しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




2012年05月

ラバーの接着剤のカスが取れない。
接着剤はたっぷり塗ると剥がしやすいが、ブレード面やスポンジを痛めてしまうのではないかと不安である。
接着剤を薄く塗ると、ラケットへのダメージの恐れは少なくなるが、接着剤を剥がしにくくなる。

先日ヤサカのA1・2という一枚ラバーを剥がしてみたのだが、接着剤が薄すぎてまったく剥がせない。
このラバーはスポンジの代わりに硬い布のような裏地がついており、剥がしにくさが倍増である。

そこで先日ダイソーで「シールはがしスプレー」というのを買ってきた。これが効いた!

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薄すぎてカラカラに乾いた感じの接着剤がこれをスプレーし、2~3分待つことでゼリーっぽくなり、指で擦ると、キレイに剥がれた!スポンジの場合はこれほどではなかったが、やはり効果があった。

怖くてスポンジが剥がせない人はお試しあれ。
ただ、試合では違法とみなされる可能性が高い。
成分をみてみると、「炭化水素」「有機溶剤」「リモネン」とある。
この「有機溶剤」というのと「リモネン」というのが怪しい。「有機溶剤」は言うまでもないが、「リモネン」というのもダメっぽい。これはオレンジオイルの成分だそうで、台所洗剤とか、タイヤのグリップなんかにも使われるらしい。卓球のラバーやスポンジにも効果があると聞いたことがある。
私的な使用の範囲に限るべきである。


韓国オープン2012を見て驚いた。あのオジサンがまたやってくれた!中国勢が参加している試合でスウェーデンのパーソンがベスト8まで進出したのだ。準々決勝で張継科に敗れたが、それでも2セットとっている。バックハンドの打ち合いではバックハンドの名手、張にも負けていなかったように見えた。日本人の生きのいい若い選手でも今の張継科から2セットとるのは難しいのではないだろうか。パーソンは1966年生まれだから、今年46歳である。2008年の北京オリンピック4位のときもビックリしたが、今回もまたビックリである。

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世界チャンピオンになることはもちろんすごいことである。しかしそれは若い時の勢いで思わずなれてしまうこともある。ベンクソンがわずか19歳で世界王者になってしまったのはそんな勢いに乗れたからだろう。
それに比べると、20年以上も国の代表として国際試合でプレイし、あまつさえ世界のトップレベルといい試合ができるというのは地味だが、実際ははるかに難しい偉業なのではないだろうか。パーソンは下のITTFのデータによると1985年のジュニアの試合が国際大会デビューだから、約27年国際大会でプレイしていることになる。
http://www.ittf.com/ittf_stats/All_events3.asp?ID=5533
今順風満帆の張継科があと10年世界の第一線で、あるいは競争の激しい中国の代表として戦えるかどうかは疑わしい。ロンドンオリンピックで金メダルをとってしまったら、目標を見失って、人生の新たな生きがいを見つけるかもしれないし、私生活でのトラブルや身体の故障、後生の突き上げなどで埋もれてしまうかもしれない。それを考えると、この栄枯盛衰の激しい現代卓球界でパーソンが30年弱も選手生命を永らえたのは奇跡と言えるかもしれない。

そういえば卓球王国の記事で見たのだが、ベルギーのセイブは23年連続ベルギー王者だそうである。
ヨーロッパの選手は総じて選手生命が長いような気がする。日本でも斎藤清のように今でも全日本選手権に出てくる選手がいるが、ヨーロッパのベテラン選手のように国際大会に出ているわけではない。

卓球選手の選手生命はだいたいどのくらいなのだろうか。地域によって違いがあるのだろうか。以下のwikipediaに載っている卓球選手で、ITTFのデータベースで国際大会に出場していた期間を調べてみた。

http://ja.wikipedia.org/wiki/Category:%E5%90%84%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%8D%93%E7%90%83%E9%81%B8%E6%89%8B

選手生命の始まりはいつからか分からない。遅咲きの選手もいると思うので、
A生まれた年 B最後に国際試合に出た年
を調べてみた。括弧内は引退選手なら引退年齢、現役の選手なら現在の年齢である。2011年に出場が確認できた選手は、2012年も出場見込みとして扱った。

やはりパーソンは頭ひとつ抜けている。伊藤繁雄が44歳と、かなり高齢まで現役だったが、パーソンはその年齢をすでに超えて、前人未到?の領域を歩んでいる。
北欧だけが選手生命が長いのかと思ったが、中欧・南欧も息が長い選手が多い。ボル選手がそろそろ引退かと噂されるが、まだまだ若い。ぜひ次のリオデジャネイロで金メダルを目指してほしい。
コルベル選手は去年のジャパン・オープンで大いに観客を沸かせてくれたが、卓球小国チェコで一人気を吐く、元気オジサンの活躍に期待。ドイツのシュテーガーというと、すごく生意気で態度の悪い子供という印象だったが、年齢的にズュースなどよりも年上でボルと同い年だと分かって驚いた。

