しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




2015年01月

当ブログでは皆様からの寄稿を募集しております。卓球について意味のある主張を発表したい方はshirono.tatsumi◯gmail.comまで原稿をお寄せください。

コメントについて:
コメント欄は他の読者が読んで意味のある情報交換の場としてご利用ください。当ブログの方針(察してください)に沿ったご意見は公開します。返信しにくい場合は公開のみとさせていただきます。指導者ではないので、技術的な質問には答えられません。中傷等は論外です。なお、メールアドレスは公開されません。

中ペン裏面のグリップ

中ペンで裏面の角度がうまく出ない。
フォアもバックも打ちやすいグリップを追求しているのだが、どうしても裏面が斜めになってしまう。それでも打ち方によっては問題はないと思うのだが、裏面で水平な角度が出せないと、どうしても気になる。
裏面の動画を探してみると、次の動画が見つかった。






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やっぱりそうか!人差し指を外すのが手っ取り早いのだ。
フォアハンドも人差し指を外せば、完全に水平に振れる。台上処理以外には人差し指を外してプレーしてみるのがいいのかもしれない。

『卓球王国』の「我ら、ペンホルダーズ」の松下大星選手は人差し指を外していないようだ。

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文書名 _王国1503

文書名 _王国1503

 日ペンと中ペンとでは、グリップが違うのかもしれない。

【追記】150309
指の長さによって個人差があると思うが、私にとって裏面が安定するかどうかは親指の入れ具合が大きい。親指の第一関節(指の半ば)がブレードのヘリの部分にひっかかるぐらい深く握ると、私の裏面は安定する。

最終セール――良いものを安く

※書きかけの記事で、前記事の同工異曲で新味もないが、せっかく書いたので、中途半端な内容だが公開しておく。

大学生「お正月にダウンジャケットを買いに行ったんですけど、3万ぐらいのを買いました」

私 「え?ダウンジャケットって1万ぐらいで買えませんか?」

大学生「ええ。1万ぐらいのは持ってたんですよ。でもちょっと使ったらダウンがはみ出してくるし、長く使えなさそうなので、ちょっと高級なのを買って、長く使おうと思ったんです。でもやっぱり良いものは良いですよ。後悔はしていません。」

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この大学生のなんと大人びていることよ。

私の卓球用具の買い方とは違う。

私の場合は
特にほしい物もないが、とりあえずネットショップなどを訪れて、特価品などに目を通す。
特にほしい物でもないが、半額なので、とりあえず買ってみる。

前記事「鯵のゼイゴ」で不要なものをいくつも買うのはやめようと心に誓ったはずなのに、いつのまにかまたチョコチョコと格安品を買ってはすぐにお蔵入りにする習慣に立ち還ってしまっている。

そして世間では値上げの前の静けさである。テナジーが大幅値上げとか。ニッタクの製品も2月から値上げされるらしい。アコースティックが15000円→18000円に値上げだという。ヤサカはもう値上げされてしまった。
だが、考えようによっては、私の放漫な用具購入を正す、いい機会である。

たとえば、新しいラバーAが3500円のところ、セールで3000円だったとする。私はつい買ってしまうだろう。そしてもともとのラバーBから貼り替えてみる。しかし、結局私には合わず、元のラバーBに戻すとする。そうすると、3000円の出費である。しかしAもせっかく買ったのだから、別のラケットと合わせたいと考える。そう思っているところに特価品ラケットCが私の目に留まる。7000円である。CにAを貼り、ついでだからDという前から気になっていたラバー3500円も買ってみる。そうそう、接着剤も切れそうだ。1500円。そしてAとDをCに貼って、ちょっと使ってみるも、やはり元のラケットに戻す。Cはそのままお蔵入り。

無駄につかった額:A3000円+C7000円+D3500円+接着剤1500円=15000円

冷静に計算してみたら、やはりとんでもない散財だった。これまでなんとなく気づいてはいたが、あまり考えないようにしていたのだった。アコースティックが買える…。

そういう回り道をせず、ふつうに4000円ぐらいの高級なラバーを2枚買えば、8000円である。接着剤も無駄に使わずに済む。結局、こういう買い方をすれば良いものが安く買えるわけだ。
若いのにこんな高度な思考ができるとは、冒頭の大学生、侮りがたし。

私はといえば、前記事「用具愛からの開放」から進歩していない…。何度同じ思考を繰り返していることだろう。

この値上げを機に、今度こそ無駄遣いせず、良いものだけを使い続けるぞ!

 

バックハンドのコツ――「上体の起こし」について

バックハンドで見落としがちなコツは、身体を起こす動きではないだろうか。「練習からみる基本打法」を観てそう感じた。

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よく言われているバックハンドのコツは、

体の正面で、肘を外側に張って打球する

ということだが、バックスイングで上半身を沈めて、起き上がる力を利用して打球というポイントには言及されることが少ない気がする。当たり前すぎて言うまでもないということなのかもしれないが、私にとってはちょっとした「発見」だった。

上半身の起き上がる力を利用しなければ、腕だけで振りがちになり、安定性が落ちる。バックハンドも腰の回転を使って、身体全体で打つという打ち方を本などで読んだことがあるが、バックハンドで腰を回転させながら打つというのは難しい。とっさに来たボールに対応するときは、腰の回転よりも上体の起こしのほうが小さな動きでブレにくいのではないだろうか。特に下回転を持ち上げるバックハンドドライブでは、有効な気がする。

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上体の起こしにもいろいろな種類があって、

上半身を折り曲げてから起こすほうに重点を置くやり方

と、

膝を曲げてから伸び上がるほうに重点を置くやり方

があるように思う。

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馬龍選手は膝の屈伸のほうに重点がありそうだ

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オフチャロフ選手は上半身の起こしと膝の屈伸が半々ぐらい

「上体の起こし」と「膝の伸ばし」は、多くの選手がどちらも使っているのだが、選手によって重点が違う。私は膝の伸ばしよりも、上体の起こしのほうが楽で、力を入れやすい。

上下運動というのは、スムースなフットワークにとってマイナス要因と言われるかもしれないが、適度な上下運動は、身体の動きに弾みがついて、むしろフットワークにもいい影響を与えるだろう。

ただし、クレアンガ選手のようにほとんど上半身を沈めず、腕だけで横方向に振る選手もいる。

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この「上体の起こし」というのは多くの打法に応用できそうだが、どれほどの射程を持っているのだろうか。
バックハンドドライブだけで有効な技ではなく、台上のバックハンドドライブやフォアハンドドライブにも使えるのではないだろうか。フォアハンドドライブで試してみると、勢いがつきすぎて軽くジャンプしてしまったり、仰け反ったりしてしまうときがある。フォアハンドでは使いにくいかもしれない。しかし、「振り子」(前記事「テニスで言う「振り子」とは」)のようにフォアハンドを打てば、上体の起こしと親和性が高いかもしれない。

これからの練習でいろいろ検証してみたい。


ラバーの特長

※書きかけの記事だが、いろいろ情報が古くなってきた。せっかく書いたので、中途半端の内容だが公開しておく。

今、最も高性能な国産車はなんだろうか?

