しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




2016年09月

相手のループドライブをカウンターでドライブしようとして、ついオーバーミスをしてしまうことがよくある。
そんなとき、「もっとラケット面をかぶせなきゃ」などと思うが、直観的にその判断は間違っていると思いなおす。相手のループドライブが手元でグンと伸びてくるのにうまくタイミングが合わせられずにオーバーミスしてしまうというのは、角度の問題ではなく、やはりタイミングが合っていない――振り遅れているのだろうと思う。

ふだんの練習で自分は守りに徹し、私のやりたいように打たせてくれる親切な人――仮にEさんとしておく――がいるのだが、Eさんは私のようなピンポンに毛が生えたような卓球ではなく、高校生や大学生の練習相手も務まるような本格的な卓球である。社会人になってしばらく卓球からは遠ざかっていたが、おそらく学生時代はバリバリやっていたような人だ。その人と週に1回、打つチャンスがあるのだが、Eさんは本気を出さず、私のやりたいようにやらせて、ときどき中陣から強烈な1本を放ってくるというような卓球をする。いわば、相手を自由に泳がせておくような卓球である。私が同じようなことをしたら、たとえ格下でも、ほとんどラリーにならず、簡単に打ち抜かれてしまうが、Eさんは守備力が高く、そうそう打ち抜けない。

そんなEさんが先日の練習ではかなり本気で――積極的に攻撃する卓球をしてきた。

やはりオジサン卓球とは違う。サービスは、腕を大きく動かさず、スナップを利かせてチョチョンと軽く素早くスイングするが、かなり切れている。小さいスイングなので、サービス後の戻りがとんでもなく早い。私はそのサービスをなんとかレシーブするが、Eさんはそれを待ち構えていて、余裕をもって攻撃をしかけてくる。それを私はなんとかブロックするが、Eさんは私の返球に対して矢継ぎ早に攻撃をしかけてくる。

が、Eさんはブランクが長かったせいか、3度目のドライブでラケットの角に当ててミス。

また、私がうまくレシーブし、先手を取って攻撃できた場合もあったが、Eさんは私の攻撃をカウンターで返そうとするが、うまく角度が合わず(あるいは厚く当てすぎて)ネットミス。

Eさんは練習不足のせいか、ミスが多かった。ただ、私のミスと違うのは、タイミングがバッチリ合っていたことだ。振り遅れて打点が遅くなってミスしたり、体を効率的に使わず、とりあえず手だけで打ってミスしたりといったことがほとんどない。

野球でよくこんなことが言われる。

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「バッターの真後ろに飛ぶファールは、バッティングのタイミングが合っている」

おそらく、もう少しスイングの軌道を調整すれば、いいヒットが打てるという意味だろう。

Eさんのミスというのも、根本的に何かが間違っているのではなく、基本的なところはできているのだが、感覚的な微妙なところが調整不足でミスをしてしまったような気がする。はたから見ると、「今のミスは入ってもおかしくなかったのに、アンラッキーだったな」という類のボールである。一方、私のミスはもっと根本的なミスで、たまたま角度が合って入ることもあるが、はたから見ると、「よくあんなのが入ったな」という感じのボールなのではないかと思う。

このように考えていくと、Eさんのミスと私のミスは、同じミスでも雲泥の差があるのではないかと思うようになった。うまい人と下手な人ではミスの種類が異なることが多いのではないだろうか。

ミスの原因を思いつくままに列挙していくと、以下のようになる。

(1)回転を完全に見誤っていた
(2)ラケット角度(あるいはボールにラケットが接触する位置)が不適切だった
(3)当て方(薄い/厚い)が不適切だった
(4)ポジショニング(ボールから近すぎる/遠すぎる)が不適切だった
(5)力のこもり具合(トルク)が足りなかった
(6)打点(バウンド後、打球までの時間)が不適切だった

しかし、これは厳密な分類ではなく、感覚的な分類にすぎない。たとえば、大きくフォアに振られて、次にこちらのバック側に返球されてミスしたときは、フットワークが間に合わず、ポジショニングが原因でミスをしたとも考えられるが、同時に早い打点で打球できなかったという打点の問題もあるし、力のこもり具合も足りないというようにミスが複合している場合もある。排他性まで考えて厳密に分類するのはめんどくさいので、ひとまずこの分類で話を進めることとする。

