しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




2017年07月

私のようなレベルの低い人間が技術的な記事を書くなんて…(以下略)

ツッツキという技術は地味だがショートサーブからの展開には欠かせない技術である。

ショートサーブならストップで応じたほうがいい。ツッツキなんかで返したら相手に簡単に打たれてしまうというイメージがあるが、鋭く深いツッツキなら、相手(オジサン愛好家のレベル)もそう強くは返せない。上手な人とかカットマンなら、そのような、相手の出鼻をくじくような攻撃的なツッツキができるが、私には難しい。相手のサービスの回転を見切って、勢いよく前方に切る――低くて深い、直線的な弾道のツッツキをミスなく放つには相当高い技術が要求される。まず相手のサービスの回転を見切るのが難しい。相手のサービスの回転に応じて、どんなボールでもネットすれすれにツッツキを打つなんてどうやったらできるんだ?コツでもあるのだろうか。

それはそうと、最近私なりに「鋭い」ツッツキが打てるようになった。
残念ながら、カットマンがやるような高いところから叩きつけるようなツッツキではない。単に相手に時間の余裕を与えないテンポの早いツッツキというだけである。

やり方は簡単である。
下の図のA~B打点で前方に突っつくだけである。

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読者諸氏は「何を今更当たり前のことを」と訝しく思うかもしれないが、本当にそれだけのことである。私も昔はツッツキの打点をA~Bのあたりで打っていたのだが、いつの間にかB~Cの打点で打つようになっていて、それで何も不足を感じていなかったのだが、あるときA~Bの打点で打ってみたところ、「速い!」と新鮮な気持ちになったわけなのである。

ツッツキなんて大して重要な技術ではないとあなどって、ツッツキについて深く考えず、フリックとストップをどうするかということばかり考えていた結果、いつしか鈍いツッツキばかりを打つようになってしまい、相手にキツい一発をしばしばもらってしまうということに最近気づいた。

早い打点で打つことによって相手に準備の時間を与えず、相手の回り込みを防ぐことができる。素早いツッツキを送れば、たとえ相手ががんばって回り込んだとしても、詰まってしまい、キツい一発は来ない。つまりぎみの相手のそこそこのドライブをしっかりブロックできれば、こちらから攻める展開も作りやすい(その「しっかりブロック」がなかなかかできないのだが…)

昔はちゃんとできていたことが、いつの間にかできなくなっていたということが他にもいろいろあるのではないだろうか。卓球ノートとかを毎日つけて、常に反省を怠らないような人ならともかく、あまり自分のプレーを振り返らない一般愛好家なら、こういう経験が少なからずあるのではないだろうか。

「昔は力のこもったドライブが打てていたのに、最近はドライブに力がこもらない」
「今までだったらたいていのボールはブロックできたのに最近ミスが多い」

などという人は、私以外にもたくさんいるのではないだろうか。

「昔はちゃんとできていたのに、だんだんフォームやリズムが狂ってきて、今までできていたことがいつの間にかできなくなってしまった…。」

この「鋭い」ツッツキをめぐる私の「いまさらながら」の経験談は、非常に当たり前の情報だが、「昔はできていたのに」という人たちには有益なのではないだろうか。そういう思いで今回の記事を公開してみた。

しかし、私の「鋭い」ツッツキ――単なるピッチの早いツッツキは、ある一定以上のレベルにとっては、それが「デフォルト」なので、かえって絶好球になってしまう。私と同じぐらいのレベルには「鋭い」ツッツキは有効だが、上手な人には苦もなく全力のドライブを打たれてしまう。そこで、そういう上手な人には逆に「鈍い」ツッツキを混ぜてやると、相手のリズムが狂い、ミスしてくれる可能性がある、ということを先日経験した。「鋭い」ツッツキなら、ほぼノーミスで回り込みドライブを打ってくる人が、私が「鈍い」ツッツキを送るようにしたら、急にミスを連発しだしたのだ。B~C打点のツッツキだけでなく、C~D打点のふわ~っとしたツッツキをとても嫌がっていた(まぁ、さらにそれ以上のレベルになると、ツッツキの打点やスピードを変えたぐらいでは、簡単に対応されてしまうのだろうが)

ツッツキは意外に奥が深い。打点を自在に変え、相手のリズムを崩すことができれば、地味ながら試合を有利に進められるかもしれない。

卓球にかかわる仕事がしたい。

そう考える若い人が多い…らしい。いや、若い人だけではなく、定年で引退間近の卓球愛好家にもそういう人がいるかもしれない。

ぐっちぃ氏のブログを見ると、卓球を仕事にするのは容易ではないという。プロ選手になるのはもちろん、卓球メーカーや卓球雑誌もほとんど募集がなく、卓球ショップなどもそれ自体では生き残れないらしい。ぐっちぃ氏は卓球のプロコーチが比較的やりやすいとしているが、それでも「たつきを立てる」ということになると、やはり難しいのではないか。副業としてのプロコーチなら比較的敷居が低いと思うが、プロコーチ一本でやっていくのは相当難しいはずだ(前記事「卓球教室経営」)。