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そんなのGT-Rに決まってるだろ!

と言われるかもしれないが、一方で、

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プリウスPHVだ!

という人もいるだろう。はたまた


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いやいや、どんな車もハイゼットには及ばない!

という人もいるだろう。どの車もそれぞれに高性能だと思われる。

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最近、ミズノが気合を入れて宣伝しているラバー、GFシリーズ

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非常に高性能らしい。
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数年前、ミズノのチャージというラバーを打たせてもらったことがあるのだが、とんでもなく弾むラバーだった。その後継ラバー?のクエーサーをはるかに凌ぐスピードを誇るのがこのGFシリーズらしい。

「高性能」というのは、単にスピードやスピンだけでなく、球持ちとか、その他もろもろの要素も含まれるのだろうが、どうしてもスピードとスピン性能に注目が集まってしまう。

スピードとスピン性能が高い=高性能

というのが消費者に最も訴えるので、ラバー開発はGT-Rばかりを目指すことになるのだろう。

ラバーの世界で、もっと他の方向性――プリウスやハイゼットを目指してもうまくいかないのだろうか。

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ユニークなラバーといえば、WRMのゴクウスのラバーが筆頭に挙げられる。
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私も少し使ったことがあるのだが、本当に独特のボールが打てる。ただ、これは通常の裏ソフトとは別物なので、使い続けるなら戦型を変えなければならなくなるだろう。


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スピン性能控えめというWRMのヒーローというラバーは、ユニークな試みで、ちょっと試してみたいと思うが、一般的にはそれほど人気を集めていないようだ。一般的に人気のあるテナジーやラクザといったラバーとはちょっと違ったボールが出そうなので、これを使えば、自分なりの個性が出せるのではないか。

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エクステンドSDというのは柔らかさで評判らしい。

WRMのxia氏が愛用しているというエボリューションMX-Pというのは、さしずめバランスの良さという方向性が特長のラバーといえるだろうか。

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他にも、

・軽さナンバーワン
・絶対上板を剥がさない、ラケットに優しいラバー
・どんな人でも遅いボールが打てる、球威を殺す性能が高いラバー
・耐久性とスピン性能を両立したラバーとか。

などが考えられるが、やっぱり「スピード・スピン」ほど注目を集めないだろう。

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しかし、横幅15センチ増!2回使えて経済性抜群!というラバーなんか絶対人気がでると思う。半分に切ってJTTAAが入っていないほうは練習用ラバーとして使い、試合の前にJTTAAの入っている側に貼り替えれば、おろしたてのグリップ力で試合に臨める。

「ぼちぼちいこか」――攻撃の必然性

利用者のほとんどいない高速道路や空港の建設、効果の疑わしいダムの建設など、私たちは無駄な公共事業に批判的な目を向ける。貴重な血税を必要性の低い工事に費やすなどもってのほかである。一般道路が十分機能しているのにわざわざ高速道路を作る必要はないし、隣の県には立派な空港があるのだから、飛行機に乗りたいなら、電車に1時間ほど乗ればいい。そもそも飛行機に乗る機会がある人がほとんどいない。これまで氾濫して甚大な被害を与えたこともない河なのにダムを作る必要が本当にあるのか。

ダム

インフラが充実したり、万が一のために備えたりすることは、本来歓迎されるべきはずのことである。しかし、必要性もないのに、需要を先取りして限られた予算をそちらに回すというのはどうかと思われる。

では、翻って私たちの練習や、試合中における意識はどうか。

「どうやって3球目攻撃につなげればいいのか」
「相手のショートサービスをチキータで攻撃して先手を取らなければ」

いつも「ラリーでドーン」(前記事「台上練習のインセンティブ」)のことばかり考えているのではないだろうか。
しかし、相手もドーンと打たせないように必死で工夫しているわけだから、そう簡単には打てない。それを無理に打とうとするわけだから、どうしてもミスが多くなる。

こっちはドーンと打とう、打とうと狙っている。相手は打ちにくいところに送ってミスを誘おうとしている。私程度のレベルだと、この両者の対決は、たいていミスを誘おうとしているほうに軍配が上がる。

その結果、5回中2~3回ミスするのも顧みず、打てないボールを打とうとする横紙破りを繰り返す。ストレスもたまるし、得点がミスを下回った場合は「調子が悪い」などと落ち込んでしまう。そうそう打てないボールをなんとかして打とうとするのだから、どうしてもミスが多くなるのは避けられない。

私はふだんの練習で3球目攻撃の練習や、両ハンドドライブの練習ばかりしているが、それを実戦で使う機会は実はそれほど多くないのかもしれない。私の低いレベルでは、得点のほとんどは相手のミスで、気持ちよく連続ドライブを決める機会なんて1ゲーム中、せいぜい1~2本ぐらいである。合理的に考えれば、必要があるから、それに備えて対策を講じるのであって、必要がないうちから需要を先取りして「ドーン」のことばかり考えているというのは不合理な練習、あるいは対戦態度と言わざるをえない。

後の先などという高度な戦術ではないが、こちらから積極的に打とうとするよりも、むしろ相手に嫌なボールを送って、不十分な体勢で打たせたほうが、試合では勝ちやすい気がする(前記事「オレは魔界をみた!」)。相手のサービスをいきなり打とうと狙うよりも、とりあえず2球目は合わせようとする意識でいると、気が楽である。相手のロングサービスを打たせないようにストップして、あちらがダブルストップで応じたとしても、こちらは全く動じない。どんなボールが来ても、とりあえずツッツキやストップで相手の打ちにくいところを狙っていこうという態度なので、ストップされても、

