いまさらながら、ジャパンオープンのビデオを観ている。最近ゆっくりビデオを観るゆとりがなかったのである。
日本選手は最終日には残れなかったが、それでもいい試合を見せてくれたのではないだろうか。
xia氏の「ジャパンオープン観戦記」に以下のような記述がある。
生で観ていて「おっ」と思った部分は馬龍選手にスタートを遅らせて、バック前を普通にツッツキレシーブさせることが出来た時。
このレシーブをさせることが出来たら水谷選手が先に攻める機会が出来、勝つチャンスが生まれてきそうな気がしました。
この動画の中で言うと1:20~と3:26~のプレーが挙げられます。
馬龍選手が普通にツッツキをしてくれると水谷選手が先にドライブを打てます。先にドライブを打てるとやはり得点確率が高いです。
なるほど。上級者は目の付け所が違う。先にドライブをかけて先手を取れば、主導権を握ることになり、ひいてはそのポイントを得ることができるというわけである。
ITTFのダイジェスト版ではカットされてしまった部分にも参考になるプレーが多いというので、完全版を観て、水谷選手、馬龍選手のどちらが先手を取っているか確認してみた。我ながら、あまりおもしろい考察ではないと思うので、よほど暇な人でなければ、読まないほうがいいかもしれない。
「先にドライブをかける」というのにはフリックやチキータも含めている。
参考にしたのは以下の動画である。
【ジャパンオープン2016】男子シングルス準々決勝 水谷隼 vs 馬龍(完全版)
以下、画像が大量にあるのでご注意。
第一ゲーム
水0 馬1
次の1ポイントはレシーブミスだったので、ドライブをかけるシーンがなかった。
水1 馬1
水2 馬1
水3 馬1
水4 馬1
水5 馬1
水5 馬2
水5 馬3
水6 馬3
水6 馬4
水6 馬5
水7 馬5
水7 馬6(ちなみにこのバックドライブはミス)
水7 馬7
これで第一ゲームが終わりである。
ドライブを先にかけた回数は7対7で五分であった。このゲームは顕著だったが、全体的に派手な打ち合いに発展することは少なく、台から出るボールをしっかりとドライブできるチャンスは少なかった。両者ともに台上から小さくストップの応酬だったり、台上のフリックやチキータから先手を取るケースが多かった。そして馬龍選手が水谷選手を圧倒していたという印象はない。これは水谷選手が先手を取る回数が五分だったからということになりそうである。
第二ゲーム
水0 馬1
水1 馬1
水1 馬2
水2 馬2 点数が飛んでいるのはどちらかがレシーブミス等でドライブをかけるチャンスがなかったからである。
水2 馬3
水2 馬4
水2 馬5
水3 馬5
水4 馬5
水4 馬6
水4 馬7
水5 馬8
水6 馬8
水6 馬9
水7 馬9
水8 馬9
水9 馬9
なんと、このゲームも先手を取った回数は五分であった。その結果、点数的にも競っており、印象的にも馬龍選手に一方的に押されていたという感じではなかった。
第三ゲーム
水1 馬0
水1 馬1(このバックドライブは上に高く持ちあげるだけの攻撃力の低いドライブだった。)
水1 馬2
水1 馬3
水1 馬4(馬龍選手のバックドライブはフリーハンドが独特である。)
水1 馬5
水1 馬6
水1 馬7
水2 馬7
水3 馬7
水3 馬8
水3 馬9
水4 馬9
水4 馬10
ここで馬龍側からのタイムアウト。
水谷選手からすると、追いつかれて流れが悪い中でのタイムアウトだったので、ラッキー。
先手の回数は馬龍選手が倍以上だが、点数は五分である。
とにかくドライブをかければいいというわけではなく、水谷選手がわざとフォア側に長いレシーブをして、馬龍選手にドライブを打たせる場面もあった。宮崎氏の解説によると、相手に先に打たせる場合は心の準備ができているから、ドライブを打たれても、しっかりブロックでコースを突ける(実際には「大丈夫」という言葉だった)のだという。というわけで
「ドライブを先にかけている=先手を取っている」
と単純に言い切ることはできない。先手のドライブを打とうとしてフリックやチキータでミスする場合もあるからだ。より正確に言うなら
「先手を取っている=ドライブを先にかけている」
というのがよさそうだ。
「よくやっている」と言わんばかりの邱建新コーチのこの笑顔
2ゲーム連取され、せっかくリードしていた第三ゲームも追いつかれてしまったにもかかわらず、水谷選手も笑顔。