省みると、私のミスの原因はタイミングが合っていないことが多く、振り遅れたり、ボールに十分近づかず(いわゆる引き付けが足りない状態)に離れた位置から無理に打ったりして、ミスすることが多いようだ。それに対してEさんのミスはラケット角度や当て方に起因することが多い気がする。

(1)の回転を見誤っていたというのは、上級者でも、分かりにくいサービスをレシーブするときによくあることではないだろうか。(2)は練習不足の人なら、感覚がなかなか戻らず、つい角度を誤ってミスしてしまうこともありうる。(3)も練習不足の人はつい押しすぎ(厚く当てすぎ)て、ボールをオーバーさせてしまうこともよくあるかと思われる。(1)~(3)はそれほど重大なミスではなく、調整次第ですぐに修正できるミスの可能性が高い。

それに対して(4)~(6)のミスというのは初中級者に多いミスのような気がする。細かいフットワークに慣れておらず、つい横着して手を伸ばして打ってしまった(4)り、しっかりタメを作らず、手打ちで打ってしまった(5)り、打球後の戻りが遅く、相手のボールに対して振り遅れてしまった(6)り。こういうミスは1~2時間調整練習をしたからといってなくなるものではない。いわば偶発的なミスではなく、必然的なミスなのである。

以上のようにミスには大きく2種類あるのではないだろうか。

 

前記事「フットワークに優先するもの」でおこがましくも高島規郎氏の主張に異を唱えるような主張を展開してしまったが、誤解されないように補足すると、高島氏はフットワーク「練習」では打球点を優先すべきだと主張していたのである。それに対し、私は「試合」では、フットワークが間に合うなら打球点を優先すべきかもしれないが、両立できない――どちらか一方を選ばざるを得ない場合、打球点を落としてでもフットワークを優先したほうがいい場合もあるのではないかと考えたわけである。

高島氏の著書や『卓球王国』の連載などを読んで、高島氏の卓越した主張にはいつも驚かされる。一見、ありふれたテーマで書かれた文章でも、必ずどこかになるほどと思わせる主張がある。 はずれがない。

『卓球王国』2016年9月号の「モンダイは指導者だ」を読んでいて、またもやアッと驚くような一節があった(ネタバレになってしまうがご容赦いただきたい)

かつて、私が自分の息子に初めてラケットを持たせ、遊びとして卓球をさせてみたところ、いきなり投げ上げサービスを出して、フォアハンドドライブ…などというプレーをし始めたことがあった。もちろんボールは入らないのだが、格好は本格的で非常にびっくりさせられた。当時、息子は小学校の高学年で、卓球のプレー経験はゼロだったが、自宅で私が世界選手権などのビデオを見るのを一緒に見ているうちに、「卓球とはこういうスポーツだ」というイメージができていたのだろう。

初心者を指導する場合、細部を一つ一つ教えるボトムアップではなく、一度に全体像を示すトップダウン式に指導したほうが有効だという主張である。前記事「外に求めるな」で私が初心者の指導に失敗したことが思い起こされる。

世界選手権3位という実績と、長年数多くのトップ選手の指導にもかかわってきた氏の経験から来る主張には説得力がある。しかも文章もまとまりがあって説得的である。おそらく十分に推敲を重ねて書かれているのだろう。そのような主張と比べて私の主張のなんと貧弱なことよ。よくないとは思いながらも「…という気がする」とか、「私が試した限りでは…」のような主観的な方についつい流れてしまう。

そして今回の記事もまたそのような主観的な主張になってしまった…。

前述の『卓球王国』同号の記事「選手に聞いた 用具のこだわり」55でマツモト・カズオ選手が以下のように述べている。

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私は下回転サービスが得意で、台から出る長い下回転も使いますが、そのボールに対して相手は簡単にはドライブで返せない。そうなると次のパターンが読めてくる。強い回転があれば、相手の対応が読めるので、試合を優位に進められるのです。

最近私もまさにこのような経験をした。

前記事「万能ラケット角度」で述べたように私は下回転サービスがあまり得意ではない。しかし、最近、横下回転サービスが非常に切れるようになってきた。横下回転サービスのコツをつかんだ気がする。主観的な表現ばかりで恐縮だが、今まで横下回転サービスはラケットをできるだけ台に平行にしてボールの底を切るものだと思っていたのだが、そうすると、安定しないし、横下のつもりがただの横回転になってしまうこともままある。底ではなく、ボールの斜め後ろを切る意識でサービスを出してみたところ、非常に切れる。実際は底を切っているのかもしれないが、意識はボールの後ろを切って横下回転サービスを出すのである。