「じゃあ次はバック深くにツッツイてみるか」

という感じで心理的に余裕がある。

逆にドーンと打ってやろうと狙っているところにストップされたら、精神的なダメージは大きい。

「今度こそ打てるかと思っていたのに、また肩透かしを食らった…」

あまつさえ、回りこんでちょっと後ろに下がって打つチャンスをうかがっていただけに、ストップされたらつんのめって、体勢が崩れ、甘いレシーブになってしまう。そこを逆に攻撃されてしまう。

こちらが「攻撃したい」と不断に思っていると、かえって攻撃のチャンスを与えてしまうというのは皮肉である(繰り返しになるが、これは私程度のレベルの試合の話である)。以前、渡辺貴史氏の「ストライクゾーンの待っているところに、ボールを送ると物凄いボールがきますが、ちょっとはずすと10本中、8本入らなかったりします。」という言葉を引用した(前記事「枯淡の味わい」)が、おいしい展開にありつけると期待していると、心に隙が生まれるものである。初めから「おいしい展開にはそうそうならない」と冷めた意識で試合に臨んだほうが、ふだんの実力が出せるような気がする。

最近私はレシーブで得点することに喜びを覚えている。攻撃のチャンスを狙っている相手に打点の速いツッツキやストップで軽く返球すると、攻撃のチャンスを狙っている相手は詰まってうまく打てないことが多い。台上のチマチマで得点するのは工夫の余地もチャンスも大いにある。

・相手が自分のバックにツッツイて来たら、フォア前にストップ(コースと長短の工夫)
・相手が自分のバック側に速いロングサービスを出してきたら、横回転をかけて返球(回転の工夫)
・相手が鋭く切れたツッツキをしてきたら、乗せるタッチであえて回転をかけず、フォア側に深いボールを送って打たせる(回転・長短・コースの工夫)

3球目ぐらいで打つチャンスがめぐってくるなどとは思わない。
しかし、そんなふうにレシーブに専念していると、ふいに攻撃のチャンスがめぐってきたりする。なんだか人生に通じるものがある。おいしい話にありつこうとして権力者にしっぽを振っていると、小さい獲物を手に入れることはあるが、結局「あいつは信用ならないヤツ」という烙印を押されて、大きな獲物は逃してしまうものだ。そうではなく、

「そうそううまい話なんかない。自分を信じて地道にやっていれば、いつか大成するものだ。焦ってはいけない」

そんな態度で試合をしていると、案外チャンスがめぐってくるような気がする。

ここではじめて「必要性」が生まれる。ふいにめぐってくるチャンスにどうしていいか分からず、逆に打ちミスしてしまうことも少なくない。そこでどんなレシーブをしたら、相手が甘いボールを送ってくるのかというのを観察し、そのようなレシーブを意図的に出せれば、めぐってきたチャンスを生かすことができる。

つまり、チャンスメイキングである。私は今までチャンスメイキングをせずにおいしいところだけ持って行こうという意識だったから、肩透かしばかりだったのだ。このように攻撃のチャンスがめぐってくるようになってはじめて攻撃の練習が生きる。

というわけで、最近私は攻撃の練習よりも、レシーブの練習に力を入れている。レシーブがきちんとできてから攻撃を――必要性が生まれてから対策を講じればいいという態度なので、試合をしていて楽しい。2~3球目でドーンと決める卓球は私にはまだ早い。たしかにツッツキやストップを中心にした試合運びは派手にドーンと決められることは少ないが、このような「台上でチマチマ」で得点するのもなかなか味わい深いものである。こういう試合運びを続けて、レシーブと攻撃の因果関係を注視していれば、そのうちドーンと決める卓球ができるようになるだろうと気長に構えている。試合の中で自分のプレーがなかなか攻撃に結びつかずに悩んでいる人が初中級者には多いと思われるが、「ぼちぼちいこか」という対戦態度のほうが精神衛生上も、結果もいいものになるのではないかと思っている。

「まだあるんじゃないか?」――名人のマインドセット

プロフェッショナル 仕事の流儀 すし職人 小野二郎」を観た。私はこのシリーズが好きで、ときどきビデオを借りて観る(前記事「棋士 羽生善治の仕事 を観て」)。

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なんでもミシュランのガイドブックで三ツ星をとったスシ屋なんだとか。
しかし、寿司がうまいかどうかなんて、ネタの質が全てなのではなかろうか。ネタさえよければ、私だってうまい寿司がにぎれるように思える。 こんな「単純」な料理でうまいかどうかの差がつくものだろうか。差がつくとしたら、どうやってつけるのか。そんなことが気になって視聴してみた。

うまい寿司を作るコツは、大きく分けて3つの要素があるようだ。

1つはネタの仕込み
2つ目は握り方
3つ目は温度

ネタの仕込みというのは、ネタを調味料に漬けたり、寝かしたりして、ネタの持つうまみを最大限に引き出すことである。
ネタは養殖でない、天然もので、新鮮なら新鮮なほどいいと思っていたのだが、魚によってはおろしてすぐ食べるよりも、冷やして3日ほど寝かしたほうが味がよくなったりするらしい。同じネタでも、ネタによって個体差もあり、 3日寝かせるだけで最高の味が出るものもあれば、10日寝かせないとうまみがでてこないものもある。ビデオの中で小野氏は一切れ味見をし、「あと2時間」と判断した。このような精度で旨味が分かるのだ。これは長年の経験によるものだろう。

握り方というのも奥が深いらしく、口の中で崩れるような、やわらかい握り方というのが小野氏の握り方の特徴で、この力加減も長年の経験で、上手に握るのは難しいらしい。

最後は温度で、客に出すときにちょうどいい人肌の温度になるように、あるいは冷たいほうがうまいネタなら、適度に冷たいうちに食べてもらうようにタイミングを計りながら調理しなければならないという。

【続く】 

しかし、このような3つの要素だけで他店とどれだけ差がつくのだろうか?高級なネタを使って、やや柔らかく握り、ネタの温度に少し気を遣えば、他店でも同じような味が実現できるのではないだろうか。

この一見単純な三つの要素だけで他店と差別化するには工夫がいる。

いったいどうやって差別化すればいいのか。

まず、考えるのはネタの仕込みだろう。他店よりも質のいいネタを仕入れ、そのネタを食べごろにタイミングよく客に出す。さらに塩や酢といった調味料も工夫する(「手当て」)。このような工夫が一番手っ取り早く他店との差別化に繋がると思われる。

しかし、それだけでは大差はつかないかもしれない。他にも差をつける「何か」がなければならない。それはこの3つの要素とは限らない。小野氏は、たとえば並べ方を工夫していた。