私も卓球の仕事がしてみたい。しかし、実力も指導経験もないので、プロコーチは無理だ。でも経済的に余裕があれば、老後に卓球場などを開いてみたいと思わないでもない。もちろん卓球場経営でガッポガッポ儲け、豊かな老後を送ろうなどと思っているわけではない。赤字にならない程度の売り上げがあれば、別に儲けが出なくてもかまわない。そこで自分も練習できるし、練習できる場所がない若い人たち(若くなくてもいいが)の手助けができるなら、それでいいではないか。週末にちょっとした卓球大会を開いたりしたら、交友の幅も広がるかもしれない。

書いているうちに、なんだか楽しみになってきた。老後に卓球場経営か…。

立地は駅から歩いて行けるところがいいなぁ。あまり広い場所じゃなくてもいい、卓球台は2台(詰めて3台)入れば十分だ。台貸しなら、一人1時間500円ぐらいが相場かな。京都には大学がたくさんあるので、夜は上手な大学生のアルバイトを雇って、1時間1000円でパートナーとして相手をしてもらえるようにしよう。これなら一人で練習に来ても1時間でたったの1500円(台代含む)!魅力的だ。でも、これだと安すぎるかな?やっぱり練習パートナーと練習するときは1時間2000円にしよう。うん、これぐらいは払ってもらわなきゃ。出来高払いで、客一人につき1500円をバイト代として払うということにしよう。でもこんな雇用形態が許されるのだろうか。労働基準法とかに抵触するのではなかろうか。客がいなくても拘束時間があるのだから、最低賃金は払わなければならないのではないだろうか。そうすると、客から一時間2000円とったとしても大赤字だな。どうしよう。

設備は、更衣室とかトイレとか、シャワーも必要かな。いや、シャワーはあきらめてもらおう。でもシャワーがないと女性に敬遠されるかもしれない。
でも、大型テレビはほしいな。プレーをビデオにとって、あとでみんなで観ながら批評したりするのは楽しそうだ。
暖房はいいが、冷房はあったほうがいいだろう。
マシンもほしいが、それはバイトの学生がいるからよしとしよう。

と、こんな感じで楽しく想像を膨らませていたところに以下の記事が目に止まった。

飲食店経営に手を出したら、その先には「地獄」が待っている

定年後に飲食店経営に乗り出す人が多いそうだが、十中八九うまくいかないという記事である。

それにしても「地獄」とは穏やかではない。一体どんな困難があるのだろうか。実際に起業するとなると、どのぐらい金がかかり、どのような問題が起こるのか、私には全く想像がつかない。卓球場と飲食店は全く違うが、それでもいろいろ参考になることもあるだろうと思い、読んでみたのだが、やはり安易な気持ちで卓球場経営に乗り出すのは危険そうだ。

日本では飲食店の競争が無駄に激しくて、まともにやったらほぼ行き詰まるらしい(競争が激しすぎるため、欧米諸国と比べて外食の値段が安い)。

飲食業は、市場環境をみればゲリラ戦のような状況で、血を血で洗う戦いが繰り広げられている。ビジネスは戦争だというが、最も激しい戦闘が繰り広げられているのが、飲食業界なのだ。

飲食業界では「FL比率」という言葉があり、原材料費(FOOD)と人件費(LABOR)を55%以下にしなければ持続不可能だということである。しかし、ふつうにやったら55%以下に抑えることは非常に難しい。それでほとんどの新規参入者は退場を余儀なくされる。

その一方で、家族経営のさびれた食堂はつぶれない。家族が手伝うため、人件費がいらず、余った料理は家族の食事に当てられるから、原材料費も最低限で済む。自宅に店舗が併設されているため、テナント料も要らない。

卓球場で考えてみよう。
駅から近いテナントを借りるなんてとんでもない話だ。なんとしても自宅でやるしかない。

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こんなしゃれた卓球場なら私も行ってみたい。

自宅をリフォームして、1階を卓球場にして2階を居住スペースに当てるしかない。田舎なら、ガレージを転用できるかもしれない。卓球台2~3台なんて相当広い家でなければ無理だ。ふつうの住宅なら1~2台がいいところだろう。集合住宅に住んでいる人間はあきらめるしかない。しかし、家をリフォームして体育館のような床にしようと思ったら、いったいいくらかかるのだろう。500万?もしかしたら1000万ぐらいかかるかもしれない。近くに競合店がないかどうかも重要だ。しっかり営業している卓球場が近くにあれば、客の奪い合いになってしまう。

バイトを雇うというのも難しい話だ。家族や友達で卓球ができる人がいなければ、練習パートナー常駐なんて無理な話だ。一人で来た客には私が無料で相手をするしかない。

原材料費…? 卓球場の場合はボールとか用具になるが、それは大した問題ではなさそうだ。

卓球台が1台しかないとすると、平均すれば1日せいぜい2~3000円ぐらいの売上だろうか。年中無休で1ヶ月せいぜい9万円。そこから電気代やら施設の改修積立金やらを出すとしたら…うまくいってトントン。下手をすると赤字になるかもしれない。

