(練習)に移そうと考えている。職人的なアプローチなら、たぶんこれほどの高いモチベーションは湧いてこなかっただろう。指導者が模範を示し、そのとおりにマネをする、というアプローチではおそらく当事者意識が湧いてこなかったと思う。「コーチの言うとおりにしていれば、自然に強くなる」というあなたまかせの練習では、「やらされてる感」しかないだろう。それに比べてQ先生のアプローチでは自分で課題を発見し、その解決法を自分で考えるというプロセスがあり、「頼りになるのは自分だけだ」という切迫感のようなものがある。このような意識が上達には非常に有効なのではないかと思われる。

教育しうるのは気づきのみである」(カレブ・ガテーニョ)。


フォア・バック足りてフットワークを知る――三歩動への疑問

若い頃、バレーボールで全国レベルだった人の話をきいて、いろいろ参考になったので紹介したい。

今年の京都は寒さが厳しいが、その日はとりわけ寒い日で、私とBさんは屋外で話をしていた。

私「最近寒いので、光熱費がとんでもないことになってるんですよ。これじゃいかんと思って部屋の中でできるだけ身体を動かすようにしているんです。身体をちょっと動かすだけで、暖房なんかいらないぐらい身体が温まりますからね。」

B「試合会場でも身体が冷えていると、いいプレーができませんよね。」

私「そうそう、最近毎日ストレッチをするようにしているんですよ。Bさんも現役のときは試合前にストレッチを入念にしたんでしょうね。」

B「いえ、しませんよ。試合前の体育館でストレッチをしている人がときどきいるけれど、私に言わせれば、『なぜここで?』って感じですよ。ストレッチなんて朝起きたときにしておくものですよ。試合会場に来たら、アップしなきゃ。」

Bさんによると、バレーボールでは、試合前にランニング等のウォームアップを行い、いつでも最高のパフォーマンスを出せるように身体を温めておくのだそうだ。あれ?卓球ももしかしたら同じだろうか。私はストレッチさえろくにしないで試合に臨んだりすることもよくあるのだが…。

B「アップもしないでいきなりボールに触るなんて言語道断!なんで試合会場でいきなりボールを使った練習をする人が多いんでしょうね。ボールなんて毎週触っているんだから、感覚がないなんてことはないのに。試合前にはとにかくアップ!」

Bさんは若い頃に鳴らした腕前だから、週に1回の練習で十分なのかもしれないが、ふつうの人は試合前にボールの感覚に慣れておきたいと思うのではないだろうか。Bさんからすると、開会式の前にボールを打ち合って打球感覚を確認している卓球人の行動は理解できないことだろう。

私「バレーボールのアップってどんなことするんですか?回転レシーブの練習とか?」

B「ダッシュとか、フットワークですよ。フットワークは卓球でもするでしょ?」

私「はい。サイドステップで数メートル往復する練習を中学の時よくやりました。」

と身体が冷えてきたので、その場でサイドステップで往復してみる。

私「こうすると、すぐに身体が温まりますよ。」

B「そのフットワークじゃダメでしょ。サイドステップっていうのはこうやるんですよ。」

Bさんがその場でサイドステップを実践してみてくれたのだが、私のサイドステップとぜんぜん違う。



私のサイドステップは上の動画のようにポヨ~ンポヨ~ンと軽くジャンプしながらリラックスして移動するのだが、Bさんのサイドステップはザッザッザッと小刻みで速い。このフットワークをどこかで見たことがある。


Table Tennis - Chinese Footwork

そうだ!この動画だ。私のサイドステップは右足と左足を近づけてのんびりと横移動をするのだが、この中国選手は脚を大きく開いたままで細かく素早く移動する。これぞまさにフットワークである。こういうフットワークを身に付けたい。最近、フォアハンドもバックハンドもかなり安定してきたので、次はフットワークの改善を図ろうと思っていたところなのだ。

うちに帰ってバレーボールのフットワークの動画を探してみたのだが、いいのが見つからなかった。代わりにバドミントンのフットワークの動画を発見した。


「前後左右のフットワークの効率的な練習法はありますか?」

バドミントンのオリンピック日本代表の井川里美氏の指導動画なのだが、私の疑問にちょうど答えてくれるようなくだりがあった。
https://youtu.be/2D7QKKaRySM?t=105


横に飛ばす

「横に飛ばすサイドステップならいいんですけど」

「上に上がってしまうサイドステップになってしまうと、上がる分がどうしてもロスになってしまう」
上に上がる

説明は下の動画のほうがより詳しい。

「素早く動くための構え方や動き方を教えてください。」

ポイントをまとめると、

・軽い前傾姿勢(猫背はダメ)。
・腰はあまり落とさない。
・ヒザを軽く曲げておく。
・脚の力を抜いておく。
・重心は左右どちらにも動けるように中心に。
・進行方向の反対の足の拇指球でフロアを蹴る(外側に蹴る)ことによって素早く動く