客に車海老を提供する際にミソの詰まった頭の方から食べてもらえるよう、頭のほうを右に置き、しっぽを左に置く。頭から食べてもらい、その後にしっぽのほうを食べてもらったほうが美味しく感じるというのだ。

そして提供する順番である。
この店には「おまかせ」という小野氏の厳選した「鮨コース」がある。

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そのドラマは、あっさりとした白身で幕をあける。鮨の王様・マグロの次には、さっぱりしたコハダを握る。マグロの脂を、酢の酸味でぬぐい去るためだ。常温のハマグリの次には冷えたアジを握る。温度差のあるネタを交互に出すことで、一つ一つのネタが際だつと、二郎は考えている。

脂っぽさと酢の爽やかさ、常温と冷えたネタのコントラスト。単独の鮨の味が、前後の鮨との並び方によって、さらに引き立てられる。



なんだか静かに始まり、華々しく終わる交響曲を聴いているようだ。おそらく小野氏の鮨には提供の順序以外にもさまざまな工夫が凝らされているのだろう。

小野氏は自身を生来、不器用だという。若いころ、同僚たちのように器用に素早く鮨が握れなかったと述懐している。

「不器用のほうがよかったことってありますか?」

「やっぱし、よぶんに考えますよね。みんなが1考えるのに、3も4も考えるわけでしょ?(自分が)不器用だって頭が始終あると。だからかえって考えが深くなってくるんじゃないかなと思いますけど。そりゃ、『オレは不器用でだめだぁ~』ってやって(諦めて)しまったら、終わりですけど、不器用だから、もうちょっと考えてなんとかって、こういうふうに考えてると、かえっていい結果が出てくる…」

「あんなにおいしいのに、なぜさらにもっとおいしくって上を目指すんですか?」

「まだあるんじゃないかなぁって気がするんです。」

「何がですか?」

「もっと美味しくなる方法があるんじゃないかなぁって、美味しくなる材料があるんじゃないかなぁっていう気がするから、現役でやってる以上はそれを探してます。」

「世界中から評価されても、まだ足りませんか?」

まだなんかあるんじゃないかなぁって、それを探している。楽しいですよ、そういうの探すっていうのは。」

この一言に尽きる。名人、とまでいかずとも、職人というのは、おしなべて単純な要素の組み合わせをひっくり返したり、小さな変更を加えたりして少しずつ作品の質を高めていく。長い年月飽きもせず、そんなことを繰り返しているうちにいつのまにか、はるかな高みに立っている。

【続く】

一つ一つはほんのささいな工夫かもしれない。しかしそれが積み重なれば、大きな差となる。
たとえば店内のインテリアや店内に漂う香り、気温、湿度、店員の表情。こんなものだって多少は鮨の味に影響するかもしれない。
シャリの固さ。固いネタに柔らかいシャリという組み合わせだと、シャリの歯ごたえがほとんど感じられないかもしれない。固いネタの場合はシャリをやや固めに握り、柔らかいネタには柔らかく握る。
私が考えつくのはこの程度だが、おそらくまだあるに違いない。

卓球でどうしても勝てない相手がいる。どこにレシーブしても打たれてしまう。隙がない。
こんな相手に「オレは弱くてダメだ~」となってしまったら終わりだが、相手を崩す方法が何かあると頭を使っていろいろ試してみたら、きっと何かが見つかる。一見すると小さなことかもしれないが、その小さな工夫をたくさん積み重ねていけば、きっと相手を崩すことができる。

今年の全日本で笠原弘光選手が水谷選手をあと一歩のところまで追い詰めたという。

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徹底的に水谷選手を分析し、自分に有利なボールを選ぶためのジャンケンにまで気を遣ったらしい。今、圧倒的に強い水谷選手でも笠原選手の執念の工夫の前には屈服する寸前だったのだ。

鮨というシンプルな料理において、「不器用」な料理人が工夫に工夫を重ねた結果、世界をあっと言わせるまでになった。卓球は決して単純なスポーツではないが、私たちは卓球を単純なスポーツにしてしまっていないだろうか。どうしても勝てない相手に対して、工夫することなく、安易な戦術で戦っていないだろうか。

進歩が止まってしまった人でも、思考をめぐらし、小さなことから改善していけばきっと上達するはずである。鮨に比べたら、卓球は工夫の余地がいくらでもある。たとえば、「仕込み」――サービスである。また、戦術である。試合をコース料理や交響曲に見立てて、第一楽章は激しく攻撃的に。第二楽章は逆に静かに相手を吟味するように。どのゲームも同じような調子でなく、戦術に変化をつけることによって、相手を自分の戦術に慣れさせないという効果も出てこよう。

他の人より「3も4も考え」れば、きっと「まだ何かある」。【了】

試合の「勝ち方」――張本智和選手の試合から

全日本卓球選手権大会も最終日を迎えたが、大会前半を沸かせたのは張本智和選手だろう。高校生、それも全国上位の高校生にまで勝ってしまったのだから。

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私は実際に会場に行ってもいないし、ネットやテレビでの映像も一切観ていないので、卓球王国や卓レポのサイトなどで速報を見ているだけなのだが、卓球王国の速報にこんな言葉があった。

単純な技術力だけではなく、「勝ち方を知っている」というオーラを放っていた。
「まさに「怪物」。衝撃を与えた張本智和の全日本」 2015/01/14

これが張本選手が勝ち上がれた秘密か!「勝ち方」とはなんだろうか?この文章からすると、技術のレベルが高いだけでは全日本ジュニアレベルでは勝ち抜けず、技術力+「勝ち方」が備わってはじめて上位進出ができると読める。ジュニアとはいえ、全日本レベルの選手といえば、まぎれもなく上級者だと思われるが、その上級者といえども、「勝ち方」をよく知らない選手が少なくないということだろうか。
なるほど、ある程度までは技術が高い水準にあれば、試合に勝てるが、あるレベルからは技術だけでは勝てないということなのだろう。上級者でさえ「勝ち方」を知らない人がいるのだから、いわんや私のレベルをや。
そういえば、私も技術的に格下と思われる相手に勝てなかったりすることがよくある。「勝ち方」というのは何なのか。卓球の技術書やビデオなどでも聞いたことがない。なんとなく分かるような気もするが、はっきりわからない。これを知っていれば、格上の選手に勝てる可能性が高まるのなら、これはぜひ明らかにしておきたい。