リフォーム代の数百万円と維持費、その他もろもろの面倒なことを考えたら、卓球場経営なんてあきらめて、卓球場開設につぎ込むはずだった金を既存の卓球教室の個人レッスン代に費やしたほうがよっぽど楽で有意義だという結論に達した。


マレーシアで行われている卓球リーグT2アジア太平洋卓球リーグ(APAC)に続き、インドでもアルティメット卓球リーグ(UTT)というのが始まった(「インドでプロリーグ…」)。
T2同様男女混成の団体戦で、有名選手としては以下の選手が出場している。

ピチフォード(イギリス)
ウー・ヤン(中国)
リー・ホチン(台湾)
フレイタス(ポルトガル)
キム・ソンイ(北朝鮮)
ウォン・チュンティン(香港)
モンテイロ(ポルトガル)
アルナ(ナイジェリア)
アポロニア(ポルトガル)
アチャンタ(インド)
ハン・イン(ドイツ)
P・ゾルヤ(ドイツ)

中でもウォン・チュンティン、フレイタス、ウー・ヤン、ハン・インは世界ランクも高く、注目である。

T2と比べていろいろ違いがあるようだ。
・T2よりもさらに時間が短く、1試合が3ゲームマッチで20分弱で終わる(2ゲーム先取しても、3ゲームまでやる)。
・チームの半分はインドの選手。
・観客が比較的多い(ブンデスリーグぐらい?)。

20分弱で3ゲームの試合というのは練習試合っぽくて、やる方もリラックスできるだろうし、観る方も楽である。
インド選手が多いのは、リーグの趣旨としてインド選手の育成があるからだ。
ノリのいい観客が多く、雰囲気を盛り上げているが、私はT2の静かな雰囲気のほうが好きだ。

出場する選手のレベルはT2のほうが高いが、それでも有名選手がたくさんいる。中でもペンホルダーのウォン・チュンティン(黄鎮廷 WONG Chun-Ting)選手の試合は個人的に注目している。

それで、ウォン・チュンティン選手の試合をいくつか観てみたのだが…

納得の行かない内容だった。


このSathiyan GNANASEKARANという無名の選手(世界ランク110位)が世界ランク8位のウォン選手を圧倒している(追記:現在、グナナセカラン選手は強豪選手として頭角を現している。私の見逸れだったようだ)。というか、GNANASEKARAN選手のほとんどの得点はウォン選手の凡ミスである。最後の3ゲーム目は申し訳程度にウォン選手が獲ったが、ウォン選手が本気でやっているとは思えない。


こちらのゴーシュ選手(世界ランク85位)との試合も、ウォン選手は自ら攻めていくことは少なく、まず相手に攻めさせるような試合展開が目立った。凡ミスも連発している。最後の最後で追い上げて、2-1でウォン選手が獲ったが、なんだか釈然としない。

世界ランクが実力を反映しているわけではないが、ウォン選手の実力なら、両選手とも3-0で獲れたのではなかろうか。なんだか試合を盛り上げるためにわざと3-0にならないように手ごころを加えているように思えてならない。



たぶんインドで最も強いアチャンタ選手Achanta Sharath KAMAL(世界ランク43位)との試合も、ウォン選手が1-2で負けている。

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はじめに2ゲーム取らせておいて、最後のゲームはウォン選手が普通に獲った(3ゲーム目の序盤は9-4とアチャンタ選手を引き離している)という印象である。アチャンタ選手の2ゲーム目の最後のポイントはエッジでウォン選手のポイントだと思うのだが、誰も何も言わず、そのままアチャンタ選手のポイントになっている。
https://youtu.be/fDEjlld7x38?t=486

上のウォン選手の試合を見る限り、どれも茶番のように見える。

UTTはウォン選手のプレーだけは観たいと思っていた。しかし、もう観ることはないだろう。全ての試合を観たわけではないが、強い選手が本気を出していないというより、手を抜いているような印象が拭えないからだ。もし強い選手が本気を出して、インド選手を完膚なきまでに蹂躙してしまったら、インドの卓球が盛り上がらなくなるからいろいろ操作されているのかもしれない。T2リーグが世界中の観客をターゲットに発信されているのに対し、UTTは世界中の観客がターゲットのリーグというより、インド人によるインド人のための卓球リーグという印象を受けた。


私の卓球のレベルで技術的な記事を書くなどおおけないとは思うのだが、指導者などが読めば、レベルの低い人がどのようなことを考えているかが分かり、全く意味がないとは言えないと勇気を奮って書いてみた次第である。経験談として読んでいただけたらと思う。

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ブロックが苦手だ。
私はオジサンレベルの通常のドライブなら止められるのだが、一定以上の威力のあるドライブ(県大会でそこそこ勝ち上がれるような高校生のドライブ)となると、ミスを連発してしまう。オーバーミスが多いので、もっとブレード面をかぶせようとすると、今度はネットミス。ネットミスを避けようとやや面を立ててブロックすると、またオーバーミス。面を立ててはミス、面を寝かせてはミス。ブロックってこんなに角度調整がシビアなのだろうか?いったいどうすればいいんだ。