このようによく切れたフォア横下回転サービスを相手のバック側に出すと、そうそう打ち抜かれない。格上の人と対戦した時も、よく切れた横下回転サービスを出すと、台から出たとしても、相手はバックハンドドライブで持ち上げてくるか、うまく持ち上げられない人は、サイドスピンをかけてバック側にほどよい長さでつっついてくる。さらにボールの後ろをこするため、ラケット面をかなり立てることになり、相手からは横下ではなく、横回転に見えるらしい。横回転と横下回転を混ぜると、かなりの頻度で気持ちよくネットにかけてくれる。それで相手はより慎重になって、レシーブで入れに来てくれる。これを待ち構えて回り込んでフォアドライブすると、かなりいい形でラリーに持ち込める。もちろん上級者には通用しないだろうが、私と同レベルの相手なら、効果抜群である。

今までは、こちらのへなちょこサーブをフリックされたり、好きなところに素早くつっつかれたりして、なかなか主導権を握れなかったのだが、こちらが切れたサービスを出すことによって相手のレシーブが制限されるようになってきたのである。これまでだいたい一方的に攻められて、勝てなかった相手にも、ある程度善戦できるようになってきた。

サービスが切れているかいないかでこれほどまでに対戦で差が出るものか。サービスの回転量は試合の展開を劇的に変えることになる。試合の形勢を大きく変えるのはチキータなどの台上のテクニックやコース取りだと思っていたが、サービスの回転量もかなり効果があると思われる。対戦でなかなか主導権を握れない、どこにボールを送っても相手に打たれてしまうと悩んでいる人は、サービスの回転量の向上から手をつけてみてはどうだろうか。


 


フットワーク練習で最も優先しなければならないことは「打球点」です。常に高い打球点でとらえることを第一にして動きます。逆に言うと、大きく動けても打球点を落として打っていては意味がないのです。

『卓球王国』の連載「高島式 勝利への戦術&技術」第4回にある言葉である。なるほど。考えたこともなかった。フットワーク練習は動くための練習で、とにかく足を効率的に動かすことが最優先かと思っていた。

卓球で最も大切なものは何だろうか。
フォームが手打ちだったら、強力なボールが打てない(打てないこともないが、安定しない)。しかし、いくら強力なフォアハンドを持っていても、ボールが打てる場所に移動できなければ強力なフォアハンドは打てない。となると、

フォーム<フットワーク

ということになる。たしかにフォームが美しくなくても、フットワークが優れていれば、勝てる可能性が高まる。
しかし、そのフットワークも打球点が正しくなければ意味がないと高島氏は言うのである。打球点というのはつまりタイミングである。

フォーム<フットワーク<タイミング

しかし、自分の低いレベルの卓球を省みると、ちょっと違うかもしれないとも思う。

私は回り込みが苦手である。回り込んでいる途中でボールが到達してしまい、詰まって棒球を返してしまうことが多い。
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こんな感じで詰まることが多い。

理想はしっかり回り込みきって、かつ早い打点で打球することだが、それができない場合、二者択一を迫られる。
一つは体勢が崩れていても構わないから、打球点の早さ優先で詰まりながら打球するという選択。
もう一つは打球点を落としてもいいから、体勢を崩さずしっかりと回り込みを終えてから打球するという選択である。

私は前者の打球点を落とさないようにするために回り込みを途中で打ち切って、詰まりながら打球するという選択をすることが多いが、もしかしたら打球点を落として回り込みきったほうがいいのではないだろうか。

反対にフォア側への飛びつきについても同様のことが言えるかもしれない。

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深いツッツキをフォアサイドに送られたとき、早い打点を優先するあまり、体勢を崩しながら打つことが多いのだが、その場合も打点を落として、しっかりと移動してから打ったほうがいいのではないだろうか。
上の写真のようにどうしても飛びつかなければ打てないようなギリギリのシチュエーションではなく、フォア側深くにボールを送られたといっても、やや余裕のある場合を考えてみよう。そのようなボールを打つために私は足から出さずに、つい手を伸ばして打ってしまう。