おそらくこの卓球王国の記事を書いた人はそれを知っているはずだ。そこで、卓球王国の速報の記述をたよりに「勝ち方」というものが何なのかを探ってみた。

張本選手に言及している記事を時系列順に並べれば、次のようになる。



「張本、ジュニア1回戦は逆転で勝利」 2015/01/12
三重県ジュニアチャンプの辻(白子高)と対戦した張本は1ゲーム目序盤でリードを奪うもパワーでグイグイ押してくる辻の前にミスが目立ち、逆転でこのゲームを失う。しかしベンチで「しっかり回転をかけて繋いでいこう」とアドバイスを受け、落ち着きを取り戻し、2、3、4ゲームを連取。メディアの注目が集まる中、2回戦進出を決めた。

ここに書かれていることから「勝ち方」に関係しそうな部分をまとめると、

(A)相手に押されているとき、自分の戦い方に欠けているものが何かを判断し、自分の戦術を修正していく能力

ということだろうか。
 


「怪物・張本、2回戦でも圧倒的な力で快勝」 2015/01/13
ラリー戦での強さだけではなく、小学生とは思えないほどの威力を誇るドライブも魅力の張本。高校生を相手にノータッチで打ち抜く3球目ドライブを何本も決め、会場の度肝を抜いた。

上の記事は単に張本選手の技術力の高さに触れているに過ぎない。あるいは、

(B)「ノータッチで打ち抜く威力のあるドライブ」を打てるような場所に相手のボールを集める戦術

ということだろうか。



「ジュニア男子3回戦でスーパーシードが登場。張本も勝ち進む」 2015/01/13
相手がフォアを先に攻めて、張本を揺さぶろうとしても、前陣での正確なカウンターではじき返し、相手を逆に劣勢に追い込んでしまう。下回転系のサービスも抜群の切れ味だ。

(C)相手が張本選手を左右に揺さぶって強打で決める「必勝パターン」に引き込まれず、揺さぶられないように前陣で対処するという相手の戦術を封じる対応力

ということだろうか。



「ジュニア男子、張本は高校生の高取を下す」 2015/01/14
最終ゲーム、出足でリードしながら5ー4とされたところで、ベンチに入った父・宇さんがタイムアウト。ここから張本は、上から叩きつけるようなバックハンドを連発し、あまくなったサービスもレシーブからすかさず攻める。5点連取で10ー5とし、勝負を決定づけた。
ベンチでは不安げな表情も見せるのだが、コートでのメンタルの強さは恐るべきものだ。

(D)ギリギリの競った場面でも落ち着いて、精神的に崩れない集中力の強さ、甘いボールを見逃さない選球眼

ということだろうか。



「止まらない張本、ついにジュニアでベスト8入り!」 2015/01/14
松山の回転量の多いドライブに対し、この試合ではややカウンターのミスが出た張本だったが、終盤では無理せずブロックに切り替え、相手のミスを誘った。バックストレートに抜き去るカウンターバックドライブ、そして要所で見せるたたきつけるようなフォアフリックなど、小学生とは思えない高度なテクニックを披露し、見事ベスト8入り。

(E)ミスしがちな技術(カウンター)は封印し、別の戦術(ブロック)に切り替える臨機応変さ。そしてチャンスを逃さず得意技を打ち込む判断力

ということだろうか。

「まさに「怪物」。衝撃を与えた張本智和の全日本」 2015/01/14
小学生特有の早い打球点でのプレーが高校生達を苦しめるのは、他の小学生選手でも比較的よくある光景だが、張本はパワーの面でも高校生と互角に渡り合い、台上からの攻め、サービス・レシーブでも優位に立つという驚異的な実力を見せつけた。また勝負どころでの戦い方も高校生を上回る巧さがあり、松山戦でも相手にゲームポイントを握られた場面で、完璧に狙い澄ましたであろうカウンターを決めたり、相手の逆を突くストレートへのバックハンドで抜き去るなど、単純な技術力だけではなく、「勝ち方を知っている」というオーラを放っていた。

この記事の前半では張本選手の技術的な優位について総括している。後半「また勝負どころでの戦い方も」というところを見ると、

(F)「相手にゲームポイントを握られた場面で、完璧に狙い澄ましたであろうカウンターを決めたり」
(G)「相手の逆を突くストレートへのバックハンドで抜き去る」

とある。

これまでの記事にあるコメントからは以下の(A)~(E)の能力がうかがえた。

(A)・(E)自分の戦術を修正していく能力
(B)相手のボールを狙ったところに集める戦術
(C)相手の戦術を封じる対応力
(D)・(E)精神的に崩れない集中力の強さ、チャンスを逃さず得意技を打ち込む判断力

部分的に重なりがあるが、これと(F)(G)を突き合わせると、どのような能力が浮かび上がってくるのだろうか。

苦しい場面でも集中力を切らさず(D)、試合の流れを読み、相手の戦術に乗らず(C)、自分の戦術が有効かどうかを吟味し、戦術がマズければ修正(A)(E)、もっとも有効な戦術を臨機応変に選択(E)(B)、そして高度な技術に裏付けられた思い切った攻撃で得点(D)(F)(G)

といったところだろうか。

技術や戦術は持っているに越したことはない。しかしそれが適切な場面で使えなければ宝の持ち腐れである。
「勝ち方」というのはつまるところ、現在の状況や相手の能力、そして自分の能力や技術の引き出し等を勘案し、その場面で最善の戦術を選択できる、分析能力や立案能力といったことだろうか。戦術を知っているというよりも、状況に応じて戦術を編み出せるというところに重点がある気がする。

いろいろ考えてみたが、至極当たり前の結論に到達した。当たり前なのだが、それを私が練習でふだん意識しているかというと、そうではない。私程度のレベルのプレイヤーには、この当たり前な結論を常に意識して練習に取り組むのも意味があることではないだろうか。

【付記】
全日本男子シングルスの決勝のカードは、水谷隼選手 対 まさかの神巧也選手!
神選手もスウェーデンリーグに参戦して、「勝ち方」を磨いたのだろうか。
意外な対戦で、決勝が楽しみである。
 

「短距離ドリル」から――朝原宣治氏の身体のつかいかた

瞬間的に身体中の力を放出する短距離走(たぶん)
そんな短距離走の技術には卓球に応用できるものがあるのではないか。
そんなことを考えて、短距離走の動画を観てみた。


「短距離ドリル 3」

インタビューに答えるのはオリンピックメダリストの朝原宣治氏。

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実は私は氏のファンである(前記事「あなたのベスト・パフォーマンスは?」)。

