私ごときの腕前でも、初心者なら指導できるだろうと思い、本当の初心者の指導に数ヶ月来携わっているのだが、なかなかうまくいかない。
初めは初心者には基礎が大切だと思い、打ち方云々よりも、身体の使い方というのを重視していた。
「むやみに腕を使ってはいけません。腕はほぼ固定で胸を中心に上半身を回転させて打ちましょう」
「うちにくいボールは身体を歪めて打つのではなく、まずフットワークを使って移動してから打ちましょう」
などと言っても、全く効果はない。言われた時は手打ちにならないように気をつけて、フットワークを使おうとしてくれるのだが、それ以降はボールを打つのに夢中になって、私のアドバイスなど頭からすっかり消え去ってしまい、初心者丸出しの手打ち、ムチャ打ちになってしまう。
しっかりした指導者が高い目標を持って子供を週3~4回指導するというのならともかく、私のようにレクリエーションとして社会人を週に1回指導するぐらいなら、根気よく基礎を習得させようなどと言っていられない。身体や足の使い方などは後回しで、とにかく気持ちよくラリーしてもらえることを優先するという方針に転換した。
初心者がラリーを楽しめない要因は2つあると思っている。
一つは「ラリーを続けよう」という意識の有無。もう一つは当てるとこするというタッチの区別である。
とりわけ男性は相手のことなどお構いなしにむやみに強打してラリーを中断してしまう傾向がある。相手が苦しい姿勢でなんとか返球してきたボールをチャンスとばかりにスマッシュするのである。そこはスマッシュじゃなくて、逆に相手に体勢を立て直す余裕を与えるようなゆっくりした打ちやすいボールであるはずなのに。そういう人には続けることを優先するように注意して、強打をうたないようにたしなめる。
「そういう打ち方をしていると、みんなに敬遠されてしまいますよ。」
しかし、どうしても強く打ちたがる人がいるので、次のように説得する。
「軽く打って確実に入れることができれば、強く打つのは簡単です。逆に軽く打って入らないなら、強く打っても入りませんよ。まずどんなボールでも力を抜いて軽く打てるようにしてください。」(前記事「小は大を兼ねる」)
そしてもう一つのタッチについてだが、初心者はこするということが分からない。だから難しいボールも当てて打ってしまい、ミスしてしまう。安定性を高めるためにはどうしても擦るタッチを身につけなければならない。しかしどうやってこするタッチを教えたらいいのか。私が試したのは次の方法である。
台にボールを落として、弾んだボールが頂点を過ぎて落ちてくるところを真上に擦り上げて打つように一人練習をさせてみたのである。
「打ったボールの弧線の頂点がネットの真上に来るように、できるだけ高く擦り上げてください。」
そうやってこする練習をさせると、意に反して低く、当てこすり半々のようなボールを打つので、
「もっと高く、ボールを押さないで、ラケットを真上に擦り上げてください。」
と指導した。
よく台からボールを手前に転がして、台から落ちるところをこすりあげるという指導を見るが、
あれは本当の初心者にはハードルが高いと思ったので、台の上でバウンドさせてこすらせてみたのである。
すると、今度は高い弧線で打てるようになるけれど、まだ当てが強く、台をオーバーしてしまう。
「台に入るようにできるだけ高く擦り上げてください。ボールを押さないで、ラバーに引っ掛けるように。」
と言って、一人で10分ほど練習させておいた。
すると次第にボールをこするタッチが分かってきたようなので、その打ち方でラリーをさせてみると、初心者の顔つきが変わった。
「ボールが軽く感じます!」
「打っていて気持ちいいでしょう?横殴りにバシッと叩くと、安定しない上に、(スイートエリアを外しているので)打球感も悪いです。こすればどんな打点でも、安定して入るし、相手も取りやすいボールになるから、ラリーが続いて楽しいですよ。」
ここ数ヶ月の「指導」ではじめて「教えた」という実感を得られた瞬間だった。彼の方でも卓球の楽しさをはじめて感じたようだった(前記事「卓球の楽しさの原点」)。
【まとめ】
私の「指導」は順序が間違っていたようだ。レクリエーションの卓球に難しい指導は効果が薄い。手打ちでもなんでもいいから、まず「こするタッチ」を教えるべきだったのだ。そしてラリーが続くようになり、卓球の楽しさを知れば、おのずから自分に足りないことを身につけようと熱心にもなるだろう。
われわれ中級者だって、よく考えてみれば初心者と変わらないのかもしれない。
ラリーに夢中になると、下回転がかかったボールをこすっているつもりで当ててしまい、ネットに引っ掛けている(前記事「止まってから打つ、止まらないで打つ」)し、足を使えと言われても、試合中はついボディーワークでなんとかしようとしてしまう。試合に夢中になっていくると、練習してきたことがすっかり頭から抜けてしまい、基本的なことさえ満足にできなくなってしまう。中級者もやっていることは基本的に初心者と変わらないのかもしれない。
