しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




2015年08月

前記事「表ソフトの選び方」に引き続き、読者のオガさんの寄稿を掲載したい。

hana kick
絵がないと寂しいので、前回に引き続き花さん

私は表ソフトを使い込んだことがないので、表ソフトは「引っ掛かりの弱い裏ソフトみたいなラバー」ぐらいの認識しかなかった。しかし、やはり裏ソフトでは表ソフトの代用とはならないらしい。表ソフト独特の球質・弾道と、相手の回転に影響されにくいという特質を利用したカウンターの打ちやすさという表ソフトの特長は、裏ソフトには望めないものなのだという。裏ソフトユーザーにはピンと来ないかもしれないが、使い込んでいくと、裏ソフトとは本質的に違うということが分かるにちがいない。


これだけバシバシ打てたら気持ちいいだろうなぁ
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表ソフトの使い方
次に表ソフトの使い方を述べようと思う。
まず表ソフトは力でなくタイミングで打つラバーだ。これは表ユーザーが前陣でプレーすることと表裏の関係にある。

表ソフトは裏ソフトに比べ弾みが劣る。そのため、中後陣のロング打法には不向きである。下がれば下がる程、力が必要になる。となると必然的に前陣エリアが主となり守備も前でやらなければならない。弾みの劣る分、相手打球の威力を利用する。それにはボールの上昇時を捉える必要があり、それに適するのが、コートに近い前陣というわけである。
 
前陣で打球するもう一つの理由は相手コートへの到達時間が早いことである。早いタイミングでボールを送ることで、相手を守備に追い込むことができる。それには自分が早く動かなくてはならない(戻りも含めたスイング設定、次球の予測)

また、表ソフトには裏ソフトに比べ性質上、強い回転を作れないという事情もある。

強い回転を作るには、力が必要である。これはシェークで裏ソフトを使う人なら経験的にわかるだろう。私にとってドライブはスマッシュチャンスを作るための準備打であり、得点を狙うものではない。その回転量はネットを越えさえすれば、十分である。表ソフトではドライブによる得点が期待できない以上、ミート打ちやスマッシュなどフラット打法が主となるので、これらを安定して打つには前陣での早い打球点とタイミングが優先される。

表ソフトというと三球目でバチバチ打つイメージがあるが、実戦ではそういうケースはほとんどなく、ショートやツツキでチャンスメイクして強打に結びつけるのだ。その際ショート、ツツキ共に変化(回転、コース、タイミング)をつけることが肝要である。コースとしては、サイドを切るボールがあるとなお良い。次球を予測しやすいからだ。表ソフトは単調になりがちだが、高いレベルで勝つためにはいろいろなボールを出せることが必要だと思う。

各打法等について

・サーブ&レシーブ
まずはサーブである。フォア、バックどちらでも良いが、3球目で先手を取れることが条件である。回転は横回転系を出すことが多いと思うが、個人的には。縦回転系をメインとしたほうが良いと思う。特に下回転はしっかり切れるようマスターしたい。しかし、やはり回転量は裏ソフトに敵わないので、上と下、横上と横下というように組合わせて回転差を出すほうが良い。
 
コースは対シェークを想定ならフォア前、フォアミドル前、バックミドル前をメインに低く出す。
対ペン(片面)ならバック前、相手のフォアへロングサーブが有効だ。飛びつきが得意な選手もいるので、モーションに注意だ。
 
長い、短いの他ハーフロングサーブも必須である。第一バウンドの位置を調整しながら覚えると良い。3球目を狙い打つ確率が高まるはずだ。

今はチキータでレシーブされることが多く、バック前に横回転では攻めにくい。あえて出すなら、私はフォア前に左横回転を出す。

何れにせよ表ソフトのサーブは回転も大切だが、高さと長さに留意したい。

次にレシーブだ。回転に鈍感なラバーなだけに優位に立ちたい。
いろんなレシーブ技術を駆使するが、打点とボールを当てる位置に注意したい。打点は早く、タッチは短く、相手の回転を利用したり、ナックルにして返すレシーブはぜひマスターしたい。