氏の回答によると、どうやら100m走というのは初めから終わりまで渾身の力で走っているというよりも、限られた体力を上手に配分することによって最高のパフォーマンスを得るというスポーツのようだ。

「100mをどのようなイメージで走っているか」
なぜ60mが大事かというと、60mがスピード曲線の頂点、スピードの一番高いところということもあるんですけど、60mというのは自分の持ってるエネルギーをどれぐらい使ってるかっていうのを分かりやすいポイントになりますね。
60mを過ぎた地点であとどれくらい自分が…あと40m走りきるエネルギーを持っているかというのを60mで確認します。

60mまでは加速していき、それ以降はできるだけ失速を抑えつつスピードを維持するというのがいいようだ。卓球でも、バックスイングからの反動を利用して、スイングが加速していくが、そこからは力を抜いてゆるやかに減速していくというのと通じるものがあるかもしれない。

「力を意識しているところは」
一時期は足の末端――拇指球とか、足の先端を意識して走ってたんですけど、そうすると、力が抜けないんですね。
リラックスしようと思うと、手のひらだとか、末端をリラックスさせないと、リラックスできないんです。
リラックスするには末端の力を抜かなければならないし、末端にすごく集中してそこに意識をおいて走ったりすると、どうしても力が入って真ん中の大きいところが動かなくなってしまう。だからどうしても中心から力が行くイメージですね。
エンジン部分から外に向かって力が出ているっていうイメージで。

これも卓球に通じるのではないだろうか。身体の中心に力を入れて、末端の部分はある程度リラックスさせておかなければ体力が消耗するし、精度も落ちる。

「腕振りのポイントは」
かつて腕振り主導というの、先に腕を意識して腕から動かして足をついてこさせるっていう練習とかしたんですけど、それはあまりうまくいかなかった
なので、今やっているのは、真ん中から動かして腕っていうのはタイミング・バランスをとるためのただの機械っていうかね、レバー、ポイントよくタイミングを取るスイッチみたいな感じで使ってます。

どうやら短距離走の走り方には脚よりも腕の振りを優先して走るというメソッドがあるようだ。しかし、朝原氏には合わなかったとのこと。前記事「「正しい」とか「間違っている」とか」で腕は意識しては振らず、下半身および身体の中心軸を動かすことによって腕も自然に「振れる」のがいいのではないかという結論に達したが、奇しくも朝原氏にとっても「腕っていうのはタイミング・バランスをとるため」という位置づけなのだ。ここまでの朝原氏の身体の使い方は私が想像している「正しい」使い方に近い。

「カラダの意識している部分は」
丹田とか言われてるんですけど、僕の場合はまず骨盤がよく動いてるか、柔らかくなってるかというのを意識するので、骨盤あたりか、おしりの尾てい骨…そのへんよりもうちょっと前ぐらいにちっちゃいボールみたいなものを意識して…

骨盤のあたりにボールのようなものを意識して――私も最近、歩く時にこれを意識している。そうすると、あまり疲れずに早歩きや、小走りなどができるような気がする(前記事「常住卓球」)。

以上のような朝原氏の短距離走での知恵を卓球に応用することはできないだろうか。
卓球に通じる部分も多いように思われる。

まず、身体の末端の力を抜き、身体の中心――骨盤から尾骶骨にかけて小さなボールをイメージし、そこに力を込め、柔らかく動かすようにすればフットワークも軽くなり、身体全体がよく回る。結果として、力が身体の中心から末端に伝わるようになり、スイングも軽い力で動くのではないだろうか。

ただ、このような朝原氏の身体の使い方が万人にとって「正解」だとも思えない。朝原氏は以下のように述べる。

「朝原選手のような走りをするには」
人それぞれ個性があって世界のトップランナーも…いろんな走り方します。僕も誰かのマネをしてるってことはなくて、自分で工夫を重ねて…いろんな人の走りってのを観ます。いいところを盗みながらやっと自分のものが確立しつつあるんで…いろんなトップアスリートの動きのいいところとか、共通点を見つけて、それを自分で実践してみる…そういうふうに工夫しているうちに自分で早く走れる時の感覚っていうのがわかってくる。それをものにした時にやっと自分のフォームになると思う

朝原氏の走りをロールモデルにするのはある程度までは有益だが、個人差や相性というものがあるので、朝原氏の走りに拘泥しては進歩が止まってしまう。そこで自分なりの「正解」を見つけるために朝原氏の身体の使い方の合う部分は取り入れ、合わない部分は自分で模索して補うしかないのだろう。このようにある程度までは上手な人のマネをして、そこからは自分なりの個性で肉付けしていくのがいいと思われる。

【付記】
朝原さん、また地域の運動会にご参加いただければありがたいです。
お忙しいとは思いますが、ご検討よろしくおねがいします。

アイディアの宝箱――『卓球スピードマスター』を読んで

「水平打法ってなんですか?」
「え?なんのことです?」
「ほら、秋葉龍一っていう人の本でさかんに勧めてるじゃないですか。」
「その人誰ですか?」

私と指導者との会話である。この答えている指導者は全国の中高の指導者や理論に詳しい人なのだが、秋葉氏はほとんど知られていないらしい。あるいは秋葉(秋場)というのはペンネームで、本名では全国的に有名な指導者なのかもしれない。

秋葉龍一氏はネットで幅広く活動されている卓球研究家?であり、作家でもあるらしい。詳しいことはよく知らないのだが、氏の近著『卓球スピードマスター』を読んでみたので、その感想などを書いてみたい。

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前著『卓球パーフェクトマスター』で「水平打法」という打法を氏は提唱したが、あまりよく分からなかった。それがこの『スピードマスター』で詳細に解説されているというので読んでみたいと思っていた。

『パーフェクトマスター』ではDVDがついていたが、『スピードマスター』では残念ながらDVD等はついていない。その代わり1200円とかなり価格を抑えてある。

ある程度経験のある人を対象に書かれており、入門書によくある全くの初心者を対象にした「ラバーの種類」だの「シェークとペンの違い」だの「ルールの説明」といった基礎的なことは割愛してある。構成も紋切り型ではなく、打法、サービス、レシーブ、フットワーク、試合でのメンタリティー等、中級者以上がほしがっているポイントが押さえられている。レシーブ、フットワークがやや簡略にすぎる憾みがあるが、細かいところまで練られた構成で、カラーの連続写真に細かくコメントが付けられており、非常に分かりやすい。 