最近は私もこする感覚をしっかり意識できるよう、当てを最小限にしたループドライブの練習でもしてみようかと考えている。
初めは初心者には基礎が大切だと思い、打ち方云々よりも、身体の使い方というのを重視していた。
「むやみに腕を使ってはいけません。腕はほぼ固定で胸を中心に上半身を回転させて打ちましょう」
「うちにくいボールは身体を歪めて打つのではなく、まずフットワークを使って移動してから打ちましょう」
などと言っても、全く効果はない。言われた時は手打ちにならないように気をつけて、フットワークを使おうとしてくれるのだが、それ以降はボールを打つのに夢中になって、私のアドバイスなど頭からすっかり消え去ってしまい、初心者丸出しの手打ち、ムチャ打ちになってしまう。
しっかりした指導者が高い目標を持って子供を週3~4回指導するというのならともかく、私のようにレクリエーションとして社会人を週に1回指導するぐらいなら、根気よく基礎を習得させようなどと言っていられない。身体や足の使い方などは後回しで、とにかく気持ちよくラリーしてもらえることを優先するという方針に転換した。
初心者がラリーを楽しめない要因は2つあると思っている。
一つは「ラリーを続けよう」という意識の有無。もう一つは当てるとこするというタッチの区別である。
とりわけ男性は相手のことなどお構いなしにむやみに強打してラリーを中断してしまう傾向がある。相手が苦しい姿勢でなんとか返球してきたボールをチャンスとばかりにスマッシュするのである。そこはスマッシュじゃなくて、逆に相手に体勢を立て直す余裕を与えるようなゆっくりした打ちやすいボールであるはずなのに。そういう人には続けることを優先するように注意して、強打をうたないようにたしなめる。
「そういう打ち方をしていると、みんなに敬遠されてしまいますよ。」
しかし、どうしても強く打ちたがる人がいるので、次のように説得する。
「軽く打って確実に入れることができれば、強く打つのは簡単です。逆に軽く打って入らないなら、強く打っても入りませんよ。まずどんなボールでも力を抜いて軽く打てるようにしてください。」(前記事「小は大を兼ねる」)
そしてもう一つのタッチについてだが、初心者はこするということが分からない。だから難しいボールも当てて打ってしまい、ミスしてしまう。安定性を高めるためにはどうしても擦るタッチを身につけなければならない。しかしどうやってこするタッチを教えたらいいのか。私が試したのは次の方法である。
台にボールを落として、弾んだボールが頂点を過ぎて落ちてくるところを真上に擦り上げて打つように一人練習をさせてみたのである。
「打ったボールの弧線の頂点がネットの真上に来るように、できるだけ高く擦り上げてください。」
そうやってこする練習をさせると、意に反して低く、当てこすり半々のようなボールを打つので、
「もっと高く、ボールを押さないで、ラケットを真上に擦り上げてください。」
と指導した。
よく台からボールを手前に転がして、台から落ちるところをこすりあげるという指導を見るが、
あれは本当の初心者にはハードルが高いと思ったので、台の上でバウンドさせてこすらせてみたのである。
すると、今度は高い弧線で打てるようになるけれど、まだ当てが強く、台をオーバーしてしまう。
「台に入るようにできるだけ高く擦り上げてください。ボールを押さないで、ラバーに引っ掛けるように。」
と言って、一人で10分ほど練習させておいた。
すると次第にボールをこするタッチが分かってきたようなので、その打ち方でラリーをさせてみると、初心者の顔つきが変わった。
「ボールが軽く感じます!」
「打っていて気持ちいいでしょう?横殴りにバシッと叩くと、安定しない上に、(スイートエリアを外しているので)打球感も悪いです。こすればどんな打点でも、安定して入るし、相手も取りやすいボールになるから、ラリーが続いて楽しいですよ。」
ここ数ヶ月の「指導」ではじめて「教えた」という実感を得られた瞬間だった。彼の方でも卓球の楽しさをはじめて感じたようだった(前記事「卓球の楽しさの原点」)。
【まとめ】
私の「指導」は順序が間違っていたようだ。レクリエーションの卓球に難しい指導は効果が薄い。手打ちでもなんでもいいから、まず「こするタッチ」を教えるべきだったのだ。そしてラリーが続くようになり、卓球の楽しさを知れば、おのずから自分に足りないことを身につけようと熱心にもなるだろう。
われわれ中級者だって、よく考えてみれば初心者と変わらないのかもしれない。
ラリーに夢中になると、下回転がかかったボールをこすっているつもりで当ててしまい、ネットに引っ掛けている(前記事「止まってから打つ、止まらないで打つ」)し、足を使えと言われても、試合中はついボディーワークでなんとかしようとしてしまう。試合に夢中になっていくると、練習してきたことがすっかり頭から抜けてしまい、基本的なことさえ満足にできなくなってしまう。中級者もやっていることは基本的に初心者と変わらないのかもしれない。
最近は私もこする感覚をしっかり意識できるよう、当てを最小限にしたループドライブの練習でもしてみようかと考えている。