北ヨーロッパ
ベンクソン A52-B85(33歳)
アペルグレン A61-B96(35歳)
ワルドナー A65-B05(40歳)
パーソン A66-B12(46歳)
サムソノフ A76-B12(36歳)
スミルノフ A77-B12(35歳)
メイズ A81-B12(31歳)

中央ヨーロッパ
ガシアン A68-B04(36歳)
エロワ A69-B12(43歳)
コルベル A71-B12(41歳)
クレアンガ A72-B12(40歳)
セイブ A69-B12(43歳)
シュラーガー A72-B12(40歳)
陳衛星 A72-B12(40歳)
シュテガー A81-B12(31歳)
ボル A81-B12(31歳)
劉佳 A82-B12(30歳)

アジアの選手生命はヨーロッパに比べるとやはり短いようだ。中国のように次から次へと天才が出てくる国では王励勤のように30代半ばまでトップレベルでいるのは相当難しいのだろう。しかし王励勤にはもう一がんばりして、中国選手の選手生命は短いというイメージを変えてほしい。劉国梁はすっかりおっさんぽくなってしまったが、まだ36歳である。ちょっと引退が早すぎたのではないだろうか。もったいない。馬琳・王皓は30歳前後だがまだ十分強い。馬龍・張継科に負けずに切磋琢磨してほしい。陳チー・ハオシャイもまだまだ諦めるのは早いぞ!
韓国選手もずいぶん年齢が高い印象があるが、ユ・スンミンはまだ30歳。まだまだ若い!あと10年は韓国一を争えるはずだ。

中国・台湾
チャンポンロン A76-B12(36歳)
劉国梁 A76-01(26歳)
王励勤 A78-B12(34歳)
王楠 A76-B08(32歳)
馬琳 A80-B12(32歳)
王エツコ A80-B12(32歳)
荘智淵 A81-12(31歳)
郭炎 A82-B12(30歳)
張怡寧 A82-B09(27歳)
ハオシャイ A83-B12(29歳)
王皓 A83-B12(29歳)
陳キ A84-B12(28歳)

韓国
キムキョンア A77-B12(35歳)
呉尚垠 A77-B12(35歳)
朱世ヒョク A80-B12(32歳)
柳スンミン A82-B12(30歳)

日本選手は30歳前後で引退する選手が多いようである。
女性は出産や育児などでその時期に活動を休止、あるいは引退する選手が多いのはしかたがないが、もったいない気がする。30歳というと、能力的にも経験的にもバランスがとれて、安定して勝てる選手が多いのではないだろうか。
よく「一流選手が大学生/社会人になると、練習時間がとれなくなる」などと言われるが、もし世界のトップを目指すのなら、おかしな話である。大学生/社会人になる19~23歳という年齢は世界のトップを目指すなら、もっとも練習時間をとっていい時期だと思うからだ。経済的な問題が一番の問題だと思うが、こんな一握りの選手の育成費用なんだから、政府がしっかり援助してほしいものである。

下のデータを見ると、世界王者になり、満足して30歳前後で第一線から退いていった人もいるだろうが、そうではなく、思ったような実績を残せないまま無念のうちに第一線を退いた選手も多いように思う。

毎年、天才と呼ばれる若い選手が次々と生まれてくるが、大学生になると、適当に丸くなり、社会人になると行き詰まり、引退していくという選手が多いのではないだろうか。選手育成の難しさを痛感する。天才は放っておいても生まれてくるが、それを世界で通用する選手に育てるのはそう簡単ではないということか。張・岸川・水谷・高木和・松平・丹羽といった天才たちを30歳前後で使い捨てにしないよう、日本の指導者はヨーロッパの指導法を参考にしてはどうだろうか。
またヨーロッパにはプロリーグがあるというのが選手生命を伸ばす上で大きいのだろう。日本でもプロリーグをやってくれたら…近所で入場料1000円ぐらいなら見に行くのだが。

日本
荻村伊智朗 A32-B65(33歳)
伊藤繁雄 A45-B89(44歳)
河野満 A46-B77(31歳)
長谷川信彦 A47-B74(27歳)
高嶋規郎 A51-B83(32歳)
小野誠治 A56-B90(34歳)
渡辺武弘 A61-B92(31歳)
斎藤清 A62-B93(31歳)
星野美香 A65-B92(27歳)
松下浩二 A67-B07(40歳)
梅村礼 A76-B07(31歳)
小西杏 A80-B09(29歳)