おそらく打点が悪いのだろう。バウンドの頂点付近で止めようとするからダメなのであって、バウンド直後ぐらいで止めるべきなのではないか。上手な人は比較的早い打点でブロックしているではないか。と思って打点を変えてみたりしたが、どうしても安定しない。

過去にもこのトピックで記事を書いたが、強烈なドライブを止めるには、その威力を殺すことが大切だと考え、インパクト時にラケットを横にスライドさせたり、グリップをゆるく握って振動させることによって威力を吸収したりしようした。三木圭一氏のビデオでも、「横回転を入れると安定する」と言っていたし、それに加えて何か力を逃がすような工夫があれば、強烈なドライブでも止められるのではないかと思ったわけだ。

たしかにこれらのやりかたでうまく止められることもあるのだが、ブロックが安定したとはいいがたい。いろいろ試してみたが、この力を逃がすという方向性は、どちらかというと、失敗だったと思う。私のブロックに対する考え方が根本的に間違っていたのだろう。

相手のドライブの勢いから逃げるのではなく、しっかりと受け止めた方が安定するのではないか。

そう思って試行錯誤してみた。

いうまでもなく、非常にレベルの低い考察なので、正しいやり方かどうかの保証は全くない。むしろ読者のご批正を仰ぎたいものである。

私が到達した結論としては、ペンの裏面でブロックするなら、そばを切るようにするのがいいと思っている。

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このごつい包丁でザクザクと麺を切るように、相手のドライブがこちらのコートでバウンドした直後にあがりっぱなをラケットでストンと下に切るイメージである。

実際にはラケットを垂直に立てるのではなく、やや前傾させ、真下に落とすのではなく、やや前方に押しながら落とすのである。
そうすると、あがりっぱななものだから、ボールは上に上がりたくてしょうがない。が、ラケットの上半分が庇のように上から覆いかぶさってボールが上に跳ね上がろうとする力を抑えてくれるわけである。

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そういえば、上手な人がよく上から下にラケットを押してブロックするとか聞いたことがある。これのことだったのか!

上から下にややこすりぎみに押してブロックするので、軽い回転のドライブなら、ナックルになって弧線を描いて返っていく。この方法なら角度調整がそれほどシビアではなく、威力のあるドライブも比較的浅く返ってくれる。

なんとも不思議である。
強烈な回転のかかったドライブを止めるためには面の角度を思い切り寝かせなければならないと思っていたのだが、そうするとネットにかけてしまうことが多く、安定しない。むしろほとんど面を寝かせず――角度でいえば80度ぐらいでも――ボールが上に上がってくるところを下に落とすように前に押せば、タターンとドライブが気持ちよく止まるのである。

しかし、この方法もレベルが高い人のドライブには通用しないんだろうな。

そういえば、ブロック巧者はボールを止めたり、伸ばしたりすると聞いたことがある。私のやり方はおそらく止めるほうだと思うが、安定して伸ばすブロックというのも身に付けたいものである。
 
【付記】
「殺仏殺祖」という禅語があって、かっこよかったので、表題としたが、記事の内容とはあまり関係なく、深い意味はないことを予め述べておく。この禅語で言う「殺し」というのはおそらく二項対立を壊すといった意味だと思われる。

公園の砂場にて
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小学校の女の子がお父さんといっしょに砂場にやってきた。
「さぁ、何を作ろう?」
とりあえず砂を盛り上げて、山を作り始める。
「もう3年生なのに、砂場で山なんか作って楽しい?」
近くのお父さんがうんざりしたような口調で言う。どうやらいやいや公園に付き合わされているらしい。
「う~ん…つまんないけど、楽しい。」

そんなやり取りを傍で聞いて、「ちょっと深いなぁ」と思ってしまった。

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絶好球を最適な打点とスイングスピードでフォアドライブしたときの感覚というのはいわく言い難い。人によって異なる感覚であろうが、私が表現するとしたら、ラバーでボールを捉えるじっとりとした感覚を伴った爽快な振り抜きとでも表現するかもしれない。

そしてまれにボールがラバーに食い込み、それをラバーが反発で押し返している感覚を感じることもある。私はそれがラバーどまりなのだが、感覚の鋭い人は、打球時に、まずラケットの反発を感じ、それからラバーの反発を感じるという。その0.1秒?ほどの微妙な感覚を感じ分けられるのだと聞いて、驚いた。しかし、こういう微妙な感覚を感じられない私のような鈍感な人間のほうが少数派なのかもしれない。

こういう観点で打球感を楽しむ卓球というのを飽きるほどやってみたい。

最も取り組みやすいのがフォア打ちである。
同じ強さで同じリズムでミスなく打ち続ける。ふつうならこんな練習を30分も続けたら飽きてしまうだろうが、神経を研ぎすませてラケットの反発とラバーの反発の感覚に耳を澄ませてみる。そうすると、自分がスイングしている感覚がなくなって、打球感を感じやすくなってくる。そういう状態に入ってから、微妙に打球の強さを変えてみたり、当てとこすりの割合を変えてみたりすると、用具の反発が感じられるかもしれない。あるいは身体の向きや姿勢の高さ、打球ポイントを微妙に変えてみると、自分にとってもっとも気持ちいい打ち方が発見できるかもしれない。こうやって心静かに三昧境に入れば、単なるフォア打ちも豊かな練習になるだろう(前記事「感覚を味わう」)。