劉国梁監督は相変わらず険しい表情。
水谷選手は1ゲームもとっていないにもかかわらず、なんだか達成感がにじみ出ている。おそらく後ろに下がらず、前陣を維持し、カウンターを狙っていくという対中国対策に手応えを感じているのだろう。それに対して中国側は水谷選手のプレースタイルを非常に警戒しているようにみえる。今までの水谷選手とは一味違うと感じているのかもしれない。
水4 馬11
水4 馬12
水4 馬13
水4 馬14
水5 馬14
このゲームは馬龍選手が三倍近くドライブで先手を取っているにもかかわらず、点数は序盤で水谷選手にリードを許し、ぎりぎり11-9でゲームを取っている。
第四ゲーム
水1 馬0
水1 馬1
水2 馬1
水3 馬1
水3 馬2
水3 馬3
水3 馬4
水3 馬5
水3 馬6
水4 馬6
水5 馬6
水6 馬6
水6 馬7
水7 馬7
水8 馬7
水8 馬8
水8 馬9
水9 馬9
水谷選手は0-4で馬龍選手に敗れるという結果に終わった。
しかし、点数は7,8,9,8と、あと一歩というところまで来ている。去年まで中国選手の一軍と当たった場合は全く勝てる気がしなかったが、今年の水谷選手をみると、3回やれば1回ぐらい勝てるのではないかと思わせる内容だった(素人目には)。このまま行けば、中国と渡り合える日も近いのではないだろうか。なにせ相手は今、最強と言われる馬龍選手なのである。
長かった…。今まで押しても引いてもびくともしなかった中国の鋼鉄の扉がちょっと持ち上げて横にスライドさせたら動きそうなのだ。この調子でいけば、水谷選手がリオ・オリンピックでとんでもない結果を残してくれるかもしれない(楽観的すぎるか?)。
ともあれ、「先にドライブを打てるとやはり得点確率が高い」ということは以上の調査から概ね首肯できそうだ。ただし、あくまで「確率が高い」ということである。第三ゲームのように先にドライブをかける回数の少ない水谷選手が五分の戦いをすることも十分可能である。先にドライブをかけるというのは相手の意表を突くという要素が多少なりともなければ効果が薄いと思われる。相手に先に打たせてカウンターやブロックで待ち構えている場合もあるからである。
【おまけ】
下がってしのぐ馬龍選手。役柄があべこべだ。
日本選手は最終日には残れなかったが、それでもいい試合を見せてくれたのではないだろうか。
xia氏の「ジャパンオープン観戦記」に以下のような記述がある。
生で観ていて「おっ」と思った部分は馬龍選手にスタートを遅らせて、バック前を普通にツッツキレシーブさせることが出来た時。
このレシーブをさせることが出来たら水谷選手が先に攻める機会が出来、勝つチャンスが生まれてきそうな気がしました。
この動画の中で言うと1:20~と3:26~のプレーが挙げられます。
馬龍選手が普通にツッツキをしてくれると水谷選手が先にドライブを打てます。先にドライブを打てるとやはり得点確率が高いです。
なるほど。上級者は目の付け所が違う。先にドライブをかけて先手を取れば、主導権を握ることになり、ひいてはそのポイントを得ることができるというわけである。
ITTFのダイジェスト版ではカットされてしまった部分にも参考になるプレーが多いというので、完全版を観て、水谷選手、馬龍選手のどちらが先手を取っているか確認してみた。我ながら、あまりおもしろい考察ではないと思うので、よほど暇な人でなければ、読まないほうがいいかもしれない。
「先にドライブをかける」というのにはフリックやチキータも含めている。
参考にしたのは以下の動画である。
【ジャパンオープン2016】男子シングルス準々決勝 水谷隼 vs 馬龍(完全版)
以下、画像が大量にあるのでご注意。
第一ゲーム
水0 馬1
次の1ポイントはレシーブミスだったので、ドライブをかけるシーンがなかった。
水1 馬1
水2 馬1
水3 馬1
水4 馬1
水5 馬1
水5 馬2
水5 馬3
水6 馬3
水6 馬4
水6 馬5
水7 馬5
水7 馬6(ちなみにこのバックドライブはミス)
水7 馬7
これで第一ゲームが終わりである。
ドライブを先にかけた回数は7対7で五分であった。このゲームは顕著だったが、全体的に派手な打ち合いに発展することは少なく、台から出るボールをしっかりとドライブできるチャンスは少なかった。両者ともに台上から小さくストップの応酬だったり、台上のフリックやチキータから先手を取るケースが多かった。そして馬龍選手が水谷選手を圧倒していたという印象はない。これは水谷選手が先手を取る回数が五分だったからということになりそうである。