我々は名前がないものについて深く考えることができない。アスペルガー症候群とか、ADHDといった発達障害も名前がないうちは単に「自己中」とか「落ち着きがない」だけとされていたに違いない。
うちの娘は甘いものに対する執着がひどかったので、幼児の頃、あえて「チョコレート」という単語を教えなかった。そのおかげで「あれ食べたい、あの、あの、茶色いの」と言われても「何のこと?茶色いのって何?」とかしばらくとぼけていたら、忘れてくれた。もし「チョコレート」という名前を教えてしまったら、そのことばかり考えてしまい、娘は今ごろ肥満になっていたのではないだろうか。
このように名前というものは我々の認識活動に非常に大きな役割を果たしている。

また、名付けというものはそれがしっくりきたときは、えもいわれぬ満足感をもたらすものである。

「隼」という名前を見たら、ハヤブサのように素早く獲物を狩るイメージを思い浮かべ、
「孝希」という名前を見たら、実は珍しいぐらいの親孝行なのかもしれないと思い、
「早矢香」という名前を聞いたら、はっきりした、積極的な女性をイメージし、
「佳純」という名前を聞いたら、ぼんやりと、ほのぼのした女性かなと思う。

う~ん。「早矢香」さん以外はあまり私のイメージとは合っていないなぁ。「早矢香」さんの場合は、実物にそのイメージを重ねあわせることができ、私は彼女のことをもっとよく理解できたような満足感を覚える。

それはともかく、私は以前TSPのSWATというラケットを買おうと思ったことがある。値段も手頃だし、評判もいい。使わせてもらったところ、非常によく弾み、カチッとした印象で欲しくなってしまった。しかし名前が警察官みたいだったので、ARSNOVAのほうを購入した。こちらは「新技術」という意味だそうだ。いくら性能が良くても名前が好みでなければ買わないというのが私の美学なのだ。

それで日本の大手4社のラケットの名前をアルクの英辞郎on the webで調べてみた。有名選手に由来するラケット名やニッタクの楽器シリーズ、offensiveやdiffenseといった自明のものは省略した。SK7やKVUのような略語も省略した。英語以外の命名は調べていない。TSPのalteroは「誇り」、campioneは「チャンピオン」という意味のイタリア語らしいが、諸外国語を調べるのは煩瑣なので英語辞書のみで調べた。

バタフライ
有名選手と数多く契約しているため、選手名に由来する命名が非常に多い。また専門用語や素材名もあるが、半分ほどは意味不明である。ラナンキュロスというのはキンボウゲの一種らしいが、どうして?と首をかしげる。

innerforce:内なる力
iolite:《鉱物》アイオライト、菫青石
viscaria:和名コムギセンノウ、ウメナデシコ。
photino:《物理》フォティーノ
amultart:不詳
ishlion:不詳
ranunculus:《植物》ラナンキュラス
salvo :《軍事》一斉射撃
redox :《化》レドックス、酸化還元
lejumu:不詳
xstar:不詳
cutlass :カトラス◆船乗りが好んで使った厚くて重い反り身の片刃の短剣。
cypress:《植物》糸杉(材)、ヒノキ
lendido:不詳
bolgard:不詳
tenper:不詳
brisker:「冷たい/爽やかな」「動作が活発な」の比較級
lapuhta:不詳
reygundo:不詳
keyshot:そのゲームを左右するショットという意味か。
extrawing:もう一つの翼(1枚?)

ニッタク
ラケットの種類も多いが、意味不明な語が多すぎる。ferukuとかtesura、torua、eeruなどは本当に外国語なのだろうか?この音節構造は日本語っぽい。意味はなく、開発者が音の響きで適当に命名しているのではないかという気がする。tenaryのように日本語由来の命名(この命名はすばらしいセンスだと思う)もあるが、上にあげた4つは日本語由来だとしても意味が分かって納得できる命名ではない。

hinoblaze:ヒノキが熱く燃える?
flyatt:不詳
cellenty:不詳
kamkit:不詳
barwell:不詳
ludeack:不詳
kiley:人名?
fillmea:不詳
alulass:不詳
feruku:不詳
meran:不詳
rutis:不詳
lialox:不詳
feminist:男女同権論者
lumilas:不詳
greenshank:緑の柄?
mig・non:〈フランス語〉かわいい?
adelie:南極の地名?
runlox:不詳
bizelox:不詳
latika:人名?
septear:不詳
clout:一撃、あるいは人名
piecea:不詳
canaldy:不詳
tesura:不詳
sanalion:不詳
foum:不詳
jenty:不詳
torua:不詳
razor:カミソリの刃
amin:人名
tiluna:不詳
monophonic:モノラルの、単旋律の
resist:反抗する
wolfeed:不詳
alulass:不詳
rorin:不詳
streak:筋、走り抜ける
russelfor:不詳
ruforal:不詳
trefire:不詳
airuline:不詳
eeru:不詳
acute:激しい、鋭い
zeek:不詳
bizelox:不詳
lumilas:不詳
ristal:不詳