食べ物も、さまざまな調味料を駆使して絶妙の味わいを実現する料理もあれば、ほとんど味付けをしないで素材本来の味わいを活かす料理もある。練習も同じではないだろうか。

次にどんなボールがどこにくるか分からない、ランダム要素満載の練習もいいが、こういう心静かに打球感を味わう練習も楽しいと思う。ひたすら同じことを繰り返す「つまんないけど、楽しい」という感覚は練習時間がなかなかとれない私のような社会人に欠けている練習だと思う。

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われはもや うらめんえたり みなひとの えがてにすとふ うらめんえたり




バニシングフラット
ザンギエフのバニシングフラット

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片面ペンホルダーの最大の弱点はバック側だという。
http://xia.diary.to/archives/51705036.html

弱点

バックハンドが弱いのではなく(強くはないだろうが)、バック側が弱いのである。体の真正面や身体の中心線のフォア側でバックプッシュを打てれば、全然弱くないのだが、中心線のバック側、それも身体から離れたボールを打つ――つまり腕をバック側に伸ばしてバックハンドを打つときは力が全く入らず、為す術がないのだという。

私もときどき表面バックハンドを使うが、たしかに表面でカバーできるバック側の範囲は驚くほど狭い。身体がフォア側を向いているときに逆を突かれてバック側にボールが来たときなどは、たとえそのボールがヘロヘロ球でもしっかりと打つことができないというか、そもそも届かない。

なるほど、うすうす気づいてはいたが、やはりここは上級者にとっても泣き所なのか。

では、裏面なら大丈夫かというと、表面よりはマシだが、やはり身体から離れた、バック側のボールを打とうとすると、急に力が抜けて、当てるのが精一杯である。裏面にしても、やはりバック側の身体からやや離れたボールは打ちにくい。身体からやや離れたバック側のボールは、表面・裏面を問わず、ペンホルダーの最大の弱点なのではないだろうか。

それに対する解決法としてXia氏は台のバックサイドに立って相手のクロスに体を向け、バック側の弱点をできるだけ狭くするという対策を紹介している。
解決法

しかし、この対策の難点はフットワークの負担が大きくなることである。オールフォアに近い形で動ければ、この対策は非常に有効なのだろうが、中年プレーヤーには無理である。

私なりにいろいろ対策を考えてみたのだが、体の向きの工夫が最も手ごたえがあった。
ペンの裏面は構造上、面が真正面を向きにくい。どうしてもフォア側に向きがちである。それはちゃんと測ったわけではないが、だいたい面が正面より30度ぐらい右を向いてしまう(右利きの場合)と思う。

たとえばバック対バックのクロスでショートを打ち合うときは、体を右利きの相手のバック角に向けて裏面で打つと、サイドを切るボールを送ってしまいがちである。そこで、通常よりも30度左にずらして、体の正面を台のエンドに対して平行に向けて裏面で打つと、ちょうど台の対角線に沿ってボールを送ることができる(A)。

台と平行


ただ、このやり方では裏面のショートやブロックは安定しても、裏面での強打が安定しない。

これを一歩進めて、台に対して正面よりも、さらに30度左に向き、こちらの体がだいたい相手のフォア角よりも左を向いている状態である(B)。冒頭の図、ザンギエフのバニシングフラットのような姿勢からバックハンドを打つわけである。

さらに30度ズラす


するとどうだろう。力のこもった裏面バックハンドが打てるではないか。バック側に来た、身体から離れたボールも打ちやすい。もちろんずっと-60度の向きでいるのではなく、打球が終わった時には台に対して正面を向くことになる。

相手コートのバック角にボールを打つのに体の向きはあさっての方向――相手コートのフォア角よりもさらに左を向いているというのがおもしろい。シェークならそれほどフォア側を向かずとも力のこもったバックハンドが打てるのだろうが、ペンの裏面は通常でも約30度ズレているので、相手のバック角へ打つために台に対して真正面よりも、さらに左を向かなければならない。

これは裏面だけでなく、表面のバックハンドにも適用できると思う。体がフォア角よりも左を向いていれば、ほとんどのボールは体の中心線を越えず、体の右半分の範囲でバックハンドを打つことになるからだ。

体の向きを変えただけでこれほど安定感が向上するとは我ながらすごい発見なのではないか?