最後のポイント「拇指球でフロアを蹴る」についてだが、補足が必要である。
例えば右利きの人がバック側に回り込むときなら、一度身体をフォア側(右側)に軽く傾けて、体重を右足にしっかりと乗せてから素早く右足で床を蹴って左側に移動するといいらしい。つまり動き出しの時、一瞬、進行方向と反対に動くのだ。素早く動けるかどうかは、右足の蹴りの力が強いかどうかで決まるのだという(左に移動するとき)。

私は回り込みの動き出しの時、まず左足を軽く踏み出して、左足で右足を引き寄せるように移動するという、いわゆる「三歩動」で横移動をしていたのだが、他の競技ではこの三歩動という言葉をあまり使っていないようだ。三歩動というのは本当に有効なのだろうか。Bさんや中国選手や井川氏のザッザッザッという小刻みのフットワークは三歩で1セットの動きには見えない。下の吉田選手の動画を見ても、ちゃんと三歩セットで動いているようには見えない。両足を同時に動かしているように見える。そして井川氏が言っていた右足を蹴るかどうかについても言及がない(中国選手の動画ではあまり蹴りを使っているようには見えないが)。

左へのフットワーク


「左右のフットワークの基本」


【卓球ライジング】フットワーク

どうして卓球のフットワークでは三歩動が標準となっているのだろう。バドミントンではそのようなことをあまり言わないようである。
初心者が足の動かし方が分からないというときに、いろいろな「正しい」ステップがあって教えにくいから、とりあえずの標準になるものとして作られたのだろうか(例えば漢字の書き順のように)。上の卓球ライジングの動画(村松選手のステップをみると、バック側へは三歩動っぽい動きをすることが多いが、フォア側へ動くときは両足を同時に動かしているように見える)のように基本練習をしているときは三歩動が適しているのかもしれないが、実戦では三歩動が機能しない場面も多いのではなかろうか。

三歩動がどうして卓球では標準になっているのか私には分からない。ご存じの方がいれば、ご教示いただけるとありがたい。

身体のバランス――スケートから学ぶ

動くのもままならない状態で、私はなぜこんなところに立っているんだろう。

アクアリーナ

連休中に知人にスケート場に連れてきてもらったのだった。

スケートは小学生の時、1回だけやったことがあったが、それきりで、完全な初心者である。おそらくまっすぐ滑るぐらいならできるだろう。

京都アクアリーナ。ここは夏はプールで、冬はスケート場になる。あ、冬でも温水プールはやっているか。阪急電車の西京極駅下車。以前、日本リーグを観に来た場所だ(前記事「みにいくつもりじゃなかった」)。入り口で入場券を買う。靴のレンタル料込みで2050円!高い…のか?時間制限はないから、9時から21時まで楽しめると考えれば、高いとは言えない。しかし、ふつうは2時間も滑れば十分だろう。卓球なら2時間で一人1000円強ということを考えると、ちょっと割高な感じは否めない。

連休とあってスケートリンクはずいぶんにぎわっていた。こんなに人がウヨウヨいるところで私のような初心者が人にぶつからず、ちゃんと滑れるんだろうか。玉突き事故でも起こすのではないか。それ以前に、スケートというのは本当におもしろいんだろうか。ただグルグル回っているだけじゃないか。他のスポーツを体験することによって何か卓球に益することもあろうかと思って来てみたのだが、みんなグルグル滑っているだけで楽しそうには見えない。20~30分も滑れば飽きてしまいそうだ。

「スキーは足の形を八の字にすればいいですが、スケートは逆の八の字、つまり前のほうが開いた形で滑るといいですよ。」

なるほど、なんとなく私にもできそうな気がしてきた。

リンクに降りて、一歩足を踏み出したとたん、その考えが甘かったことに気づいた。軽く一歩、いや、半歩踏み出しただけにもかかわらず、仏倒れしそうになってしまった。滑るどころか、動くことさえできない…。

「はじめから滑ろうとしてはいけません。足を逆八の字にして、ペンギンのように左右に身体を傾けてヨタヨタ歩いてください。足を高く上げてはいけません。ほんの数センチ上げるだけでいいですよ。」

知人の教えてくれたように、ペンギンのように直立して足を曲げずに少しずつ歩いてみる。なんとか倒れないでいられる。滑るというより、カツカツと足踏みをしているだけと言ったほうが近い。ペンギンの歩く姿をイメージし、脚をまっすぐにして体全体を右、左と軽く傾けていると少し前進する。