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こんな感じで手を伸ばして体勢を崩してしまう。

これも打点を優先しようとするからだろう。

ここまでは

フォーム<フットワーク<タイミング

という優先順位だったが、もしかしたら、タイミングよりも体勢や打球位置が優先されるシチュエーションもあるのではないだろうか。すべてのシチュエーションでそうだとは言わないが、シチュエーションによっては体勢を崩しながらも打球点の早さを優先すべき場合もあるだろうし、また別のシチュエーションなら打点を落としてでも、しっかりと移動して、万全の体勢から強打を放ったほうがいい場合もあるかもしれない。

フォーム<タイミング<フットワーク(体勢あるいはポジショニング)

特にミスの多い初中級者は打点の高さよりも体勢を優先して、緩いボールでもいいからとにかくミスせず返球したほうがいいかもしれない。


タイムリーに回り込みの動画が発表されていた

昔、阿弥陀様が修行中の菩薩だったとき、世の中のあらゆる衆生が救われなければ、私は悟りを開くまいと誓いを立てたのだという。

誓い


凡人なら自分さえ悟りを開けば、他の人のことなどどうでもいいと考えるのに、阿弥陀様は世界中の人の幸せを願った。やがて阿弥陀様は無事悟りを開き、如来となった。したがって私たちは救われることが予定されている。

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私の持病は「下回転サービスが入らない病」である。
下回転サービスなんて最も基本的なサービスではないかと思われるかもしれないが、私にとっては難しい。
ナックルに毛の生えたようなフォア下回転サービスを出すのなら、難しいことはない。しかし、しっかり切れていて、低くて、台上で2バウンドするような下回転サービスを出そうとすると、なかなか安定しない。
ラケットを体から離してみたり、高い打球点で打ってみたり、ボールの底のほうを切ってみたりと、いろいろやってみるのだが、一時的に安定しても、次の週の練習では、またおかしくなっている。あの、ザクッとラバーに引っかかるような感触を伴う下回転サービスを安定して出せるようにならないものか。

最近、WRMの動画で「誰でも浮かないツッツキ」という動画が公開された。



ぐっちぃ氏が6年もの検証の末に到達した結論なのだという。

簡単に言うと、インパクト時のラケットの面の角度を45°にすれば、切っても切らなくてもあまり浮かせずにつっつくことができるのだという。

たったそれだけ?切れているボールもあれば、切れていないボールもあるし、深くて低いボールもあれば、浅くて高いボールもある。そのようなあらゆるボールにこの角度が適用できるのだという。にわかには信じがたいが今日の練習で試してみたところ、かなりいい感じだった。もちろん常に45°というわけではなく、ボールによってある程度の幅があり、50°がいい時もあれば、40°がいいときもあるだろう。しかし、おおよそ45°の角度がプロトタイプ――典型であり、大きく浮かさず、安定して返球できる角度なのである。

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42°が最も飛距離が出ると言われていたハイパー・オリンピックの槍投げ

ツッツキが安定するなら、下回転サービスもこの角度で打てば安定するのではないか?

と早速試してみたところ、第一バウンドの位置にさえ気を付ければ、かなりいい感触である。

ツッツキが安定するなら、ドライブも安定するのではないか?

早速試してみたところ、こちらもかなりいい感触である。低い打点から持ち上げるときや、ネットより30センチぐらい高いボールを打球するときは、45°よりも、やや角度を大きくしたり、小さくしたりする必要はあるが、順回転のボールを打ってみたところ、かなりいいボールが打てた。

もしかしたらカットでも?

私はカットができないので試していない。

卓球は打点や体幹の使い方が大事なのであって、ラケット角度なんか大した問題ではないという上手な人の話を聞いたことがあるが、私はやはり角度が気になって仕方がない。

この「魔法の角度」がツッツキのみならず、サービスやドライブにも有効かどうかは人によって違うということも大いに考えられる。しかし、私にはこの角度が非常に有効だったので、これからもさまざまな場面でこの角度を使っていこうと思っている。

いいことを教わった。これはまさに「魔法の角度」である。ぐっちぃ氏に感謝である。

 

リオ・オリンピックの水谷選手のおかげで、硬式卓球の認知度、世間での評価というのもずいぶん高まり、世の中はにわか卓球ブームである。職場でも私が卓球好きだというのを知っている人が、いろいろ卓球の話題をふってくれた。あぁ、卓球をやっていてよかった。世間がやっと卓球のすごさ、かっこよさに気づきつつある。今までの卓球のイメージはかなり払拭され、世間の卓球人を見る目が「ちょっと変わった趣味の人」から「ちょっとかっこいい人」に変わりつつある(ような気がする)。現在の卓球ブームが一過性のものに終わり、失われることを私は恐れる。どうすれば卓球をイケテル趣味として日本に定着させることができるのだろうか。