いやいや、全日本に何度も出場しているxia氏の対策――体を相手のバック側――つまり右のほうに向けるという対策のほうが結局は正しいに決まっている。プロの選手もみんなそう構えているではないか。しかし、私の発見した相手コートのフォア角よりさらに左を向いてバックハンドを打つという対策は、バック側に来た、やや遠いボールにも対応しやすく、私のバックハンドに確実に安定感をもたらしたのは事実である。

【付記】
「裏面」を「りめん」と読むのが一般的になりつつある。が、そうすると、「表面」は「ひょうめん」と読むことになって都合が悪い。私は「うらめん」(湯桶読み)派だが、言葉は社会性の上に成り立っているので、いずれ私も「りめん」と読むようになるのかもしれない。

最近、ブログの更新が滞っている。書きたいと思うことはあるのだが、実生活でやらなければならないことが多いと、自ずから趣味のブログは後回しとなってしまう。

maxfire

「やる気ないときにおもしろく書いた文章より、やる気マックスファイヤーで書いた文章のほうが絶対におもしろいに決まってるでしょ!」

という意見も一面の真理だとは思うが、そうやって自分の中で機が熟するのを待っていたら、いつまでたってもブログの方には気が行かず、ブログを放置してしまいかねないので、無理にでも何か書いておこうと思う。

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この間、遅ればせながら卓球のT2リーグというのを初めてじっくり観てしまった。
そしてもっと観たいと思わせられた。

T2リーグというのはマレーシアで行われている新しい国際卓球リーグである。さまざまな国籍の選手が男女混成チームを作り、優勝を争うというものである。日本、ドイツをはじめ、韓国、台湾等の有名選手が多数出場している。中国は女子選手はトップ選手が出場しているが、男子トップ選手は参加していない。にもかかわらず、おもしろいと感じたのは我ながら意外だった。ワールドツアーなどの国際大会を観る機会は多いが、もっと観たいと思うことはまれだ。どれも同じような試合に見えるからだ。いくらレベルが高くても、私のような下手くそには国際大会レベルなら、どれも同じに見える。

T2リーグは従来の国際大会とはいろいろな点が違う。

テレ東の記事によると、

・「1ゲーム11点制は現行通りだが、デュースはなし。」
・「1試合24分の時間制限が設けられ、時間になった時点で得点数の高い選手が勝ちとなる。」
・「ボールボーイが配置され、テニスのように次から次へと選手にボールを渡す。」
・「ユニフォームは「アンダーアーマー」が支給。【中略】ブルーやグレーの単色のTシャツが採用されている。中にはノースリーブやタンクトップもあ」る。

試合の雰囲気がなんだか従来の国際大会とは違う。

水谷選手がツイッターで「負けても失うものはない」と言っていたように軽い練習のような和やかな雰囲気で試合ができるのは、見ているほうもリラックスできる。

そして1試合の時間が30分ほどというのもありがたい。

最近の相撲人気を観ても、やはり試合時間の短さは現代のスポーツ観戦に合っていると思う。テニスの2~3時間、クリケットの数日という試合時間は現代の観客には長過ぎる。卓球の1時間というのもまだ長いと思う。30分弱という時間制限は21世紀のスポーツとしては合格点ではないだろうか。

そしてテレ東の記事中では触れられていないが、注目すべきはカメラアングルである。従来の選手の後方斜め上からという最もスピード感のないアングルではなく、斜めや真上といった、いろいろなアングルで卓球のスピード感が十分に味わえる。

観客が少ししかいないというのも部活などの練習試合のような雰囲気で新鮮である。

いろいろな選手が出ているが、私は早田ひな選手以外の試合はあまり興味がない。

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早田選手のプレーをこれまであまり観るチャンスがなかったのと、早田選手が格上を相手に健闘し、どんどん成長しているのが見えるので、観ていて楽しいのである。

T2APACには丁寧選手や馮天薇選手のようなトップ選手も出場しているが、彼女たちの試合はもう十分に観てきたので、これ以上観たいとは思わない。

ふだんあまり観る機会がない選手もいることはいる。例えば

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今年のジャパン・オープン優勝の孫穎莎選手。

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元世界ジュニア女王の王曼昱選手。

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スウェーデンのエクホルム選手等など…

…もしかしたら、見た目のかわいさで早田選手を応援してしまうのかもしれない。

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男性的な女子選手が増えている中で早田選手のかわいさは際立っている。こういうミーハーな楽しみ方はキライだったのだが、T2で卓球の新たな楽しみ方を見出した気がする。

世間でよくアイドルグループの中のお気に入りのメンバー目当てにコンサートに行ったり、CDを買ったりする人がいるが、私も早田選手目当てにT2リーグを観続けてしまいそうである。卓球の強さよりも、人気投票や選手グッズの売上などで来季のメンバーを決めるというエンターテイメント卓球というのもあればいいなと思う。強さだけを競う卓球はオリンピックや世界卓球に任せておいて、T2は別の方向性を歩んでほしい。なんなら江加良監督やロスコフ監督に選手として出場してもらい、女子選手と対戦したりしてくれたら、ぜひ観てみたい(さすがに現役女子選手には勝てないと思うが)。私はもう卓球の強さだけでは卓球観戦を楽しめなくなってきた。

自分でこの記事を読み返してみて…気分が乗らないときに書くと、やはりふだんよりもさらにおもしろくない内容になってしまった気がする。

【追記】170719
この記事を書いてから、BabyMetalのことを思い出した。
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ヘビーメタルといえば、いかつい男たちの硬派な音楽というイメージがあるが、
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その中でどうして彼女たちは評価されたのか。BabyMetalはヘビーメタルとは相反するベクトルではないのか。

男らしさというものは、つきつめると、息苦しくなってくる。演者も男、客もみんな男。
男、男、男だらけ!そうなるとやっぱりカワイイ要素も少しはほしい…(前記事「女性の視点が…」)。そういう潜在的なニーズに応えたのがBabyMetalだったのではないだろうか。