打法は、フォアドライブ、バックドライブ、ツッツキ、ブロック等、基本的な打法がひと通り解説されており、さらに「水平打法」の全貌も明らかにされている。「水平打法」とは、どうやら「ミート打ち」の一種らしい。回転を全くかけず、比較的低い打点で直線的に打ち抜く打法のようだ。詳細は本書に当たっていただきたい。

それよりも私が興味を惹かれたのは「戦術」の章である。
前記事「「戦術」の意味」で

使える戦術NO.01
「相手が自分のバックに横回転ロングサービスを出してきたら、それをフォアに速く返すと、チャンスボールが来やすいので、それをドライブで仕留めましょう」

のような「戦術」を私は期待していたのだが、上級者の考える「戦術」はそういうものではないと知った。
しかし、上級者のような分析ができない初中級者にとっては、「使える戦術」のようなとっつきやすい典型的なラリー展開、いわば「試験に出る卓球公式」のようなものがあればと思っていたのだが、『スピードマスター』にはまさに「試験に出る…」的な典型的なラリーのパターンが9つ紹介されているのだ。名づけて「進撃の戦術」。こういうふうに明文化してあるのは初中級者にはありがたい。ただ、これはあくまでも実戦を想定した「練習」であり、「必勝パターン」といった類ではない。

この「進撃の戦術」には例えば、次のような展開が写真付きで丁寧に紹介されている。

1.相手のバックにショートサービス
2.こちらのバックにツッツキ
3.相手のバックにバックドライブ
4.ブロックでこちらのバックに
5.回り込んで相手のフォアにドライブ

なるほど。いかにも私のレベルでありそうな展開である。この展開を何度も繰り返して、自動化するまでに精度とスピードを高めれば、初中級者の試合で使えそうである。

他にも
”打球ポイントは両つま先を辺とする正三角形の頂点”とか”サービスの時、相手を一瞥すれば、素早く3球目に繋げられる”といった他書にないアイディアが随所に散りばめられており、読み応えがある。

まだざっと目を通しただけだが、本書は価格以上に内容の濃い良書だと感じた。

姿勢の崩れ――台湾卓球名人賽2015から

新年早々台湾で卓球の大会があった。
台湾卓球名人賽である。
たしか、蒋智淵選手の故郷、高雄市で卓球を振興するために去年から始まったイベントだったと思う。



以前、水谷選手のブログで ”世界ランキングに関係ないので、リラックスしてプレーできる” といったことが書いてあったように記憶している。新年の和やかな「お祭り」のような大会で、今後も末永く続いていってほしいものだ。

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試合中にこんな笑みをこぼす水谷選手は珍しい

本大会には日本からは水谷選手が招待されており、調子も上々らしく、順調に決勝までコマを進めた。去年から水谷選手の強さは際立っており(前記事「やられっぱなしじゃないぜ」)、ワールドツアーグランドファイナル優勝をはじめ、多くの大会で好成績を残している。今年の水谷選手にも期待大である。

去年の本大会では相性のいい蒋智淵選手選手を決勝で破り、水谷選手が優勝したが、今年は残念ながら、決勝でオフチャロフ選手に敗れてしまった。

この試合を水谷選手がどのように失点しているかよく観察してみると、だいたい以下の4つのタイプに分かれそうである(絶好球をスマッシュされて、なすすべがないような場合は除く)

A:感覚的なミス
サービスミスや、絶好球なのにネットミスといった凡ミス。

B:回転の読み違い
相手のサービスの回転を読み違えてネットミス、あるいはブロックで準備していたのに、予想を上回る回転のドライブを打たれて、ブロックが飛ばされてしまった場合等。

C:タイミングのずれ
ラリーの途中でふわっとしたドライブが来て、タイミングが合わずにミスしたり、きちんと相手の打球が来る位置で待っているのにボールが予想以上に速くてオーバーミス等。

D:体勢の崩れ
まだ構えができていない状態で速いツッツキを打たれたり、ミドルに速いボールを打たれて詰まったり等。

平板に4つの項目を並べてみたが、実は構えができているかどうかでDとそれ以外に大きく分類し、構えができているのにミスをした場合をさらにABCに分類してみた。

ミスの原因
構えができているかどうか
→できていない(D)

→できている
  →タッチ(A) スピン(B) タイミング(C)


水谷選手ほどのレベルになると、「世界のトップ選手がラリーの中で、体勢が整っている状態でミスをすることはほとんどない」(前記事「日本代表レベルの視点」)。そこでDとそれ以外に分けたわけである。

おそらくプラスチックボールで行われているためか、水谷選手らしからぬサービスミスが何本かあった。Aである。そして強打者のオフチャロフ選手の回転のかかったドライブでブロックが弾き飛ばされてしまったり、オフチャロフ選手のサービスが読めず、浮かせてしまったりしたボールもある程度あった(B)。オフチャロフ選手のすさまじいスピードのドライブに打ち抜かれてしまうことも、もちろんある(C)。しかし、注目すべきはDの、構えが不十分なところへ打たれて間に合わず、苦しい姿勢で打った結果、ミスという類である。

前記事「「正しい」とか「間違っている」とか」で卓球は腕で打つスポーツではないと書いたが、この試合を観て、その思いをますます強くした。水谷選手ほどの選手でもミスするのは、Dの姿勢の崩れに起因するものが多いと感じたからだ。相手の打球に即座に反応できず、あるいは予測の裏をかかれて判断が一瞬遅れ、構えが間に合わなかったことが結局ミスにつながっているのではないか。
腕の振りがどうの、ラケットの角度がどうの、というのは卓球では本質的ではない。ボール打つのに最適の場所に移動できさえすれば、A~Cのミスの多くは防ぐことができる。卓球では十分な構え・姿勢から打てるかどうかが勝敗を分けるのだ。もちろん私のような低いレベルのプレーヤーは構えが十分にできていても、A~Cのミスが多いのだが、しかし、Dがしっかりしていれば、A~Cのミスは激減すると思われる。本記事の分類ではDとA~Cのミスを同レベルに並べてみたが、実はDが前提となってA~Cのミスが引き起こされると考えたほうがあたっているかもしれない。

今年は姿勢や構えを安定させるような下半身を中心にした練習を心がけたい。

「正しい」とか「間違っている」とか――今年の抱負

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくおねがいします。

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元日から大雪の京都。御池通りはどこぞのイルミネーションのように美しかった。

正月でのんびりできるのはいいが、卓球ができない…。心が落ち着かない。

そうすると、いきおい卓球についていろいろ考えてしまう。そしてまたしょうもないことを自問自答してしまった。
今年はじめての記事は、なんとなく小賢しい記事になってしまうことをお許しいただきたい。