ロングサーブに対してはショートでのレシーブとレシーブスマッシュ(2球目攻撃)が必要。
ロングサーブは試合でよく出されるので、何度も練習することが大事。バックスイングを取らず、コンパクトに打つこと。


・ツツキ
地味な技術だが特長を活かすためには必要な技術だ。切る切らないや長短のメリハリも重要だが、台から出るか出ないかの長さのツツキは是非マスターしたい。相手に持ち上げさせて次球を攻めるためである。 


・ショート
表ソフト=ナックルというくらいナックル性ショートは特長であり生命線である。

ラケット面は垂直気味に。スイング方向は速いボールに対してはインパクト時に少し後ろに引くか、そんまま動かさずに当てるだけ。遅いボールは斜め下に動かす。前に押すとナックルにならず、ドライブ性になりオーバーミスしやすいので注意が必要である。あとストップ性ショートも是非マスターしたい。シェーク両ハンド型が主流の今、両サイドの揺さぶりに加え前後の揺さぶりも戦術として有効だと思う。インパクト時にボールを吸収するイメージで。

 
・ドライブ
卓球は回転競技でもあるので、表ソフトでも積極的にドライブは使うべきである。ここでは強打に結び付けるための打法を説明する。
 
まず、面をオープンに外側に開き、下から上へのスイングでボールを低く飛ばす。インパクトの感覚はそれぞれだが、私の場合はシートで弾き擦る感じ。高いとカウンターの餌食になるので注意。

準備打なので回転より高さに気をつける。次球を強打する時はスイング方向は後ろから前になる。
ドライブ+スマッシュのコンビネーションはよく練習したい。


・ミート打ち
ツツキに対しては角度打ちともいうが、どちらもフラット打法である。
ラケットを垂直気味にして弾くようにして打つがこれは解釈に注意しなくてはいけない。

弾く打ち方は無回転を連想するがそれには一定の高さが必要である。

実戦ではその様なボールはほとんどなく、ネットから低いボールばかりである。こういったボールは擦らないとオーバーミスしやすい(テンション系など弾む用具ほど、顕著である)

昔、私が合宿で上海に行った時のことだ 。現地のコーチに多球練習でカットボールを出され、ミート打ちの練習をした時、しきりに「擦れ、擦れ」と言われた。更にロングボールに対しても「擦れ、擦れ」と言われた。

思うに、中国には「弧線の理論」があり、中国製ラバーは表ソフトでも回転をかけやすい。そういったことから中国は回転を一番重要と考えてるのではないかと推測できる。

ミート打ちやスマッシュは擦りながら弾いたほうが、ミスは減る。打球点とタイミングに注意して打つこと。


・スマッシュ
ミート打ちと重複するが、インパクト時には弾きながら擦りも入れると安定する。

スマッシュは自分からチャンスボールを打つ場合とドライブを打つカウンタースマッシュがあり、対ドライブには止めるだけでなく打てることが必要。

カウンターを成功させるにはまず相手ボールの威力を利用する。打点を早く、バックスイングは取らずコンパクトにスイング。球威を利用するので自分の力はさほど必要ない。まずはブロックから当てる感覚を掴みそこから前に振ればよいと思う。タイミングと感覚がものをいうので繰り返し練習することだ。


・その他(プラスチックボールと表ソフトについて)

私自身、慣れがまだ必要であるが、セルロイドとは別物と感じている。スピード、回転が落ちるのは勿論、バウンドが不規則なのが、一番厄介である。しかしブロックやカウンターがやりやすくなった。ただ、ラリーが続くので連打できることが必要である。一発より手数で勝負。
ボールはたくさん打って慣れるしかない。ラバーはプラ対応の商品も発売されてるが、既存の物でも本人が良ければ問題ない。私の場合、ラリーが続くので、用具は軽めにしている。操作性を重視してるからだ。