TSP
辞書に掲載されている語からの命名が多いのだが、levantとかsectionとかどういう命名意図なんだろうか。yで終わる命名が多い気がする。

lepard:不詳
flary:不詳
altero:不詳
fasty:不詳、あるいは「速ちゃん」?
swat:ピシャっと打つ、特別機動隊
campione:不詳
arsnova:不詳
astron:天文学
besty:不詳、あるいは「最高ちゃん」?
award:賞、授与する
gaia:ギリシャ神話の大地の女神
choose:選ぶ
japiel:不詳
lightness:軽さ、明るさ
euro:ヨーロッパ
levant:夜逃げする、地中海の東の地方
section:部分、節
shine:輝き
stash:隠しておいたもの、隠し場所
dynam:不詳、dynamicからか?
multy:不詳。複数を意味するmultiからか?それとも「丸ちゃん」的な意味か?
higlory:不詳
sleek:つやつやした、流線型の、よく肥えた
versal:不詳。

ヤサカ
馬琳シリーズやMKVなどのベストマッチシリーズのラケットが多いので、独自のネーミングはそれほど多くない。
命名はclassicやextraのように分かりやすいものが多い。日ペンは「武蔵」や「柳生」といった日本名である。

spelancer:不詳
galaxya:不詳
extra:追加の、さらなる
synergy:相乗効果
balsa:《植物》バルサ
sweeper:掃除人、掃除機
two face:二つの顔、表の顔と裏の顔

まとめ
ヤサカのラケットの命名はオーソドックスなものが多いが、他3社の卓球のラケットの命名は意味不明なものが多い。英語以外の外国語に由来したり、造語もあるのかもしれないが、名前の意味や命名の意図が分からなければ、所有者のラケットに対する愛情は半減してしまうだろう。我々はラケットにしっくりくるイメージの命名を必要としている。名前がないと、その対象について深く考えられないと先に述べたが、名前があっても意味がわからないと、ラケットに対するイメージを持ちにくく、それは同時に愛着を持つ対象になりにくいからだ。メーカーは命名意図が分かるような広報活動をしてほしい。特にニッタクの命名は意味不明度が際立っている。

ラージボール用品は高い。しかし徐々に低価格の製品が出始めている。
ラバーはクリッター44がジャスポで1890円、ラージ44DXが1969円。

clitter
large44dx


ラケットはラージスーパーシェークが3675円、TSラージが3927円。

large super shake
tslarge


これなら1本あたり8000円ほどで購入できる。しかしもっと安価にラージボール用ラケットを購入することはできないだろうか。ラージ用のラバー貼りラケットは約3000円ほどで手に入る。

giant large44ジャイアントラージ380S 2713円
specialist neoスペシャリストネオ 3161円

しかし、うちにある使い古しの表ソフトを有効活用できないものかと考えて、ユニバーサルリボンシェーク1000(以下UR1000)を購入してみた。このラバー貼りラケットは、片面が表ソフトという非常にユニークなラバー貼りラケットである。
universal ribbon

価格も激安でジャスポ価格735円である。わずか700円強でラバーが2枚貼ってあるラケットが買えるなんて、とんでもないコスパである。これは試す価値がある。以下UR1000のレビューである。

結果から言うと、あまりよくなかった。
・重量:177g ズシッと重い。
・弾み:全く弾まない 
・品質:良くない。側面から見ると、板が潰れている部分がある
SN3B0480

ラバー:裏ソフトのほうを剥がしてみたが、わりと剥がしやすかった。接着剤が残ることは残るが、ブレードを念入りにタワシかヤスリで擦ってやれば、ラバーの貼替えも可能。表ソフトのほうの質感はカチカチである。1枚ラバーかと思うような打球感だった。このカチカチラバーでラージボールをスマッシュしたら、一発で逝ってしまいそう。余談だが、先日JUICのラージトレーニングボールを買って打ってみたら(ラージ用ではない普通の表ソフト)、スマッシュ一発で割れてしまった(それからは「もっとピンポンっぽくやろう」ということになった)。ラージボールはラバーの品質よりもまず、ボールの品質をなんとかしてほしい。