あ、滑れるかな?と思った瞬間、バランスを崩してまた倒れそうになる。

そんなことを数十分繰り返していると、少しずつ、コツが分かってきた。これは卓球でいうところの体幹を使ってスイングするのに似ている。足首や膝といった脚の先端寄りの部分が主導して脚全体を動かそうとするとバランスを崩しやすい。卓球で言えば手打ちのようなものである。そうではなく、もっと身体の中心に近い部分――股関節、いやもっと上の臍下丹田あたりから下半身を動かそうとするとバランスが崩れにくい。そして次第に足のスタンスも広くなってくる。はじめのうちは棒立ちに近い形で滑っていたのだが、足を大きく開き、ヒザをやや曲げ、重心を低くすることによって、倒れにくい安定した姿勢になる。

それにしても足が痛い。私の靴のサイズは26.5だが、余裕をもって27センチのスケート靴を借りたところ、足に合わず、20分も滑ったら、足が痛くてたまらなくなってきた。靴借り場で26.5の靴に取り換えてもらう。すると、かなり足の痛みがマシになった。卓球でもサイズに余裕のあるシューズはよくないのだろうか(あとで26センチも試してみたが、纏足の苦しさが分かるような気がした)。

またリンクに降りて、滑ってみる。脚を大きく開き、臍下丹田に力を込め、猫背のような姿勢をとってみると、さらに安定することが分かった。少し滑れるようになり、今度はペンギンのように体重移動するだけでなく、片足ずつ外側に押し出すように滑ってみる。ここまで来てやっと「滑っている」と言えるぐらいになった。

楽しい。ただグルグル回っているだけなのにいくらやっても飽きない。周りで滑っている初心者もキャーキャー言いながら楽しんでいるようだ。どうしてこんな単純な運動が楽しいのだろうか。ひるがえって卓球で初心者同士が自由に打って1時間以上楽しめるものだろうか。初心者はラリーがあまり続かないので、せいぜい1時間ぐらいで飽きてしまうのではないだろうか。卓球も何か初心者が長時間楽しめる工夫がほしいものだ。スケートは足の動かし方や、重心などのちょっとした工夫がすぐに滑りに現れるので初心者が取り組みやすいスポーツなのかもしれない。

2~3時間悪戦苦闘して、なんとか私も滑れるようになってきた(うまく止まれないが)

テレビで見たスピードスケートの選手のように上半身を低くして、腕を振り子のように振ってスピードを出してみる。

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あ、この動きはフォアハンドドライブを打つときの少し近い。これはきっとスポーツを問わず、身体に力を入れやすい、理に適った姿勢に違いない。このイメージでフォアハンドドライブを打つといいドライブが打てるかもしれない(ただ、卓球の場合はこんなに上体を低くしてはいけないかもしれない)

卓球でもよく

「姿勢を低く」
「足を使って」
「腹に力を込めて」

などと言われる。私もこういうことを思い出しては試してみるのだが、なんだかしっくりこなかった。頭ではこうしたほうがいいとは分かっているのだが、実際にやってみると違和感があった。

しかし、このスケートのときのイメージで後日フォアハンドドライブを打ったら、違和感をあまり感じなかった。姿勢を低くするというのも、今まではなんだか義務のように無理やり前傾姿勢をとったり、低い姿勢をとろうとしていたのだが、スケートをイメージすることで、その姿勢が自然に感じられる。スケートはバランスのとりかたがデリケートで、不自然な重心移動や脚の先端の力みがあると、それがすぐに転倒に直結する。身体のバランスを意識するのにスケートは有益なのではなかろうか。

スケートのイメージで卓球をすると、身体のバランスを崩さないような低い姿勢が受け入れられるようになるかもしれない。脚の先端に力を入れると転倒しそうになるから、腹に力を入れて足を踏ん張るとか、身体に軸を作るとかすると、身体のパーツが有機的につながってくるように感じられる。

それから滑っているときに感じたのは、ドッヂボールでボールをおなかの辺りで受け止めるような感覚で滑ると、より安定するということである。

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このようにおなかにボールを受けるようなイメージで卓球のボールを迎えるのも効果がありそうな気がする。

スケートの経験が卓球に役立つかどうかは人によるだろうが、私は身体の重心やバランスを考えるきっかけになり、2050円の元はとれたように感じた。スケートに限らず、他競技のイメージで卓球をすると、思わぬ発見があるかもしれない。

レシーブは足

前記事「フォロースルーは何のため?」に引き続き、ピンレモさんの動画を観て、また参考になったことを記しておきたい。
https://youtu.be/ptm223_JSYE?t=695

よく「レシーブは難しい」とか、「レシーブが苦手」などということを聞く。私も打ちなれていない人のサーブをレシーブするのは非常に苦手である。

レシーブ練習として玉木コーチが与えた課題は、ナックルサーブをフォア前、フォア奥、バック前、バック奥の4点にランダムで出すというものである。そこにさまざまな回転のサーブを出すのではなく、回転はナックル限定。ここが肝心である。回転は分かりきっているので、回転を気にせずにレシーブに専念することができる。なので難しいことはないと思うのだが、ピンレモさんはときどきミスをする。