おわりに

これまでの経験をふまえ私の表ソフト考を書いてみた。文中に紹介した技術を初めて知った人は是非チャレンジしてほしい。何度も言うが、繰り返し練習すれば、必ず習得できるはずだ。

今はシェーク両ハンド型が主流でテナジーのようなハイスペックラバーの使用者が増えるにつれ、表ソフトは劣勢を強いられる。だが、人それぞれ違うスタイルがあるなら、勝ち方もそれぞれではないだろうか。それは過去のチャンピオンたちをみても明らかである。

願わくば、本稿を精読してくれた諸氏の中から、この愚論を踏み台にして表ソフトの特質を活かしてくれることを。そして、その実践を通じて表ソフトの理論を発展させてくれる才人、同志が現れるのを俟って稿を終えたいと思う。
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以上、オガさんの表ソフトを使う上での基本的な考え方である。
オガさんからは回転について以下の補足をいただいている。

回転はボールを持つという特性がある。
基本的にラバーは裏表に関係なく回転がかかり、意識しなくても回転はかかる。主流であるテンション系は特にそうである。当然打法や用具によって回転の質や量は増減するが、多くの回転をかけるにはボールとラバーの接触時間が長いほどボールを持つという感覚が大きくなる。玉離れが早い、遅いは体感的なもので、個人差はあるが、私個人の見解では回転(量に関わらず)とボールを持つは同義語なのである。


回転をかけることと早い球離れは両立できない。回転をとって安定させつつ遅く打球するか、回転を捨ててリスキーな決定打を狙うか、そのバランスが重要ということだろうか。


回転には多様な球種があり、例えば、カットやツツキなどの下回転打法はつなぎやミスを誘うという守備的特性があるが、早い打点を捉えてサイドを切るツツキを送れば、次球を攻撃するチャンスメイクとなる。これは攻撃球の意味を持つ。他にもドライブをブロックする時、止めると守備的だが、トップスピンをかけ返したり打点を早くすればカウンターになり、攻撃球になる。
 
表ソフトにとって何もスマッシュだけが攻撃というわけではない。守備と攻撃というのは截然と分けられるものではなく、回転をうまく利用すれば、ツッツキでやブロックでも攻撃となりうる。 表ソフトといっても、回転を無視するわけではなく、回転とうまく付き合う必要があるということだろう。


内容が濃いので、すぐには理解できないことも多いかもしれない。初中級者の表ソフトユーザーは、上の結論を頭の片隅に覚えておいて、実戦を通じて理解してほしい。

コメントに関しては、オガさんが気が向いたら答えてくれるかもしれないが、一つ一つに返信してくれる保証はない。あしからずご了承いただきたい。
 

読者のオガさんから寄稿をいただいた。
オガさんは古くからの読者であり、拙ブログにいつも質の高いコメントをくださる方である。
はっきり確認したわけではないが、オガさんの卓球のレベルは、少なくとも全日本出場レベルだと思われる。おそらく私がどんなにがんばっても一生勝てないレベルだろう。

そんな方が拙ブログにご自身の卓球論を寄せてくださったというのだから、いやが上にもテンションが上がるではないか。

おとなしくしてなさい
どんな内容なのだろう。早く見たい!

ご意見は大きく二つのパートに分かれている。前半は用具の特長や選び方について、後半は表ソフトの打法について。今回は前半の用具の選び方について紹介したい。豊富なご経験から表ソフトというラバーの特長を論じられているので、非表ソフトユーザーにも参考になる。今回は前半の用具についてのみ紹介させていただく。

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はじめに

私は表ソフトを使用しており、日々表ソフトの可能性を模索している。
 そこで、これまでの表ソフトの使用感や自論を書きたいと思う。尚、私はペン片面使用者の為、他の戦型とは使用感が異なることを断っておく。
 同じような悩みを抱えている方の参考になれば幸いである。
 