2017年オーストラリア・オープンでサムソノフ選手が優勝した。

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男子は中国のトップ選手が出場していないとはいえ、41歳で並み居る若手(日本、韓国、台湾の主力が出場)を打ち負かして、優勝を勝ち取ったというのはすばらしい快挙と言える。ヨーロッパの選手の息の長さには驚かされるばかりだ(前記事「卓球選手生命」)。
張本選手や平野美宇選手が10代で世界のトップレベルに伍しているというのもすごいと思うが、私には41歳のサムソノフ選手の優勝のほうが驚異である。
30代の選手でさえ肉体的な衰えを口にするのだから、40代ともなると、相当なものだろう。私の経験からも、20代と40代の体力差は相当なものだと分かる。しかし、サムソノフ選手の衰えない強さから考えると、肉体的なディスアドバンテージはあきらめて、それ以外の技術や戦術で勝負すれば世界レベルでもなんとかなるようだ(前記事「あきらめるという選択」)。しかし、それよりもむしろ精神的な問題のほうが深刻かもしれない。

先日のニュースでオーストラリアのテニス選手が「テニスに飽きた」と述懐していたのを読んだ(「トミック、テニスへのモチベーション喪失を告白」)。

「一生懸命取り組んだり、楽しんだり、トロフィーを掲げたりすることに全力を注げる感じがしない」
「まだ24歳だが、モチベーションを見つけるのが難しくなっている」


幼い頃からテニス漬けで、ふつうの人が経験するような、お勉強やあそび等をほとんどせず、朝から晩までその競技ばかりやっていては、さすがに飽きるだろう。というか、世界中のトップアスリートがどうしてその競技に飽きないか不思議である。国内で上位レベルなら他のことをやりながらでも順位を維持できるかもしれないが、世界レベルの選手ともなると、他のことに時間や興味を向ける余裕がないのではないか。もし競技の傍ら創造的な趣味なんかを持っていて、人生をエンジョイしていたら、競争の激しい世界トップレベルでは、あっという間に追い抜かれ、引退を余儀なくされるだろう。世界トップレベルを維持するためには寝ても覚めても倦むことなく、その競技でどうすれば勝てるかを考え続けなければならない。子供の頃なら厳しい大人のコーチが生活を管理しているので、他念なく競技一筋でやっていけるかもしれないが、20代、30代となると、生活の管理も自分でしなければならない。結婚や子供の教育といった「他念」も出てきて、どうしても競技だけには集中できない。それでもサムソノフ選手は世界トップレベルを維持し続けてきたというのは驚嘆すべきことではないか。

最近の日本卓球界は若手の育成に熱心だが、その一方でアラサーの選手がいつのまにか忘れられつつある。かつて長谷川、伊藤、河野という黄金(白銀というべきか?)世代があり、この三人が強すぎたために後進が育たなかったという反省があって、現在は若手の育成を強化しているのだろうが、若手の育成ばかりに偏ってはいないだろうか。最近の日本の若手はすごい。が、10代で世界トップレベルの選手に冷や汗をかかせるというのはよくある話だ。そういう選手がそのまま世界を獲ったかというと、そうではないだろう。そんなにトントン拍子で極められるほど世界の頂点は甘くない。10代の選手はこれからどうなるか未知数である。それに対してアラサーの選手の中には、今は停滞しているが、ここから叱咤激励すれば、ヨーロッパのベテラン選手のようにもう一花咲かせられる選手もいるかもしれない。私はそういう一度挫折を経験したベテランの選手の再起に期待したい。

サムソノフ選手のオーストラリア・オープンでの優勝は、世界選手権やオリンピックと比べれば小さなニュースかもしれない。しかし、ベテランの活躍を期待する私のような人間には非常に意味のある出来事だった。と同時に私自身の卓球の励みにもなった。


最近、バックハンドの練習ばかりしているが、バックハンドが安定しない。あれこれ試してみるのだが、「これだ」という感触が得られずにいる。

そんな感じで試合に出たら、格下の相手に無様な負け方をしてしまった。どう無様かというと、私の生命線ともいえるフォアドライブが全く入らなくなってしまったのだ。バックハンドばかり練習していたためにフォアハンドの感覚が鈍っていたのだ。しかもふだん打っている相手とタイミングが違っていて非常にやりにくい。ボールがゆっくり来て、伸びてこない。それでフォアドライブをことごとくミスしてしまったのだ。

こういうタイミングのズレというのを上手な人はどうやって調整しているのだろうか。

ボールが合わないというのはレベルの高い人でも避けられないことだと思われるが、それでも上級者は、中級者のように完全に崩れることはなく、どこかで踏みとどまって最低限の自分の卓球はできるのだろう。

どうすればタイミングを合わせられるかは私も頭では分かっているのである(前記事「踵を接して」)。ただ、それを無意識にできるほどに身体に染み付かせるにはかなりの時間がかかるのである。