レシーブのフットワーク

コーチは力を抜いて4点にさほどスピードのないナックルサーブを出すのだが、4~5本に1本ぐらいはミスとなる。さらに、なんとか返球できたにしても体勢が崩れてしまい、素早く戻れていない場合もある。見ているとあまり難しそうではないが、やってみると意外に難しいのだろう。

「レシーブは難しい」とはちまたでよく言われていることである。上級者もそのようなことを口にする。私はその言葉の意味を分かりづらい回転のせいで、低く短く返せないとか、攻撃的に返せないといった意味だと理解していたのだが、回転が分かりきっているいるのにミスをするというのはどういうことだろう。

以前どこかで聞いた言葉を思い出した。

「レシーブは足ですよ。」

レシーブミスはブレードの角度とか、身体の向き、打球タイミングといったことだけが原因だと思い込んでいたのだが、それだけでなく(それよりも?)、ポジショニングが原因の場合も多いということである。初中級者のレベルでそれほど分かりにくいサービスは少ないから、私のレベルでレシーブがうまくできないというときは、打ちやすいところまできちんと動けていないことが原因である可能性が高い。それで詰まったり、つんのめったり、腕を伸ばしきってしまったりしていたのだ。

また、フットワークというと、フォアからバックまで幅広く動くフットワークをイメージしてしまうが、初中級者が実戦でそんな派手なラリーまでたどり着くことは稀だ。それ以前の3球目や4球目でたいていのラリーは終わってしまう。ならばそんな大きなフットワークを磨くよりも、レシーブの細かいフットワークを磨いた方がずっと役に立つのではないか。大は小を兼ねるというから、大きく動ける人は小さく動くこともできるというのはありうる話である。しかし、たとえ大きなフットワークの練習をしているときも、念頭にあるのはまず第一にレシーブ時の小さなフットワーク――小さく動いて素早く戻る――であるべきだ。

【追記】
レシーブと同様、一見フットワークをあまり使わなそうなブロックも、もっとフットワークを使わなければと反省させられることが多い。

フォロースルーは何のため?

ボールを打ち終わった後のフォロースルーというのは、意味がないと思っていた。
ボールを打つ前、あるいは打つときが重要なのであって、打ち終わった後にどんなフォローをしようがボールに影響はない。だから技術指導記事や動画などで「フォロースルーをしっかり振り切ってください」などと言われるのに違和感を感じていた。

フォロースルーが大きくなると時間がかかって次の打球に間に合わなくなるし、大きく腕が動くことによって体のバランスも崩れる。だから私のフォロースルーはいつも顔の前ぐらいで止まっていた。


レシーブ基礎と切り返し(玉木コーチ)

最近、このピンレモさんのレッスンを受けるシリーズにハマっているのだが、この動画にフォロースルー問題のヒントがあった。

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左利きの玉木コーチとバック対バックのラリーを数本続け、ときどきフォアに行くボールを飛びついて打ち、またバック対バックのラリーを続けるという練習なのだが、ピンレモさんはバックのワンコースのラリーは続けられるが、不意にフォア側にボールが行くと、反応が遅くミスしてしまう。

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玉木コーチに「ボールではなく、相手のラケットを見ていれば、反応できる」と教えられ、フォア側のボールに素早く反応し、返球できるようになったのだが、今度はバック側に戻るのが遅れてしまう。

それからしばらく練習が続き、ピンレモさんはフォア側に飛びついてから、素早く戻ってバックのラリーが続けられるようになってきた。

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そのとき私は見た、ピンレモさんのフォロースルーが左足と連動していたのを。

ピンレモさんがフォア側に行った後、体重はどうしても右足にガッツリ乗ってしまう。そのままの状態で打球し、スイングを終えてから、体重を左足に移して、バック側に戻ると次のバック側のボールに間に合わない。フォア側に飛びついてバランスを崩しているところで、フォロースルーを大きくとって、フォア側に行った体重を、バック側に引き戻しつつ移動すれば重心のバランスが回復し、かつバック側にも素早く戻れるということではないか。

フォロースルーを大きくとることのメリットとして、崩れた身体のバランスを整え、フットワークが向上するという働きもあるのだと思われる。フォロースルーの役割は他にもいろいろあるだろうが、そのうちの一つが分かっただけでもよしとしよう。上半身のフォロースルーが一番離れた部分である下半身の動きに大きく影響するというのがおもしろい。




楽しい卓球教室――Lili 神楽坂の卓球スタジオ

先日、若い人と一緒に木屋町(京都の飲み屋街)のパブに行った。
私は飲みに行くというと、居酒屋で飲み放題、コース料理付き3000~4000円が一般的なのだが、今回は若い人の希望もあってパブに行ったのだった。昔、ロンドンに行ったとき、せっかくだからとパブに行って本場の雰囲気を味わったことがあるのだが、木屋町のパブもロンドンと同じような感じだった。