表ソフトの選び方


 まず、表ソフトに何を求めるかによって選ぶラバーが違ってくる。

これはペンかシェークのFかBに貼るかで変わる。そう戦型によって違うのだ。
 一般的にナックルを駆使して攻めるならスピード系や変化系を使うし、ドライブを多用するなら回転系を使うだろう。 だが、これらは一般論でありスピード系変化系でもドライブはできるし、回転系でナックルは出せる。使用するラバーによってそれらの要素が増減すると考えた方がよい。

次に表ソフトを選ぶにあたりいくつかのチェックポイントを列挙する。

粒の形状とピッチ 

 スピード系  円柱+台形
 回転系     台形 
 変化系     円柱 
 
これらはご存知だと思うが、問題は粒のピッチ(間隔)である。
ピッチが狭いほどボールの接触面積が大きくスピードや回転が出しやすく概して粒は大きめである。 
逆に広いほど接触面積が小さくナックルが出しやすい。 打球は直線的になりやすく粒は小さめである。

更にナックルが出しやすいラバーは下に落ちやすい。
所謂、滑るという現象が起きる。 表ソフトユーザーはこの滑ることを最も嫌うが、これを長所として相手ボールを利用しチャンスメイクしてはどうだろうか。
 
縦目と横目 

縦目は弾きやすく、ナックルも出しやすい。 横目は若干ボールを持つ感じがする。 最近はヘキサーピップスのような両方選択できるラバーもあり、嬉しい限りだ。

硬い・軟らかい

シート、スポンジを含めたラバーの硬度である。
私個人はこれを一番重視している。 同じラバーでも硬度によって使用感が異なるからだ。
大まかに4つのタイプに分類できると思う。

硬シート+硬スポンジ
全体に重く弾みは控えめ。中国製ラバーに多い。 

硬シート+軟スポンジ
スペクトル(ノーマル)などオーソドックスなタイプ。 

軟シート+硬スポンジ 
日本製テンション(ティラノ、レイストーム) ハモンドスピード
シートでコントロールをしてスポンジで飛ばす感じ。  

軟シート+軟スポンジ
ドイツ製テンションに多く4タイプのなかでは最も弾む。ブースターSA,HP モリストSPなど。

同じラバーでも重い場合はスポンジが厚いか硬い。軽い場合はその逆である。 
購入する際にはパッケージの上から指で摘まんで硬さを確認したり、重さを計るなど自分の好みを覚えておくとよいだろう。 

硬いラバーはミート打ちがやりやすく、相手ボールに押され難い。前後のコントロールも硬いほうが容易である。 しかしこれらの長所を出すにはインパクトが強く振りが速いことが条件である。これらを満たしてないと、ただコントロールの難しいだけのラバーになってしまう。 

柔らかいラバーは力の加減が容易でどの技術も比較的容易である。食い込む感じがあるので安定感がある。
車に例えると硬いラバーはMTで 柔らかいラバーはATのイメージ。

あと合わせるラケットによっても打球感は変わる。 以前、VO-101を柔らかい檜の7枚合板に貼ってたが、その打球感は柔らかく半粒のようだった。今は硬い7枚合板を使っているので、再び同じラバーを貼ると打球感が硬く粒も若干硬く感じた。合わせるラケットによって打球感や硬度は影響を受けると考えられる
 
スポンジの厚さ

これも打球感や技術の難易に影響する。 
カットマンであれば薄いスポンジを選ぶだろうが、攻撃型なら主要技術によって変わるだろう厚い程、ドライブなどやりやすくなるが、自分の技量でコントロールできる物を選んだほうがよい。
ミート打ちを例に上げると前陣で打つ限りでは厚と特厚に差は感じなかった。
あと用具はラケット、ラバーの組み合わせで総合的に考えた方がよい。

両面にラバーを貼る人は重さやバランス、表ソフトの役割を考えて決めるとよいだろうし、私のように片面使用なら弾きやすさや重心が先端か手前かグリップの握りやすさなどが目安になると思う。
周りの人にアドバイスをもらってもよいし、そういった人がいない場合はショップの店員さんに聞くのが一番である。 店員さんの方が私の何倍も知識があるので、貴方に合った用具を教えてくれるだろう。

