しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




2016年12月

「日本人なのにザンシンを知らないんですか!?」

武道をやっている外国人にこんなことを言われたことがある。ザンシンってなんだ?調べてみると、剣道の用語で「残心」という言葉があった。

残心とは、斬った後も相手の反撃に備えておくという心構えのことです。ですから、形だけではなく心構えが重要ということになります。

剣道における「有効」というのは、単に竹刀が相手にヒットしただけではダメで、ヒットしつつも

「十分な気位で残心を示しながら相中段にな」

る必要があるのだという。当たったかどうかという客観的・論理的な基準だけでなく、精神的な「気位」というものが決め手になるのである。
このサイトによると、目に見える構えというよりも、むしろ精神的な心構えこそが残心なのだという。「そんな主観的な基準で大丈夫か?」と素人は思ってしまうが、おそらく見る人が見れば、残心があるかどうかは明白な場合が多いのだろう。

残心は剣道だけでなく、弓道を含めた武道全般で用いられる用語であり、武道のみならず、茶道や仏教でも使われるらしい。冒頭の外国人に言いたい。

「日本人だからってそんなこと知っているわけがないだろ!」

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弓を射終わった後の残心

しかし、この残心というのは卓球にも通用する概念のように思われる。というか、この残心こそが中級者の卓球上達のカギなのではないだろうか。

3年ほど前の記事「あやまちは…」でもこの問題に触れたことがある。木から降りるとき、あと1メートルほどのところで気を抜くと大けがをするという話だ。徒然草の「高名の木登り」の段は国語教科書の定番だが、さして面白くもない話がどうして定番なのか、いぶかしく思っていたが、教科書編纂者はもしかしたら日本人の備えておくべき心構えとして残心という概念を教えたかったのかもしれない。
この記事を書いたときは、打球後の戻りの姿勢といった形式的なものを考えようとしていたように思う。しかし、卓球における「残心」も戻りの姿勢というよりは、精神的なものではないかと思うようになった。

こちらがサービスの時、全力で相手の2球目に集中し、打てるボールと打てないボールを見極め、打てるなら全速力で反応し、打っていこうと思った。「もしこれができないなら、卓球をやめる」ぐらいの覚悟で、必死で食らいつくようにボールの行方に意識を集中させた。
前記事「そなえよつねに」 

以前、相手がボールをどこに返球するかを0.1秒でも早く察するために「必死で食らいつくように」意識を集中させたことがあった。結局これだけでは、振り遅れを防ぐには不十分だという結論だったのだが、このように意識を途切れさせないということは、それはそれで有効なのではないだろうか。

卓球ではどうしても打球を境に意識が途切れてしまいがちである。打球する前は集中して相手の行動を意識していても、打球直前から直後にかけて、打球の達成感からか、どうしても意識が途切れがちになってしまう(私の場合は)。 目を血走らせて相手の出方に集中する必要はないと思うが、常に相手の出方やボールの軌道などを意識し、ポイントが終わるまでは、何があってもその意識を途切れさせないというのが素早く反応するためのコツなのではないかと最近思い始めている。

そういえば、岩波文庫の『日本の弓術』という本は有名だが読んだことがない。薄い本だし、正月休みに読んでみようかな。

「どうしたら腰を効率よく回転させて打球できるのだろう?」
と素振りに励んでいたとき、ふとした拍子に右ひざを曲げてみる打ち方を試みてみた。

右ひざを曲げると、右に傾くのかと思いきや

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こんなふうな姿勢になるかと思っていた

人間の体はよくできているもので、右ひざを曲げると、自然とバランスをとって左ひざも勝手に曲がってくれる。
そして腰が自然に旋回するのである。

胸や肩甲骨を意識して筋力で右半身を動かしたわけではない。上半身にまったく力を入れず右半身が左を向く。

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みなさんご存じのこのポーズに近い

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ちょうどこんな感じである

この旋回の力をスイングに利用できないものだろうか。

そういえば3年ほど前の記事「重心移動を回転運動に」で原田隆雅氏のスイングを取り上げたことがあった。
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右脚を曲げて体を沈ませる力を旋回運動に変えて打つというやり方である。
重力の力を借りて打つ(抜重)ので力があまり必要ない。それでいて上半身が驚くほど回る。

ただ、問題は下から上にラケット振り上げるドライブ打法(フォア)なのに、体が沈んでいくというのに心理的に抵抗がある。ラケットが上に向かって進んでいくのにその土台である体幹が下に沈んでいくというのではプラスマイナスゼロになってしまい、ボールに力が加わらないのではないだろうか?