まず、入ってすぐのカウンターでドリンクを注文する。
ビールやらカクテルやらを1杯500円ぐらいで注文する。高い。私は一番コスパが高そうな瓶ビール(中)600円を注文した。すぐにキリンの一番搾りの中瓶が渡された。

「え?瓶。コップは…?」

どうやら瓶のままラッパ飲みをするのがここのスタイルらしい。カウンターの前にサインがあって、こう書いてある。

「せめて1ドリンク注文してください(泣)」

どういうことだ。注文しない人が多いということだろうか。

そこから大音量の音楽が流れるフロアに入って、若い連れとおしゃべりに興じる。

「今日はDJが休みですね。」

DJというと、あれか。レコードをキュキュキュっとやる人だな。

「今はレコードは使いませんよ。パソコンと専用のコントローラーですよ。」

DDJ-RB

しばらくして、ビールを飲み干したが、別に店員が注文を聞きに来るわけでもない(当たり前か?)。連れの若い人たちも一向に追加注文する様子はない。そういうことか。つまり、この店は初めに500~600円ぐらい払えば、そのままいくらでも店にいてもいいというしくみなのだ。朝の5時までやっているというから、へたをすると(?)、500円で10時間ぐらいい続けることもできるわけだ。安い!居酒屋なら2時間ぐらいで3000~4000円かかるが、ここなら一晩わずか500円!

そのうち連れがキャーという歓声を上げる。知り合いに偶然会ったらしいのだ。ハグしながら近況を報告し合っている。

その知り合いが奥の席に去った後、尋ねてみた。

「どういう知り合い?」
「このパブで知り合った人です。」
「知らない人に話しかけられたの?」
「ここで知らない人と友達になるのは普通のことですよ。遅い時間になると、歌ったり踊ったりしている人とかもいて、みんな気分が高揚してくるので、誰とでも友達になれるんです。知らない人に私はよくおごってもらいます。」

「しろのさんは、どうしてこういう店で飲まないんですか?」
「私はオジサンだし、お酒が飲みたければ、スーパーで買って、うちで飲んだほうが安いし…」
「さびしくないですか?私はほぼ毎晩ここに来るので、店の客に知り合いが多いです。」

なんと!パブというのはそういう出会いの場でもあったのか。店員さんはときどき飲み終わったグラスを片付けに来るが、「注文しないなら帰れ」というプレッシャーはない。誰もが注文しないでたむろっているのが当然という雰囲気である。そういえばカウンターに「せめて1ドリンク…」と書いてあったのは、注文もしないで毎日来て、なじみの客同士で騒いでいる人が多いということか。

500~600円で毎晩なじみの店に行って、知らない人とおしゃべりに興じるというのがここに来る若い人たちのライフスタイルらしい。これで店内に卓球台なんかがあったらなぁ。あぁ、そういう店が卓球バーか。卓球バーというと、一晩で4000~5000円ぐらいかかりそうで、頻繁に訪れるという気にはならないが、たとえばドリンクを注文して1500円ぐらいで何時間もいられて、知らない人と打つことができるなら、私も毎週訪れるかもしれない。

閑話休題

それはそうと、卓球がなかなかできない憂さを晴らすべく、卓球動画を観ていたら、おもしろい動画を見つけた。



「切り返しのポイントは?羽田コーチのレッスンを受けてみた」

自称「初心者」のピンクレモネードさんがLili 卓球教室でコーチの個人レッスンを受けるという動画である。ピさんは卓球歴4~5年の30代の男性ということだが、初心者という割にはフォームがしっかりしている。基本的なフォア、バックは部活経験者と変わらない感じである。

pink FD

ピ「ドライブ、何割ぐらいの力で打ってる?」
コーチ「5割ぐらい…続けるのであれば、5割ぐらい」
ピ「そうかぁ。」

きれいなフォームでワンコースのドライブを続けるピさん。ピさんは卓球経験は少ないものの、運動は得意な人のようである。しかし、フォア半面でボールを散らされると、なかなか続かず、ミスしてしまう。

pink miss
「あ~!脚が動かない!」
「ミドルが弱すぎる!」
「独り言多すぎ!」

それに羽田コーチはすかさずツッコむ。
自己解決

「(全部)自己解決するから、アドバイスする言葉がない(笑)」

ピさんは運動だけでなく、頭もいい人のようだ。こういう個人レッスンのときに何も言わず黙ってコーチの言うことに耳を傾けている人というのは、教える側にしたらやりにくい。何がうまくできないのか分からないからである。その点、ピさんは自分のうまくできないことをすぐに言葉にしてくれるので、分かりやすく、羽田コーチもつい笑顔がこぼれてしまう。いい雰囲気を作るのがうまい。ピさんはとても社交的な人のようである。