その際にどんなプレーをしたいか具体的に伝えることだ。 
多くの人が感じてると思うが、表ソフトは極めて個人の使用感が異なるラバーだ。

万能の表ソフトは存在しない。どんな用具にも長所短所はありその特長を引き出すには練習しかないのだ。
用具選びに正解はない。 貴方の感性は貴方にしか分からないのだ。
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どんな表ソフトがいいのかは、「個人の使用感が異なる」ので、一概にいえないが、表ソフト初心者は柔らか目のラバーを選んだほうがよさそうだ。そこから自身の感覚、使用感によって必要なら硬めのラバーにステップアップすればいいようだ。ただし硬めのラバーを使いこなすにはスイングスピードが要求されるので、効率的なスイングを追求してスイングスピードの向上に努めなければならない。

気になる表ソフトの打法や効果的な使い方に関しては稿を改めて紹介させていただく。
 

引退した王皓選手の過去の動画(2011年の世界選手権)を観ていて驚いた。とても強いのである。



元世界チャンピオンなんだから、強いのは当たり前なのだが、上の水谷選手との対戦をみると、水谷選手に勝てる要素がない。

ふつう、プロの試合では台上から始まり、どちらか一方がチキータやフリックなどで起こしてロング戦になる。主導権を握った方(攻め)と握られたほう(受け)に分かれ、「攻め」に立ったほうは強打で打ち抜こうとし、「受け」は相手の攻撃をなんとかしのいで、機を窺って「攻め」に転じようとする。「受け」といっても、プロなのでブロック等でも、速くて厳しいボールを返球するのだが、それは決定打を狙うボールではなく、相手の連続攻撃を防ぎ、攻撃のターンをこちらに引き寄せるためのボールである。

しかし、上のビデオをみると、王皓選手は「受け」に回ることがほぼない(ビデオ中で1~2回だけブロック的なボールを打っている)。常に「攻め」である。王皓選手の攻めが早いというのがあるにしても、水谷選手だって時には早く攻めて「攻め」に回るポイントもあった。しかしその「攻め」に対しても王皓選手はカウンター等の「攻め」で応じ、「受け」には回らないのである。

おかしな話である。私のレベルの低い卓球の話で恐縮だが、私のレベルの試合では、相手がドーンと打ってきたら、こちらはブロックなりハーフボレーなりで受けなければならない。ドーンと打たれたボールをドーンと打ち返したら、ミスを連発する。ドーンと打たれたボールは固く守り、相手が攻めあぐんだ時に今度はこちらからドーンと打ち返し、それを相手はブロックなりハーフボレーなりで受ける。こういうのが通常の試合だと思う。

それはプロの試合でも、程度の差こそあれ、基本的には同じなのではないだろうか。ドーンと打たれたボールをドーンと返すこともあるけれど、どちらかというと、ドーンと打たれたら、確実に受けるほうが一般的なような気がする(逆に言うと、ドーンと打ったのにドーンと返されるような「ドーン」しか打てないのではプロとしてやっていけない?)



上の水谷選手が張継科選手と対戦した場合(2010年のワールドカップ)と比べてみると、上の動画では、水谷選手が主導権を握り、ドーンと打ち込む場面も少なくない。それを張選手は下がってドーンと打ち返すこともあるが、ブロックで確実に止めにいく場面も見られる。プロの試合でも「ドーン」を「受け」るのは珍しいことではない。

昔の水谷選手は、プロの中では比較的守備的だったために王皓選手が必然的に攻撃的になったのかと思ったのだが、準決勝の馬龍選手との対戦をみると、同じように王皓選手がずっと「攻め」である。

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馬龍選手の豪打を物ともせず、カウンターで返し、相手にほとんど主導権を渡さない王皓選手の卓球をどうやって攻略すればいいのか。