しかし、それは杞憂だった。

前記事「スポーツバイオメカニズム」の以下の説明がその疑問に答えている。

3.8 走り幅跳びの空中で手足をくるくる回すのはなぜ?

諸手を挙げて、バンザイをすると、腕以外の部分には下に向かう力が発生する。これが反作用である。よく卓球でもテンポよくハーフボレーをするときにラケットを前に押し出すと同時に上体を後ろに下げているが、この反作用を利用することによって身体の一部を素早く動かすことができるのだという。とすると、ループドライブを打つと同時にしゃがみ込めば、スイングがより速くなるということになる。

体幹に下に向かう力が発生すると、不思議なことに腕には逆に上に向かう力が発生するのである。スクワットをするときに、ひざを曲げると、両腕が自然に上に上がろうとする原理と同じである。

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先日の練習でこの打法を試してみたところ、非常に効果があった。コンパクトなスイングにもかかわらず力がしっかりと伝わるのだ。

右ひざを曲げると右半身が回るとなると、今度は右ひざを伸ばせば逆回転になるのでは?

そうなのである。沈めた体でラケットをバンクハンドに構え、今度は右ひざを伸ばしてみると、すごいスピードでバックハンドが打てるのである。

前記事「重心移動を回転運動に」が2014年2月の記事だったので、あれから3年近く経ったことになる。
そのとき、すでに正解は原田隆雅氏によって示されていたのだが、私がそれを体で理解するにはずいぶんと時間がかかってしまった。



 

卓球のプロリーグの話が進展しているらしい。
「誰が「新リーグ構想」にけちをつけ、誰が遅らせたのか」

『卓球王国』のウェブサイトによると、要点は以下のようになるらしい。

・新リーグは18年秋開幕を目標
・来年春に統括する法人を設立
・地域密着型のクラブチームで構成する
・男女とも1部リーグは6から8チームで構成
・将来的には下部リーグも順次整備し、ピラミッド型の組織を作る

日本にプロリーグが生まれるというのは喜ばしい話だが、現実的にどうなのだろうか。

今野氏は「このプロジェクトは「今しかできない」ことだし、「何年、検討したら気が済むんだ。もう十分でしょ」と関係者には言いたい。」と述べているが、たしかにスタートするなら、今が最適かもしれない。

が、ほとんど客が集まらないまま、自然消滅――なかったことにしましょうということにはならないだろうか。心配である。

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先日、日本リーグの大阪大会があった。

卓球のプロリーグができるとしたら、このようなレベルの試合が行われるのだろうか。会場の大阪市中央体育館は京都からなら1時間程度で行ける場所である。行こうと思えば行けたのだが、仕事の疲れなどが溜まっていて、気が進まず、結局行かなかった。

日本のトップ選手を中心とした世界トップレベルの卓球リーグは相当な技術レベルになるに違いない。しかし、それだけでは客へのアピールとしては弱いかもしれない。少なくとも私は各県のトップレベルの技術を目の前で観られればそれだけで大満足である。京都府のトップレベルの試合でも、十分すごすぎて、どこがすごいかよく分からないぐらいである。世界レベルのプレーにも興味はあるが、疲れを押して大阪までいくほどの興味はない。

インターネットで時間を問わず、居ながらにしてプレーを観られるにもかかわらず、わざわざ会場まで足を運んで時間とお金をつかってプレーを観ようという人はどのような心理なのだろうか。

今日のニュースでJリーグのセレッソ大阪が2部から1部に昇格を決めた試合というのをテレビでやっていた。

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雨にもかかわらず、あれだけの人を集めるというのはすごいと思う。

観客を見ると、おそらくサッカーの経験などほとんどないだろう若い女性も珍しくない。
どうやら観客の多くはレベルの高い技術を観に来ているわけではないらしい。もし高い技術を観るだけが目的なら、J2の試合ではなく、J1の試合を観に行くはずである。

写真の横断幕
「もがきながらもつかんだ昇格 今日が最後のJ2や 苦しんだ経験を…」
から推測するに、この会場に足を運んだ人の多くはセレッソ大阪の昇格に自分の人生の一部を重ねているような人かと思われる。