まとめ
ラージ用のラケット+ラバーは安くなってきているが、シェークなら8000円ほどする。もっと安く上げたければ、おとなしく3000円ほどのラージ用ラバー貼りラケットを買うことをおすすめする。

私の愛用しているラバーはフレクストラとか、オリジナル・エクストラとかタリビットである。あるいは輸入中国ラバーの水星2、キョウヒョウなどである。これらは実売価格2000円以下である。
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OE
tarbit

中国ラバーはともかく、日本のこれらのラバーは安くて、クセがなく、ちゃんと引っかかりもある。何も不満はなかった。あの時までは。

子供の頃少し卓球をやっていたという人(A)と先日卓球をした。Aくんはなかなかアグレッシブな打ち方をする初級者だった。ラケットを持っていないということだったので、私のラケット(フレクストラ付き)を貸してあげた。久しぶりなので、はじめのうちはちっとも入らなかったが、次第に勘を取り戻し、両ハンドでかなり入るようになってきた。

翌週、Aくんは友人(B)を連れてきたので、いっしょに卓球をすることにした。BくんはAくんよりも上手で、威力のあるドライブも打てたし、横回転のかかったサービスをレシーブすることもできた。3人で卓球をしているうちに、Bくんが用事ができてしばらく席を外したので、AくんはBくんの使っていたラケットを使わしてもらうことになった。すると、本人もビックリするぐらい入るようになった。低く、無理な球をバックハンドで強打しても入ってしまう!Aくんの実力からすると、超ファインプレーである。しかも、打ったボールは相手側でグンと伸びる。いったいAくんに何が起こったのか。実はBくんのラケットにはテナジーとブライスが貼ってあったのだ。

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Aくん曰く
「フレクストラは、ボールを強く打ち過ぎるとオーバーするし、スピードが足りないとネットにかかってしまう。しかし
テンションラバーは強く打っても弱く打っても、どんな打ち方でもコートに入ってしまう!」

Bくんのラケットはバタフライの数年前の最安ラインのもの。しかしラバーは両面高級ラバー。ラケットではなく、明らかにラバーの性能のおかげである。Bくんによると、週1時間ぐらい練習し、1年以上張り替えていないらしい。シートの引っ掛かりは私のフレクストラと変わらない、あるいはそれ以下かもしれない。しかしシートのグリップ力云々ではなく、何かが根本的に違う。

テンションラバーは不思議である。威力のないボールに威力を与えるだけなら、単に弾みをよくすればいい。しかしテンションラバーは強く打っても弱く打っても入ってしまうのだ。

私も少し使わせてもらった。どんな打ち方でも入るというのは大げさだが、たしかに「あっミスった!」というボールでも入ることが多い。ズルイ!しかし、使いたい。テンションラバーを使えば、調子の波がかなり小さくなるのではないだろうか。なるほど、テナジーがあんなあり得ない価格にもかかわらず大人気で品薄だというのも分かる気がする。世間の人はこんな反則的に便利なラバーを使っていたのか。とすると、私がよく惜しいところで負けているCさん(エクステンド使用)。もし私がテンションラバーを使うようになったら、Cさんに互角、あるいは少し勝ち越せるかもしれない。

20年前と比べて、ラケットは徐々に進化していると思う。しかしラバーは劇的に進化したのではないだろうか。テンションラバーはまさに画期的な製品だと思う。お金に余裕ができたら、きっとテンションラバーを使ってやるぞ!

【追記】
『卓球レポート』2013年2月号でテナジーの特集があった。その中で、テンションラバーはスポンジに深く食い込ませることによって、ボールの回転や角度を緩和し、ブレードの向いている方向にまっすぐ返球しやすいとあった。これが「どんな打ち方でもコートに入ってしまう」秘密なのかと思った。

ずいぶん古い本だが『NHK趣味悠々 中高年のための楽しい卓球レッスン』(NHK出版)を読んでみた。
全く経験のない初心者を対象にして書かれた本である。ラケットの選び方、グリップの握り方、フォアハンド・バックハンドの打ち方、フットワーク、サービス、レシーブと本の構成は一般的である。

この本の優れた点は間違った例を豊富に挙げている点である。
たとえばラケット(シェーク)のフォアハンドの振り方についてだが、手首を曲げて、ラケットの先端が下を向いてしまうのはダメと写真入りで紹介している。このダメな例を挙げてくれているのが初心者の指導に役に立つ。ビデオがあればもっといいのだろうが、あいにくビデオはない。

ただ上の例で言えば、フォアハンドを振るときに手首が曲がっているのは間違いというのはどうしてなのだろうか。トップ選手でもフォアを振るときに手首が曲がっている選手がいると思う。水谷隼選手や高木和卓選手は手首を下に曲げているように見える。