こんな王皓選手に勝った張継科選手はどんな試合運びをしたのだろうか。

 
世界選手権2011 ロッテルダム大会 決勝

私の見立てなので、的を射ているかどうか甚だ疑わしいが、張継科選手のサービスが効いていたように感じた。そのため王皓選手のレシーブが少し遅れたり、ややボールが浮いてしまったりして、張継科選手に先手を取られてしまうポイントが多かったように思う。

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王皓選手のすごいところはたくさんあると思うが、バックハンドでどんな位置からでも、どんなボールでも攻撃できるのが最も印象的だった。ペンホルダーは、裏面が使えたとしても、やはりバックにドーンと打たれたボールを、バックハンドでドーンと返すことは難しいし、台から下がってのバックドライブなども、とっさに打つのは難しい。

私の低いレベルで考えてみても、ふつうはバックハンドに比較的速いボールが来ると、合わせるだけの「受け」のボールになりやすい。だから試合で打てるボールが来たら、私はとりあえずバック側に打つ。そのボールの威力が微妙でも、バックハンドならカウンタードライブなどが打ちにくく、次にこちらが連続攻撃をしやすいからだ。しかし、相手がバックハンドでガンガン攻められるとしたら、そういう安易なコースどりは危険ということになってくる。

ときどき上手な人と試合をさせてもらうと、自分の卓球を全くさせてもらえないという状態になる。それはつまりどこに打っても相手が「受け」に回らず、攻撃されてしまい、終始自分が「受け」に回らされるということである。私は相手によってはこういう状態になりやすい。相性のいい相手なら、自分の力が100%発揮できるのに、相性が悪い相手だと、50%以下の力しか発揮できない。

それに対してどんな相手でも安定してある程度戦える、安定して自分の卓球ができるという人がいる。私の回りにもこんな人がいる。私と実力はさほど変わらないのだが、その人は格上の人と対戦しても、ちゃんと自分の卓球をして負けている。私は格上の人と対戦すると、全く自分の卓球ができずに手も足も出ないで負けてしまう。この違いは何なのか。それを考えてみると、私の卓球には多くの穴があるからだと言わざるをえない。その穴を突かれると、合わせる「受け」のボールしか返すことができず、相手に一方的に攻められてしまう。王皓選手のようにどこに来たボールでも攻められるという穴のなさがあれば、おそらく自分の力を全く発揮できないということにはならないだろう。穴のなさ、言い換えればどこからでも攻撃できるというのはとても大切なことなのではないか、と上のビデオを観て考えさせられた。




 

ぐっちぃ氏のブログを読んでいたら、あまりのハードスケジュールで身体を壊してしまったそうである。
車で移動しながら講習会をこなし(初対面の人ばかりだろうから、気を遣うことだろう)、ブログまでマメにこなすというのは超人的な作業量である。

私も最近、忙しさにかまけてブログの更新を怠っていたが、ぐっちぃ氏のがんばりを見て、私も何か書かなければという気分にさせられた。

しかし、特に書くこともない。

そうだ!最近『卓球王国』のe book(古い連載記事をまとめてPDFファイルとして発売したもの)というのを購入したので、その感想などを書いてみたい。

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最近、発売されたものは以下の企画である。

ペンホルダーは死なず。92ページ 270円
ダブルスマスター虎の巻 26ページ 108円
半年で2倍強くなる 84ページ 216円
選手が決める テクニック別 No.1!! 113ページ 216円
羽佳純子のカット教室 初級編 33ページ 162円

PDFなのでかさばらないし、とにかく安い!このうち「羽佳純子のカット教室 初級編」を除き、全て購入した。
カットマン――戦型のうちの貴種。極めれば最高に楽しいと思うが、私には時間的にも、能力的にも余裕がないのでカットマンの記事は購入しなかった。

このうち最もお得感があったのが「半年で2倍強くなる」である。これは
「フォアハンド」「ブロック・カット」「サービス・3球目」「フットワーク」「バックハンド」「レシーブ・4球目」
について織部浩二氏(現在、三鷹のクラブでコーチをなさっているらしい)がポイントをまとめたものである。