第二ゲーム
水0 馬1
水1 馬1
水1 馬2
水2 馬2 点数が飛んでいるのはどちらかがレシーブミス等でドライブをかけるチャンスがなかったからである。
水2 馬3
水2 馬4
水2 馬5
水3 馬5
水4 馬5
水4 馬6
水4 馬7
水5 馬8
水6 馬8
水6 馬9
水7 馬9
水8 馬9
水9 馬9
なんと、このゲームも先手を取った回数は五分であった。その結果、点数的にも競っており、印象的にも馬龍選手に一方的に押されていたという感じではなかった。
第三ゲーム
水1 馬0
水1 馬1(このバックドライブは上に高く持ちあげるだけの攻撃力の低いドライブだった。)
水1 馬2
水1 馬3
水1 馬4(馬龍選手のバックドライブはフリーハンドが独特である。)
水1 馬5
水1 馬6
水1 馬7
水2 馬7
水3 馬7
水3 馬8
水3 馬9
水4 馬9
水4 馬10
ここで馬龍側からのタイムアウト。
水谷選手からすると、追いつかれて流れが悪い中でのタイムアウトだったので、ラッキー。
先手の回数は馬龍選手が倍以上だが、点数は五分である。
とにかくドライブをかければいいというわけではなく、水谷選手がわざとフォア側に長いレシーブをして、馬龍選手にドライブを打たせる場面もあった。宮崎氏の解説によると、相手に先に打たせる場合は心の準備ができているから、ドライブを打たれても、しっかりブロックでコースを突ける(実際には「大丈夫」という言葉だった)のだという。というわけで
「ドライブを先にかけている=先手を取っている」
と単純に言い切ることはできない。先手のドライブを打とうとしてフリックやチキータでミスする場合もあるからだ。より正確に言うなら
「先手を取っている=ドライブを先にかけている」
というのがよさそうだ。
「よくやっている」と言わんばかりの邱建新コーチのこの笑顔
2ゲーム連取され、せっかくリードしていた第三ゲームも追いつかれてしまったにもかかわらず、水谷選手も笑顔。
劉国梁監督は相変わらず険しい表情。
水谷選手は1ゲームもとっていないにもかかわらず、なんだか達成感がにじみ出ている。おそらく後ろに下がらず、前陣を維持し、カウンターを狙っていくという対中国対策に手応えを感じているのだろう。それに対して中国側は水谷選手のプレースタイルを非常に警戒しているようにみえる。今までの水谷選手とは一味違うと感じているのかもしれない。
水4 馬11
水4 馬12
水4 馬13
水4 馬14
水5 馬14
このゲームは馬龍選手が三倍近くドライブで先手を取っているにもかかわらず、点数は序盤で水谷選手にリードを許し、ぎりぎり11-9でゲームを取っている。
第四ゲーム
水1 馬0
水1 馬1
水2 馬1
水3 馬1
水3 馬2
水3 馬3
水3 馬4
水3 馬5
水3 馬6
水4 馬6
水5 馬6
水6 馬6
水6 馬7
水7 馬7
水8 馬7
水8 馬8
水8 馬9
水9 馬9
水谷選手は0-4で馬龍選手に敗れるという結果に終わった。
しかし、点数は7,8,9,8と、あと一歩というところまで来ている。去年まで中国選手の一軍と当たった場合は全く勝てる気がしなかったが、今年の水谷選手をみると、3回やれば1回ぐらい勝てるのではないかと思わせる内容だった(素人目には)。このまま行けば、中国と渡り合える日も近いのではないだろうか。なにせ相手は今、最強と言われる馬龍選手なのである。
長かった…。今まで押しても引いてもびくともしなかった中国の鋼鉄の扉がちょっと持ち上げて横にスライドさせたら動きそうなのだ。この調子でいけば、水谷選手がリオ・オリンピックでとんでもない結果を残してくれるかもしれない(楽観的すぎるか?)。
ともあれ、「先にドライブを打てるとやはり得点確率が高い」ということは以上の調査から概ね首肯できそうだ。ただし、あくまで「確率が高い」ということである。第三ゲームのように先にドライブをかける回数の少ない水谷選手が五分の戦いをすることも十分可能である。先にドライブをかけるというのは相手の意表を突くという要素が多少なりともなければ効果が薄いと思われる。相手に先に打たせてカウンターやブロックで待ち構えている場合もあるからである。
【おまけ】
下がってしのぐ馬龍選手。役柄があべこべだ。