そして羽田コーチも、卓球がうまいのはもちろんだが、いつも笑顔で適度に話しかけてくれる。この人も人間関係を作るのがうまい。たとえ卓球以外の仕事に就いたとしても出世するタイプだ。

次に切り替え、バックハンドの練習と続くが、楽しそうである。ピさんは今、どんどん上達しているので、卓球が楽しくてたまらないのだろう。そういうオーラが出ている。羽田コーチの個人レッスンがどんな感じなのか、よく分かる動画だった。私もこんなレッスンを受けてみたい。が、1時間で5500円か…。いつか金持ちになったときに申し込むことにしよう。


次に同じLili の動画でバックブロックの動画も観た。
ブロック中級



村田コーチと櫻井コーチが止めるブロック、押すブロック、カウンターと丁寧に説明してくれる。時間は長いが、その分詳しく実演してくれている。

ブロックの基本図

ブロックが苦手な人に多いのが、上の図の(A)で、ラケットの真ん中のあたりにボールを当て、前や上に押してボールをすっとばしてしまう人。安定したブロックのためには、(B)のように上からかぶせるというか、引っ掛けるように斜め下に押さなければならない。【追記】同スタジオのフォアブロック動画では「自分から振らず、バウンド直後でボールの勢いを利用する」「ボールの上をとらず、後ろをとる」ことを強調している。私の「かぶせる」という説明は誤解を招くかもしれない。ブレードの角度はかなり立て気味で、フォア打ちと同じぐらいの角度である。

楽しいブロック

こういう上からかぶせるブロックは、ラケットを縦に使えるシェークが羨ましい。ペンではどうしてもラケットを横にしなければならず、安定性がシェークに比べて落ちる。

村田コーチがペンのブロックも実演してくれているので、非常に参考になる。
裏面ブロック

時間が長いだけにこの動画を観ただけで個人レッスンを受けたような充実感がある。

神楽坂Lili卓球スタジオの動画を観て、他の動画とちょっと違うなと感じることがある。みんな楽しそうに生き生きしていることである。

ふつうの卓球教室なら、年配の代表がいて、若いコーチは礼儀正しく、優等生的にふるまっているが、Lili卓球スタジオでは代表の村田コーチが30代。若い。教室の雰囲気が非常に自由で明るい感じである。そしてコーチ陣がみんな(といっても登場する3名)社交的でフレンドリーな感じである(会ったことがないので想像だが)

いや、ウェブサイトをよく見ると、ここは卓球教室というより、昼は卓球カフェ、夜は卓球バーらしい。なるほど、道理でみんな社交的なわけだ。コーヒー450円、ビールが500円。台貸しが1時間2000円か。2人で台を借りて、ビールを1杯注文したら、1500円ということになる。もし、私が訪れた木屋町のパブのような雰囲気で、3時間でも4時間でもい続けられるというなら、非常にお得だが、神楽坂というのはシャレたレストランがあって、デートとかに使われる街らしいから、テナント料も高いだろうし、私の期待するパブのような雰囲気とは違うんだろうな。

Lili卓球スタジオは今までの卓球教室とはずいぶん違った雰囲気である。卓球が暗い、ダサいと言われていた時代を過去のものにしてしまいそうな明るさがある。若いってすばらしい!




私の卓球史――近代以降

いわゆる啓蒙思想は、宗教を「迷蒙」とみなし、それを「啓(ひら)いて」理性の光のなかに真理を「明らか」にすることを理想に掲げた。ヨーロッパは、自らの基礎であったキリスト教から自らをどれだけ解放できるか、その壮大な実験を十八世紀に行ったと言える。自然は、神の力が眼前に働いている現場でもなく、また神の手で、創造の最初に何から何まで計画に従ってしつらえられ、それ以降その計画通りに働いてきた神の作品でもなくなった。
【中略】
このような、すべての基盤と根拠を人間に置こうとする立場、神のような超越に由来するものをとりあえずいっさい否定し、すべてを人間から出発させるという立場、これが十八世紀ヨーロッパが立脚しようとしたものであり、われわれはそれを「近代ヒューマニズム」と名づけることができる。
村上陽一郎「科学技術と比較文明」


前記事「黎明期から…」で腰を使った打法で安定性が高まったと述べたが、腕を意識的に使わないようにして、腰に力を入れて打つという打法から、初動は腰を回し、打球時には腰の力に前腕の力を加えるとさらに威力が増すことが分かった。そしてバックハンドの場合は前腕ではなく肩に力を入れて、肩を回すように打つという打ち方も効果的に思えた。

アルフィーニ夫妻
油絵の創始者とされるヤン・ファン・エイクの作品(15世紀)

さらに下回転を打つときは、頂点前の打点と頂点後の打点でずいぶんドライブの質が変わることも分かった。頂点前なら速く鋭いドライブが打て、頂点後ならしっかりと回転のかかったドライブが打てる。