これを読むと、私が今までブログで考察したことの多くがすでに明らかにされていた。

たとえば「倍強フォアハンド」にはフォアハンドの注意点として以下のポイントが挙げられている。
 
ポイント2:ボールの動きにスイングを合わせる(「シンクロ打法」)
ポイント3:軌道に沿ってスイング(「これぞ四つのかなめなりける
ポイント4:加速の途中で打球する(「タメとは何か」)

これは私が書いた記事の内容と大部分重なっている。

他にも前記事「スイングの弧線」で考察したデッパリ弧線についても言及があった。デッパリ弧線のドライブはスピードドライブで、回転重視のドライブはヘッコミ弧線なのだという。

フォアハンドだけでなく、バックハンドやフットワークなど、読みどころが多く、とても勉強になる。

ここに書かれていることは、私の考えたことよりも数歩先を行っている。私が自分の経験からいろいろなことを考えて、私なりの「発見」があったとしても、その答えの多くはすでにこの連載に書いてあるのである。では私の拙い考察が意味がないかというと、そうでもないと思う。

たとえ同じ結論に達したとしても、そこに至るまでの過程や実際の経験などは異なるので、織部氏の結論だけを見るよりも、私なりの問題提起から考察することは、多くの初中級者にも意味のあることではないだろうか。

とにかく「半年で2倍強くなる」はオススメである。
 

最近、こんなことがあった。

京都トップレベルの社会人クラブの試合を観て、 彼我の実力の違いに驚かされた。
どうすればあんなに上手になれるのだろうか。たしかにレベルの高い高校や大学で数年間みっちり練習をした人もいるだろうが、社会人になってから熱心に卓球に取り組んであのレベルに達した人もいるのではないだろうか。一体どうすれば?

「やっぱりレベルの高いクラブで、質のいいボールを受けなあかんやろな」

お世話になっている年配の指導者はそう答えた。

しかし、どうやったらレベルの高いクラブに入れるのだろうか?私のようなヘタクソがそんなクラブに入れてくれと頼んだところで迷惑がられるだけだろう。

「いきなりレベルの高いクラブに入れるわけないやろ。まずは身の丈にあったクラブに顔を出すことや。そうやって顔を売って、上達していけば、おのずと声が掛かる」

つまり、こういうことだ。
Aランクのクラブに入るには、まず自分のレベルよりも少しだけ高いクラブ、いいかえれば自分と同じか、自分よりも少しだけ上手な人がいるクラブに入らなければならない。仮に自分のランクがDランクだとすると、なんとかしてCランクのクラブに潜り込むのである。そこで上達していけば、試合会場などでBランクのクラブの人から「今度うちのクラブに遊びに来ませんか?」といったお誘いの言葉がかかるらしいのだ。そしてBランクのクラブでも上位の実力になれば、同じようにAランクのクラブからお誘いの声がかかり、潜り込むチャンスが到来するというわけである。なるほど。一歩一歩地道にステップアップすればいいのか。

しかし、気の遠くなるような道のりだなぁ。やっぱり卓球が強くなければお声はかからないのだろうか。

いや、違う!そういえば、私も一度試合会場でレベルの高そうなクラブからお声がかかったことがある。それは若い女性と混合ダブルスの試合に出た時だった。私たちはリーグ戦で一勝もできず、まったくいいとこなしだったのだが、それでもお声がかかった。なぜか。若い女性といっしょだったからだ。その女性は美人で愛嬌があり、社交的な人だった。

つまり、実力がなくても、人間的な魅力などでお声がかかることがありうるのではないだろうか(そういえば、『卓球王国』のインタビューで中年の星、西村雅裕選手が強くなるには強い相手を飲みに誘うことだというようなことを言っていた)