いろいろなリズムの人――ピッチの早い人や、ボールが伸びてこない人と練習できるチャンスと練習時間がふんだんにあれば問題ないのだが、私の練習環境はかなり限られている。それでラージボールに目をつけたわけである。

もし、ラージボールを10~20分やった後に硬式卓球をやれば、その感覚の違いにとまどい、自分の卓球が維持できなくなってしまうだろう。しかし硬式とラージを短時間に繰り返しプレーすることによって人為的にいろいろなリズムの相手と疑似的にプレーするような経験が積めるのではないか。

そうやって硬式とラージの感覚の違いを乗り越えたところにどんな相手に対しても崩れない自分のリズムが確立するのではないか。我ながらなんと独創的な練習方法を編み出したのだろう。まじめに卓球が上達したい人はマネしないことをお勧めする。

そんなことを考えて、硬式とラージを20分ごとぐらいに交互にやってみたのだが…案の定、そう簡単には自分のリズムは確立できなかった。硬式の後にラージをするのは楽なのだが、ラージの後に硬式をやると、速すぎて目がついていかない。これじゃまるでマンガ『キャプテン』の特訓みたいだ。

若い読者は野球マンガの『キャプテン』をご存じないと思うが、全国レベルの強豪校のピッチャーのボールのスピードに慣れるために通常の半分ぐらいの距離からボールを投げさせて、そのボールを打つという特訓のエピソードがある。

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こういう練習は野球をやっている人から見ると荒唐無稽な特訓らしい。卓球でラージの後に硬式をするという練習も、やっぱり荒唐無稽な練習だと思われるが、こんな練習は普通の人はやらないだろうから、何か新しい発見もあるかもしれない。

何か面白いことが発見できたら報告したい。

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ラージボール15連覇!の平田洋子選手。どんなプレーをするのか見てみたい。



いつだったかNHKの朝のニュースで顔の障害に悩む人の特集を見た。
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「手術で『普通の顔』を手に入れたいと思っていた頃もありました。でも劇的な変化が望めるわけではない。今も鏡を見て、『この顔じゃなかったら……』と落ち込むこともあります。死ぬまで悩み続けるでしょう。でも自分の力で変えられるものではないので、『割り切ろう』と考えています」
顔ニモマケズ、僕は生きる

顔に大きなアザがあったり、障害があって顔の骨が形成されずに生まれてきたりといった人たちの人生をとりあげた10分ほどのコーナーだったのだが、この人たちの言葉にいろいろ考えさせられた。

普通の人は自分に弱点があれば、それに執着し、なんとかしてその部分を直そうとする。バックハンドが弱いとか、ドライブの威力がないとか、そういう自分の弱点があれば、人はとにかくそれを直そうと努力するものである。

彼らも自らの顔にコンプレックスを抱き、なんとかして「普通の顔」を手に入れようと努力したが、それが叶わないと知ったとき、考え方に大きな転機が訪れたのだという。

”顔はどうしても変えられない。それはもうしかたない。しかし、私には変えられる部分がたくさんあるじゃないか”

性格だって、経験や技術だって、人間には変えられる部分がいくらでもある。それなのにどうして顔だけに執着する必要があるのか。顔がどうしても変えられないなら、他の部分でもっと魅力的な人間になろう。彼らの発言からそのようなことが読み取れた。

どうしても直らない部分があったときにどうするか。例えば片面ペンの人がバックハンドで強く攻撃できないことに悩み、いろいろ試みてみるが、どうしてもうまくいかない。それならシェークハンドに劣らない強力なバックハンドを手に入れるという夢はあきらめて、それ以外の変えられる部分――台上技術とか、回り込みとか、サービスを向上させてシェークハンドに対抗すればいいじゃないか。こういう転換ができれば、片面ペンでも強くなれるにちがいない。

一方で、自分の弱点から目を背け、変えられるにもかかわらず、その弱点を変えようとしない人もいる。

たとえば派手な打ち合いなら、中級者でも上級者に劣らずすごいボールを打てる人がいる。しかし、そういう人は台上の地味なテクニックや守備力に難のある場合が多い。

たとえば私が中上級者の上手な人と練習させてもらったとき、打ち合いに行くまでのサービス、レシーブで大きな違いが見られた。私が3~4回に1回ミスをするとすると、上手な人は6回~8回に1回のミスなのである。さらにレシーブからボールを起こしてラリーが始まると、私はやはりその上手な人の初めの1本目のドライブを3回に1回はブロックミスする。一方、上手な人は私がガーンと打っても、6~8回に1回ぐらいしかミスをしない。こちらが攻撃している展開では、傍目には実力は同じぐらいに見えるのだが、試合全体をトータルに見るなら、中級者と上級者とは、そのミスの少なさの点において天と地ほど(といったらおおげさか…)の違いがあるように思う。しかし私はこの弱点に長い間気づかなかった。そして気づいてからもバックハンドからの攻撃やドライブの威力を増す練習ばかりしていて、台上技術やブロックの練習はなおざりにしていた。

人は自分に弱点がある場合、「弱点をあきらめて他の部分を伸ばす」という選択と、「優先的に弱点を克服する」という選択があると思われる。その際、自分に合った選択をしないと、その後の上達の妨げになるだろう。


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