「打点」

中学生の頃はこの要素を考えずに感覚的に適当な打点でドライブを打っていたのだ。上手な人がどんなボールでもミスなくドライブできるのは、決して偶然ではなく、球質に応じた打点でドライブを打っていたからなのだと、そのときに初めて理解した。

これで私のドライブが安定するかと思ったが、そう単純ではなかった。実戦では打ちやすい下回転ではなく、深くて速い下回転のボールがくると、どうしてもミスしてしまう。どうして深い下回転はミスするのか。おそらくボールと身体との距離が近すぎて、力のこもったスイングができないのだという結論に達した。そこで、深いボールが来た時にはやや下がって身体との十分な距離を確保し、さらにボールが頂点を過ぎ、落ちてきた打点で上方向に擦り上げるというドライブで安定性が向上することが分かった。ボールとの距離という要素を考慮にいれることによって多くのミスが防げることがわかった。そして十分な距離を確保するためには細かいフットワークによる適切なポジショニングの必要性を痛感した。

「ポジショニング」

ボールがこちらのコートでバウンドしてからポジショニングをしても遅い。相手が打った瞬間、あるいは打つ直前にポジショニングをスタートさせなければならない。そのためには相手がボールを打った瞬間、どういう軌道を描いてどの辺りに落ちるかを瞬時に予測しなければならない。

さらにスイングの方向やブレードのどの辺にボールを当てるか、ボールの球面のどこを触るかによっても安定性が変わってくると気づくようになった。ペンホルダーの場合はグリップにもプレーが大きく左右され、シェークに比べて面が真正面を向きにくい(特に裏面)ことから、体の向き等で調整しなければ安定したボールが打てないことも分かった。

「向き」

この、ボールを打つときの身体の向きというのが安定性を大きく左右すると思っている。シェークなら真正面を向いてまっすぐにボールを打ちやすいのかもしれないが、ペンホルダーでは少し斜めを向かないと前にボールを打ちにくい。というのは、ペンホルダーで真正面を向いてボールを打つと、ボールの右側(フォアハンド時)を触りやすいからなのだ。向きとボールの接触面とは不可分の問題である。たとえば下回転をドライブしようとして引っかからず、ボールが落ちてしまうのは、向きの調整で解決できる場合が少なくない。

バッコスとアリアドネ
ルネサンス期の最後を飾る画家ティツィアーノ「バッカスとアリアドネ」(16世紀)

私の卓球の「ルネサンス」以前は非常に少ない要素で卓球を考えていた。ブレードの角度やフォーム、その日の打球感覚、相手との相性などで安定性が決まるものだと思っていた。上手な人は理想的なフォームで、機械のように正確な角度調整とタッチを持っているから上手なのだと思っていた。しかし、実際はそうではなかった。打球の安定性には数多くの要素を整える必要があり、それらすべてを適切に整えることによってどんなボールでも安定して返球できるということが分かってきた。卓球のミスにはすべて原因がある…こんな当たり前のことに中年になってようやく気づいたのだった。そのミスに理性の光を当てることによって原因が浮かび上がってくる。あれこれ試行錯誤して原因を特定し、それを上手な人はどうやって回避しているのか。そんなことを考えながら練習するのが楽しくてたまらない。

フラゴナール
フラゴナール「ぶらんこ」(18世紀)

これが私の卓球の「近代」である。

「打点」「ポジショニング」「向き」という要素を挙げてみたが、安定性を向上させるには、私がまだ気づいていない多くの要素を整える必要があるだろう。そして以上をまとめると、打球には「準備」がセットにならなければならないということである。

初心者は目の前に来たボールを何の準備もなしに思い切り打ってミスをする。私が中学生のころも同じだった。目の前のボールを反射的に強打していた。しかし、打つ前には必ず準備が必要だったのだ。ミドル深くにボールが来たら、まずポジショニングをして詰まらない位置まで移動し、ボールのどの辺に触るかによって向きを変え、次に体重を右足にかけ、適切な打点を狙って腰を使ってフォアドライブを打つというように安定した打球をするためには打つ前に準備が必須なのである。
準備→打球、また準備→打球といったサイクルがうまく機能しているときはミスをしない。それがうまく行かず、準備なしで打球してしまうとミスをする。上手な人はどんなボールが来ても、準備ができるのだと思う。どうすれば常に準備できるのか。そういうことを現在模索中である。

ここまでをまとめてみると、個人における卓球史というのは、はじめは打球そのものや、打球した結果のほうにばかり目が行く。たとえば美しいフォームだったり、ブレードの角度だったり、スピードのあるボールだったり。それが次第に結果を生み出す準備のほうに目が行くようになる。そして適切な準備さえできれば安定した卓球ができることが分かり、どうやって準備するかを工夫するようになって、個人の卓球が大きく進歩するという発達史が一般的なのではないだろうか。