『人は見た目が9割』(新潮新書)という本を知人の家で偶然手にとって引き込まれてしまった。

mitame


題名だけを見ると、なんだかいけすかない内容が書いてありそうである。「就職活動で勝利するための化粧の仕方」だの、「第一印象を格段によくするファッション」だの、はては「整形のすすめ」なんてことまで書いてあるかもしれない。しかし、この本はそういうハウトゥー本ではなく、ノンバーバルコミュニケーションを扱ったけっこうまじめな本だったのだ。

世の中で言葉による論理が相手に訴える割合は1割未満だというのがこの本の主張である。したがって相手に効果的に訴えるには、表情をはじめ、声質、ファッション、態度など、言葉以外の9割の部分――これが「見た目」である――をもっと意識しなければならないというわけである。逆に言うと、言っている内容がいかに正しくても、言葉の論理だけでは主張は受け入れられないということである。

学校教育では「言葉」だけが、「伝達」の手段として教えられる。だからどんな表情や態度で言っても、はたまたどんな乱雑な字で書いても、言葉の論理さえ正しければ評価されるということになっている。たしかに大学入試の会場でどんな服装や態度で受験しても点数は変わらない。たえず貧乏ゆすりをしていようが、教室のドアを乱暴に閉めようが関係ない。大切なのは答案の内容だけである。

しかし、受験以外の場面ではそうではない。いくらお勉強ができても、立ち居振る舞いがダメだったら、社会では通用しない。会議が終わった後、イスをきちんと戻し、机の上のケシカスを集めてゴミ箱に捨て、積極的に後片付けを手伝い、明るい笑顔で挨拶を欠かさない――こういう人はたとえ仕事の能力がそれほど高くないにしても、多くの人に評価される。

逆にあまり社交的でない人が筋の通ったことを言ったとしても

「あなたの言うことはもっともだけど、あなたには言われたくない」

と思われてしまうことが多いのである。

卓球で言うと、卓球はめっぽう強いが、我が強く、自己中心的な人と、卓球はそれほど上手ではないが、気配りができて、いつも笑顔の人がいたら、レベルの高いクラブの人はどちらに声をかけるだろうか。

卓球で「見た目」を磨けば、よりレベルの高いクラブからお声がかかるかもしれない(といってもDランクの人にAランクの人が声をかけることはないだろうから、実力ももちろん必要である)

では、どんな態度が人を引きつけるのだろうか。
笑顔で挨拶してから、打ち始めるというのは言うまでもないが、

たとえば「声を出す」というのはいい印象を与えるのではないだろうか。あまり親しくない人と卓球する時に無言で打っていると、表情によっては「なんだか怒ってるみたい」と思われてしまうかもしれない。打球するときに「エイ!」とか「ホイ!」とか、「ヨイショ!」といったフィラーを頻繁に使えば、少なくとも怒っているという印象を与えずに済みそうだ。

他には、ミスしたボールをキビキビと拾いに行く人はいい印象を与えられると思う。そして相手にボールを渡す時にボールを放り投げるのではなく、やさしくラケットに当てて、軽くバウンドさせたりするのが感じがよさそうだ(私はよく乱暴に放り投げてしまうので、書きながらこの行為を改めようと反省させられた)

自分がミスしたときに「はぁ~」と深い溜息をつく人がいるが、あれを何回もやられると、印象が悪そうだ。まるで相手が変なボールを打ったためにミスしたと誤解されかねない。ミスしたときは申し訳なさそうに「すみません!」というのがいいだろう。

他にもいろいろあるだろうが、私はもっと「見た目」を磨かなければと考えさせられた。

【まとめ】
言葉はその内容だけでなく、話す人の人柄や雰囲気なども含めて総合的に相手に訴えかけるものである。卓球も同様に実力だけでなく、それ以外の卓球をするときの何気ない仕草や態度も含めての「総合的な卓球のレベル」というものを想定しなければならない。スーパープレーだけでなく、その前後の立ち居振る舞いでも見ていて気持ちのいい卓球こそが「総合的にレベルの高い卓球」といえるのではないか。見ている人は見ている。これからは些細な事にも気をつけて卓球に励みたい。



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