海外に目を向けると、アメリカではすでに卓球ブームが到来していたのだという。

水次祥子「メジャー球団もIT企業も…アメリカでなぜか卓球ブーム」(YOMIURI ONLINE)

卓球は野球界だけでなく、実は米国の一般企業にも浸透しており、業績のいい会社ほど卓球台を所有するといわれている。

例えばTwitter社のカリフォルニア州サンフランシスコにある本社のように、大手のIT企業は社内にカフェやバー、美容院、マッサージサービス、洋服クリーニングサービスなどのアメニティーを充実させており、卓球台もそうした社員向けアメニティーの一つになっているそうだ。

日本企業の社屋にカフェやバーと並んで卓球台が置いてあるという風景が想像できるだろうか。そういえば、アリエル・シン選手がウォーレン・バフェット氏やビル・ゲイツ氏と友達だという記事も読んで意外に思っていたが、そのぐらいアメリカではレクリエーションとしての卓球が日本よりも普及しているということなのかもしれない。

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最近、あまり話題に上らないアリエル・シン選手。お勉強に忙しいのか?

「アメニティー」というのは意味のぼんやりした言葉だが、辞書の定義は以下のようになる。

【アメニティ amenity】人間が建物・場所・気候・風土などの環境の質に対して感じる、快適さや好ましさに関する総合的概念。特に住宅の居住性のよさをさすことが多い。「家とインテリアの用語がわかる辞典」より

簡単に言えば、「居心地の良さ」ということらしい。なお、ホテルに備え付けの歯ブラシ、石鹸といった使い捨ての「アメニティー・グッズ」というのは和製英語とのことである。

会社のオフィスや市役所や銀行の一角に卓球台(フルサイズでなくてもいい。ハーフサイズで十分)とラケットが置いてあって、社員や訪問者が軽く数分ボールを打てる社会というのは、すばらしいではないか。

ラグビーやフットサルの人気が上がってきているといっても、卓球のような誰でも、どこでも、という手軽さはない。手軽さという卓球の強みを活かさない手はない。このような方面に卓球を普及させなければ、今の卓球ブームはすぐに過ぎ去ってしまうだろう。

市役所で長い待ち時間にうんざりしている市民に声をかける市役所職員。

「お待たせしてしまい、申し訳ありません。よろしければ、お待ちいただいている間、卓球でもいかがですか?お相手しますよ。」

それが長野県、岡谷市役所の岡田峻選手だったりしたら。

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また、十六銀行で待っているときに高橋真梨子選手に相手をしていただくのでもいい。

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長い待ち時間も全く苦にはならないだろう。

協和発酵キリンとか、シチズンといった卓球の強い実業団を持っている企業は、本社、総合受付の前にデーンと卓球台を置き、そこで昼休みには上田仁選手や神巧也選手の公開練習などを行っていただきたい。いや、社屋内ではなく、玄関の外で通行人にも見えるようにやっていただければ、なおよい。

社屋の前に大きなオブジェを置くよりも、そのような「生けるオブジェ」のほうがずっと観る者を楽しませ、居心地をよくしてくれるのではないか。

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高速道路を何時間も運転して、ちょっと疲れた時にサービスエリアに入れば、そこにも卓球台がある。
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「EXPASA海老名」というサービスエリアには卓球台があるらしい。


緑の少ない都市部の憩いの場所として公園があり、その片隅に雨がしのげる東屋があり、そこにも卓球台がある。

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上の写真はドイツの公園

田舎の、一時間に一本しか電車が来ない駅に卓球台が置いてあり、客同士で打てるというのもいいが、
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できれば、鉄道会社の職員が「卓球駅長」として巡回してくれて、そこで相手をしてくれるというのなら、観光客増加にもつながるのではないか。
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JR北海道 佐藤麻由子選手。

こんな卓球がふつうにある社会を夢想してしまう。

ただ、心配なのは、硬式卓球は難しすぎるということである。

硬式卓球を非経験者がすんなり楽しめるとは思えない。硬式卓球は自分の能力以上のボールが簡単に打ててしまう。打った実感と実際のボールスピードが乖離している。非経験者にとっての硬式卓球というのは、いわば、原付にちょっと乗ったことがある人がGPレーサーを与えられたようなものだと思う。