こういう卓球の「常識」には常々疑問を感じている。私が子供の時は、打つときはインパクトの瞬間までボールを見るように言われていた。しかし律儀にそんなことをしている人は少数派だろう。私が以前指導を受けていた元プロの方はボールを見ないと仰っていた。そんなことをしていたら、次の打球に間に合わないし、相手の動きを見ることもできない。

フォアを打つときは腰をよく使って、体全体で打つのがいいとされている。たしかに中・後陣で引き合いでドライブを打つときやスマッシュの時は体全体で打つのがいいと思う。しかし前陣で打つときに果たして腰をしっかり回転させて打つのは本当にいいことなのだろうか。腰を動かすとどうしても戻りが遅くなる。前陣で腰を使った強打を打って、それがブロックされたときは、なまじスピードのあるボールを打ったために返球も非常に速い。戻りが遅いと相手のブロックに対応できない。前陣ではむしろあまり腰を回さず(逆に全く腰を使わないで打つのも難しい)、肩や肘だけでドライブを打つのが効果的なのではないだろうか。現に丹羽孝希選手のプレーを見ていると、あまり腰を使っているようには見えない。

昔は片面ペンはオールフォアで打つように言われていたが、あれも本当にいいのだろうか。これから片面ペンでもバック主体のスタイルが出てきてもいいのではないだろうか。先日オーストラリアの粒高ペンの選手の試合をみたが、バックのプッシュが主体だった。



卓球の「常識」は根拠がないから役に立たないというつもりはない。そんなことを言い出したら、何も指導できなくなってしまう。「勉強していい大学を出て、創造的な仕事に就くのがいい人生です」という人生の「常識」には根拠がないといって否定してしまったら、たいていの親は子供を教え導くことができなくなってしまう。卓球の「常識」は指導の便宜として必要であることは分かっている。しかしほとんどの卓球書がみな口をそろえて「手首を下に曲げてはいけません」とか「フォアハンドは腰を使って打ちましょう」などと書く必要はないのではないだろうか。つまり、あたかも「正解」であるかのように複数の書籍で口を揃えて同じことが書かれているのに疑問を感じるわけだ。たまには「ピッチの早い卓球を目指す人はあまり腰を使わないで打ちましょう」と書いてある本がいくつかあってもいいと思うのだ。ちょっと個性を出して、「常識」に反することが書いてある本があればおもしろいと思う。

ともあれ、『楽しい卓球レッスン』は「悪い例」を写真入りで豊富に紹介している点で初心者の指導には非常に有益な参考書だと思う。

【追記】
先日『卓球王国』で「超効くコツ35」という連載を読んだ。その中でWRMの原田隆雅氏が従来の指導法とは違う指導法を提案しており、勉強になった。卓球の指導法も年々変化しており、10年前の「常識」が現代では「時代遅れ」になっているということが分かった。
ラケットのヘッドを下に下げてもいいではないか、と上に書いたが、初心者でヘッドを下げている人を見てしまった。プロの選手のように手首を曲げてヘッドを下げているのではない。ヒジと手首をまっすぐにしてヘッドを下げて打っているのだ。なるほど、『楽しい卓球レッスン』で想定していた「悪い例」はこれなんだと思った。

【追記2】
先日、フォアハンドが安定しない時、「ボールをちゃんと見た方がいい」と言われた。さすがにインパクトの瞬間まで見ろというのではないが、ある程度見たほうが安定すると言われ、実践してみたところ、本当に安定した。昔から言われていることには一理あると考えを改めた。

【追記3】
All About というサイトに明治大学卓球部の平岡義博監督の説が紹介されていた(2004年)。
http://allabout.co.jp/gm/gc/213666/2/
曰く
平岡監督2
身体の中心線を超えて逆サイドまで振り抜くのがツボ

「日本の場合、少し打てるようになると、バックスイングをとってバックステップをして全身を使って打つんだとか言われます。それも間違いではないんですけど、その打ち方ではストライクゾーンが狭く何本も連続して打つのは難しい。上半身の形さえできれば腕の力だけでも十分にパワーのあるボールは打てる、ということをまず理解してほしいんです」

やはり体全体で打つ必要は必ずしもないと感じた。

私はMOSAIC.WAVが好きである。先日最新作「AKIBA-POP√RECOLLECTION」を聴いて一抹の寂しさを感じたので、卓球には全く関係がないが、それについて書いてみたい。

MOSAIC.WAVとは何か。ニコニコ動画などで人気があり、「電波ソング」と言われるジャンルをリードしている稀有なバンドである。「電波ソング」とは何か。サブカルチャーを題材にして、皮肉と悲哀と虚無を無邪気に歌った歌のことである。音楽的にはテクノポップに近いのだが、歌詞に風刺があり、勢いのある曲が多い。

MOSAIC.WAVを初めて聴いた時の衝撃は忘れられない。


「洗脳・搾取・虎の巻
♪知らぬ神が仏なら 知る苦しみはただ神のみぞ知る それでいいと 思いませんか?