私の卓球史――黎明期から近代前夜まで

私自身の経験をモデルケースとして個人における卓球の発達史を考えてみたい。

卓球との出会い
黎明期の卓球のプレーはボールを後ろから押すというタッチによって行われていた。
そこで大切なのは力加減と狙う場所である。
ラケットを台に対して垂直よりも、やや前に傾けて後ろからボールを押す。その押し方が上手で、強く押せる人が勝利するという卓球である。ボールをネットにかけず、台から出さないように上手に押さなければならない。ネットの高さにできるだけ近く――低いボールを打てば、相手は強く打てない。逆に高いボールを打てば、相手に強く打たれてしまう。そして相手にとって打ちにくいバック側にできるだけボールを送る。これが私の記憶の中の最も古い卓球のプレーである。

卓球の古代
それからすぐにこの卓球の枠組みが壊される出来事が起こった。回転の登場である。
先生(地域のクラブの代表的な立場の人)が下回転サーブを出すと、今までのやり方が全く通用しなくなった。たとえ高いボールでも、強く打てない。打てばネットにかかってしまう。そこでツッツキという対策が講じられる。下回転のボールはツッツキという技術を用いれば、容易に返すことができると教わった。これはたしかに便利なのだが、ツッツキはスピードのあるボールが打てない。そこでツッツキとスマッシュを組み合わせてプレーすることになる。下回転サーブをツッツキで返し、ツッツキの応酬の中で、相手が回転量を見誤り、ボールを浮かせてしまうことがある。そのときに下回転の回転量を勘案して、狙いをやや上方修正した上でスマッシュを打つのである。この回転量の計算が見込み通りならスマッシュは鋭く決まるし、見込みが甘ければオーバーミス、あるいはネットミスということになる。回転量の見込みと、反射神経と打球感覚の繊細さの勝負。ここで私は疲れてしまう。回転量はちょっとした相手のボールタッチの変化で変わってくるし、一瞬たりとも気が抜けない。自身の打球感覚も毎日微妙に違う。もっと安定してボールが打てないものだろうか。狩猟民族の生活が天候や運に大きく左右されるように私の卓球もその日の感覚や運に大きく左右された。

タッチの変遷
やがて、下回転を上回転によって返球するという技を教わることになる。ドライブの登場である。この技術の優れたところは、自分の打球の力を上に逃がしながら打つ点である。今までの後ろから押す打ち方では力がダイレクトに伝わってしまい、ちょっと力を入れすぎたり、あるいは反応が遅れたりしたら、それがそのままミスにつながってしまった。しかし、ドライブは上に力を逃がしながら打つことから、力加減が多少一定しなくても、安定してボールが入るし、上手にこすれば相手の回転の影響もそれほど受けない。今までの押す/叩くタッチよりもずっと多様なボールに対応することができるようになった。いわば、その日暮らしの狩猟民族が定住し、農耕を始めたようなものである。

暗黒時代――卓球の中世
ドライブの応用として、横回転サーブやレシーブ、そして相手の攻撃を止めるブロックなどが習得されることになる。これで一通り、基本的な卓球の技が使えるようになったのだが、ボールによって入ったり入らなかったりと不安定である。下回転のボールをドライブで返球するのは3本に1本はミスする。特に低くて深いツッツキはたいていミスである。
練習などで決まったコースに来るツッツキならかなりの確率でフォアドライブが入るのだが、試合でどこに来るか分からないボールとなると、ドライブの成功率は半分以下になってしまう。腕を目一杯振り回して強烈なフォアドライブも打てるようにはなったが、試合となるとそのドライブを打たせてもらえない。上手な人はなぜか自分から積極的に攻める展開になるのだが、私の場合はどうしても自分の攻める番が回ってこない。いつも攻められるばかりだ。試合ではサービスとレシーブの出来いかんで勝敗が決まる。気持ちよく強打を打つことがほとんどない。なんとか攻撃しようと、難しいボールでもイチかバチかで強打を打ちに行くが、たいていミスである。部活で毎日練習してもちっとも上達しない。1年前のほうがむしろ上手だった気がする。私は卓球への意欲を失っていき、卓球が面白くなくなってきた。高校に入学し、次第に卓球とは疎遠になっていった。


宗教から科学へ――卓球のルネサンス
中年になって卓球を再開し、私はこれまでの膠着状態から脱却できた。その原動力は腰を使った打法である。

Italian-Renaissance

手打ちを極めれば、スピードのあるボールが打てることは打てるのだが、安定しない。そのとき、コペルニクス的転回が起こった。腕を意識的に使わないで打つ(腕は無意識に動く)という打法である。これは私にとって産業革命にも等しい卓球の革命だった。腕を固定して腰を回すことによってボールを打つと、小さな力で、威力と安定性を両立できることが分かった。これに私は夢中になった。卓球が急速に進歩した。

【続く】
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