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世間の卓球ブログには有益な情報がたくさんある。最近「なるほど」と思ったのは以下の記事である。

重要なことは下半身の体重移動であり、あなたがいくら力を抜こうと意識しても力は抜けません。
指導者がいくら「リラックスして、体の力を抜いて打ちなさい!」といっても一向に改善できない理由がここにあります。

なぜなら卓球は腕で打つスポーツではないからです。
確かにラケットは手で握り腕で打ちますが、本当に重要なことは下半身なんです。

強くなる卓球の練習方法


卓球においては下半身で打つことが大切だ、言い換えれば、腕の振り方はさほど重要ではない、という主張には説得力がある。たしかに私もよく「肩に力が入りすぎている」と言われるが、分かっていてもなかなか力は抜けない。上半身の力を抜くためには下半身に意識を集中し、重心移動しながら下半身で打つようにすればいいのか。いいことを聞いた。


今までいろいろな打ち方を自分なりに模索してきたが、結局、安定するかどうかは腕ではなく、下半身、あるいは体幹や打球時の立ち位置――ポジショニングのほうにあるのではないか。打ってミスをするのはもちろん腕が間違った動きをしたからに違いない。しかし、打球の際に姿勢や下半身が歪んでいたら、いくら腕を正しく振ろうとしてもうまくいかない。市民大会レベルでは、非常にクセのある我流のフォームでも安定してボールが入る中高年のプレーヤーがいるが、あれはもしかしたら下半身を上手に使っているからなのかもしれない。私などはミスをすると、安易に目立つ部分ばかりに原因を求めてしまうが、ミスの原因は一見無関係に見えるところにこそあるのかもしれない。


腕の振りは重要ではない、というか、腕はできるだけ振らないほうが安定するというのはウスウス感じていたことだ。腕は振ろうとして振ってはいけない、身体全体で打球する際に、腕も自然に「振れてしまう」程度に止めるべきだ。もちろん全国レベルの上級者のように、より威力のあるボールを求める人は、積極的に腕も振って打ったほうがいいと思われるが、私のような中級者なら、そんなに威力のあるボールを打つ必要はないので、下半身に意識を集中させて上半身全体を回し、腕はリラックスさせ、飾りのように動く程度でいいのではないだろうか。

【まとめ】
「卓球は腕で打つスポーツではない」
腕はあまり働かせずに、下半身で移動して、下半身でふんばって、体重移動することによって上半身を回して打球することが大切である。



以下、暇を持て余したオジサンの痴れ言である。
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こういう指摘は素人にはなかなかできない。素人は腕の角度とか、打球点、インパクトの強さといった目につきやすい点には注意が行くが、下半身の動かし方といった目立たない部分には注意が行かない。あるボールに対して、脚の開き具合や位置はどうか、重心はどこにどれぐらい置くか、といった下半身の使い方は指導理論を学んだ人でないと、なかなか指摘できないと思われる。おそらく「強くなる卓球の練習方法」の管理人さんは指導理論をいろいろ学んでいる人ではないだろうか。
 

卓球の指導理論を考究している人の話を聞くと、われわれ素人が及びもつかないほど卓球を深く考えているということがうかがえる。全国レベルの学校の指導者などは、目に見えるフォームのような表面的なことではなく、身体全体の効率的な使い方というのを追究しているようだ(たぶん)。私のような市民大会レベルのオジサンのアドバイスとは訳が違う。農耕馬とサラブレッドぐらいの違いがあるのだ。
 

「バックハンドは肘を支点にして打つのが正しい」とか、「フォアハンドは脇を見せるように打て」とか、そんなことが世間でよく言われているが、理論的に考えている指導者に言わせると、それらの打ち方も下半身の使い方との兼ね合いで、人によって合う・合わないというのがあるらしく、万人にとって「正解」というわけではないらしい。
さらにボールの性質によって――たとえば身体に近い位置のボールと遠い位置のボールでは打ち方を替える必要もあるだろうし、卓球のレベルや体力的なことも考慮に入れなければならない。

こういう指導の専門家の理論の前では、私の考察や気づきなどは思いつきの域を出ず、何の意味も持たないのではないだろうか?
私の「正しさ」は何によって保証されているのか。
私の狭い経験によってだろうか?
だとすると、その「正しさ」ははなはだ当てにならないものだと言わざるをえない。
人によって「合う」「合わない」があるのだし、レベルによっても「適切」「不適切」があるのだから。
こんなブログで私が「正しい」と感じたことを発信するというのは、見方によっては「誤った」情報を撒き散らして善男善女を迷わせていると言えないこともない。
私がこのブログで世間に発信すべきことは何なのだろうか?分からなくなってきた…。

一方、専門家の指導理論は何によって「正しさ」を保証されているのだろうか。
おそらくその指導理論によって強い選手をたくさん育てたという実績によってだろう。
しかし、それもたまたま、その指導理論が「合う」選手に巡りあっただけであって、「合わない」選手にとっては「正しい」とはいえないのではないか。実績のある指導理論といえども、科学的な批判にたえて客観性を獲得したわけではない。「合う」「合わない」を言い出せば、実績のある指導理論といえどもその「正しさ」は心もとない。

「下半身で打つ」が「正しい」とすると、「下半身で打たない」は「間違い」ということになるだろうか?
ボールの性質によっては下半身で打たないほうがいい場合もあるだろうし、下半身で打たなくても強い人はいるのではないか。
とすると、「正しい」はたくさんあって、どんな打ち方も安易に「間違い」だと切り捨てることはできないということになる。


翻って、私がこのブログで発信すべきことは何なのか。
「正しい」という保証のないことを発信することにどんな意味があるのだろうか。

そんなことをいろいろ思い悩んでいた。
以前、「西村卓二『指導者バカ』(日経プレミアシリーズ)を読んで」でザルを持ってきた小坊主の話を紹介したが、結局、私のブログはその「ザル」なのではないかと思いいたった。私の発信していることはそれ自体では意味のあることではないかもしれない。しかし、この記事が縁となって読者なりの「正解」に辿り着けるかもしれない。苦し紛れの牽強付会に聞こえるが、新年早々、後ろ向きにはなりたくない。

というわけで、私のブログは「ザル」。そう思って今年も私なりに記事を発信していきたいと思う。
 

頭書増補訓蒙図彙 羊
おまけ:江戸時代の百科事典の羊の項目。ヤギにしか見えない。



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