こんなしゃれた言い回しが随所に散りばめられている。



「ふぃぎゅ@謝肉祭」
初めのアルバムはまだ熟しきっておらず、完成度もそれほど高く感じられなかったが、2~4枚目のアルバムはどれもすばらしい曲ばかりで、人気も高かった。
1stアルバム 「We Love "AKIBA-POP"!!」
2nd アルバム「SPACE AKIBA-POP」
3rdアルバム 「Future-Fiction:AKIBA-POP」
4thアルバム「SuperluminalЖAKIBA-POP」

が、5枚目のアルバムあたりから方向性がずれてきたように感じられる。
5thアルバム「Amusement Pack」
曲間に不思議の国のアリスのパロディーのような「幕間劇」というダイアローグが入っているが、あまりおもしろくない。「片道きゃっちぼーる」のような名曲もあるのだが、アニメの主題歌が多く、全体的にあまり風刺が利いていない。悪い出来ではないが、今までのアルバムの完成度からすると、このアルバムには肩透かしを食ったと言わざるを得なかった。


「片道きゃっちぼーる」

しかしこの間にも「迷惑メーリングガール」「おとこの娘のトビラ」「天狗流三段構えアプローチ」 「こころのひめごと」といった名曲が製作されているので、それらが次のアルバムに収録されることを期待していたのだが、



「おとこの娘のトビラ」



「うじゅたま☆うじゅりんぱ」


「魔法のおしごと」


6thアルバム「吟遊Planet☆AKIBA-POP」の出来はどうか。なんなんだこれは?「きみにおねがい!セキュリティ」以外、聴きたい曲がない…。高速ラップとかいう「脳・内・再・醒~ecphoric dance~ 」も、試みとしては新しいのかもしれないが、何度も聴きたいという気にならない。


「きみにおねがい!セキュリティ」
このあたりからMOSAIC.WAVの人気は急激に陰りを見せてきたと思われる。

そして今回の7thアルバム「AKIBA-POP√RECOLLECTION」である。ベストアルバムという触れ込みなのだが、昔の名曲は入っているものの、私が期待していた近年の名曲は入っていない。選曲もちょっと首を傾げるものがある(「恋のチェッカー・フラッグ」 「マジカルリンス・マックスハート」「虹の世界で2D LOVE」「こいはぐ」「愛の個人授業」等をどうして入れなかったのか)。昔の曲もアレンジ等が施されており、それはいいのだが、それだけでは従来からのファンは納得しないのではないだろうか。新曲が6~7曲入っているのでオトクといえばオトクだ。どれも悪くないのだが、コレ!という曲がなかった。なんというか、電波ソングではなく、万人ウケするアニメソングを志向するようになってきたように感じる。そのような路線で勝負するということは、MOSAIC.WAVの個性を捨てるということで、勝ち目は薄いと思うのだが。

MOSAIC.WAVはこのままフェードアウトしてしまうのか。
実は私はボーカルのみ~こさんと会って話したことがある。些細なことまで気を遣って下さるし、常識もあり、尊敬に値する大人の女性だった。
彼女も決して若くないだろうから、かつてと同じような歌はもう作れないのだろう。今はバンドの方向性を模索中なのかもしれない。ゆっくり充電して、なんとか新境地を切り拓いてほしいものである。

【追記】
かつてのモザイクウェブと最近のモザイクウェブは何が違うのか、はっきり言葉で言えなかったのだが、今気がついた。「毒」が抜けてしまっているのだ。かつてのモザイクウェブの歌詞には皮肉や開き直り、おちょくりといった「毒」があった。それがモザイクウェブの個性だったのだが。

以前、松下浩二氏の解説について厳しいことを書いてしまった(「卓球の解説」)ので、申し訳なく思っている。
そこで松下氏の著書『DVDで極める!卓球回転テクニック』(西東社)を読んでみたところ、なかなか良かったので紹介したいと思う。