上の卓球王国の要点に「地域密着型のクラブチームで構成する」とあったのは、おそらくこのセレッソ大阪のような流れを卓球プロリーグでも作りたいということだろう。しかし、これだけの人を惹きつけるというのはどうすればいいのだろうか。

「地域密着型」と、言うのは簡単だが、具体的にどうすれば地域の人の心をとらえることができるのだろうか。

京都に京都フローラという女子プロ野球チームがある(らしい)。バス停や地下鉄のつり革広告に「京都フローラを応援に行こう」とか書いてあるのをときどき目にするが、私は彼女たちがどこで練習をしているか、どんな活躍をしているか、申し訳ないが興味がない。単に地域に練習拠点をつくったぐらいでは地域の人の心はつかめないだろう(野球に興味のある人の心はつかめているのかもしれないが)。一方、メジャー化したJリーグのサッカーや男子のプロ野球というのは、自分はプレー経験がなくても、「今日は阪神、勝ったかな?」などとニュースなどで確認してしまうものである。

女子プロ野球
この試合は公称観客動員数1600人ということだが、空席が目立つ。

上述の卓球王国のニュースには次のように書かれている。

スウェーデンの名門「ファルケンベリ」や、ドイツの強豪「オクセンハオゼン」のように、人口数千人規模の町でも立派なクラブを作ることができる。まさに「おらがチーム」を作ることができる。

人口数千人規模の村でクラブを作るというのはどうやったら可能なのだろうか。

私なりに湯船に浸かりながら、卓球プロリーグがどうすればうまくいくかじっくり考えてみた。もちろん、この程度のことは、設立委員会の方々もすでに考えてらっしゃることと思うが。
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・地域の中学・高校、社会人クラブや卓球教室を回り、講習会を開く。
つまり、ぐっちぃ氏のやっていることである。ジャパンオープンなどの客層をみると、中高生や高齢者がメインのターゲットなので、そこにアピールする。

・というか、プロリーグ試合会場で選手と1ゲームマッチができる特典を与える
卓球は観るスポーツというより、やるスポーツである。もし、世界レベルの選手に相手をしてもらえるなら1ゲームだけでもいい思い出になるに違いない。といっても、まず、トップ選手のサービスとなると、ほとんどとれないだろうから、サーブ権はずっと挑戦者側という変則ルールである。午前中はプロの試合、午後は参加者のトーナメントでベスト16ぐらいまでは挑戦権があるとしたら、かなり盛り上がるのではないだろうか。別にプロに挑戦できなかったとしても、いろいろな人と対戦できるだけで満足という人も多いだろう。

・練習場を参観可能とする
手続きをすれば、誰でも練習を見学できるようにする。

・前座としてアマチュアの試合を行う
地域の中高生の大会等の後にプロの試合があれば、ついでに人が呼べるのではないだろうか。京都市の高校生の地区予選は1日で終わらず、2日に分けて行っているようである。私が初日に訪れた時は、午前中ですべての試合が終わっていた。その、午後の空いた時間にプロチームの試合があったら、より多く人が呼べるかもしれない。

・中国・韓国のリーグとの交流試合をする
サッカーにふだん関心のない人も、国外のチームと対戦するとなると、興味を持つものである。中国のリーグとの交流試合があれば、興味を持つ人も多いだろう。

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地域密着とは関係ないが、魅せ方の工夫も必要だと思われる。

先日、なんとはなしに大学の学園祭で行われたプロレスをみたのだが、80年代のプロレスとはずいぶん様変わりしていたように思った。今のプロレスは技術やテクニックというより、実況のおもしろさを楽しむもののように感じた。



卓球のプロリーグも、黙々とレベルの高い対戦が続くよりも、近藤氏や宮崎氏のような名解説者と、弁の立つ実況者との掛け合いが楽しめるようなそんな試合にしてほしいと思う。卓球人だけを惹きつけるイベントではJリーグのような盛り上がりは望めない。どうしても非卓球人にも会場に足を運んでもらわなければならない。そのためには質の高い解説と実況が必要である(前記事「あの人は卓球を知らない」「本人による解説」)。

だらだらとまとまりのないことを書き連ねてしまったが、疲れたので、この辺で終わりとしたい。



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