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素人がスロットを軽く開けると、急加速して、即、転倒(乗ったことがないので想像だが)。硬式卓球も軽く打ったつもりがホームラン。これでは初心者はすぐに飽きてしまう。

そこでラージボール卓球の出番である。

ラージボールなら、打球の実感とボールの実際のスピードが近く、バランスが取れている。非経験者でもそうそうホームランを打つことはないだろう。ラージボールが社会の隅々にまで浸透したら、一般人も卓球に親しみやすいと思われる。
拙ブログでもラージボールを取り上げたことがある(「ラージボール卓球の効能」「相対化するということ」)。そのなかで以下のように述べた。

ラージは卓球未経験者を取り込めるポテンシャルを持っている。若い男女がデートの一環として硬式卓球をするのは想像しにくいが、ラージなら想像できる。ラージのスター選手が生まれて、メディアが盛り上げでもすれば、ラージがボーリングのような若者のメジャーな娯楽になるのも夢ではないと思う。

現在の日本チャンピオン香坂亮志選手はスター選手としての資質を十分すぎるほどに備えている。
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もっとメディアに取り上げてもらえれば、卓球ブームの新たな展開もありうるのではないか。

しかし、ラージには大きな欠点もある。硬式以上にボールが軽く、風の影響を受けやすいという欠点である。これは卓球を屋内に限定するということになる。公園やキャンプ場、学校の校庭などで気軽に卓球ができないというのはなんとも残念なことである。

最近、TTXなる卓球が公開された。これはよりホビー性の高い卓球である。



Table Tennis X: what's new?」によると、台は移動しやすいように単純な構造になっている。

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ラケットは薄っぺらい板に、おそらくスポンジか紙やすりのようなものが貼ってあるだけだろう。

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下のラケットは別の加工が施されているようだ。
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ボールはニッタク製のプラボールということだが、ラージボールよりも大きいかもしれない。硬式のボールよりも重いと書いてあったので、ラージボールではなさそうだ。

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風がビュウビュウ吹いている海岸でプレーしていることから、風にそうとう強いと思われる。

youtubeの動画のコメントでは「table yennis」「卓球の面白さを損なっている」などと揶揄され、不評なようだが、私は大いに期待している。ラージボール卓球とかぶるという向きもあるだろうが、どちらも共存できると思う。

ラージボールは競技者と一般層のどちらも楽しめ、
TTXは一般層のお遊び的要素に特化したもの

という棲み分けである。

硬式卓球は一般層には敷居が高すぎる。一般層をとりこむにはラージボール卓球やTTXなどが有効だと思われる。このような一般人にも楽しみやすい卓球を普及させることによって現在の卓球ブームが確実なものになってほしいと願っている。


【付記1】
ラージボールの全国レベルの動画というのは2~3年前はほとんど見かけなかったのだが、最近、いろいろ上がっているようだ。全国大会3連覇中の香坂亮志選手のプレーを初めて観た。



ボールの、なんというスピード(特にバックハンド)。そして香坂選手のオーラ。
遠目に観たら、硬式卓球とあまり変わらない。




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冷静で、王者の風格を帯びている。そして二枚目である。
香坂選手は現在、ヨーラの契約選手ということだが、ヨーラは先見の明がある。



【付記2】
TTXはルールも非経験者が楽しめるように変更されている。

・サーブは自コートにワンバウンドすれば、なんでもOKである。フィンガースピンサービスだろうが、ぶっつけサーブだろうが、ボディーハイドサーブだろうが、なんでもOKである。

・時間制限があり、1ゲーム2分間の3ゲームマッチということである。ノータッチの場合は2点(winner)で、ワイルドカードを宣言してもポイントが2点になるとかちょっと複雑なルールがある。10点先取、あるいは2分が来た時点で点数の多いほうが勝ちということらしい。






噂のまなざしで 摂氏100度のメイキンラブ
愛される残酷に 飛び込んだらいいさ
失うフリをして 女はきれいになれる クール
吐ききれないウソも 薔薇になる
氷室京介「デカダン」

気心の知れた女同士なら、明るく饒舌な人が、異性がまじった酒宴ではとたんに口をつぐんでつまらなそうにしてしまう。何か話しかけられても「別に」「ふつう」「まあまあ」ぐらいしか口にしない。