この本のユニークな点は、サービスとレシーブの説明に大半の記述を費やしている点である。
一般的な卓球の本はグリップの握り方から、フォアハンド・バックハンドの振り方、サービスの出し方、レシーブ、ツッツキと順番に説明されており、それはあたかも卓球に初めて触れる未経験者の進歩の過程を反映しているかのようである。つまり、初心者はまずグリップを正しく握り、なんとなくフォアで打ち合い、そのうちバックも打つようになる。その時点では回転をあまり意識していないのだが、試合を意識するようになると、どうしてもサービスを身につけなければならない。そこから回転と向き合うようになる。この時点から「初心者」は「初級者」になったと言える。サービスを出せるようになると、ツッツキも覚えなければならず、ツッツキができるようになると、ドライブも覚えなければならない。効果的にドライブをするにはフットワークも必要だ。一般的な卓球書ではちょうどこのような順序で技術が説明されている。

フォアハンド→バックハンド(ハーフボレー/ショート)→サービス→レシーブ(ツッツキ)→ドライブ

本書ではそのような総合的な卓球書とは一線を画し、一部の技術(サービス・レシーブ)に特化して解説されている。さらに特筆すべきはサービスからの展開も紹介してくれていることだ。これは実践的で役に立つ。

回転と付き合い始めた初級者はすぐ壁に突き当たる。回転のかかったサービスが返せないのだ。まずそこで脱落者が出てくる。フォア打ちはかなり上達し、フォア打ちからのラリーも続くようになったのだが、試合になると、全くいいとこなしである。そこで「試合はきらい。楽しく打てればいい」と諦めて、ずっと上達しない人も出てくる。

一般的な卓球書ではあまりにもサービス・レシーブが軽視されている。卓球の醍醐味はラリーだと思うが、ラリーに持ち込むためには思い通りのサービスが打てなければならない。回転のかかった短い下回転のサービスを出すのは初心者には難しい。しかしそれをクリアしなかったら、ラリーに入る前に終わってしまう。切れていない長いサービスは相手に攻撃されやすいからだ。サービスの練習をせずにラリーの練習をするというのは、漢字を学ばずに日本語会話を学ぶようなものだ。流暢に日本語を操っている外国人も会話の中に「相対的」とか「誤動作」といった語がコンニューしてくると、とたんに理解不能となってしまう。漢字を学ばない外国人の日本語が買い物程度の域を出ないように、サービス練習を避けてきたプレイヤーはラリーまで辿りつけない。
初級者に聞いてみると、サービスが卓球に占める重要度は10~20%程度だと思っている人が多い。重要なのはスマッシュやドライブであって、サービスは初めのわずか1打にすぎないという類推から来る数字だろう。しかし実際はサービスの卓球における重要度は50%近いのではないだろうか。全国大会に出るような上級者のことは分からないが、私のような趣味で卓球をしている中級者は、サービスが上手ければ、格上の相手とも互角以上の勝負ができる。


【卓球王国】サービスはマジックだ!〈中編〉

上のビデオの1:01ぐらいのところで市川梓選手が出しているサービスがすごい。こんなサービスを出せるようになったら、どれだけ卓球が上手になるのだろうか。

初級者はサービスやレシーブが少しできるようになると、すぐに派手なフォアドライブやバックのハーフボレーの習得ばかりを優先し、サービスやレシーブは未発達のまま後回しにしてしまう。自戒を込めて言うが、これでは試合で勝てない、というより卓球にならない。まっとうなサービスとレシーブができるようになって初めてラリーに辿り着けるのだから、むしろドライブの練習よりもサービス・レシーブの練習を優先すべきではないか。

相手の2球目攻撃を封じる切れたサービスを出し、返球されたボールをドライブ、あるいは深くて速いツッツキで返すことができれば、試合を相当有利にすすめることができる。そのためにはサービスの練習が欠かせない。

フットワークが重要なことは言うまでもないが、これはフットワークと対になるドライブやスマッシュといっしょに習得するべきものだとすると、サービスやレシーブよりも優先順位は低いのではないだろうか。

まとめ
初級者にとってサービス・レシーブは非常に重要であり、むしろドライブの習得よりも優先させるべきだと思う。しかしサービス・レシーブが詳しく解説されている卓球書は少ない。本書はその点で初・中級者に益するところ大である。さらにカットやペンホルダーに対する配慮もあるので、非常にユニークな卓球書である。

【追記】
「ドライブよりサービス・レシーブの練習を優先させるべきだ」と書いたが、やはりそれもアンバランスな感じなので、サービス・レシーブとドライブをバランスよく習得するのがいいかと思い直した。
遊澤亮『DVDでよくわかる!卓球』(西東社)という本を読んでみた。この本はサービス・レシーブに大半を割いており、付属のDVDはとりわけレシーブに特化している。遊澤氏はネットのいたるところで怪しげな宣伝を繰り返しているので、手に取る気にはならなかったのだが、この本はレシーブ技術の習得に益するところが大きいと思われる。


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