私の卓球というのはこの女性に近い感じだった。練習の時は攻撃的で、リスキーなプレーも厭わないが、試合になると急に積極性を失い、慎重になる。以前、私が試合で心がけていたのは、とにかく甘いレシーブを送らないということだった。こちらから積極的に攻められなくてもいいから、相手に好き放題、打たれないようにとにかく低く短いレシーブをしようというスタイルだった(前記事「すさまじい対戦」)。

しかし、最近考え方が変わってきた。卓球の能力には、安定してミスがないことや、厳しいボールを打てることももちろんあるが、それ以外に「ラリーにもちこむうまさ」というのがあるのではないだろうか。これを「仕掛けのうまさ」と言い換えてもいい。
いくらブロックが固く、ドライブに威力があっても、ラリー(ここではサービスからの台上を終えてのストローク戦を指す)に持ち込めなければそのような能力は無用の長物である。私がふだん練習していることの大半はラリーの練習なのに、その練習の成果がほとんど発揮できず、台上のチマチマしたやりとりで終わってしまうのでは練習の意味が半減してしまう。そうではなくて、積極的に相手に打ちやすそうなボールを送ったほうがいいのではないかと思うようになった。

相手からのバック前ショートサービスをこちらが短くネット際に返すと、相手もストップで短く返してくる。そして私はそれをバックサイドを切る厳しいコースにつっつく。相手は無理にバックドライブで攻撃しようとしてミス。次も相手のサービスで、相手のフォア前ショートサービスをキツイ下回転のツッツキで返球しようとして、こちらがネットミス…。

以前はこんな感じで私はむやみにガードが固かった――短い、低い返球ばかりするものだから、どちらも気持ちよく攻撃できず、1ゲームの中で、ラリーらしきものが続くのは1~2ポイントだけで、あとはどちらかのミスでポイントが終わる。なんだか卓球をしたという実感が薄い。つまらない。 

だからといって、相手の待っているところに打ちごろのゆるいボールを送ってやるというのは極端すぎる。そんなことをしたら、一発で打ち抜かれてしまう。私はそんな尻軽ではない。そこで、相手が待っていないところにそこそこ打ちやすいボールを送ってやる。相手のサービスを非常に早い打点で返球するのだが、あまり回転をかけず、あるいは少し横回転をかけて台から少し出るぐらいで軽く返してやる。相手からすれば、台から出るボールだから、つっつくわけにも行かない。絶好球ではないが、あまり回転がかかっておらず、打てないこともない。打つことは打つが、決めに行くのではなく、入れに行くボールである。こうすると、ラリーに持ち込める。

卓レポの動画で「ストップレシーブからのラリーの組み立て」というのを観た。



モデルは松平賢二選手だが、賢二選手のストップレシーブのなんと力の抜けていることか。「相手に絶対に打たせまい」ではなく、「ちょっと打ってみたら?」と誘うようなレシーブである。
相手はそれを軽く払ってきて、そこからラリーに持ち込んでいる。

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このようなラリーができれば、練習の成果を十分に発揮できるし、卓球もたのしくなる。

あるいは次のようなシチュエーションである。
相手がこちらのバック側に低い厳しいツッツキを返してきた。
それをこちらはバックドライブで決めに行くのではなく、強い回転を掛けた、ゆっくりした深いループドライブで相手のバック側に返球する。すると、相手は――上級者ならいざしらず、ふつうレベルの相手なら、カウンターなどで返してくることは稀だろう。ふつうにブロックで返球してくるに違いない。ゆっくりしたループドライブなので、鋭いツッツキでもネットにかけることは少ないし、ボールのスピードが遅い分、こちらは体勢を立て直す時間が作れる。これも「仕掛け」と言えるのではないだろうか。

このような「仕掛け」の練習というのは、これまであまりしてこなかった気がする。しかし、試合で勝つためには仕掛けの練習の優先順位はかなり高いと思う。

卓球は個人競技であり、しかも対人競技である。試合中に手伝ってくれるチームメイトもいない。だから一人だけで戦わなければならないと考えがちだが、上手な人は相手をうまく利用して、言い方をかえれば、相手と協力してラリーを組み立てている。相手に強打させず、相手からそこそこ打ちやすいボールをうまく引き出す技術に長けている。卓球は個人競技ではあるものの、協力プレーが大切だと思うのである。

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相手に打たせないようにむやみにガードを固くすれば、相手も厳しいボールを送ってくることになり、結果的に自分の首を絞めることになる。相手には適度に甘いボールを送らなければならない。


 

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